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耳元で鳴るような、玄関の呼び鈴に目を覚ました。
着の身着のままで眠ってしまった体は、不自然な姿勢を取っていたらしく節々が痛んだ。そして、胃のむかつきと吐き気を感じて口を押さえながら起き上がる。
呼び鈴は何度も鳴った。時計を見ると、午前八時過ぎだった。半日以上眠り続けていたことに、雄高は呆然とした。
しつこく鳴る呼び鈴に答えようと、玄関に向かう。髪もワイシャツもぐちゃぐちゃだ。けれど、それすらどうでもいいように雄高には感じられた。靴もはかずに三和土に立つと、足裏の冷やりとした感覚に意識がいくぶん戻って来る。
「どなたですか……」
言いながらレンズを覗くと、そこには佐野が見えた。日曜の朝からわざわざ乗り込んでくる、その神経を疑う。
「雄高」
ドア越しに佐野の声がした。雄高は目元を引きつらせ、答えた。
「帰れ」
言った途端、胃に痛みが走った。思わず両腕で腹を庇うようにして体を折った。痛みは喉を引きつらせた。まるで神経全体が胃に向かって絞り込まれるような激しい痛みだ。体全体が発熱するように、熱くなる。堅い襟に包まれた首筋に脂汗がにじみ出す。
「雄高、開けてくれ。話を聞いてくれ」
雄高は無理やり顔を上げ、今ひとたび扉の向こうに拒否を示す言葉を発しようとした。 視界が霞んだかと思うと、膝が折れて体のバランスを失った。鈍い音を立てて雄高の体は鉄の扉にぶつかった。佐野が異変に気づいたのか、ひときわ声を高くした。
「どうした雄高、返事をしてくれ」
打ちつけた肩と頭に痛みを覚えたが、それは胃の痛みにすれば軽いものだった。痛みは喉元までせりあがって来る熱い塊をそのまま三和土にぶちまけさせた。
胃液だ。吐いた途端に、喉が焼けるかと思うほどの痛みに襲われる。
「開けてくれ、雄高! お願いだから」
佐野の懇願の声。それいじょう大声を出すなよ。近所迷惑だ。入居するとき、奇異な目でみる住人もいたんだ。そのへんを理解しろよ……。朦朧とする意識に雄高はそのまま身を委ねようとした。
「死ぬ気か? 開けろ!」
死ぬ? 雄高の脳裏を後ろ姿が横切った。馬鹿らしい、こんな事で死ぬわけがないだろう。雄高は口元を歪めた。残りわずかの力を使って雄高はドアノブに手を伸ばした。かち、と音を立て鍵が外された。すぐさま佐野が飛び込んで来た。
「雄高!」
物騒だな、チェーンもかけないで寝ていたのか。雄高は肩を揺すられながら、佐野の顔をぼんやりと見ていた。
佐野が玄関を掃除している。雄高は洗面所から顔を洗って廊下へと出たところだ。吐いてしまうと、胃の痛みは体のだるさを残して嘘のように引けた。佐野がいるあたりには、まだ雄高が吐き戻した胃液の鼻をつくような匂いがかすかに残っている。
部屋に上がった佐野は、雄高に肩を貸すと洗面所まで連れて行った。
「ひどい顔だな。せっかくの男前が」
いつもの調子で言うと、自分はさっさと玄関の掃除へと向かったのだ。
顔を洗うと、頬のそげた顔が鏡に写った。雄高は自分の顔ながら、数日間の変化に戸惑いを覚えた。
水を三和土に流してしまうと、きつい匂いはほどなく消えた。雄高は佐野の後ろ姿をしゃがんで眺めていたが、自然に笑い声が唇からこぼれた。引きつるような笑い声を立てる雄高を佐野は怪訝な表情で見下ろした。雄高は笑わずにはいられなかった。
結局、佐野を部屋に上げてしまった自分の失態を。そして、こんなところで無様な格好をさらしている自分を。
「雄高……」
佐野の手が雄高の肩を掴んだ。体を強く揺すられると、雄高の視界が不意に歪んだ。
「安騎野がアパートの玄関先に倒れていたんだ。今の俺みたいに」
安騎野も同じようにスーツ姿だった。夏の暑い盛りに、安騎野は体力を消耗して倒れたのだ。あのときと、よく似た状況だ。違うのは、安騎野は泣かなかったことだ。感情の抑制にかけては、安騎野のほうが数段上ということか。雄高の頬を涙が滑り落ちた。
