117 / 248
116 試練①
しおりを挟む
翌朝ー。
迷いに迷った末、ついに希京の屋敷に電話した。
ヨミか、せめて最悪、アルバイト秘書のアヤカに出てほしいと願ったのだがー。
スマホの向こうから聴こえて来たのは、一番聞きたくない屋敷の主人、希京のしわがれた声だった。
「やはり、きさまか」
しばしの逡巡の後、名を告げると、驚いたふうもなく、希京は言った。
「そろそろ、かかってくるだろうと思っていた」
さすがにカチンときた。
これではまるで、僕がやつの手の中でいいように操られているみたいじゃないか。
が、そこは我慢のしどころだ。
「あなたの提案をのむことにしました。このマンションを売って、あなたやヨミと、同居することにします」
「今頃か。勝手なやつだな。さんざん、渋ってみせておいて」
希京が馬鹿にしたような口調で返してきた。
「それは・・・」
口ごもる僕。
あんたがキモいからだ、とは口が裂けても言えやしない。
その吹き出物だらけの、蟇蛙みたいな顏。
顔じゅうのいぼから一本ずつ生えた奇妙な体毛。
そして、肉襦袢を纏ったような異常なまでの肥満体。
息は腐った魚の臭いがするし、腋臭の臭いが物凄い。
そんなあんたのすべてを、生理的に受けつけられないからだ、とは。
しかし、それを上回るほど僕を突き上げるのは、ヨミに対する思慕の念である。
いや、正確には、性的欲望と言うべきか。
ヨミを抱き、絶頂に導きたい。
あるいはヨミの手で、我を忘れるまで狂いたいー。
その思いで、今の僕は、夜も眠れぬほどなのだ。
「まあ、いいだろう」
気まずい沈黙の後、ようやく希京が言ったので、僕は心底ほっとした。
が。
喜ぶのは、まだ早かったようだ。
僕の安堵の吐息を聞きつけたのか、次の瞬間、意地の悪い口調で、希京が告げたのである。
「ただし、条件がある。今から、あるモノをきさまのもとへ送る。届いたら、それを身につけて、わが家へ向かえ。それが届いた瞬間から我が家に着くまで、一度たりとも”射精”せずにな」
「しゃ、射精?」
嫌な予感がした。
何を言ってるんだ、この変態親父は。
「そうだ。一滴たりとも精を漏らさずうちまで来い。それがきさまを引き取る条件だ。できなければ、この話はなかったものとする。いいな」
そこで、通話は切れた。
僕はスマホの画面を睨んだまま、絶句した。
いくらなんでも、荒唐無稽な条件すぎる。
こんなの、ありえない。
けど、僕にはわかる。
あいつー。
希京は、本気なのだ。
迷いに迷った末、ついに希京の屋敷に電話した。
ヨミか、せめて最悪、アルバイト秘書のアヤカに出てほしいと願ったのだがー。
スマホの向こうから聴こえて来たのは、一番聞きたくない屋敷の主人、希京のしわがれた声だった。
「やはり、きさまか」
しばしの逡巡の後、名を告げると、驚いたふうもなく、希京は言った。
「そろそろ、かかってくるだろうと思っていた」
さすがにカチンときた。
これではまるで、僕がやつの手の中でいいように操られているみたいじゃないか。
が、そこは我慢のしどころだ。
「あなたの提案をのむことにしました。このマンションを売って、あなたやヨミと、同居することにします」
「今頃か。勝手なやつだな。さんざん、渋ってみせておいて」
希京が馬鹿にしたような口調で返してきた。
「それは・・・」
口ごもる僕。
あんたがキモいからだ、とは口が裂けても言えやしない。
その吹き出物だらけの、蟇蛙みたいな顏。
顔じゅうのいぼから一本ずつ生えた奇妙な体毛。
そして、肉襦袢を纏ったような異常なまでの肥満体。
息は腐った魚の臭いがするし、腋臭の臭いが物凄い。
そんなあんたのすべてを、生理的に受けつけられないからだ、とは。
しかし、それを上回るほど僕を突き上げるのは、ヨミに対する思慕の念である。
いや、正確には、性的欲望と言うべきか。
ヨミを抱き、絶頂に導きたい。
あるいはヨミの手で、我を忘れるまで狂いたいー。
その思いで、今の僕は、夜も眠れぬほどなのだ。
「まあ、いいだろう」
気まずい沈黙の後、ようやく希京が言ったので、僕は心底ほっとした。
が。
喜ぶのは、まだ早かったようだ。
僕の安堵の吐息を聞きつけたのか、次の瞬間、意地の悪い口調で、希京が告げたのである。
「ただし、条件がある。今から、あるモノをきさまのもとへ送る。届いたら、それを身につけて、わが家へ向かえ。それが届いた瞬間から我が家に着くまで、一度たりとも”射精”せずにな」
「しゃ、射精?」
嫌な予感がした。
何を言ってるんだ、この変態親父は。
「そうだ。一滴たりとも精を漏らさずうちまで来い。それがきさまを引き取る条件だ。できなければ、この話はなかったものとする。いいな」
そこで、通話は切れた。
僕はスマホの画面を睨んだまま、絶句した。
いくらなんでも、荒唐無稽な条件すぎる。
こんなの、ありえない。
けど、僕にはわかる。
あいつー。
希京は、本気なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる