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第二部
波乱のあとでⅦ
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レイ様に手を引かれて庭園にやってくると深緑の葉が茂り白い花やピンクの花を咲かせている樹木の下を通っていきました。
「あまり上ばかり見ていると転ぶよ」
今が盛りとばかりに咲き誇る花が綺麗でつい見惚れていました。あまりにも綺麗であちらこちらと目移りしながら眺めている私にクスクス笑って注意するレイ様。
「大丈夫です。ちゃんと足元にも気をつけていますよ」
子供ではないわと口を尖らせて返したのも束の間何かに躓いてしまいました。
「キャッ」
「危ない」
体が傾いでバランスを崩してしまった私をレイ様が抱き留めてくださいました。一大事にならなくて、お互いにホッと胸を撫で下ろします。レイ様の吐息が温かい。
「良かった。でも、注意したそばから転ぶなんてローラはそそっかしいな」
「申し訳ありません」
本当にその通りで何も言えないわ。私ってドジなのね。
しゅんとレイ様の腕の中で萎れていると
「ローラのそんなところも可愛いからね」
スラっと言われた甘い言葉にボッと火が付いたように顔が真っ赤になりました。
「あ、あの……」
可愛いなんて、言われなれない単語にアワアワする私の様子がおかしいのか、レイ様がクスとした笑いが落ちてきました。腕の力を抜いたレイ様の視線が私におりてきます。目が合うと花が綻ぶような笑顔になったレイ様。
「うん。ちょっとあたふたするところも可愛い」
「レイ様。それは……褒められているのでしょうか?」
可愛いと言われるのは嬉しいけれど、なんとなく子供扱いされているような気がしなくもないのですが。
「もちろん。ローラの存在自体が可愛いからね。ちゃんと一人の女性として見ているよ」
「……」
愛おし気な眼差しを向けるレイ様になんと答えればいいのか分からなくて、胸がいっぱいになってレイ様の胸に顔をうずめました。ゆっくりと何度も髪を撫でる手に心が落ち着いていきました。
手をつないで、一歩一歩踏みしめるように歩いていく庭園の中。
何度も散策し見慣れている風景なのに、いつもより輝いて見えるのは、新鮮に目に映るのは何故なのでしょう。
行きついたのは四阿。何度となく休憩やお茶や食事をした場所。
椅子に座ると緊張してドキドキしてきました。隣にいるレイ様の顔がまともに見れなくて、目の前の景色に視線を移して気を紛らわせます。爽やかな川のせせらぎの音。耳を澄ませば鳥の鳴き声も聞こえるわ。空も雲一つない碧空。太陽が木々の間から私達を照らしています。
「ローラ」
膝に置いた手にそっと重ねられた手にドキッと心臓が跳ねました。
「改めて返事を聞かせてほしい」
レイ様の覚悟を決めたような真剣で緊張を含んだ声音。
張り詰めた空気に動悸がして浅い呼吸を繰り返す私に降り注ぐのはレイ様の慈しむような眼差し。一つ、大きく深呼吸して頷きました。
レイ様は席を立ち私の前に跪くと右手を取って私を見つめます。
「フローラ・ブルーバーグ侯爵令嬢。私レイニー・グリセアはあなたのことを愛しています。いついかなる時でもあなたを愛し大切にし一生添い遂げることを誓います。どうか私と結婚してください」
「はい。私もレイニー殿下を愛しています。私も一生殿下のおそばにいることをお誓いいたします」
真摯な態度の中に恋情がこもる瞳に魅せられて、一言、一言嚙みしめるように言葉を紡ぐと胸が高鳴ってじんわりと目頭が熱くなってきました。
右手の甲にキスを落とすと感無量といった体で私を見上げたレイ様の目が潤んでいるように見えます。
触れた手の甲から熱が広がっていき、私を見つめるレイ様の顔が涙で滲んでよく見えなくて霞んでいきました。シトラスの香りと共にふんわりと腕の中に閉じ込められると目に溜まった涙が頬を伝います。
「ローラ。ありがとう。これからもずっと大事にするから覚悟しておいて」
「……はい」
覚悟とは……一瞬考えたもののそれもすぐに掻き消えてしまいました。それは、今までに見たことがなかったレイ様の顔を見てしまったから。