「佐野、史彦にどこまで聞いた。俺が安騎野に協力して史彦が襲われるように仕組んだこと? レイプされたくせに、当人の安騎野に溺れていたこと?」
猛暑の夏だった。安騎野と過ごした短い時間を鮮やかなまでに思い出す。汗みずくになりながら、古いアパートで雄高は安騎野を求め続けた。
「倒れて介抱していたときに安騎野から聞かされた。かつての恋人二矢の存在と、史彦がその二矢と生き写しだということを。安騎野と俺は恋人同士なんかじゃなかった!」
強烈な片思い。以前史彦に行った言葉が蘇る。もしもあのとき、安騎野とほんとうの恋人になれたなら、自分は今なにをしていたのだろうか。
「結局、誰もが初めの恋が忘れられないのか? そうやって俺も史彦を苦しめ続けていただけなのか? 安騎野が好きだった。あれくらい焦がれ事なんかない。それまでの自分を全部ぶち壊しても構わないと思えるほど、安騎野にひかれた。どうして一緒に死のうと言われたとき、引き留める史彦を振り切って安騎野についていかなかったんだ……いっそのこと、そうすればよかったんだ。そうしていれば、史彦を傷つけることもなかったのに!」
言い終えた途端に左の頬が鳴った。強くはなかった。けれど、雄高の口をふさぐには充分な衝撃だった。
「自分だけが特別だなんて思うな」
雄高を覆うように壁に両手をつき、険しい視線で見下ろす佐野が言った。
「本当にロマンティストだな、雄高は。誰だって同じだよ。最初の相手を忘れられないなんて、ありふれたエピソードだ。クールなのは振りだけか? いつまでもあんな奴にこだわり続けるなんて、雄高らしくない」
「俺らしいってなんだよ? 俺はこんな奴だ。いつまでも安騎野が忘れられなくて、そのくせ淋しくなるとそれを理由に誰とでも簡単に寝てしまう。あんたが思っているよりも数段いい加減な人間だよ。なんだったら、俺を抱けよ。今ならろくな体力もないから、抵抗もできない、安騎野とは完全に切れたし史彦との関係も修復不能の状態だ。淋しくてしょうがないからな、体が。抱けよ!」
「……抱かない」
壁から手を離し、佐野はそのまま横を向いて唇をかんだ。思わず立ち上がり、佐野の襟元を掴んで詰め寄った。
「なんだよ、昨日はさんざん自分から迫ったくせに。ゲロ吐くような半病人とは寝たくないってのか?」
「メシ食ってる?」
「えっ」
虚を突かれ、雄高は口を半分開けたまま佐野を見つめた。眼鏡の奥の瞳がいつになく優しげに見える。雄高は、ここ数日の自分の行動を思い返した。水分は口にしていた。けれど、まともな食事は取っていなかった。
佐野を掴んでいた指から力が抜けた。顔色を失って雄高は首を横に振った。
「だろうな。酷い顔色だから。お粥ぐらいなら食べられそうか?」
佐野はそのまま突き当たりの扉を開けて、ひとりキッチンへと向かっていった。雄高も佐野の後を追った。
「なんだよ、冷蔵庫にちゃんと食料があるじゃないか。米はどこ? あと、厚い鍋」
雄高が曖昧に指さす方向を佐野は探ると、米と鍋とを捜し当て調理を始めた。
「……時々、何も食べられなくなるんだ。……これが初めてのことじゃない。いいから、もう帰ってくれ」
「原因はストレス? 前にもなったって、あの修学旅行の頃の事か。すごく痩せていたもんな」
佐野はチェックのシャツの袖をまくり、米を研ぐ。流れるような無駄のない一連の動作はとても美しく見えた。図書館で働いていたときと同じだ。佐野は体を動かしているほうが数段好感がもてるタイプではないか。
「安騎野とわかれた後……」
「よほど入れあげていたんだな。あいつ、迎えに来たんじゃないのか? よかったのかよ、一人で帰らせて」
「言って欲しかったのは、十年前だから。機会を逃したんだ……そのまま思い出を美化した。どうしようもないほどの甘さだな」
それに、安騎野の胸の中には今では義妹の葉月が住んでいる。言葉を濁してもわかる。安騎野は義妹と一緒にいたいと思っていることを。
「佐野、おまえも初恋が忘れられないのか?」
