いじめから助けた後輩を数合わせで部活に入れただけなのに異常に懐いてきてもはや怖いんだが

森 拓也

文字の大きさ
11 / 21

ヤンデレを看病してみた 後編

しおりを挟む
 翌朝――白の部屋


「ケホッ……コホッ……せ、んぱい……」

「おう、来たぞ」


 俺は一度家に帰ってから再び看病に来た

 しかし、目算の通りとでもいうべきか……一日たっても白の容態は一向に回復していない


「今日も来ていただいて……すみません」

「気にするな」

「けほっ……小学生の時に風邪をひいて休んだ時はすぐに治ったんですけど……」

「安心しろ、きっと良くなる……冷却シートを変えるぞ」

「はい……お願いします」


 俺は白の額の冷却シートを取り替える

 あんなに冷えていたシートは熱を吸っていて生温かった


「ん、……冷たくて、気持ちいい……です」

「それはよかった」

「何から何まで、先輩に頼ってばかりですみません」

「こんな時まで何かされる方が迷惑だ」

「でも……」

「でもじゃない、やれる時にやれることをしてくれればいい……だからもし、俺が体調を崩したときは」

「はい!私が必ず元気にしてみせます……!」

「それは頼もしいな、いつでも安心して風邪をひける」

「うふふっ、安心して風邪をひけるって……ふふっ、何ですか、もう……」


 ほんの少し声を出して笑った白は汗で頬が紅潮していてエロ可愛かった


「ストレスや疲労がたまっていたんだろう、この機会に思いっきり休め」

「先輩はどうしてそこまで私に優しくしてくれるんですか?」

「好きだからな」

「私のことをいつ好きになってくれたんですか?」

「いつ……と言われると難しいな、気がついたら白のことが好きになっていて、自然と頭に浮かぶようになっていた」


「私も大体同じです……先輩のことが一日中頭から離れないないです」


 その状態は大体同じというんだろうか……


「正直に伝えたいことがあるんです……先輩、」

「何だ?」

「私は私が本当に先輩のことが好きなのかわからないんです」

「……どういうことだ?」

「初めは私を唯一、暴力から守ってくれた人だから……私だけを向いてくれるように強引に彼女になって、それから恋人らしい事もしました……」


「そうだな」

「でも、この気持ちは好きっていうよりも暴力から守ってくれる先輩に依存しているだけなのかなって思うんです……」

「別に、好きって気持ちと依存って気持ちは両立するんじゃないか?」

「そうだとしても、私が持っているこの感情は先輩が私に向ける感情とは何か違う気がするんです……」

「それを言ったら、俺だって白がいない生活なんて考えられない……依存してんのも好き同士なのも似てると思うが」


「そう……ですね」


 その後も看病は続いたが夜になったので俺は一度家に帰った




 そして――




 ◆◆

 翌朝――自室


「……ん?」


 何者かに超近距離から見つめられ続けているような感覚を肌で感じた俺は目覚めた


「って、白!?」

「すみません先輩、少しでも先輩のお顔を眺めていたくて、早く来すぎてしまいました」

「それはいいが、熱は大丈夫なのか?」

「先輩のおかげでもうすっかり良くなりました!、ですが……」

「何だ?」

「先輩の寝顔に夢中になりすぎて、まだ朝食が用意できていません……」

「何だと?」

「すみません先輩っ、今すぐにお作りしま――」

「病み上がりが無理するな、今日は作らなくていい」

「だ、駄目でしょうか?」

「朝からいきなりいつも通りに動いて、またぶり返したりしたらどうするんだ!!」

「もう、心配していただかなくても大丈夫だとは思いますが……」

「大丈夫でもなければ丈夫でもねぇ……今日は俺が作る」

「ですが、流石に三日続けて先輩に頼り続けるのは」

「出来上がるまでそこのベットで寝ていろ!」


 聞き分けの悪い白の制止を振り切って部屋を出た俺は朝食の準備に取り掛かった




 ◆◆

 ――バン、と豪快に扉を閉めた先輩は朝食を用意すると言って部屋から出ていった


 私がやると言ったのに、病み上がりに任せるわけにはいかないと聞き入れてはくれなかった


「はあっ、……はぁ、はぁ……」


 先輩が部屋から出て行ったことで、いよいよ抑えきれなくなった鼓動が騒ぎ始めて呼吸も一気に荒くなる


 熱い、熱い、……もう、風邪による熱はないはずなのに熱くて熱くて仕方がない


「……はっ、……はぁ、はあっ、はぁ……」


 先輩

 誰よりも優しい人


 先輩

 熱い、熱い、どうすればいいんだろう


 先輩


 幸せすぎて死んでしまいそうだ


「なに……これ、知らない……知らない知らない……!!!」


 私は知らない、未だかつて感じたことのないこの感情にどう向き合えばいいのか

 私は知らない、心臓からあふれ出すこの止めることのできない熱く大きな気持ちを


 口の中が乾いていくのを感じる……


 でも、私の体の一部はそれに反比例して真逆の状態になっていく……


「はぁ、はぁ、……ああ、う、ううぅ、……はあっ、はぁ、」


 胸の中に抱いた衝動と新たに産まれた感情が衝突する――


 そして


 重なり合って

 混ざり合って


 先輩のことを求め続ける


 苦しくて寂しい

 だけど、どこか暖かくて幸せな感情


 これは――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

入学初日に告白してきた美少女には、『好き』がないらしい。~欠けた感情を追い求めて~

true177
恋愛
 怠惰に流されて底辺校に入った龍太郎(りゅうたろう)は、差出人不明の手紙で屋上に呼び出される。  待っていたのは、見違えるような美少女。 『キミのことが好きです!』  これはもらった、と興奮するのもつかの間、彼女の様子が見るからにおかしいことに気付く。テンプレートしか話さないのだ。  荒ぶる少女と、それに付き合う龍太郎。一緒に行動する間にも、龍太郎の疑問は積み重なっていく。  そして、違和感が耐えきれなくなった日。彼女が告げた言葉。 「『好き』って、なんだろう……」  この言葉をきっかけにして、彼女の『好き』を探す旅が始まる……。  ※完結まで毎日連載です。内部では既に完結しています。 ※小説家になろう、ハーメルン、pixivにも同一作品を投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

処理中です...