大人しい村娘の冒険

茜色 一凛

文字の大きさ
4 / 27

二十話 『反撃』

しおりを挟む
 どんなことをされたの、そんな事聞けるわけない。

「マドカっ、私の家から通ったらどう? あなた私のたった一人の親友だし、お母さんと二人で寂しいし、あなたが良ければねっ」

 作り笑顔でもいいから必死に作って話しかける。この子救えるの私しかいないじゃない。

「いいの? ほんとに? 迷惑じゃないの……?」

 私の瞳の奥を子猫のようにつぶらな瞳で探ろうとしてるマドカ。

 そんな心配しなくていいんだよ。かけてあげたい言葉は山ほどあるけどどれが正解かなんて大切な人にかける言葉だからなかなか選べない。

「その話は本当なのか? 許せねーな!」

 横で胡座をかいていたマイはワナワナと顔を強ばらせながら、立ち上がると机をぶっ叩く。

「……私の下半身を触ってたの……」

「あの鬼畜め! 目にもの見せてくれるわ!」

「マイ! 一体何をするつもりなのよ! 私も協力するわ! こんなの許せるわけないじゃない」

 私とマイは一度ハンバーガーショップから出ることにした。そして日が暮れた頃にまたここに透明粉で再び侵入して、マドカの部屋で懲らしめないと。

 開けられた窓から月が見えている。満月だ。外からは虫の音が聞こえている。

 ふいに、まどかの部屋にノックと共にジジイが入ってきた。暗がりの中、月明かりで髭ズラが部屋の壁に写し出された。

 横目で見ると、私の隣でうずくまるマドカは体がこわばり細かく肩を震わす。どんなことが夜中に行われていたのか……。

「網タイツかっ! いつの間にこんなものを」

 布団の中に手を入れモゾモゾと手を動かすじじいの姿が見える。

このハンバーガーショップの周りは夜は誰も通らない。周りに民家がないからだ。もちろん夜は営業してない。

 私とマドカは机の横で座りながらそのハレンチな様子を見ていた。透明粉を振りかけていたので、私達の姿は見えていない。

「うぎゃぁぁぁぁああああ!」

 そんな静寂な部屋の中に突如、大きな奇声が上がる。掛け布団が天井へと舞い上がり、ジジイが手を押えるそんな様子を私は口を抑えて見ていた。

 布団に寝ていたのはマイだ。ランプを灯し、ジジイの顔をキッと睨みつけ、

「ふふっ、かかったわね。こうも簡単にかかるなんて思わなかったわ。私のムチの練習台にしてあげる! あなた。マドカにこんなことしてきたの? 分かっているんでしょうね!」

 マイはジジイを睨みつけ凄んでみせる。黒光りするムチをビシッと床に打ち付けながら、ツカツカとハイヒールの音を響かせ、ジジイの首を締め上げていく。

「お、おいっ、やめろおおおおー! 誘ってきのはマドカの方だ! あんな体つきをしていたら触ってくれと言っているようなもんだろ。だいたい誰のおかげでアップル学園に通えてると思っているんだ? ワシが学費を出しているからだろ。そもそもお前らには関係のないっ」

 なんて傲慢で自分勝手なジジイなんだろう。うちのお母さんとは根本的に違う。家族なら応援するのが当たり前なのに。この人のやってる事って一体何なの?

「ありえないし、人間としてどうなんですか? これじゃあ人間の皮を被った魔物じゃない!」

 私は叫び、肩がけのカバンから銃を取り出すと、ジジイ目掛けて構える。

「やめてください。許せないですけど、そこまでしなくても……」

 マドカがジジイを庇おうとしてくる。こんなことされてるのになんで庇うのよ。あなた悲しくてどうしようもなくて泣いていたじゃないの? もうほっといて欲しいとでもいうのか、私の銃を掴んでくる。

「マドカ! 目を覚まして! あなたがされたことはとても酷いことなの! そんなの家族のするようなことじゃない」

「ちょっと待ってください! 添い寝です。少したまに寝ぼけて私の胸や下半身に手が伸びるだけで……」

 頭に熱い血流が登ってきた。私の中でなにかが切れたんだと思う。

「そんなわけないじゃない。しっかりして」

「それは言い訳よ! あなたの優しさにつけ込んでるの」

 舞はジジイの体を鞭で締め上げると、片方の手でマドカの腕を掴み、私から引き離してくれた。そして早く撃てと目で合図を送る。

 私は銃口をジジイに合わせると引き金を引いた。

 この玉は特別製だよ。なんてったって、あのピンクの髪のお姉さんの粉が入ってるんだから。

 煙玉がジジイに飛んでいく。玉が当たるとポーっとジジイの体つきは全体的に小さくなりムキッとした筋肉が流れ出し、今度は全体に膨らみ始める。

 胸が、心なしか膨らみはじめ、洋服のボタンがパンッと音を立てて飛びちる。さらに腕まくりしていた腕の筋肉も無くなり、まるで女性のようなぷにっとしたものに変化していく。

「きゃああああああああああー」

 ジジイが先程の低い声から、高い声へと変わっていた。

「なにをしたんだ? しかもこの胸の膨らみは……」

 股間を抑えるジジイ。

「まさかっ。ないっ、ないっ、あるべきものが……ないっ」

「あなたには十年、性別が変わる玉を打ったの! こんなとこに大切な友達のマドカを置いとけないし。十年ぐらいその自分自身の女性の身体で反省してください。もう二度とここに来ることもないです。」

「ツグやるじゃん! ジジイっ! 自分の体を思う存分触っとけばいいじゃない! 良かったわね!」

 マイは腰に手を当て、ビシッと人差し指をジジイに向かって指しながらマドカの顔を優しく見ている。

「元に戻してくれえええええー!」

 何か叫んでるけど、私は耳を抑えながら、

「それと、マドカは私の家から通わせることにするわ! 学費は今まで通り払ってあげてね。 そうすればマドカの卒業とともに治す薬をあげるわ」

 この玉もあのピンクの髪のお姉さんから貰った面白い玉。治すには偽たんぽぽをお湯でといたものを飲めばすぐに治るんだけど内緒にしとかないと……。

 そもそもあのお姉さんの特性玉だから、治し方はみんな知らないんだから。

 私とマイはマドカの手をとるとハンバーガーショップのドアを開けて、外に飛び出した。

 月が雲に半分隠れながら頭上に見えている。これで良かったのかな。最前の方法なんて全く分からない。マドカの方を見るといつもよりも穏やかな顔立ちになっているような気がした。

 少し寒かったけど私の気持ちも少し落ち着いてきた。三人で抱き合って安心したら涙が出てきた。最初に泣いたのは私だった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...