ついさっき、廊下で佐野が言った。誰しも忘れられないと。ならば、佐野にも忘れ難い存在があるはずだ。それが聞きたい。雄高は佐野の背中を見つめた。
佐野は答えず、研いだ米を鍋に入れて水加減を調節した。
「少し浸してから炊いた方が美味いんだけど、時間が惜しいな。このまま火にかけるけど、不味くても文句はナシな」
「聞かせろよ、利己的なおまえがどんな恋愛をしてきたか、すごく興味深いから」
雄高はわざとぞんざいにソファに座ると、佐野を顎で促した。佐野は今いちど鍋の様子に目をやってから、雄高の右隣りに腰を下ろした。
「そのへんに俺はひかれたのかな」
雄高は眉根を寄せて佐野を見た。佐野は雄高を横から眺めている。
「奨学金のディスカッションでヘコまされた後、おまえの事が憎くてな。自分よりも優秀なことを目の前で見せつけられて自尊心はズタズタ。いちおう名門高校出身だからな、俺。それですごく腹を立ててた。でも学部も違うから、そんなに会う機会だってなかったはずなのに、雄高を見つけるのは簡単だった」
佐野の言葉に雄高の頬が熱くなる。微妙に話を逸らされている気がして、雄高は苛立った。
「俺のことなんか、どうでもいい。その前の話をしろよ」
「行動範囲が似ていたんだな。図書館で居眠りしてるのもよく見かけた」
佐野は雄高の言葉を無視して学生時代の話を続けた。
「雄高さ、誰にでも愛想がいいくせに、時々とんでもなく冷たい表情をするんだよな。ひとりで居るときには、特に。すごく裏表の激しい奴、みんなおまえの顔のよさに騙されていると余計にひがんだ。……でも目が離せないんだ」
「……」
「でさ、不意に見かけるわけだ。町中でヒコと歩いているとこなんかを」
「おまえ……史彦のこと」
雄高は思わず身を乗り出した。視線を合わせずに佐野が頷く。
「知ってたよ、学生時代から。目立つじゃない、奴。ゲーセンとかパソコンショップとかでも見かけていた。そんでさ、いつになく軽い表情の雄高がいるんだ。大学じゃ、決して見せない顔をして、まるで別人のような雄高とその隣にはこれまた幸せそうな顔して歩いているヒコ。雰囲気ですぐに分かるさ、恋人同士だってな」
鍋の蓋が蒸気で鳴り出した。佐野は一度たちあがり、弱火にするとまた元の位置に座った。雄高は小作りな佐野の顔を見つめた。自分の全く意識していなかった場所に、自分を見つめていた存在があったなんて考えたことがなかった。
「悔しかったな。なにって、言葉にはできないけど。おまえの隣にいられないことが悔しかったのかな。前の大学で手ひどい失恋をして、もう二度と誰も好きになんかならない、そう決めてたのに……たった一年足らずでその信条を反故にさせるほどの奴に会ってさ。でも、そいつには太刀打ち出来そうもないほどの恋人がいるから、端から諦めなきゃならなくて、さっさとしっぽ巻いて留学するくらいが関の山」
「前の大学で恋人?」
佐野はテーブルの上に組んだ手に顎を乗せて鼻で笑った。
「女だよ。三カ月しか続かなかったけどな。高校は共学でも、男子の比率が高くて男子校みたいだったし、勉強ばかりで男女交際なんか考える暇がなかった。大学生になって舞い上がっていたのか、あのときは本さえ読まなかった。今まで読んだどの本よりも、彼女といるほうが楽しくてしょうがなかった」
雄高には想像がつかなかった。仕事や自分のことを大切にする佐野が、なによりも恋を最優先させていたことが。
「でも駄目だったな。熱病みたいなものだったんだ。あっと言う間に熱は下がる。あのときは、まだ子どもだったから恋愛以上に大切なものなんかあるはずがないって思い込んでいた。自分以上にこんなに辛い体験をした奴はいない、って本気で思ったよ。でも……いまは違う。今の俺には仕事がある。生涯を通じて情熱を傾けられる仕事をもっている。仕事は俺を裏切らない。だから、もう恋は優先させない」
「……仕事は裏切らない、だって? 案外つまらないことを言うんだな」
「違うか? 仕事は俺を裏切らない。人が、裏切るんだ」
