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第二部
すれ違う心Ⅳ
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「はあ……」
大きな溜息が飛び出します。今日は何回目かしら。
邸の研究室。今日の工程を終えて記録誌を閉じました。リッキー様の語学学習を終えた後、まっすぐに帰宅して研究室に直行して、仕事に没頭していました。
そうしなければ考えてしまうから。
「はあ……」
もう何度目かのため息の後
「まあ、大きな溜息ね。どうしたの?」
「お母様」
開いた扉から顔を覗かせていたのはお母様でした。気づかなかったわ。いつからいらっしゃったのかしら。
「休憩は取れそうかしら? 一緒にお茶でもどうかしらと思って、誘いに来たのよ」
「はい。大丈夫です。今日の分は終わりましたし、ちょうどお茶したいなって思っていたところでした」
「よかったわ。テラスでお茶しましょう」
お母様と連れ立って研究室を出ました。
「珍しいですね。こちらまで足を運ぶなんて、サリーに頼んでもよかったのに」
「そうね。たまにはいいでしょう。運動にもなるし、植物に元気ももらえるわ。ここの植物は生き生きしていて癒されるのよ」
「そうなのですか?」
「実はね。時々、ローレンツと一緒にここを散歩しているのよ」
「ええー。そうだったのですか?」
初めて聞きました。
「邪魔するといけないと思って、あなたがいない時にね、こっそりと」
悪戯が見つかった子供のような表情で肩を竦めたお母様。
敷地内に造られた植物園は何種類もの薬草やハーブなどを栽培しています。一年を通して何らかの植物が花を咲かせたり、実をつけていたりと目にも楽しませてくれるので散歩がてら観賞するには最適です。私も癒されている一人です。
お父様と一緒というのが、我が親ながら微笑ましい。本当に仲の良い夫婦です。両親は私の理想の夫婦像。こんな関係が築けたら幸せになるのだろうという見本のような夫婦。だからそんな結婚を夢見ていました。
「フローラ、うちのお店に行ってみない? たまには外で食事をするのはどうかしら?」
紅茶を頂いているとお母様からの素敵な提案に、即座に賛成しました。
「オープンしてから一度も行っていないので、気になってました。すっかりお母様に任せっぱなしにしてしまって、申し訳ありません」
オープン前からいろいろとありすぎて、おまけに風邪で寝込んでしまったせいで、開店の忙しいときに何の役にも立ちませんでした。お母様も看病と開店準備で大変だったと思うわ。本人は何も言わないけれど。
「何を言ってるの。元々わたくしのお店よ。もちろんフローラがいれば心強かったとは思うわ。でも一人に頼ってばかりでは事業は上手くいかないものね。それに優秀なスタッフも揃っていたから、滞りなくオープンできたのよ。だから心配することはないの。今だってうまくいっていて経営も順調なのだから、当日はお客として食事を楽しんでちょうだいね」
「そうですね。そうします」
商品開発には携わりましたが、オープンしてしまえば私にできることはありません。オープン当日の大盛況だったという様子をこの目で見たかったとは思いますが、こればかりはどうしようもないことですものね。
霞がかかったように曖昧に流れる時間。お母様と話をしていても現実味がないように感じて、ぼんやりしてしまいます。笑っている自分は本当の自分なのか、よくわからないまま、日々を過ごしている。時々、胸の奥で泣いている自分がいて、心を痛めながらも、感情をそのまま表に出すことはできなくて。迷子のように出口を探してさまよっているだけ。
一人になったテラスから見える庭には、季節の花々が咲き始めていました。木々の合間から見えるのは雲の多い空。切れ切れに青空が覗いています。
本来なら、今頃はレイ様と……
静かな空間に身を置いていると知らずに頭に浮かんできます。レイ様の笑顔や笑い声。低めの穏やかな声色。抱きしめられた時の温もりも、シトラスの香りも。本当はからかわることもイヤではなかったわ。
ずっと、好きだった。
『結婚してほしい』
その言葉が今もリフレインしている。
あの日のレイ様の真剣な顔が思い浮かんできます。
好きだと言われて、嬉しかった。レイ様も同じ気持ちだったと聞いて嬉しかったの。
けれど……
自信が持てなかった。
レイ様は第三王子殿下。選べる立場。
私よりも相応しい方がいるわ。地味で冴えない私よりも相応しい令嬢は他にいるでしょう。
驚愕に開かれた目と絶望に青ざめた表情が頭から離れない。
傷物だと地味で冴えないなどとさんざん言われて、どこにも身の置き場がなくて、自信なんてなくて、どうしたらよかったのかわからない。
レイ様はこんな私のどこがよかったのかしら?
