アンドロギュノスは眠れない

ヤミイ

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♠14 バスの中の脅威③

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 ここまで脅迫されては、言われた通りにするしかなさそうだった。

 あの死体がゴブリンであろうと人間であろうと、もはや関係ない。

 私はきっと、知らないうちに何かを殺してしまったのだ。

 握った手を、ゆっくりと上下させる。

「いいぞ」

 少年が、ため息交じりにつぶやいた。

 うっとりと目を閉じ、背もたれに躰を預けている。

 少しずつ、手の動きを速めていく。

 それにつれ、少年の息がだんだんと荒くなる。

 ペニスを握った手が濡れてきた。

 少年の亀頭は、仮性包茎の私の亀頭と違って、見事に剥けている。

 エラの張ったそのフォルムは、すでに成人男性の性器そのものだ。

 今、その眼のないの亀の頭部に開いた口から、透明な液体がにじみ出ていた。

 先走り汁。

 少年が感じている証拠だった。

「うまいな」

 上ずった声で、少年が言い、ちらと横目で私を見た。

 私はうなずいた。

 扱き方は知っている。

 ここ半年、自分に生えてきた男性器で毎日自慰をしているからだ。

「そろそろ、舐めてくれないか」

 腰を突き上げるようにして、少年が言った。

 やはり、来た。

 私はごくりと唾を呑み込んだ。

 手淫だけで済むはずがない。

 なんとなくそんな気がしていたところだったのだ。

 目の前にそそり立つ赤黒い肉の棒は、亀頭をヌルヌルにして、鼻につんとくる異臭を放っている。

 小便をしたばかりなのか、紛れもなくアンモニアの匂いである。

 これを口に含むのか。

 絶望的な気分だった。
 
 途中で吐いたらどうしよう。

 仕方なく、前の座席の背もたれとの間に躰を入れ、床にひざまずき、いやいや少年の股間に顔を近づけていく。

 何か別のことを考えようとした。

 誰か、助けてほしい。

 そう念じた時頭に浮かんだのは、ふだんよく遊んでいる友人たちの顔でも、後見人の番匠谷の顔でもなかった。

 細面の、色白の顔。

 通った鼻筋と切れ長の眼。

 長いストレートヘアに包まれた小顔は、なぜかいつもはかなげだ。

 柚木先生・・・。

 愛おしさがこみ上げてきた。

 これを我慢したら、先生、私と会ってくれますか?

 心の中でそう呼びかけた時だった。

「早くしろよ」

 いらだちの混じった声で少年が言い、私の頭を左手で掴み、ぐいっと股間に押しつけた。

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