命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

文字の大きさ
32 / 52

三十一話『ビンタで魔王が飛ぶ』

しおりを挟む
「ドラゴはっきりいってまずい。一度作戦を練った方がいいかもしれない」

 ドラゴは期待して俺の方をつぶらな瞳でみてくる。

「何か良いアイディアあるのか?」
「なんも浮かばない。かなり怒ってたし。そもそもジャンヌがドラゴの事を構いすぎてるのが問題なんじゃないか?」
「末っ子だからかもしれん」

 どことなく嬉しそうに答える。この場合どうしたらいいんだ。遅かれ早かれドラゴも恋をして親から離れることもあるだろうに。

「まあとりあえず行ってみるか。ドラゴの父親にも会いたいし」

 ドラゴの父親──最終ボスがどんな人なのか見てみたい。クリアするための何かきっかけを見つけたい気持ちもあった。

「父は女ったらしなんだ。ほかの女との間に子供がいて、それぞれ扉のボスになってる」

 ドラゴはぽつりぽつり語り始めた。これは運営の悪意だ。

「もしかしてジャンヌの子ってドラゴだけだったりする?」
「ああ」

 やっぱり、だからこそドラゴに対しては目をかけているんだ。どんどんめぐニャンを紹介するのが難しくなってきた。

 こうなったら方法はただ1つメグニャンがジャンヌに好かれればいいんだ。そうすれば全て解決。

「ジャンヌってどんな彼女を連れてきたら喜ぶと思う?」
「それは分からない。でも、娘が欲しかったとか聞いたことはある」

 てことは、上手く行けば何とかなるかもしれない。ジャンヌの性格からいけば息子を大切に思っているなら少しは許して貰えるかもしれない。

「とりあえず行ってみるか。援護はするから」
「ありがとう。めぐー! いくよー!」

 ドラゴは明るいトーンでメグを呼ぶ。階段を降りてエレベーターが見えてきた。
「ここの地下10階がキッチンだから乗った乗った!」
「楽しみにゃんねー!」

 メグニャンはプレゼントを抱えてスキップしながら乗り込む。この子なら上手くいくかもしれない。普通なら彼氏の親に会う時は緊張するもんなんだけどな。

 エレベーターがチーンと音を立てて止まる。

「ところでプレゼントって何もってきた?」
「それはお楽しみだから、まだ言えないわ」

 キラキラと目を輝かせている。めぐニャンにかかってる。ドラゴはキッチンのドアを開けた。

 そこには長机に8人ほどが座って食卓を囲っていた。奥にいる一際禍々しいオーラを纏っているのが恐らくドラゴの父。残り7名はドラゴの腹違いの兄弟なのだろう。

 頼むから揉め事だけは勘弁だ。確実に戦闘になれば死しかないのだから。こんなとこで死にたくは無い。

 ドアを開けると皆テレビを見ながらジャンヌの料理を待っている様だった。和やかな風景。そんなとこに俺たちは軽装でやってきた。最終ボスに彼女の紹介をするためだ。

「ん? ドラゴじゃないか。久々に顔を出したかと思えばプレイヤーなんて連れてきてどういう事だ?」

「食べるために連れてきたんだろう。厨房の位置も忘れたのか?」

「お土産に人間を連れてくるとかドラゴも俺たち兄弟に気をきかせるようになったんだな」

 と、何やら微笑ましい会話を繰り広げている。

 その場に後ろから来たメグニャンは、自分の世界に入っているのだろう。100%招待されたと勘違いしてるのだから、

「本日は招待して頂きありがとうございます。ドラゴの彼女のめぐと申します」

 ぺこりと頭を下げる。8匹のモンスターは目が点になり、

「なに? どーゆうことだ? プレイヤーを彼女にできるのか?」
「そんな話聞いたことないぞ!」
「違うだろ、ドラゴをそそのかして俺たちを倒しにやってきたんじゃないのか?」

 奥に座るドラゴの父親は口を開いた。

「めぐと言ったな? ここに来たということは我らと戦闘するということでいいんじゃな?」

 赤のマントを羽織ったイケメン白髪混じりのドラゴの父は恐ろしいことを言う。

「違います。ドラゴに言われて来たんです。その証拠にこの手紙もあります。あとこれクロワッサン焼いたので良かったらどうぞ」

 バスケットに入ったバターの香りがするクロワッサンをテーブルに置く。

「毒とか入ってないよな?」
「俺たちを皆殺しにしに来たんじゃないのかよ?」
「お前がたべろよ! 毒入ってたらたまらんぞ!」

 メグは心無い言葉に目に涙を浮かべ俯いてしまう。それを見たドラゴは興奮しながら、

「何言ってんだよ。めぐがそんなことするわけ無いだろ。お前らおかしいよ」

 そう言ってテーブルの上のクロワッサンを
手にして、食べる

「凄く美味しい。初めて食べたけど料理も得意なんだ」

 ドラゴは満足気にめぐを見る。ほかのボスたちも慎重にクロワッサンを掴むと口に投げ込む。

 皆頬を両手で抑えながら、

「デリシャスーー!」

 とか、何とか言っちゃってる。
 
 そこへ料理を運んできたジャンヌ。みんなの喜ぶ顔を見て青ざめて手に持つシチューをゴミ箱に投げ込んだ。

「いったいどういうわけなの! 私が料理を作っているのに。なんで人のやつ食べてんのよ!」

 ジャンヌは旦那に飛びかかり、ビンタをお見舞した。魔王は頬に赤い手のひらマークをつけて後ろの食器棚にすごい勢いで飛んで行った。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...