小さく溜息をつくとカップに手を伸ばして紅茶を飲みました。
どんなに考えたところで答えは見いだせない。ただ、レイ様を好きな気持ちは消えてはくれない。時がたてば少しは薄れるかもと思ったのに……思いは募るばかり……
物思いに耽っていると急にテーブルが陰って、薄曇りだった天気が太陽が隠れてにわかに暗くなってきました。
「お嬢様、天気が怪しくなってきましたね。お部屋に移動されていかがでしょうか」
サリーの案じるような声に頷き、自室に帰ってぼんやりと窓の外を見ていると雨が降ってきました。雨粒が葉を揺らして地面を濡らしていきます。
「この雨をレイ様も見ているのかしら?」
窓を滴り落ちる雨の雫を眺めながら、思い出すのはレイ様の事。
同じ空の下でレイ様は今、何をしていらっしゃるかしら。きっとお仕事で忙しくて私のことなど忘れていらっしゃるかもしれないわね。
しとしとと降り続く雨。空を分厚く覆う雨雲。この空模様はまるで私の心のよう。考えるほどに空虚感に苛まれるだけ。
くよくよしても始まらないわ。もっとしっかりしなくては。
気持ちを切り替えるように息を吐いて、机に向かって本を広げたのでした。
大きな溜息が飛び出します。今日は何回目かしら。
邸の研究室。今日の工程を終えて記録誌を閉じました。リッキー様の語学学習を終えた後、まっすぐに帰宅して研究室に直行して、仕事に没頭していました。
そうしなければ考えてしまうから。
「はあ……」
もう何度目かのため息の後
「まあ、大きな溜息ね。どうしたの?」
「お母様」
開いた扉から顔を覗かせていたのはお母様でした。気づかなかったわ。いつからいらっしゃったのかしら。
「休憩は取れそうかしら? 一緒にお茶でもどうかしらと思って、誘いに来たのよ」
「はい。大丈夫です。今日の分は終わりましたし、ちょうどお茶したいなって思っていたところでした」
「よかったわ。テラスでお茶しましょう」
お母様と連れ立って研究室を出ました。
「珍しいですね。こちらまで足を運ぶなんて、サリーに頼んでもよかったのに」
「そうね。たまにはいいでしょう。運動にもなるし、植物に元気ももらえるわ。ここの植物は生き生きしていて癒されるのよ」
「そうなのですか?」
「実はね。時々、ローレンツと一緒にここを散歩しているのよ」
「ええー。そうだったのですか?」
初めて聞きました。
「邪魔するといけないと思って、あなたがいない時にね、こっそりと」
悪戯が見つかった子供のような表情で肩を竦めたお母様。
敷地内に造られた植物園は何種類もの薬草やハーブなどを栽培しています。一年を通して何らかの植物が花を咲かせたり、実をつけていたりと目にも楽しませてくれるので散歩がてら観賞するには最適です。私も癒されている一人です。
お父様と一緒というのが、我が親ながら微笑ましい。本当に仲の良い夫婦です。両親は私の理想の夫婦像。こんな関係が築けたら幸せになるのだろうという見本のような夫婦。だからそんな結婚を夢見ていました。
「フローラ、うちのお店に行ってみない? たまには外で食事をするのはどうかしら?」
紅茶を頂いているとお母様からの素敵な提案に、即座に賛成しました。
「オープンしてから一度も行っていないので、気になってました。すっかりお母様に任せっぱなしにしてしまって、申し訳ありません」
オープン前からいろいろとありすぎて、おまけに風邪で寝込んでしまったせいで、開店の忙しいときに何の役にも立ちませんでした。お母様も看病と開店準備で大変だったと思うわ。本人は何も言わないけれど。
