バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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23 実父、比良坂希京①

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 周りは鬱蒼たる森だった。
 昏い空を背景にして、常夜灯に照らされ、車寄せの向こうに見えるのは、古色蒼然とした和風の建築物だ。
 官能小説家、比良坂希京の邸宅である。
 ヨミの言葉が正しければ、僕の実家ということになる。
「ついてきて」
 先に立って歩くのは、ミニバンを運転してきた女性である。
 野球帽に黒づくめの上下、そして黒いマスクと外見はうかがい知れないが、
「彼女はうちの父の秘書だよ。アヤカっていうんだ。歳は僕らと同じ18歳。近所の高校卒業してから、父の秘書をやっている」
「秘書なんて名前だけ。はっきり使用人って言ったらどう?」
 僕らを従えて前を歩きながら怒った口調でアヤカが言う。
 言われてみればスレンダーながら優雅なラインを描く肢体は、10代後半の少女のものだ。
 ヨミはアヤカの用意したグレーのスウェットの上下の上にハーフコートを羽織っている。
 まだかすかに青臭い匂いが残っている気がするのは、僕の幻臭か。
 双龍邸は、平安時代の貴族の館か古式ゆかしき和風旅館を連想させる平屋建ての建物だった。
 池を設えた庭を囲むように、コの字形の屋敷が建っている。
 そのコの字の縦棒の真ん中に当たるところに、両開きの重々しい門扉があった。
「アヤカです。戻りました」
 インターホンのボタンを押して、アヤカが言った。
 -うむー
 長い沈黙の後、しわがれた声がした。
 ちょっと聞いただけで気が重くなるような、ひどく耳障りな声だった。
 
 
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