強い言葉で佐野は口をつぐんだ。そのまま組んだ指をほどくと、体ごと雄高に向き直って真剣な眼差しで雄高を見つめた。
「それを言いに来たんだ。だから、俺は雄高がいくら浮気をしてもいいと思っている。俺とずっと居てくれるなら。最後に俺のところに戻ってさえ来てくれれば」
「お前のことが、少しも好きじゃなくても? そんなのただの都合のいい同居人じゃないか。それでおまえは満足するのか」
「雄高は俺を好きになるよ」
表情を変えずに佐野はぽつりと言った。妙に冷静な佐野に雄高は不気味なものを感じた。
「プライドの高い雄高が、俺にはあけすけな態度に出てくれるからな」
「そんなのが目安になるかよ」
「雄高も、仕事が好きだろう? 心理学の仕事」
不意に佐野は話題を急転回させた。
「アメリカに行かないか? 心理学の本場に。メールが来てるんだ。また向こうに行くことになりそうだ」
渡米して心理学を……。雄高の喉がごくりと動いた。佐野の本職である書誌学の仕事の続き……。その要請が来たのか。
「向こうに行って、もう帰らないつもりだ。だから、雄高……一緒に行かないか」
留学ではなく、向こうでの生活を佐野は宣言してみせた。言い終わってから佐野は首を横に振った。
「いや、来て欲しいんだ」
一瞬、すがるような儚さを佐野の瞳の中に見た。雄高に咄嗟の断りの言葉は浮かばなかった。あまりに佐野が真剣すぎて、感情的な「好き・嫌い」では済まされなような意味合いを含んでいたことに雄高は戸惑った。
ゆっくりと、鍋から米が炊き上がる甘い香りが部屋に漂い始めた。
史彦が一緒に暮らそうと言ったとき、あまりに自然で雄高はすんなりとそれを受け入れる気になれた。なんの決断もいらない。幼いころからのつき合いで、お互いをよく知っている。気を張ることもなく、ただ史彦が愛しいという感情だけが優先した。
けれど、佐野の申し出にはとてつもない決断が必要だ。
いままで安騎野にもお父さんにも言われたことがある台詞だ。けれど、佐野の口から飛び出した同じ台詞には現実的な重さがある。少なくとも、雄高が首を縦に振れば人生が百八十度変わってしまうほどの強さを持っている。
「キスしていいかな……」
我に返って顔をあげると、すぐそばに佐野の鼻先があった。佐野の痛いまでの瞳をまともに見ることができず、雄高は目を逸らし結果拒否する形になった。
「じゃあ……抱きしめさせて。お粥が煮えるまででいいから……」
ぎくしゃくとした動きで、身長も肩幅も雄高よりも小さい佐野が慈しむように雄高を腕のなかに抱いた。いまさら、佐野はスキンシップがまるで下手なことに気づく。以前かわした口づけもお世辞にも上手とは言い難かった。歯がぶつからなかったことが奇跡なくらいの、まるで慣れていない中学生並のキス……。
「ジョシュアは?」
以前写真で見た、佐野の元恋人。黒髪の精悍な顔つきの花婿はブロンドの花嫁を抱いてほほ笑んでいた。
「最初の留学のとき知り合った。ステイ先は大学教授の家だった。そこの娘のステディ。同じ書誌学を学んでいたんだ。ふたりでアレキサンドリア図書館の話をよくした。……結局その娘と結婚したんだけどな」
「キスくらいした? それともプラトニックな恋愛?」
「厳格なクリスチャンの家庭で育ったジョッシュは、男とつきあうことに罪悪感を持っていた。最後に俺に言った言葉は、『僕はゲイじゃない』だったよ」
佐野は雄高をそっと解放した。立ち上がると、キッチンで鍋の蓋を取り炊け具合をみている。出来上がったのか、火を止めると床に脱ぎ捨てていたウインドブレーカーを取り上げ袖を通した。
「じゃあ、食ってから休めよ」
「佐野……」
思わず引き留めそうになった雄高の手が、中途半端な高さで止まった。振り返りその様子を見ると、佐野はかすかに笑った。
「理詰めで恋愛感情をコントロールしようとするけど、成功したためしがない。こればっかりはいつまでたってもレベルアップしないもんなのかな」
じゃあ、と言って佐野は部屋から去って行った。雄高は玄関までも送らず、ソファから動かなかった。
