命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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十四話 『白状しなさい』

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 部屋のテーブルの上には『一枚の紐パン』が置かれている。もちろんこれは俺のディナーではない。その横にはフォークもナイフも置かれていない。食べようがないのだ。違う違う!

 俺は強制的に椅子に座らされ、目の前にはツグミが腕を組んで厳しい表情をしている。俺の真横にはエリカが卓上の照明を手に持って俺の顔にかざして立っている。近いし、熱い!

「そろそろ白状しなさい! 本当のことを言えば事を荒立てないわ! 早く言いなさいよ!」

 エリカはキッと口を噤み、その目は俺を睨みつける。

「ユウキさんはやっぱりそういう人だったんですね。最初から分かってました。掲示板にも書きましたけど、本当に変態だったんですね」

 ツグミは俯くと、右手に持っていた目薬をギュッと押し出して頬に飛ばしてからこっちを見る。

 まじか、ヤッパリ、ツグミお前だったのか? 掲示板に本名で書き込むとか有り得ない。怒りを通り越してコイツには不信感しかない。

「ユウキいいいいー! 何、泣かせてるのよ!」

 エリカにはツグミの涙が純粋な物だと思ったのか、掴みかかってきた。

「ちょっと待てよ! 俺が盗んだって証拠あるのかよ。確かに、俺のポケットには紐パンが入ってたけど、盗んだ証拠がないだろ?」
「そうね。言われてみれば、私達三人でこの部屋に外から入ってきたから、盗む暇なんて無いわね」

 エリカが少なくとも納得してくれている。もう少しだ。

「本当にそうなんですか? 脱衣所に忍び込んで手に入れたんじゃないんです? しかもそれ私が履いてたパンツですよ。」
「ほんとか?」

 エリカの方をむくと、

「そう言えば、ツグちゃん大胆なの履いてるなって思ってたわ! ならヤッパリ盗んだんじゃないの?」

 エリカは目を細めてコイツやったなと言わんばかりに冷めた目で俺を見る。蛍光灯を俺の顔に当てて、テーブルを平手でぶっ叩く。

 バン!

「さぁ! 白状しなさい!」
 
 年下にボロくそ言われて涙目になる俺。一体俺が何をしたと言うのだ。良かれと思った1枚の紐付きの布っキレが大きな物議を引き起こしている。

 その時、ドアが勢いよく開いた。
 目の前に現れたのは、あれっ、めぐにゃん?

「すいません。犯人は私なんです!」

 俺、エリカ、ツグミの三人は顔を見合わせる。

「ええっ? どうして? めぐニャンそんな趣味あったの? ユウキのせいにしとけば丸く収まるんだから、言わなくてもいいのに!」

 つぐみは俺の事ディスりすぎている。

「実はあの後、ドラゴに頼んだんです! 女性物の下着を盗んだら信じてあげるって! 私の事もて遊ぼうとしたから、許せなくなってしまって。そしてドラゴが戻ってきたんですけど、黄ばんでて臭かったから廊下に投げ捨ててきたって。本当にご迷惑お掛けしました!」

 アカン。えらいところに飛び火している。確かに黄ばんではいたが、言わないことがマナーだろうに。

 ポカンと口を開けて天井を仰ぎみるエリカと、ワナワナと顔を真っ赤にするツグミ。

「私は最初からユウキのこと信じてたわ」

 サラッと言うエリカ。

「まー、そういうことだから、疑いも晴れたよな?」

 もうこの話題は辞めにしたい。

「折角知り合ったんだし、私達でパーティ組みましょ! ユウキの疑いも晴れたことだし仲直りしなさい」

 エリカは俺の手とツグミの手を掴むと、無理やり握手させた。つぐは恥ずかしそうにしている。

「ゴメンなさい・・・・・・」
「まあ、いいって、つぐの協力もないとこの先厳しいし」

 でも、言われてみれば職業からすれば、エリカは戦士、俺は魔法使い、ツグは僧侶、めぐニャンは何だったっけ? バランスはとれてる。俺とエリカで敵を倒し怪我したら、つぐが治療すれば、この先の『三の扉』からのダンジョンも上手く攻略出来そうだ。

