魔法少女

茜色 一凛

文字の大きさ
3 / 6

報道陣にはスマッシュでもお見舞いしよ

しおりを挟む
 んー。

 何だかおしりと腰が痛い。テーブルから頬っぺを引っ剥がしながら、頭を上げる。

「──ママ、いるの?」

 家は二人暮しで、パパは今はアメリカに仕事の都合で行っているからもう一年位は帰ってこない。     そういう私は一人っ子なので、好きなように両親から甘えさせてもらってきた。

 なんでいないの? 食欲もなくて何も食べずに準備をして学校へと向かった。その道中いつもの待ち合わせの場所でエリカと会う。

「ツグミーっ、昨日テレビ見たわよ。あれってツグミのママじゃ無かった? 違うと思いたいけど、どことなく似てたから……」

 エリカの顔を見ると思わず私は泣き崩れてしまい、彼女の胸に抱きついた。そして顔を上げるとエリカの頬にも涙がつうっと流れ落ちた。


「エ、エリ、エリカっ……実はねっ。まだ戻ってきてないの。昨日買い物に行ったきり戻ってないの」
「そう……。どうするのって言ってもどうしようもないわね。私も父に連絡して捜索してもらえるように頼むから。そうね。今から私達も警察に行きましょ!」

 エリカは行動力抜群だ。私はどちらかというと流されやすく、こんな時は特に思考停止になってる。

 警察官にはすぐに捜索を始めてくれると言われた。決定的な証拠はテレビで放映されたのだから。しかもあのでんでん虫は更に巨大化しながら街を徘徊しているらしい。

 私たちは学校へ向かおうとしたが、

「ツグミ、もしあれだったら今日休んでもいいし、どうする? 一緒に私も休んでもいいわよ。家にいても落ち着かないだろし、でんでん虫探しに行ってもいいし、あなたに任せる!」

 しばらく考えたあと、私は休むことにした。学校に行ってもテレビの衝撃的な映像の話で持ち切りだろうし、私はどんな顔で教室の皆と会えばいいのか分からない。

「私休むことにする。エリカは学校行きなよ!」
「待ってて」

 エリカはスクールバックからスマホを取り出すと学校に電話を入れてくれた。しかも自分も友達だからと言って休んでくれた。

「でんでん虫を見に行くのは辛いだろうから」

 グゥ

 私のお腹がなってしまう。エリカはクスクス笑いながら、

「食べてないんでしょ? いつからなの? もしかして昨日から食べてないんじゃないの? 頭も回らないし体も持たないわよ! そうね。まずは食事に行きましょ!」

 エリカに手を引かれながら喫茶店に入りモーニングを食べた。温かいコーヒーを飲むと次第に心が落ち着いてくる。

 ほんとエリカは親友だよ。マサルがエリカの事気に入ればそれでもいいかもと思ったりもしてくる。エリカは性格がいい。明るくて積極的で勉強も運動も出来る。男子からも人気もあるし、よく不特定多数の男子から告白されているのを見たことがある。

 毎回振ってるみたいだけど、そんな子がそもそもなんで私と友達になってくれているのか分からない。

 喫茶店を出て私の家でゆっくりしようと思ったら、家の周りに人集りが出来ていた。

「希咲さーん。見えますか?」
「お話を伺いたいのです」
「おい! コラ! さっさと出て来いや!」

 私は少し離れた場所で蹲る。エリカはそっと私の肩を後ろから抱き、

「何やってるんですか? 警察呼びますよ! 二度と来ないでくれませんか! 迷惑なんですよ! 人の気持ち考えたことありますか!」

 報道陣に向かって怒鳴り散らしてくれている。私は泣くしかなかった。報道陣が沢山玄関前にいた事より、エリカの言葉に胸を打たれて、泣き出した。

 彼らは私を見ると集まってきた。エリカは両手を広げて行かないようにしてはいるもののたちまち囲まれてしまう。

「やっとみつけたぞー!」
「さっさと出てこいよ! こっちも忙しいんだよ! 今日中に編集終わらせないといけねーんだよ!」

 チラリとエリカの方を見るとどこかに電話している。

「テレビ見ましたか? お母さんは帰ってきてます?」
「今の心境をお聞かせ願えませんか?」

 分からない。何を私が話せばいいのよ……。頼むからほっといて。

 その時、聞き慣れた優しい声がした。

「ツグミン、助けに来たぜ!」

 顔を上げるとサトルの姿が! 私の手を強引に引っ張り走り出す。手に持つバレボールを報道陣目掛けてジャンプしてアタックを繰り出し、見事報道陣の顔面にレシーブを食らわせた。

「行くぞ! ツグの事だと思ったからさ、多分家で泣いてるんじゃないかと思ってきたわけよ! まさに当たりだったな!」

 サトルは小学生の頃と余り変わらない屈託した笑顔で私を見ながら力強く私の手を引く。

 振り向くと、その後をエリカも追ってきた。男性報道陣の背中にキックをお見舞いして、踏みつけて走っている。

 サトルが来てくれた。嬉しいけど、そんな余裕がない。私たちは報道陣が見えなくなるまでとにかくどこへ向かうわけでもなく走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...