着の身着のままで眠ってしまった体は、不自然な姿勢を取っていたらしく節々が痛んだ。そして、胃のむかつきと吐き気を感じて口を押さえながら起き上がる。
呼び鈴は何度も鳴った。時計を見ると、午前八時過ぎだった。半日以上眠り続けていたことに、雄高は呆然とした。
しつこく鳴る呼び鈴に答えようと、玄関に向かう。髪もワイシャツもぐちゃぐちゃだ。けれど、それすらどうでもいいように雄高には感じられた。靴もはかずに三和土に立つと、足裏の冷やりとした感覚に意識がいくぶん戻って来る。
「どなたですか……」
言いながらレンズを覗くと、そこには佐野が見えた。日曜の朝からわざわざ乗り込んでくる、その神経を疑う。
「雄高」
ドア越しに佐野の声がした。雄高は目元を引きつらせ、答えた。
「帰れ」
言った途端、胃に痛みが走った。思わず両腕で腹を庇うようにして体を折った。痛みは喉を引きつらせた。まるで神経全体が胃に向かって絞り込まれるような激しい痛みだ。体全体が発熱するように、熱くなる。堅い襟に包まれた首筋に脂汗がにじみ出す。
「雄高、開けてくれ。話を聞いてくれ」
雄高は無理やり顔を上げ、今ひとたび扉の向こうに拒否を示す言葉を発しようとした。 視界が霞んだかと思うと、膝が折れて体のバランスを失った。鈍い音を立てて雄高の体は鉄の扉にぶつかった。佐野が異変に気づいたのか、ひときわ声を高くした。
「どうした雄高、返事をしてくれ」
打ちつけた肩と頭に痛みを覚えたが、それは胃の痛みにすれば軽いものだった。痛みは喉元までせりあがって来る熱い塊をそのまま三和土にぶちまけさせた。
胃液だ。吐いた途端に、喉が焼けるかと思うほどの痛みに襲われる。
「開けてくれ、雄高! お願いだから」
佐野の懇願の声。それいじょう大声を出すなよ。近所迷惑だ。入居するとき、奇異な目でみる住人もいたんだ。そのへんを理解しろよ……。朦朧とする意識に雄高はそのまま身を委ねようとした。
「死ぬ気か? 開けろ!」
死ぬ? 雄高の脳裏を後ろ姿が横切った。馬鹿らしい、こんな事で死ぬわけがないだろう。雄高は口元を歪めた。残りわずかの力を使って雄高はドアノブに手を伸ばした。かち、と音を立て鍵が外された。すぐさま佐野が飛び込んで来た。
「雄高!」
物騒だな、チェーンもかけないで寝ていたのか。雄高は肩を揺すられながら、佐野の顔をぼんやりと見ていた。
佐野が玄関を掃除している。雄高は洗面所から顔を洗って廊下へと出たところだ。吐いてしまうと、胃の痛みは体のだるさを残して嘘のように引けた。佐野がいるあたりには、まだ雄高が吐き戻した胃液の鼻をつくような匂いがかすかに残っている。
部屋に上がった佐野は、雄高に肩を貸すと洗面所まで連れて行った。
「ひどい顔だな。せっかくの男前が」
いつもの調子で言うと、自分はさっさと玄関の掃除へと向かったのだ。
顔を洗うと、頬のそげた顔が鏡に写った。雄高は自分の顔ながら、数日間の変化に戸惑いを覚えた。
水を三和土に流してしまうと、きつい匂いはほどなく消えた。雄高は佐野の後ろ姿をしゃがんで眺めていたが、自然に笑い声が唇からこぼれた。引きつるような笑い声を立てる雄高を佐野は怪訝な表情で見下ろした。雄高は笑わずにはいられなかった。
結局、佐野を部屋に上げてしまった自分の失態を。そして、こんなところで無様な格好をさらしている自分を。
「雄高……」
佐野の手が雄高の肩を掴んだ。体を強く揺すられると、雄高の視界が不意に歪んだ。
「安騎野がアパートの玄関先に倒れていたんだ。今の俺みたいに」
安騎野も同じようにスーツ姿だった。夏の暑い盛りに、安騎野は体力を消耗して倒れたのだ。あのときと、よく似た状況だ。違うのは、安騎野は泣かなかったことだ。感情の抑制にかけては、安騎野のほうが数段上ということか。雄高の頬を涙が滑り落ちた。
「佐野、史彦にどこまで聞いた。俺が安騎野に協力して史彦が襲われるように仕組んだこと? レイプされたくせに、当人の安騎野に溺れていたこと?」