 ここは協力してもらった方がいい。個人の気持ちやプライドなんて捨てることも時には大事だ。

 つぐから俺とエリカのリアルの状況を聞く予定だったが、めぐニャンもいたので、その日はお菓子パーティーを開き、カラオケ大会をしてお開きとなった。

 ツグミは帰り際に一言。

「ごめんなさい、大事なこと話したかったんですけど、明日、朝早番なので仕事終わり次第駆けつけます。三時には来れるはずです」

 何やら顔色が良くない。嫌な予感がする。

「また、明日ね!」

 エリカはそんなことを気にせず笑顔で答える。

 めぐニャンも私もそろそろと言って帰り、また二日目の二人の夜を迎える。

 エリカはうさぎの柄のパジャマを着て布団に潜り込み、俺も自分のベッドで横になった。





 朝、目を覚ますと、土砂降りだった。今日は三の扉のボスを攻略したかったのだが、部屋の窓を開けると前が全く見えないぐらいの勢いで雨が降っていた。

 雨が上がるまでは無理そうだな。天気までリアルに近い。しかしながら、仕事や学校の部活が忙しい人にとって限られた時間でプレイするのに、ログインして外が雨で何も出来なかったら、不満爆発するだろ? 運営さん、これでいいんだろうか?

 エリカも目を覚ますが、今日はしっかりとパジャマを着ている。少し残念な気持ちになりつつ、ヨーロッパ調の花柄のカップにコーヒーを淹れて上げた。

 エリカは目を擦りながら、コーヒーを啜る。

「美味しわね! 何か入れた?」
「うん。砂糖を一欠片ね」
「それだけ?」

 何やら期待して聞いている様な気がする。

「ミルクも少し入れたかな?」
「他にも何か入れたんじゃないかしら? いつもと味がすこーし違うようだけど。入れたよね?」

 いやいや、俺は初めてあなたに珈琲を淹れました。仕方ないなー。

「エリカへの愛情・・・・・・」

 小声で呟く。こんなクサいセリフリアルでは言えるわけが無いけど。いつも思うのは、ドラマや映画の愛を囁くシーン。こんなものをリアルで本当に囁く男なんているのか?

 エリカは満更でもないようで、こくりと頷く。頬が赤く恥ずかしそうにしてる。

 外見は本当に綺麗だ。





──ドラゴ視点。

 僕は本気で恋をしてしまったらしい。ゲームの10の扉の最終ボスを父にもつ、この僕がよりにもよって敵であるプレイヤーに恋をするなんてあってはならないことだ。でも、でも! しょうがないじゃないか。この気持ちは止められないんだもん。

 あの、豊満なバストとピッグじゃなかった、ヒップは僕の憧れ。まさか何でもやるとは言ったものの、パンツ泥棒は流石にキツかったよ。

 でも、めぐニャンの為ならなんだってやってやるぜ。彼女が喜ぶ顔が見れればそれでいいのさ。それにしてもあの紐パン臭かったな。一度、持ち主の顔を拝んでみたいものだ。

 めぐニャンに会いたいなあー。外は土砂降り。今日は来ないのかな。あーそーだ。エリカとユウキと仲良くなれば、連絡つけてくれてめぐニャンと合わせてくれるかもしれない。

 「よっしゃー! 雨が降っても槍が降ってもあいつらと仲間になってやる! 」

 俺は雨の中をダッシュする。愛のためにドブのような水溜まりにズッコケて三回ほど顔からダイブしても、鼻水を垂らしながらも何とか宿屋にたどり着いた。

 そして全身泥だらけになりながら、ずぶ濡れで雨水を滴らせながら、エリカとユウキが俺の登場を今か今かと盛大に期待して待つであろう扉を勢いよく開けた。

「俺もパーティに入ってやるぞ!」

 高らかに自信満々で叫んだ。

「ドッヒャー! 誰だよ。」
「不審者来たわ! 通報しないと!」
 
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