1 / 6
スマッシュ受けて鼻血ブー
しおりを挟む
「私を殺してよ!」
公園でずぶ濡れになりながら、私は叫ぶ。
「もう生きるのが辛いの!」
座り込み、地面を両手で力いっぱい叩き、目の前にいる男に向かって懇願する。
「だとしてもだ。何か方法はあるはずだろ」
彼の言葉は私の耳に入ってこない。私は首を横に振る。
「そんな簡単に諦めていいのか? やれることは……」
彼は物悲しげに目を細めて、私の打ちひしがれた様子を見る。
「やれること……。そ、そうよ。その銃で私を撃ちなさいよ!」
それからどれほどの時が流れたのか。雨音の振る中、彼は拳銃の引き金をそっと引いた。
☆
「ツグミー、大丈夫なの? スマッシュ顔面に受けたのよね?」
私──希咲ツグミは保健室のベッドで休ませてもらっている。
「あたたっ、大丈夫だよ。ほんとに宮内エリカは大袈裟なんだから、部活のバレーボールならちょっとした怪我くらい付き物だし」
「いつも言ってるでしょ。フルネームで呼ばないで」
宮内家は日本屈指の大財閥。そしてこのエリカはお嬢様なのだ。ついついからかいたくてフルネームで呼んでしまう。
「呼びやすいからいいじゃん。私たち親友でしょ?」
「友達のこと親友でしょとか、言わないでくれませんか? 恥ずかしいです。それともうんとか言って欲しいわけ?」
エリカはそう言いながらも嬉しそうだ。
「うん。うん。エリカはお友達だから、今回も保健室まで付き添ってくれたし」
「あなたには参りますね。しょうがありません。何か困ったことがあったら私を頼ってくださって結構ですから」
私は不安だった。鼻の穴にティッシュを詰めながら──今日、体育館で私の憧れのバレー部の先輩──福山サトルを見ていたら、隣でレシーブをしようと腰を落としていたエリカの視線の先もサトルだった……。その後顔面にボールを受けてしまった。
「あのさ……保健室誰もいないし、恋愛相談してもいい?」
エリカはロングヘアを耳にかけながら照れくさそうに話してくる。
「何? 誰かいい人でもいるの? 天下のエリカ様だよ。釣り合う人がいるとは思えないけど、一体誰なのよ!」
──まさかサトルのわけないよね。頼むから……
サトルは小学生の頃から同じ学校だったからよく知ってる。というか、家も近所なので昔からよく遊んだ仲だ。彼は優しくて大人しくて私にピッタリいつか彼と一緒になりたい。
「あのね、言ってもいい? 怒らない?」
「怒るも何も大親友だよ私達。むしろ100%応援するし、いったい誰なのよー」
でも、サトルだけはやめてね。そんな風に思っていたら、
「──福山サトルさんです。私が中学に入った時からずっと目をつけてたんです」
彼女は飛びっきりの笑顔でハニカミながら言い切った。私は心臓が引き裂かれそうになるのを我慢して、なんともないような感じで、
「そう、サトルなの? 意外だね。応援するよ。もう告白したの? むしろサトルなんかでいいの?」
わざと関心なんてない素振りをしながら話す。が、少し早口になっていたのだろう。
鼻を詰めたティッシュが床に飛び出してしまう。それをエリカが拾ってゴミ箱に入れてくれた。
「サトル優しくてかっこいいわね! 近々告白してみようと思うの、エリカは幼なじみって聞いてたから、最初に言っときたかったのです」
「ううん、私、恋愛対象に考えたこともないし、平気だよ。告白頑張ってね。ごめんもう少し寝とこうかな、いつも一緒に帰るけど今日はさき帰ってていいよ……」
エリカはほっと一安心しながら、明日ねと言って保健室を出ていった。
私はひとりボーゼンとしたまま保健室の天井を仰ぎみる。消毒液の匂いが目に染みる。私のサトルが……。
公園でずぶ濡れになりながら、私は叫ぶ。
「もう生きるのが辛いの!」
座り込み、地面を両手で力いっぱい叩き、目の前にいる男に向かって懇願する。
「だとしてもだ。何か方法はあるはずだろ」
彼の言葉は私の耳に入ってこない。私は首を横に振る。
「そんな簡単に諦めていいのか? やれることは……」
彼は物悲しげに目を細めて、私の打ちひしがれた様子を見る。
「やれること……。そ、そうよ。その銃で私を撃ちなさいよ!」
それからどれほどの時が流れたのか。雨音の振る中、彼は拳銃の引き金をそっと引いた。
☆
「ツグミー、大丈夫なの? スマッシュ顔面に受けたのよね?」
私──希咲ツグミは保健室のベッドで休ませてもらっている。
「あたたっ、大丈夫だよ。ほんとに宮内エリカは大袈裟なんだから、部活のバレーボールならちょっとした怪我くらい付き物だし」
「いつも言ってるでしょ。フルネームで呼ばないで」
宮内家は日本屈指の大財閥。そしてこのエリカはお嬢様なのだ。ついついからかいたくてフルネームで呼んでしまう。
「呼びやすいからいいじゃん。私たち親友でしょ?」
「友達のこと親友でしょとか、言わないでくれませんか? 恥ずかしいです。それともうんとか言って欲しいわけ?」
エリカはそう言いながらも嬉しそうだ。
「うん。うん。エリカはお友達だから、今回も保健室まで付き添ってくれたし」
「あなたには参りますね。しょうがありません。何か困ったことがあったら私を頼ってくださって結構ですから」
私は不安だった。鼻の穴にティッシュを詰めながら──今日、体育館で私の憧れのバレー部の先輩──福山サトルを見ていたら、隣でレシーブをしようと腰を落としていたエリカの視線の先もサトルだった……。その後顔面にボールを受けてしまった。
「あのさ……保健室誰もいないし、恋愛相談してもいい?」
エリカはロングヘアを耳にかけながら照れくさそうに話してくる。
「何? 誰かいい人でもいるの? 天下のエリカ様だよ。釣り合う人がいるとは思えないけど、一体誰なのよ!」
──まさかサトルのわけないよね。頼むから……
サトルは小学生の頃から同じ学校だったからよく知ってる。というか、家も近所なので昔からよく遊んだ仲だ。彼は優しくて大人しくて私にピッタリいつか彼と一緒になりたい。
「あのね、言ってもいい? 怒らない?」
「怒るも何も大親友だよ私達。むしろ100%応援するし、いったい誰なのよー」
でも、サトルだけはやめてね。そんな風に思っていたら、
「──福山サトルさんです。私が中学に入った時からずっと目をつけてたんです」
彼女は飛びっきりの笑顔でハニカミながら言い切った。私は心臓が引き裂かれそうになるのを我慢して、なんともないような感じで、
「そう、サトルなの? 意外だね。応援するよ。もう告白したの? むしろサトルなんかでいいの?」
わざと関心なんてない素振りをしながら話す。が、少し早口になっていたのだろう。
鼻を詰めたティッシュが床に飛び出してしまう。それをエリカが拾ってゴミ箱に入れてくれた。
「サトル優しくてかっこいいわね! 近々告白してみようと思うの、エリカは幼なじみって聞いてたから、最初に言っときたかったのです」
「ううん、私、恋愛対象に考えたこともないし、平気だよ。告白頑張ってね。ごめんもう少し寝とこうかな、いつも一緒に帰るけど今日はさき帰ってていいよ……」
エリカはほっと一安心しながら、明日ねと言って保健室を出ていった。
私はひとりボーゼンとしたまま保健室の天井を仰ぎみる。消毒液の匂いが目に染みる。私のサトルが……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる