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私は魔法少女には絶対になりたくありません
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雨がパラパラと降り出し始めた。それは次第に勢いを増してくる。そんな中を私は濡れながら家路を走る。
「あー、もう、なんでよりによってエリカはサトルのことが好きなのよー」
そして足元に落ちていた空き缶を力無く蹴飛ばす。
カンっ。
「ギャン! ウー、ワンワンっ」
まずいっ。犬に当たった。目の前に黒の体の引き締まったシェパードが私を睨みつけている。鼻息荒く怒ってダッシュしてきた。
私は恐怖でその場に立ち尽くしてしまう。
──なんで、どうしよう。逃げれる? だめっ、逃げれない。
口の端から尖った牙が見える。そいつがもう目の前まで迫ってきている。両手で体を抱きしめて、諦めて目をつむりかけた時、空からだろう。シェパードを目掛けて大きな稲妻が落ちた。
『ガシャーン』という凄まじい轟音の後、目を開けるとそこには背中に羽の生えた手の平サイズの小さな三毛猫が現れた。
「助かったー。でもなんなの? 猫? それとも天使?」
小さな猫は空中を旋回しながら片手を突き上げ、ガッツポーズをしている。そして、
「やっほーい。ツグミだよね? あなたは栄えある魔法少女に18歳未満の女子の中から選ばれたんだよ。少しは喜んだらどうなんだい。このステッキを振って新たな世界に行ってみないかい?」
「え、えっ、なんなのー? 猫が喋った? なんで、何でなのよ!」
「猫が喋るのは最近じゃ至極当たり前のことだよ。何言っちゃってんの。そんなことより魔法少女にならない? 君には正義の味方になって悪を滅ぼして欲しいんだ」
「魔法少女? よくテレビとかでやってるあの魔法少女のこと? 小学生の時はテレビで見てたけど、もう中学生だよ。そんなことしてたら恥ずかしいし、ごめん。今そんな余裕ないよ」
猫は私の話を聞くと、フリフリとしっぽを振り、顔色が突然変わる。
「まずい、敵が現れた!」
とか、言い出す。これはあれかな私が無理やり魔法少女にされてその後も延々と苦労するだけなんじゃないの?
そんな簡単に魔法少女になってたまるものですか。大抵何らかの後悔するような最悪な状況が待っているんでしょ。バカバカしい。私は絶対になりません。
「ごめん。急いでるんで。帰ります」
ポカーンと大きく口を開けて呆気に取られる猫を尻目に帰ろうとすると、薄暗い空からでんでん虫の形をした大きな悪魔が降ってきた。黒色で大きさは二メートルぐらいはあるだろう。
でも私は関係ない。そんな事より友達にサトルを譲ろうと思ったけどやっぱり心臓が締め付けられる。それなのに魔法少女? そんなのにいちいち構ってられない。他のなりたい人がなればいいじゃない。
「今日は一体何なのよ。何一ついいことないじゃない。早く帰らないと」
猫は口元を歪ませてこっちを見てるけど、そもそもあの猫がシェパードを打ったんでしょ。でんでん虫くらい何とかできるでしょ。
私は家の玄関を開けて、
「ただいまー! 今日はご飯何? ねえっ、いないのー」
玄関先でママに聞こえるように声を張り上げるが、返事がない。もしかして買い物かな?
どうせ何か惣菜でも買いに出かけたんでしょ。テーブルのカゴのみかんを頬張りながら帰りを待っていた。
みかんの食べすぎは肌が黄色くなるって言われてるけど関係ない。私はみかんが好きなの!
帰ってくるまで、アニメでも見て過ごそう。テレビのリモコンをつけると、
──扇町で、でんでん虫の大きなものが接近しています。人を吸い込みどんどん巨大化している模様です。有識者の近藤さんに話を伺います。
扇町は私の住む町だ。でんでん虫? まさか……。
映像切り替わります。現場から斉藤さんお願いします。
映像に映ったのは先程の黒のでんでん虫だった。しかもさっきよりも大きく膨れ上がっている。それが通る場所はアスファルトも溶かされ見るも無惨な有様となっていた。
「──あ、あれってうちのママ……」
向日葵柄のマイバッグを肩にかけたママが丁度スーパーから出てきたところがテレビに映されていた。
そして、巨大なでんでん虫の口から長い舌が伸びてママの身体に巻き付き、ビュッと音がしたの同時にその口に吸い込まれた。
「い、い、いやああああああーっ!」
私は思わず両手で顔を覆う。
「う、うそっ……。こんな事って……」
テレビは突然の衝撃映像が映されたこともあり、スタジオに戻され、コメンテーターが何やら常識的なことを大袈裟なジェスチャーを交えながらもっともらしく語っていたが、私の耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
──そしてキッチンの椅子に座りながら夜の十二時まで待ってもママは帰ってはこなかった。
「あー、もう、なんでよりによってエリカはサトルのことが好きなのよー」
そして足元に落ちていた空き缶を力無く蹴飛ばす。
カンっ。
「ギャン! ウー、ワンワンっ」
まずいっ。犬に当たった。目の前に黒の体の引き締まったシェパードが私を睨みつけている。鼻息荒く怒ってダッシュしてきた。
私は恐怖でその場に立ち尽くしてしまう。
──なんで、どうしよう。逃げれる? だめっ、逃げれない。
口の端から尖った牙が見える。そいつがもう目の前まで迫ってきている。両手で体を抱きしめて、諦めて目をつむりかけた時、空からだろう。シェパードを目掛けて大きな稲妻が落ちた。
『ガシャーン』という凄まじい轟音の後、目を開けるとそこには背中に羽の生えた手の平サイズの小さな三毛猫が現れた。
「助かったー。でもなんなの? 猫? それとも天使?」
小さな猫は空中を旋回しながら片手を突き上げ、ガッツポーズをしている。そして、
「やっほーい。ツグミだよね? あなたは栄えある魔法少女に18歳未満の女子の中から選ばれたんだよ。少しは喜んだらどうなんだい。このステッキを振って新たな世界に行ってみないかい?」
「え、えっ、なんなのー? 猫が喋った? なんで、何でなのよ!」
「猫が喋るのは最近じゃ至極当たり前のことだよ。何言っちゃってんの。そんなことより魔法少女にならない? 君には正義の味方になって悪を滅ぼして欲しいんだ」
「魔法少女? よくテレビとかでやってるあの魔法少女のこと? 小学生の時はテレビで見てたけど、もう中学生だよ。そんなことしてたら恥ずかしいし、ごめん。今そんな余裕ないよ」
猫は私の話を聞くと、フリフリとしっぽを振り、顔色が突然変わる。
「まずい、敵が現れた!」
とか、言い出す。これはあれかな私が無理やり魔法少女にされてその後も延々と苦労するだけなんじゃないの?
そんな簡単に魔法少女になってたまるものですか。大抵何らかの後悔するような最悪な状況が待っているんでしょ。バカバカしい。私は絶対になりません。
「ごめん。急いでるんで。帰ります」
ポカーンと大きく口を開けて呆気に取られる猫を尻目に帰ろうとすると、薄暗い空からでんでん虫の形をした大きな悪魔が降ってきた。黒色で大きさは二メートルぐらいはあるだろう。
でも私は関係ない。そんな事より友達にサトルを譲ろうと思ったけどやっぱり心臓が締め付けられる。それなのに魔法少女? そんなのにいちいち構ってられない。他のなりたい人がなればいいじゃない。
「今日は一体何なのよ。何一ついいことないじゃない。早く帰らないと」
猫は口元を歪ませてこっちを見てるけど、そもそもあの猫がシェパードを打ったんでしょ。でんでん虫くらい何とかできるでしょ。
私は家の玄関を開けて、
「ただいまー! 今日はご飯何? ねえっ、いないのー」
玄関先でママに聞こえるように声を張り上げるが、返事がない。もしかして買い物かな?
どうせ何か惣菜でも買いに出かけたんでしょ。テーブルのカゴのみかんを頬張りながら帰りを待っていた。
みかんの食べすぎは肌が黄色くなるって言われてるけど関係ない。私はみかんが好きなの!
帰ってくるまで、アニメでも見て過ごそう。テレビのリモコンをつけると、
──扇町で、でんでん虫の大きなものが接近しています。人を吸い込みどんどん巨大化している模様です。有識者の近藤さんに話を伺います。
扇町は私の住む町だ。でんでん虫? まさか……。
映像切り替わります。現場から斉藤さんお願いします。
映像に映ったのは先程の黒のでんでん虫だった。しかもさっきよりも大きく膨れ上がっている。それが通る場所はアスファルトも溶かされ見るも無惨な有様となっていた。
「──あ、あれってうちのママ……」
向日葵柄のマイバッグを肩にかけたママが丁度スーパーから出てきたところがテレビに映されていた。
そして、巨大なでんでん虫の口から長い舌が伸びてママの身体に巻き付き、ビュッと音がしたの同時にその口に吸い込まれた。
「い、い、いやああああああーっ!」
私は思わず両手で顔を覆う。
「う、うそっ……。こんな事って……」
テレビは突然の衝撃映像が映されたこともあり、スタジオに戻され、コメンテーターが何やら常識的なことを大袈裟なジェスチャーを交えながらもっともらしく語っていたが、私の耳にはもう何も聞こえなくなっていた。
──そしてキッチンの椅子に座りながら夜の十二時まで待ってもママは帰ってはこなかった。
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