大人しい村娘の冒険

茜色 一凛

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マイっ脚を閉じてこっち見なさいよ!

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「私も凄く助かってる。おかげでこの三ヶ月で素材も八個も集まったし。残すところあと二個。後はマイを連れて、他のメンバーも見つけたいし」

 興奮して素材のことを話すけど、気になる。まさか学校でもこんな風に過ごしてないよね?

「マイっ! 脚っ! 脚閉じて!」

 マイにはよくない癖がある。それは座る時に脚を大きく開いて座ること。ミニスカートを履いて学校では過ごすから前から見るとパンツが丸見えになってしまう。他の男子生徒がいる中でそんな風にしてるとしたら恥ずかしずきる。だって、見た目は私なんだから。

 私が学校に行った時に、何言われるか分かったもんじゃない。

 他にはおかしな性癖もある。下手したら生徒を鞭で叩いてそうだし。盗賊団にいたせいで変なことばかり学んできたんだろう。マイは人の話なんて聞くタイプじゃないから何も言わなかったけど今にして後悔してる。

「ごめん、たまには私が学校に行くよ」

「なんでよ。今日は友達と放課後近くの喫茶店でパンケーキ食べる約束してたのよ! お願い。行かせてよ」

「またすぐ冒険に出かけないといけないから、今日だけいい?」

 言い出せない。そろそろマイも冒険を手伝って欲しいと。イライラしてくる。別に学校に行きたいわけじゃないのに。

「しゃーない。今日だけ譲るけど、これだけは守りなさいよ。いい? アタシ、約束だけはキチンとしたいタイプなの知ってる?」

「わかったわよ! あなたの友達とパンケーキ食べてこればいいのね? うちがパン屋なのにパンケーキ食べに行くってどういうことなのよ!」

 うちのパン屋が馬鹿にされているみたいに思えてくる。普段ならそんなこと考えないのに。

 制服に着替えて、カバンを掴むと家を出る。マイと話してたからギリギリの時間になってしまった。急がないといけない。

 ところで、マイの友達って誰だっけ? まあ、学校でマドカに聞けばいいよね。マドカは今日は日直らしい、早めに登校して掃除やその日の授業で使う道具を先生と一緒に準備しているとマイから聞いた。


 三ヶ月ぶりに、学校へと向かうが、久しぶりすぎて学校が正直怖くなっている。学校に行けなくなる、登校拒否になる人達の気持ちが何となく分かったような気がした。

 学校の正門まで来たけど、入りずらくでどうしようか迷う。このまま勇気をもって入るか、それとも今日はマイに頼んで学校に行ってもらい、私は明日学校へ行けばいいのか。明日になればいけるよね……。違う! 明日からマイを連れて素材集め手伝って貰わないと。

 うーん。正直不安すぎる。もしかしたら私の居場所は無いかもしれない。マイは一体どんな風に学校で過ごしてきたんだろう。マドカが側にいてフォローしてくれてるとか言ってたけど、大丈夫なのかな。

 突然、背中をポンっと叩かれた。誰なのと思って振り向くと後ろには、アミがニコニコして手を振って「おはよー!」って挨拶をする。

 私は固まってしまう。アミは三ヶ月前は私を目の敵にしてた。何かと私に嫌がらせをしてきた。そんな子が……。マイ学校で何をしたの?

「おはよう……」

 伏見がちに視線を逸らしながら答える。この人苦手だ。

「どうしたのよ。私とツグミンの仲じゃん。なんか暗いよー。どうした、どうした? 元のツグミに戻ったんかい?」

 何この、馴れ馴れしさ。

「えっ」

「いつものようにハイタッチしてよ!」

 アミはイエーイと言わんばかりに、手を頭上へ伸ばす。

 これってした方が良いのかな? 気持ちが全くついていかないけど。私の知らないとこでマイは何してくれてんのよ。

 それでも一応ハイタッチぐらいしとくか、と思い直し手を挙げてみる。

 アミって友達になれば結構いい子なのかな。こうしてみるといわゆるイケてる子、ノリのいい子なんだと思い直す。

 何で最初あんな嫌がらせをしたのか今でも分からない。

「もう授業始まるからとっとといくよ」
「うん」
「なんかテンション低くない? そうそうお揃いのヘアピン買っといたから、後から渡すね」

「えーーー」

 アミはウインクをすると、私の手を引っ張り教室へと一緒に走る。
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