アンドロギュノスは眠れない

ヤミイ

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♠23 凌辱クラスメイト③

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「人違い、だよ」

 私は必死でかぶりを振った。

「私、知らないよ、こんなの」

「ごまかせると思う?」

 素子が隣の椅子に座って身を寄せてきた。

「この服もショーパンも同じだし、ほら、そのリュックからはみ出てる野球帽、この写真に写ってるやつじゃん」

「・・・・・・」

 言葉に詰まった。
 
 服なんて着替えるひま、なかったのだ。

 あの現場から逃げ出して、すぐホテルに飛び込んだ。

 そしたらあの痴漢に襲われて・・・。

「男の子のふりしてるけど、これ、どう見ても富樫でしょ。あんたの隠れファンのうちが見間違えると思う?」

 隠れファン?

 こいつ、本気で言ってるのか。

 それとも、単に私をからかっているだけなのか。

「柚木先生には、なんて答えたの・・・?」

 観念して、私は訊いた。

「心配しなくていいよ」

 素子が私の顔をのぞきこみ、にんまり微笑んだ。

 共犯者の笑み、というやつか。

「とりあえず、よくわかんないって言っといた」

「・・・ありがとう」

 うなだれて、私はストローに口をつけた。

 あれほど酸っぱかったヨーグルトシェイクだけど、今は全然味がしない。

「でさ、富樫、今からあたしんちに来ない?」

 私の肩に腕を回して、耳元で素子が囁いた。

「ちょっと、確かめたいことがあるんだよね」

「・・・確かめたい、こと?」

 嫌な予感がした。

 でも、断れないのも、うすうすわかっていた。

「この画像」

 素子が素早くスマホの画面の一部を拡大した。

「富樫ったら、ショーパンのファスナー下ろして、この子たちに何か見せてるよね?」

 私は顔を背けた。
 
 恥辱で耳朶まで熱くなっていた。

「それに、これってさ、さっきネットニュースで流れてた、露出狂の事件と同じ時間、同じ場所だよね」

 素子のネチネチとした口調が、胸に突き刺さる。

 詰んだ。

 私は目を閉じた。

 私の人生は、ここでもう”詰み”だ。

 武藤素子には、これで金輪際、逆らえなくなったということなのだ。
 

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