猛暑の夏だった。安騎野と過ごした短い時間を鮮やかなまでに思い出す。汗みずくになりながら、古いアパートで雄高は安騎野を求め続けた。
「倒れて介抱していたときに安騎野から聞かされた。かつての恋人二矢の存在と、史彦がその二矢と生き写しだということを。安騎野と俺は恋人同士なんかじゃなかった!」
強烈な片思い。以前史彦に行った言葉が蘇る。もしもあのとき、安騎野とほんとうの恋人になれたなら、自分は今なにをしていたのだろうか。
「結局、誰もが初めの恋が忘れられないのか? そうやって俺も史彦を苦しめ続けていただけなのか? 安騎野が好きだった。あれくらい焦がれ事なんかない。それまでの自分を全部ぶち壊しても構わないと思えるほど、安騎野にひかれた。どうして一緒に死のうと言われたとき、引き留める史彦を振り切って安騎野についていかなかったんだ……いっそのこと、そうすればよかったんだ。そうしていれば、史彦を傷つけることもなかったのに!」
言い終えた途端に左の頬が鳴った。強くはなかった。けれど、雄高の口をふさぐには充分な衝撃だった。
「自分だけが特別だなんて思うな」
雄高を覆うように壁に両手をつき、険しい視線で見下ろす佐野が言った。
「本当にロマンティストだな、雄高は。誰だって同じだよ。最初の相手を忘れられないなんて、ありふれたエピソードだ。クールなのは振りだけか? いつまでもあんな奴にこだわり続けるなんて、雄高らしくない」
「俺らしいってなんだよ? 俺はこんな奴だ。いつまでも安騎野が忘れられなくて、そのくせ淋しくなるとそれを理由に誰とでも簡単に寝てしまう。あんたが思っているよりも数段いい加減な人間だよ。なんだったら、俺を抱けよ。今ならろくな体力もないから、抵抗もできない、安騎野とは完全に切れたし史彦との関係も修復不能の状態だ。淋しくてしょうがないからな、体が。抱けよ!」
「……抱かない」
壁から手を離し、佐野はそのまま横を向いて唇をかんだ。思わず立ち上がり、佐野の襟元を掴んで詰め寄った。
「なんだよ、昨日はさんざん自分から迫ったくせに。ゲロ吐くような半病人とは寝たくないってのか?」
「メシ食ってる?」
「えっ」
虚を突かれ、雄高は口を半分開けたまま佐野を見つめた。眼鏡の奥の瞳がいつになく優しげに見える。雄高は、ここ数日の自分の行動を思い返した。水分は口にしていた。けれど、まともな食事は取っていなかった。
佐野を掴んでいた指から力が抜けた。顔色を失って雄高は首を横に振った。
「だろうな。酷い顔色だから。お粥ぐらいなら食べられそうか?」
佐野はそのまま突き当たりの扉を開けて、ひとりキッチンへと向かっていった。雄高も佐野の後を追った。
「なんだよ、冷蔵庫にちゃんと食料があるじゃないか。米はどこ? あと、厚い鍋」
雄高が曖昧に指さす方向を佐野は探ると、米と鍋とを捜し当て調理を始めた。
「……時々、何も食べられなくなるんだ。……これが初めてのことじゃない。いいから、もう帰ってくれ」
「原因はストレス? 前にもなったって、あの修学旅行の頃の事か。すごく痩せていたもんな」
佐野はチェックのシャツの袖をまくり、米を研ぐ。流れるような無駄のない一連の動作はとても美しく見えた。図書館で働いていたときと同じだ。佐野は体を動かしているほうが数段好感がもてるタイプではないか。
「安騎野とわかれた後……」
「よほど入れあげていたんだな。あいつ、迎えに来たんじゃないのか? よかったのかよ、一人で帰らせて」
「言って欲しかったのは、十年前だから。機会を逃したんだ……そのまま思い出を美化した。どうしようもないほどの甘さだな」
それに、安騎野の胸の中には今では義妹の葉月が住んでいる。言葉を濁してもわかる。安騎野は義妹と一緒にいたいと思っていることを。
「佐野、おまえも初恋が忘れられないのか?」
ついさっき、廊下で佐野が言った。誰しも忘れられないと。ならば、佐野にも忘れ難い存在があるはずだ。それが聞きたい。雄高は佐野の背中を見つめた。
