13 / 21
ティータイムⅠ
しおりを挟む
とても天気の良い午後。
アイスバーグ家の庭園では専任の庭師が丹精を込めて手入れをした花々が、その美しさを競うように咲き誇っている。
その一角に設えられたガゼボにクリスティア、シフォナードとテレジアがそれぞれ席に座っていた。そのそばでフロレンティーナが紅茶を準備していた。
先日初めてのお茶会を終えたフロレンティーナが、その成果を家族にも披露したいということで今日その場を設けたのだった。クロードは王城での仕事があるために出席できなかった。
茶器を温めティーポットに茶葉を入れて湯を注ぐ。扱いが多少はぎこちないもののきちんと手順は踏んでいるようだ。真剣な表情のフロンティーナの姿に三人は緊張感をもって見つめていた。
「お母さま、お姉さまも。それにお義兄さまで。そんな心配そうに見ないでくださいませ」
三人のハラハラとした視線に気づいたフロレンティーナが心外とばかりに口を尖らせる。
「ふふっ。初めてあなたがお茶を入れるところを見るのですもの。しっかりと目に焼き付けておきたいわ」
クリスティアはさっそく姉バカを発揮している。それにテレジアとシフォナードが同意とばかりに大きく頷いた。
「そういう割にはわたくしが失敗しやしないかハラハラドキドキな様子に見えましたけど。とても、目に焼き付けるとかの態度には見えませんでしたわ」
まだ頼りない小さい子供のように見られているような感じがして、フロレンティーナは少し拗ねてみせると、クスクスとクリスティアが笑った。
(そんなところがかわいいのよ)
「そこは笑うところではないですわ。お姉さま」
「ごめんなさい」
クリスティアから見ると何をしてもフロレンティーナはかわいいので何でも許せるのである。素直に謝られるとフロレンティーナもそれ以上は言えない。姉妹のじゃれあいのようなものなので、すぐに機嫌を直した。
茶葉もいい具合に開き飲み頃のようだ。
フロレンティーナは茶器に紅茶を入れる。その間に侍女たちがシフォンケーキをみんなに配り紅茶も運ばれて準備が整うとフロンティーナも席に着く。
「どうぞ、召し上がってくださいませ」
フロレンティーナが声をかけると、三人はまず紅茶を口にした。ふわっとしたフルーティーな香りが口の中に広がっていく。
「美味しいわ」
テレジアが顔をほころばせる。
「程よい温度、程よい香りに程よい風味。これがとても難しいのよね。すごいわ、ティーナ。とても美味しいわ。短期間で紅茶の淹れ方をマスターするなんて、本当に素晴らしいわ」
クリスティアに手放しで褒められてフロレンティーナは嬉しくなった。お茶会の前に何度も何度も練習して頑張ったのだ。その成果が認められたようで彼女の胸が熱くなる。
頭がよくてすぐに何でもそつなくこなしてしまう才能あるクリスティアと違って、フロレンティーナは努力を必要とするタイプだった。それでも他の令嬢たちに比べればかなり優秀なのだが。優秀すぎる姉のクリスティアがいるせいでそのことには気づいていない。努力が自分の本分だと思っているフロレンティーナは努力を惜しまない頑張り屋なのだった。
紅茶を堪能してみんなはケーキへと手を伸ばす。ふわふわとしたスポンジにホイップクリームが添えられて、ストロベリーソースがかかっている。イチゴの赤い色にミントの葉の緑色がアクセントになっていて華やかさがある。
とろけるような食感とホイップクリームとストロベリーソースが絶妙にマッチしている。
「「「美味しい」」」
三人の言葉が重なる。思わずお互いに顔を見合わせてしまった。そのあとでみんな照れ笑い。三人のこころよい反応を見ていたフロレンティーナは少しだけ胸を張りながら、
「実はこのシフォンケーキはわたくしが作ったものなのです」
とちょっとしたサプライズを披露した。
アイスバーグ家の庭園では専任の庭師が丹精を込めて手入れをした花々が、その美しさを競うように咲き誇っている。
その一角に設えられたガゼボにクリスティア、シフォナードとテレジアがそれぞれ席に座っていた。そのそばでフロレンティーナが紅茶を準備していた。
先日初めてのお茶会を終えたフロレンティーナが、その成果を家族にも披露したいということで今日その場を設けたのだった。クロードは王城での仕事があるために出席できなかった。
茶器を温めティーポットに茶葉を入れて湯を注ぐ。扱いが多少はぎこちないもののきちんと手順は踏んでいるようだ。真剣な表情のフロンティーナの姿に三人は緊張感をもって見つめていた。
「お母さま、お姉さまも。それにお義兄さまで。そんな心配そうに見ないでくださいませ」
三人のハラハラとした視線に気づいたフロレンティーナが心外とばかりに口を尖らせる。
「ふふっ。初めてあなたがお茶を入れるところを見るのですもの。しっかりと目に焼き付けておきたいわ」
クリスティアはさっそく姉バカを発揮している。それにテレジアとシフォナードが同意とばかりに大きく頷いた。
「そういう割にはわたくしが失敗しやしないかハラハラドキドキな様子に見えましたけど。とても、目に焼き付けるとかの態度には見えませんでしたわ」
まだ頼りない小さい子供のように見られているような感じがして、フロレンティーナは少し拗ねてみせると、クスクスとクリスティアが笑った。
(そんなところがかわいいのよ)
「そこは笑うところではないですわ。お姉さま」
「ごめんなさい」
クリスティアから見ると何をしてもフロレンティーナはかわいいので何でも許せるのである。素直に謝られるとフロレンティーナもそれ以上は言えない。姉妹のじゃれあいのようなものなので、すぐに機嫌を直した。
茶葉もいい具合に開き飲み頃のようだ。
フロレンティーナは茶器に紅茶を入れる。その間に侍女たちがシフォンケーキをみんなに配り紅茶も運ばれて準備が整うとフロンティーナも席に着く。
「どうぞ、召し上がってくださいませ」
フロレンティーナが声をかけると、三人はまず紅茶を口にした。ふわっとしたフルーティーな香りが口の中に広がっていく。
「美味しいわ」
テレジアが顔をほころばせる。
「程よい温度、程よい香りに程よい風味。これがとても難しいのよね。すごいわ、ティーナ。とても美味しいわ。短期間で紅茶の淹れ方をマスターするなんて、本当に素晴らしいわ」
クリスティアに手放しで褒められてフロレンティーナは嬉しくなった。お茶会の前に何度も何度も練習して頑張ったのだ。その成果が認められたようで彼女の胸が熱くなる。
頭がよくてすぐに何でもそつなくこなしてしまう才能あるクリスティアと違って、フロレンティーナは努力を必要とするタイプだった。それでも他の令嬢たちに比べればかなり優秀なのだが。優秀すぎる姉のクリスティアがいるせいでそのことには気づいていない。努力が自分の本分だと思っているフロレンティーナは努力を惜しまない頑張り屋なのだった。
紅茶を堪能してみんなはケーキへと手を伸ばす。ふわふわとしたスポンジにホイップクリームが添えられて、ストロベリーソースがかかっている。イチゴの赤い色にミントの葉の緑色がアクセントになっていて華やかさがある。
とろけるような食感とホイップクリームとストロベリーソースが絶妙にマッチしている。
「「「美味しい」」」
三人の言葉が重なる。思わずお互いに顔を見合わせてしまった。そのあとでみんな照れ笑い。三人のこころよい反応を見ていたフロレンティーナは少しだけ胸を張りながら、
「実はこのシフォンケーキはわたくしが作ったものなのです」
とちょっとしたサプライズを披露した。
0
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる