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5 救いの神
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現れたのは、スーツ姿の若い男性だった。
眼鏡に指をかけ、僕らの様子を一瞥するなり、
「おっと、失礼」
スライドドアを後ろ手に素早く閉めた。
「お、おまえ、どうやって…」
男がわめいた。
僕も驚いていた。
トイレのドアにはスライド式の内鍵があり、僕を中に閉じ込めた時、男がそれをかけたのを目にしていたのだ。
「いや、取り込み中、すまない。実はこのトイレのカギ、ちょっと細工がしてあってね」
悪びれたふうもなくそう言うと、若者は閂をガチャガチャ言わせてみせた。
「緊急事態には、外からも開けられるようにできているんだ」
「きさま、何者だ…」
男の顔から血の気が引いた。
「俺の名は一ノ瀬渉(ワタル)。このビルを管理するとある企業の保安課の者だ。最近、この多機能トイレを悪用する輩が多くてね、失礼ながら、あれで監視させてもらってた」
一ノ瀬と名乗った若者が見上げた先は、天井の角だった。
なるほどそこには、目立たぬよう、小さな防犯カメラらしきものが設置されている。
「ここは都会の真ん中にもかかわらず、エアスポットになってて特に人目がないから、あんたたちみたいな変質者には絶好の隠れ家なんだろうな。でも、そうは問屋が卸さない。すぐにその子を解放しないなら、警察を呼ぶ」
「く、くそ!」
男が若者のほうに僕を突き飛ばし、ドアに向かって駈け出した。
スライドドアを叩きつけるように閉めて男が外に飛び出していくと、若者が気の毒そうに僕を見下ろした。
「大変な目に遭ったね。ほら、立てるかい?」
手を差し伸べられ、僕は改めて自分が全裸で、しかも股を開いたまま床に尻もちをついていることを意識した。
「み、見ないで!」
あわてて股間を両手で隠し、とっさにそう叫んでしまっていた。
股間を覆った手のひらの下で、アレが鬼のように固くなったままであることがわかる。
「ご、ごめん」
と、その瞬間、なぜか若者が顔を赤らめた。
「後ろ向いてるから、まず、服を着なよ」
そして、奇妙に震える声で、そう言った。
これが僕と一ノ瀬渉の出会いである。
この時彼が赤面し、声を震わせた理由は、もう少し後になってから、明らかになるー。
眼鏡に指をかけ、僕らの様子を一瞥するなり、
「おっと、失礼」
スライドドアを後ろ手に素早く閉めた。
「お、おまえ、どうやって…」
男がわめいた。
僕も驚いていた。
トイレのドアにはスライド式の内鍵があり、僕を中に閉じ込めた時、男がそれをかけたのを目にしていたのだ。
「いや、取り込み中、すまない。実はこのトイレのカギ、ちょっと細工がしてあってね」
悪びれたふうもなくそう言うと、若者は閂をガチャガチャ言わせてみせた。
「緊急事態には、外からも開けられるようにできているんだ」
「きさま、何者だ…」
男の顔から血の気が引いた。
「俺の名は一ノ瀬渉(ワタル)。このビルを管理するとある企業の保安課の者だ。最近、この多機能トイレを悪用する輩が多くてね、失礼ながら、あれで監視させてもらってた」
一ノ瀬と名乗った若者が見上げた先は、天井の角だった。
なるほどそこには、目立たぬよう、小さな防犯カメラらしきものが設置されている。
「ここは都会の真ん中にもかかわらず、エアスポットになってて特に人目がないから、あんたたちみたいな変質者には絶好の隠れ家なんだろうな。でも、そうは問屋が卸さない。すぐにその子を解放しないなら、警察を呼ぶ」
「く、くそ!」
男が若者のほうに僕を突き飛ばし、ドアに向かって駈け出した。
スライドドアを叩きつけるように閉めて男が外に飛び出していくと、若者が気の毒そうに僕を見下ろした。
「大変な目に遭ったね。ほら、立てるかい?」
手を差し伸べられ、僕は改めて自分が全裸で、しかも股を開いたまま床に尻もちをついていることを意識した。
「み、見ないで!」
あわてて股間を両手で隠し、とっさにそう叫んでしまっていた。
股間を覆った手のひらの下で、アレが鬼のように固くなったままであることがわかる。
「ご、ごめん」
と、その瞬間、なぜか若者が顔を赤らめた。
「後ろ向いてるから、まず、服を着なよ」
そして、奇妙に震える声で、そう言った。
これが僕と一ノ瀬渉の出会いである。
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