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王家の薔薇園にてⅢ
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「あの時は次のチャンスがあるだろうと思ったから納得はしたけれど」
イングリットは一息入れるようにフルーティーな香りのする紅茶を飲んだ。
「そうよねえ。わたくしも同じ気持ちだったわ」
テレジアも相槌を打つ。
紅茶とともに供されたのはブルーベリーやラズベリーなど幾種類かのベリーがふんだんに使われたケーキだった。とろりとしたベリー系の甘酸っぱいソースが生クリームの甘さを抑えて口当たりがよい。一口二口と美味しいケーキを堪能するとフォークを置いた。
「あれだけ仲が良ければ恋愛感情を持っても不思議ではないと思うわよね」
「わたくしたちの狙いはまさしくそれだったもの」
親友だった二人は自分たちの子供を結婚させたいという願望を持っていた。運よくイングリットに男の子テレジアに女の子、しかも同い年。こんな幸運なことがあるだろうか。
どうせなら小さいうちから顔を会わせていた方が事はうまく運ぶと思い、クリスティアも連れて登城していたのだった。二人は一緒に遊んだり時には肩を並べて勉強をしたりと片時も離れることのないくらい仲良く育った。思惑通り順調に事が進むと思いきや、まさか議会の壁に阻まれるとは思わなかった。
それでも、デビュタントの年頃になればお互い意識するだろうし、恋愛感情も芽生えうまくいくのではと楽観的に考えていた。
ラフェールの言葉を聞くまでは……
『俺の妃は自分で探します』
『……それで、相手は見つかったの?』
『いや、まだですよ。立太子したばかりですからね。これからゆっくりと探します』
『クリスはどうなのかしら?』
『クリスですか? 彼女とは幼馴染で親友なのでそれ以上の感情はありませんよ』
そんなばかな……
ラフェールの言葉に目の前が真っ暗になり眩暈を起こしそうだった。
「まさかね。ラフェールもそうだけど、クリスにも幼馴染以外の気持ちがなかったなんて。わたくしたちのやり方がまずかったのかしら?」
イングリットは首をかしげる。
「幼馴染同士が結ばれることは貴族社会でもあるでしょう? だから間違っていたとは思わないわ」
年ととも恋愛感情が芽生えると思っていたのは自分たちの見た都合の良い夢だったのだろうか。二人の結婚が幻想と消えてしまいイングリットとテレジアはしばらくの間落ち込んでいた。
ラフェールも自分の王太子としての地位や立場を考えて相応しい人を選ぶと言っていたから、そこは安心したけれど。
ただ、いつまでも王太子妃を選ばないラフェールに業を煮やした議会側が半ば強制的に候補者を決めてしまったのは、彼にとっても痛かったに違いない。負の感情を滅多に露さないラフェールが『俺のことを信じられないのか』と怒りを国王である父親にぶつけていたからだった。
そのあとだった。
ラフェールがフロレンティーナに出会ったのは。
「クリスはしょうがないわ。縁がなかったものと諦めるしかなかったけれど。ティーナちゃんはね、ラフェールが選んだ人だもの。叶えてあげたいわ」
「そうね。イングリットにそういってもらえると心強いわ」
王妃や公爵夫人という肩書の前に二人は母親なのだ。子供達には幸せな結婚をしてほしい。これが一番の願いだった。
「それでね、ちょっと相談なんだけれど」
イングリットは周りを見渡しテレジアの隣に座った。
人払いされたガゼボでは二人の会話を聞く者はいない。しかし、念には念を入れて声を潜めて話し出した。
イングリットは一息入れるようにフルーティーな香りのする紅茶を飲んだ。
「そうよねえ。わたくしも同じ気持ちだったわ」
テレジアも相槌を打つ。
紅茶とともに供されたのはブルーベリーやラズベリーなど幾種類かのベリーがふんだんに使われたケーキだった。とろりとしたベリー系の甘酸っぱいソースが生クリームの甘さを抑えて口当たりがよい。一口二口と美味しいケーキを堪能するとフォークを置いた。
「あれだけ仲が良ければ恋愛感情を持っても不思議ではないと思うわよね」
「わたくしたちの狙いはまさしくそれだったもの」
親友だった二人は自分たちの子供を結婚させたいという願望を持っていた。運よくイングリットに男の子テレジアに女の子、しかも同い年。こんな幸運なことがあるだろうか。
どうせなら小さいうちから顔を会わせていた方が事はうまく運ぶと思い、クリスティアも連れて登城していたのだった。二人は一緒に遊んだり時には肩を並べて勉強をしたりと片時も離れることのないくらい仲良く育った。思惑通り順調に事が進むと思いきや、まさか議会の壁に阻まれるとは思わなかった。
それでも、デビュタントの年頃になればお互い意識するだろうし、恋愛感情も芽生えうまくいくのではと楽観的に考えていた。
ラフェールの言葉を聞くまでは……
『俺の妃は自分で探します』
『……それで、相手は見つかったの?』
『いや、まだですよ。立太子したばかりですからね。これからゆっくりと探します』
『クリスはどうなのかしら?』
『クリスですか? 彼女とは幼馴染で親友なのでそれ以上の感情はありませんよ』
そんなばかな……
ラフェールの言葉に目の前が真っ暗になり眩暈を起こしそうだった。
「まさかね。ラフェールもそうだけど、クリスにも幼馴染以外の気持ちがなかったなんて。わたくしたちのやり方がまずかったのかしら?」
イングリットは首をかしげる。
「幼馴染同士が結ばれることは貴族社会でもあるでしょう? だから間違っていたとは思わないわ」
年ととも恋愛感情が芽生えると思っていたのは自分たちの見た都合の良い夢だったのだろうか。二人の結婚が幻想と消えてしまいイングリットとテレジアはしばらくの間落ち込んでいた。
ラフェールも自分の王太子としての地位や立場を考えて相応しい人を選ぶと言っていたから、そこは安心したけれど。
ただ、いつまでも王太子妃を選ばないラフェールに業を煮やした議会側が半ば強制的に候補者を決めてしまったのは、彼にとっても痛かったに違いない。負の感情を滅多に露さないラフェールが『俺のことを信じられないのか』と怒りを国王である父親にぶつけていたからだった。
そのあとだった。
ラフェールがフロレンティーナに出会ったのは。
「クリスはしょうがないわ。縁がなかったものと諦めるしかなかったけれど。ティーナちゃんはね、ラフェールが選んだ人だもの。叶えてあげたいわ」
「そうね。イングリットにそういってもらえると心強いわ」
王妃や公爵夫人という肩書の前に二人は母親なのだ。子供達には幸せな結婚をしてほしい。これが一番の願いだった。
「それでね、ちょっと相談なんだけれど」
イングリットは周りを見渡しテレジアの隣に座った。
人払いされたガゼボでは二人の会話を聞く者はいない。しかし、念には念を入れて声を潜めて話し出した。
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