この日のレイ様の幸福に満ちた笑顔を私は一生忘れることはないでしょう。
「あまり上ばかり見ていると転ぶよ」
今が盛りとばかりに咲き誇る花が綺麗でつい見惚れていました。あまりにも綺麗であちらこちらと目移りしながら眺めている私にクスクス笑って注意するレイ様。
「大丈夫です。ちゃんと足元にも気をつけていますよ」
子供ではないわと口を尖らせて返したのも束の間何かに躓いてしまいました。
「キャッ」
「危ない」
体が傾いでバランスを崩してしまった私をレイ様が抱き留めてくださいました。一大事にならなくて、お互いにホッと胸を撫で下ろします。レイ様の吐息が温かい。
「良かった。でも、注意したそばから転ぶなんてローラはそそっかしいな」
「申し訳ありません」
本当にその通りで何も言えないわ。私ってドジなのね。
しゅんとレイ様の腕の中で萎れていると
「ローラのそんなところも可愛いからね」
スラっと言われた甘い言葉にボッと火が付いたように顔が真っ赤になりました。
「あ、あの……」
可愛いなんて、言われなれない単語にアワアワする私の様子がおかしいのか、レイ様がクスとした笑いが落ちてきました。腕の力を抜いたレイ様の視線が私におりてきます。目が合うと花が綻ぶような笑顔になったレイ様。
「うん。ちょっとあたふたするところも可愛い」
「レイ様。それは……褒められているのでしょうか?」
可愛いと言われるのは嬉しいけれど、なんとなく子供扱いされているような気がしなくもないのですが。
「もちろん。ローラの存在自体が可愛いからね。ちゃんと一人の女性として見ているよ」
「……」
愛おし気な眼差しを向けるレイ様になんと答えればいいのか分からなくて、胸がいっぱいになってレイ様の胸に顔をうずめました。ゆっくりと何度も髪を撫でる手に心が落ち着いていきました。
手をつないで、一歩一歩踏みしめるように歩いていく庭園の中。
何度も散策し見慣れている風景なのに、いつもより輝いて見えるのは、新鮮に目に映るのは何故なのでしょう。
行きついたのは四阿。何度となく休憩やお茶や食事をした場所。
椅子に座ると緊張してドキドキしてきました。隣にいるレイ様の顔がまともに見れなくて、目の前の景色に視線を移して気を紛らわせます。爽やかな川のせせらぎの音。耳を澄ませば鳥の鳴き声も聞こえるわ。空も雲一つない碧空。太陽が木々の間から私達を照らしています。
「ローラ」
膝に置いた手にそっと重ねられた手にドキッと心臓が跳ねました。
「改めて返事を聞かせてほしい」
レイ様の覚悟を決めたような真剣で緊張を含んだ声音。
張り詰めた空気に動悸がして浅い呼吸を繰り返す私に降り注ぐのはレイ様の慈しむような眼差し。一つ、大きく深呼吸して頷きました。
レイ様は席を立ち私の前に跪くと右手を取って私を見つめます。
「フローラ・ブルーバーグ侯爵令嬢。私レイニー・グリセアはあなたのことを愛しています。いついかなる時でもあなたを愛し大切にし一生添い遂げることを誓います。どうか私と結婚してください」
「はい。私もレイニー殿下を愛しています。私も一生殿下のおそばにいることをお誓いいたします」
真摯な態度の中に恋情がこもる瞳に魅せられて、一言、一言嚙みしめるように言葉を紡ぐと胸が高鳴ってじんわりと目頭が熱くなってきました。
右手の甲にキスを落とすと感無量といった体で私を見上げたレイ様の目が潤んでいるように見えます。
触れた手の甲から熱が広がっていき、私を見つめるレイ様の顔が涙で滲んでよく見えなくて霞んでいきました。シトラスの香りと共にふんわりと腕の中に閉じ込められると目に溜まった涙が頬を伝います。
「ローラ。ありがとう。これからもずっと大事にするから覚悟しておいて」
「……はい」
覚悟とは……一瞬考えたもののそれもすぐに掻き消えてしまいました。それは、今までに見たことがなかったレイ様の顔を見てしまったから。
この日のレイ様の幸福に満ちた笑顔を私は一生忘れることはないでしょう。
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