佐野は答えず、研いだ米を鍋に入れて水加減を調節した。
「少し浸してから炊いた方が美味いんだけど、時間が惜しいな。このまま火にかけるけど、不味くても文句はナシな」
「聞かせろよ、利己的なおまえがどんな恋愛をしてきたか、すごく興味深いから」
雄高はわざとぞんざいにソファに座ると、佐野を顎で促した。佐野は今いちど鍋の様子に目をやってから、雄高の右隣りに腰を下ろした。
「そのへんに俺はひかれたのかな」
雄高は眉根を寄せて佐野を見た。佐野は雄高を横から眺めている。
「奨学金のディスカッションでヘコまされた後、おまえの事が憎くてな。自分よりも優秀なことを目の前で見せつけられて自尊心はズタズタ。いちおう名門高校出身だからな、俺。それですごく腹を立ててた。でも学部も違うから、そんなに会う機会だってなかったはずなのに、雄高を見つけるのは簡単だった」
佐野の言葉に雄高の頬が熱くなる。微妙に話を逸らされている気がして、雄高は苛立った。
「俺のことなんか、どうでもいい。その前の話をしろよ」
「行動範囲が似ていたんだな。図書館で居眠りしてるのもよく見かけた」
佐野は雄高の言葉を無視して学生時代の話を続けた。
「雄高さ、誰にでも愛想がいいくせに、時々とんでもなく冷たい表情をするんだよな。ひとりで居るときには、特に。すごく裏表の激しい奴、みんなおまえの顔のよさに騙されていると余計にひがんだ。……でも目が離せないんだ」
「……」
「でさ、不意に見かけるわけだ。町中でヒコと歩いているとこなんかを」
「おまえ……史彦のこと」
雄高は思わず身を乗り出した。視線を合わせずに佐野が頷く。
「知ってたよ、学生時代から。目立つじゃない、奴。ゲーセンとかパソコンショップとかでも見かけていた。そんでさ、いつになく軽い表情の雄高がいるんだ。大学じゃ、決して見せない顔をして、まるで別人のような雄高とその隣にはこれまた幸せそうな顔して歩いているヒコ。雰囲気ですぐに分かるさ、恋人同士だってな」
鍋の蓋が蒸気で鳴り出した。佐野は一度たちあがり、弱火にするとまた元の位置に座った。雄高は小作りな佐野の顔を見つめた。自分の全く意識していなかった場所に、自分を見つめていた存在があったなんて考えたことがなかった。
「悔しかったな。なにって、言葉にはできないけど。おまえの隣にいられないことが悔しかったのかな。前の大学で手ひどい失恋をして、もう二度と誰も好きになんかならない、そう決めてたのに……たった一年足らずでその信条を反故にさせるほどの奴に会ってさ。でも、そいつには太刀打ち出来そうもないほどの恋人がいるから、端から諦めなきゃならなくて、さっさとしっぽ巻いて留学するくらいが関の山」
「前の大学で恋人?」
佐野はテーブルの上に組んだ手に顎を乗せて鼻で笑った。
「女だよ。三カ月しか続かなかったけどな。高校は共学でも、男子の比率が高くて男子校みたいだったし、勉強ばかりで男女交際なんか考える暇がなかった。大学生になって舞い上がっていたのか、あのときは本さえ読まなかった。今まで読んだどの本よりも、彼女といるほうが楽しくてしょうがなかった」
雄高には想像がつかなかった。仕事や自分のことを大切にする佐野が、なによりも恋を最優先させていたことが。
「でも駄目だったな。熱病みたいなものだったんだ。あっと言う間に熱は下がる。あのときは、まだ子どもだったから恋愛以上に大切なものなんかあるはずがないって思い込んでいた。自分以上にこんなに辛い体験をした奴はいない、って本気で思ったよ。でも……いまは違う。今の俺には仕事がある。生涯を通じて情熱を傾けられる仕事をもっている。仕事は俺を裏切らない。だから、もう恋は優先させない」
「……仕事は裏切らない、だって? 案外つまらないことを言うんだな」
「違うか? 仕事は俺を裏切らない。人が、裏切るんだ」
強い言葉で佐野は口をつぐんだ。そのまま組んだ指をほどくと、体ごと雄高に向き直って真剣な眼差しで雄高を見つめた。
