命を救った美女令嬢の家でVRMMOをプレイする。いつか彼女と付き合いたい。

茜色 一凛

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三十話 『彼女を紹介する』

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「ジャンヌさんお願いがあってきました。臭いイカは持ってきてませんので、話だけでも聞いてもらえませんか?」

 ジャンヌは買い物袋を手に提げて、今まさに自宅に帰ろうとしていた。夕飯の買い物に出かけた帰りだ。俺の方を見るなり、

「あの時のイカ男かっ。私はまだ許したわけではありませんよ。ドラゴは変なおなごにハマるしあなたのせいです。この間は泥だらけで帰ってきました。うちの子をどうするつもりなんですか?」

 でも、俺に対して怒っている感じでは無い。むしろ息子を心配する親心が垣間見える。ヤンキーから今度は女に腑抜けになっている情けない姿になっている息子をどうにかして欲しいそんな気持ちが伺えるのだ。

「お言葉ですが、ドラゴは恋をしています。それはヤンキーになり、イキって人様に迷惑をかけることとは全く別物です。前に比べたら幾分もマシになったんじゃないですか?」

 袋を見るとアイスが入っている。余り長居すると溶けてしまいそうだ。

「ドラゴはまだ子供なんです。恋なんて早いのです。余計なことしてくれましたよね」
「恋に子供も大人もありません。恋をする事で人を大切にする事を覚えたり、人間らしい事が出来るようになるんです。ドラゴはモンスターかもしれませんが、そういうことって大切なことなんじゃないんですか?」
「モンスターに恋とか愛とか必要ないんです」

 ジャンヌは冷たい口調で言い切る。袋の中にあるアイスが気になるのかチラチラと袋を見ている。

 ジャンヌは俺と袋に交互に視線を送り分かるよな? といった表情を浮かべる。

「俺はリアルの世界で子供の頃はいつも親や先生の言うことを守って真面目にやってきた。その結果がこれなんだよ! 子供の時に気になっている女子にも声もかけれずに、ただ流されて生きてきた。そんな生き方楽しいと思いますか? モンスターが何年生きるとかそんなのは関係ない。今を大切に出来ないようではその先の未来が幸せとか思えない」

 ポカーンとしてよく分かってもらえてないようだ。ドラゴの母親から何とかこのゲームクリアの糸口を探ろうとしたが土台無理な話だったのかもしれない。

「私そろそろ夕ご飯を作らないと行けませんので帰らせて頂きますね」

 そう言うと踵を返して扉を出し、慌ただしく走っていく。思いの半分も言えてない。

「あー、くそっ、所詮モンスターに何言っても伝わるわけないか!」

 このフロアから諦めて戻ろうとしたその時、扉が少し開いていることに気づいた。慌てて帰ったので閉めるのを忘れていたのだろう。

 俺はこの扉を開けることを躊躇したが、残された時間があとどれくらいあるか分からないから覚悟を決めて扉を開き一歩足を踏み入れた。

 壁には水色の背景でところどころ星や三日月が描かれ、下に続く大理石の螺旋階段が続く。カツーン、カツーンとジャンヌがハイヒールで降りていく音が反響していた。

 俺は音を立てないようにゆっくりと降りていく。この先は恐らく家族の団欒が待っていることだろう。ただ相手は最終ボス。下手したらその家族も何人か待ち構えている可能性が高い。

 攻撃はファイアーボール二段階めが二回使えるかどうか。そもそもボスに魔法が効くとも限らない。だとしたらできる限り戦闘を避けるしかない。

 カチャツ。上の先程の扉が開く音が聞こえ、

「めぐニャン今日は親に紹介するぞ」

 ドラゴの声だ。そして、

「恥ずかしいにゃんよー。私緊張して話せなくなると思うけど大丈夫?」
「任せとけって! 俺の瞳の中にはめぐニャンしか見えてないから、大船に乗ったつもりで任せとけばいいんだよ」
「それなら大丈夫だよね!」

 これはまずいことになった。ドラゴの母親はこの二人の交際を快く思っていない。しかも夜ご飯前で腹が空いていてはイラつきはMAXに駆け上がることこの上なしだろ。まずはあれか1時間ぐらい時間を稼いでジャンヌがおなかいっぱいになった頃を狙うしかない。

 俺はゆっくりとまた上へと階段を登る。

「あれ、ユウキじゃん。なんでここに? あなたもご招待されたの?」
「ご招待? どういう事だ?」

 めぐニャンは一枚の手紙を大事そうに両手に持っている。そこには歓迎めぐにゃん様と汚い字で書かれていた。

「何かドラゴのお母様から招待されたの。是非遊びに来てくださいと」
「ちょい待て、さっき俺はジャンヌと合ったけど、そんなことは、」

 突然、ドラゴが俺の口を両手で塞ぐ、

「めぐニャンちょいと待ってて、ユウキも誘ってたから、全くよー、サプライズ要員だったのにったくよー。参っちゃうぜ!」

 また怪しいことを言いながら、少し下に降りて小声で話かけてきた。

「頼む、今からメグを実家に招待するんだけど上手くいくように援護頼みたい! 正直かなり厳しい。たのむよおおおおおー!」

 ドラゴは頭を大理石の床に擦り付けて、上目遣いで俺を見てくる。

「バカヤロウ! 俺には……そもそもあの手紙ドラゴが書いたんじゃないか? まずいぞ、ジャンヌ怒ってたみたいだし、どうすんだよ!」

 二人で顔をキョドらせながら、ウロウロする。

 上からは明るいメグニャンの声が、

「私今日のためにドラゴのお母様のためにプレゼント用意してきたのー! 喜んで貰えるといいな! ドラゴー、もういい? そっち行くわね!」
 
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