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23 街の噂
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発散できない性欲を持て余し、僕は悶々とした夜を過ごさざるをえなかった。
スペースが広いとはいえ、ひとつ屋根の下に美少女が寝ているという状況もそうだが、何よりも新コスチュームが悩ましすぎた。
まず、なんといっても、肌触りがいやらしい。
シルクのように滑らかで、しかも恐ろしく薄手なのだ。
無意識に股間の膨らみに指が触れるだけで快感がスパークし、性器が勃起し始めるありさまだ。
しかも乳首がボデイスーツの穴から飛び出ているせいで、シーツに乳頭が触れて危うく喘ぎそうになる始末。
長年周囲から空気扱いされ続けてきたからだろうか。
僕の関心はともすれば己の肉体に向くところがある。
これもナルシシズムの一種なのだろう。
自慰のオカズはネットのエロ画像などではなく、おおむね自身の痴態をスマホで撮った動画なのだ。
そういう意味では、僕は本物の変態だ。
今回の異世界転生は、そんな僕にとって、災難というより、むしろ福音的な出来事と言っていいかもしれない。
それでも朝方浅い眠りに落ちたらしい。
話し声に目覚めると、すでに起きて身支度を整えているサーシャとラビズが円テーブルを囲んでいた。
「一階に朝食が用意されている。食べたらすぐに戻ってきてくれ。今後の計画を立てる」
僕の首から下に視線が行かないようにしながら、サーシャが言った。
「わ、わかった」
階下に降りると、酒と煙草の臭いの漂う人気のない店内は、まさしく宴の後といった感じの侘しさだった。
僕を見ると、居酒屋兼宿屋の主人がカウンターにパンとスープ、それから干し肉の朝食を用意してくれた。
「おまえさん、けったいな格好してるねえ」
いかがわしいボデイスーツに包まれた僕の躰をしげしげと眺めつつ、呆れたように彼は言った。
「連れのオネエとコスプレ娘も相当なもんだが、あんたが一番ひどい」
「おほめにあずかり、ありがとうございます」
「誰もほめてねーよ。それよりあんたら、何かい? 旅芸人の一座か何かかい?」
「まあ、そんなようなもんです」
「しっかし、あんたらも物好きだねえ。このモンテ・ミュラから先は、魔法大戦の廃墟しか残ってねえぞ。いくら旅芸人つったって、そんな猿芝居、見てくれるのは屍人か魔物ぐれえなものじゃねーか」
「魔物はわかりますが、しかばねびと、って何です?」
「この辺は代々土葬でね。魔法大戦の時に死んだ者たちの墓があちこちにある。そこから、出るんだってさ」
「出るって?」
「鈍い坊主だな。生きた死人だよ。ゾンビとか、アンデッドとかいうやつ」
ゾンビ? アンデッド?
この世界線、元の世界の日本とここまで語彙が共有されているというのも、ある意味すごい。
「貴重な情報、ありがとうございます。参考になりました」
店主の言葉が本当なら、これはヤバいぞ。
朝食を食べ終えるなり、僕は急いで階段を駆け上った。
スペースが広いとはいえ、ひとつ屋根の下に美少女が寝ているという状況もそうだが、何よりも新コスチュームが悩ましすぎた。
まず、なんといっても、肌触りがいやらしい。
シルクのように滑らかで、しかも恐ろしく薄手なのだ。
無意識に股間の膨らみに指が触れるだけで快感がスパークし、性器が勃起し始めるありさまだ。
しかも乳首がボデイスーツの穴から飛び出ているせいで、シーツに乳頭が触れて危うく喘ぎそうになる始末。
長年周囲から空気扱いされ続けてきたからだろうか。
僕の関心はともすれば己の肉体に向くところがある。
これもナルシシズムの一種なのだろう。
自慰のオカズはネットのエロ画像などではなく、おおむね自身の痴態をスマホで撮った動画なのだ。
そういう意味では、僕は本物の変態だ。
今回の異世界転生は、そんな僕にとって、災難というより、むしろ福音的な出来事と言っていいかもしれない。
それでも朝方浅い眠りに落ちたらしい。
話し声に目覚めると、すでに起きて身支度を整えているサーシャとラビズが円テーブルを囲んでいた。
「一階に朝食が用意されている。食べたらすぐに戻ってきてくれ。今後の計画を立てる」
僕の首から下に視線が行かないようにしながら、サーシャが言った。
「わ、わかった」
階下に降りると、酒と煙草の臭いの漂う人気のない店内は、まさしく宴の後といった感じの侘しさだった。
僕を見ると、居酒屋兼宿屋の主人がカウンターにパンとスープ、それから干し肉の朝食を用意してくれた。
「おまえさん、けったいな格好してるねえ」
いかがわしいボデイスーツに包まれた僕の躰をしげしげと眺めつつ、呆れたように彼は言った。
「連れのオネエとコスプレ娘も相当なもんだが、あんたが一番ひどい」
「おほめにあずかり、ありがとうございます」
「誰もほめてねーよ。それよりあんたら、何かい? 旅芸人の一座か何かかい?」
「まあ、そんなようなもんです」
「しっかし、あんたらも物好きだねえ。このモンテ・ミュラから先は、魔法大戦の廃墟しか残ってねえぞ。いくら旅芸人つったって、そんな猿芝居、見てくれるのは屍人か魔物ぐれえなものじゃねーか」
「魔物はわかりますが、しかばねびと、って何です?」
「この辺は代々土葬でね。魔法大戦の時に死んだ者たちの墓があちこちにある。そこから、出るんだってさ」
「出るって?」
「鈍い坊主だな。生きた死人だよ。ゾンビとか、アンデッドとかいうやつ」
ゾンビ? アンデッド?
この世界線、元の世界の日本とここまで語彙が共有されているというのも、ある意味すごい。
「貴重な情報、ありがとうございます。参考になりました」
店主の言葉が本当なら、これはヤバいぞ。
朝食を食べ終えるなり、僕は急いで階段を駆け上った。
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