「何を言ってるの。元々わたくしのお店よ。もちろんフローラがいれば心強かったとは思うわ。でも一人に頼ってばかりでは事業は上手くいかないものね。それに優秀なスタッフも揃っていたから、滞りなくオープンできたのよ。だから心配することはないの。今だってうまくいっていて経営も順調なのだから、当日はお客として食事を楽しんでちょうだいね」
「そうですね。そうします」
商品開発には携わりましたが、オープンしてしまえば私にできることはありません。オープン当日の大盛況だったという様子をこの目で見たかったとは思いますが、こればかりはどうしようもないことですものね。
霞がかかったように曖昧に流れる時間。お母様と話をしていても現実味がないように感じて、ぼんやりしてしまいます。笑っている自分は本当の自分なのか、よくわからないまま、日々を過ごしている。時々、胸の奥で泣いている自分がいて、心を痛めながらも、感情をそのまま表に出すことはできなくて。迷子のように出口を探してさまよっているだけ。
一人になったテラスから見える庭には、季節の花々が咲き始めていました。木々の合間から見えるのは雲の多い空。切れ切れに青空が覗いています。
本来なら、今頃はレイ様と……
静かな空間に身を置いていると知らずに頭に浮かんできます。レイ様の笑顔や笑い声。低めの穏やかな声色。抱きしめられた時の温もりも、シトラスの香りも。本当はからかわることもイヤではなかったわ。
ずっと、好きだった。
『結婚してほしい』
その言葉が今もリフレインしている。
あの日のレイ様の真剣な顔が思い浮かんできます。
好きだと言われて、嬉しかった。レイ様も同じ気持ちだったと聞いて嬉しかったの。
けれど……
自信が持てなかった。
レイ様は第三王子殿下。選べる立場。
私よりも相応しい方がいるわ。地味で冴えない私よりも相応しい令嬢は他にいるでしょう。
驚愕に開かれた目と絶望に青ざめた表情が頭から離れない。
傷物だと地味で冴えないなどとさんざん言われて、どこにも身の置き場がなくて、自信なんてなくて、どうしたらよかったのかわからない。
レイ様はこんな私のどこがよかったのかしら?
小さく溜息をつくとカップに手を伸ばして紅茶を飲みました。
どんなに考えたところで答えは見いだせない。ただ、レイ様を好きな気持ちは消えてはくれない。時がたてば少しは薄れるかもと思ったのに……思いは募るばかり……
物思いに耽っていると急にテーブルが陰って、薄曇りだった天気が太陽が隠れてにわかに暗くなってきました。
「お嬢様、天気が怪しくなってきましたね。お部屋に移動されていかがでしょうか」
サリーの案じるような声に頷き、自室に帰ってぼんやりと窓の外を見ていると雨が降ってきました。雨粒が葉を揺らして地面を濡らしていきます。
「この雨をレイ様も見ているのかしら?」
窓を滴り落ちる雨の雫を眺めながら、思い出すのはレイ様の事。
同じ空の下でレイ様は今、何をしていらっしゃるかしら。きっとお仕事で忙しくて私のことなど忘れていらっしゃるかもしれないわね。
しとしとと降り続く雨。空を分厚く覆う雨雲。この空模様はまるで私の心のよう。考えるほどに空虚感に苛まれるだけ。
くよくよしても始まらないわ。もっとしっかりしなくては。
気持ちを切り替えるように息を吐いて、机に向かって本を広げたのでした。
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