「それを言いに来たんだ。だから、俺は雄高がいくら浮気をしてもいいと思っている。俺とずっと居てくれるなら。最後に俺のところに戻ってさえ来てくれれば」
「お前のことが、少しも好きじゃなくても? そんなのただの都合のいい同居人じゃないか。それでおまえは満足するのか」
「雄高は俺を好きになるよ」
表情を変えずに佐野はぽつりと言った。妙に冷静な佐野に雄高は不気味なものを感じた。
「プライドの高い雄高が、俺にはあけすけな態度に出てくれるからな」
「そんなのが目安になるかよ」
「雄高も、仕事が好きだろう? 心理学の仕事」
不意に佐野は話題を急転回させた。
「アメリカに行かないか? 心理学の本場に。メールが来てるんだ。また向こうに行くことになりそうだ」
渡米して心理学を……。雄高の喉がごくりと動いた。佐野の本職である書誌学の仕事の続き……。その要請が来たのか。
「向こうに行って、もう帰らないつもりだ。だから、雄高……一緒に行かないか」
留学ではなく、向こうでの生活を佐野は宣言してみせた。言い終わってから佐野は首を横に振った。
「いや、来て欲しいんだ」
一瞬、すがるような儚さを佐野の瞳の中に見た。雄高に咄嗟の断りの言葉は浮かばなかった。あまりに佐野が真剣すぎて、感情的な「好き・嫌い」では済まされなような意味合いを含んでいたことに雄高は戸惑った。
ゆっくりと、鍋から米が炊き上がる甘い香りが部屋に漂い始めた。
史彦が一緒に暮らそうと言ったとき、あまりに自然で雄高はすんなりとそれを受け入れる気になれた。なんの決断もいらない。幼いころからのつき合いで、お互いをよく知っている。気を張ることもなく、ただ史彦が愛しいという感情だけが優先した。
けれど、佐野の申し出にはとてつもない決断が必要だ。
いままで安騎野にもお父さんにも言われたことがある台詞だ。けれど、佐野の口から飛び出した同じ台詞には現実的な重さがある。少なくとも、雄高が首を縦に振れば人生が百八十度変わってしまうほどの強さを持っている。
「キスしていいかな……」
我に返って顔をあげると、すぐそばに佐野の鼻先があった。佐野の痛いまでの瞳をまともに見ることができず、雄高は目を逸らし結果拒否する形になった。
「じゃあ……抱きしめさせて。お粥が煮えるまででいいから……」
ぎくしゃくとした動きで、身長も肩幅も雄高よりも小さい佐野が慈しむように雄高を腕のなかに抱いた。いまさら、佐野はスキンシップがまるで下手なことに気づく。以前かわした口づけもお世辞にも上手とは言い難かった。歯がぶつからなかったことが奇跡なくらいの、まるで慣れていない中学生並のキス……。
「ジョシュアは?」
以前写真で見た、佐野の元恋人。黒髪の精悍な顔つきの花婿はブロンドの花嫁を抱いてほほ笑んでいた。
「最初の留学のとき知り合った。ステイ先は大学教授の家だった。そこの娘のステディ。同じ書誌学を学んでいたんだ。ふたりでアレキサンドリア図書館の話をよくした。……結局その娘と結婚したんだけどな」
「キスくらいした? それともプラトニックな恋愛?」
「厳格なクリスチャンの家庭で育ったジョッシュは、男とつきあうことに罪悪感を持っていた。最後に俺に言った言葉は、『僕はゲイじゃない』だったよ」
佐野は雄高をそっと解放した。立ち上がると、キッチンで鍋の蓋を取り炊け具合をみている。出来上がったのか、火を止めると床に脱ぎ捨てていたウインドブレーカーを取り上げ袖を通した。
「じゃあ、食ってから休めよ」
「佐野……」
思わず引き留めそうになった雄高の手が、中途半端な高さで止まった。振り返りその様子を見ると、佐野はかすかに笑った。
「理詰めで恋愛感情をコントロールしようとするけど、成功したためしがない。こればっかりはいつまでたってもレベルアップしないもんなのかな」
じゃあ、と言って佐野は部屋から去って行った。雄高は玄関までも送らず、ソファから動かなかった。
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