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第一章 無知な少女の成長記
ルクレツィアのゾンビ生活
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細胞を破壊しまくり再生させる修行の本当の苦しみは、私の想像を超える痛みと長さでした。
「アアアアアア!!」
初めて師匠にミンチにされたとき、「ミンチの時は痛みも一瞬だしこれなら大丈夫!」とか思っていた自分をミンチにして餃子にしてドラゴンにくわせてやりたいです。そう本当の苦しみはその後だったのです…。
「師匠~今日の夕飯は……っ!?…は…ぅ…あ…あぁぁ…ぐっ…ぅぐぁぁぁあああ!!!」
ー痛い…痛い痛い痛い痛い痛い!!!!-
修行が終わり屋敷に帰ってきたとき、ルクレツィアは突然うずくまり苦しみ始めた。荒い息で汗をびっしょりと滲ませ苦しそうに唸っていたが、やがて抑えられないように叫び始めた。
そんな苦しむ弟子をゴルバチョフは何もできず苦しそうに見ていた。
「これが強制的に体を作り替える副作用じゃよ…全身に絶え間ない激痛が襲い掛かる。耐えられず廃人や自殺するものが多いからこそこの方法は忘れ去られたんじゃ。」
全身を返しのついた矢で刺され肉をえぐられるような痛み、脳や心臓など様々な臓器が破裂、ねじ切れているのではないかと思うほどの痛みと熱、自分を食いつくさんとする巨大な怪物からくる恐怖と震え。ルクレツィアは自分でもはわからないまま喉が枯れるほどの叫びをあげのたうち回った。
その後ルクレツィアは意識を失い、気付けば自室のベットで痛みにより意識が戻り朝を迎えた。
コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえルクレツィアの唸り声を聞き、ゴルバチョフが入ってきた。手に持つお盆にはおよそ人の食べ物とは思えないような紫の湯気を発し、泡や謎の具材をのせたものが乗っていた。
幸いルクレツィアはそれを見る余裕はなく、濁った暗い瞳をゴルバチョフに向けた。
「ア”ア”……グッ…ガ…ウウゥゥ」
「ルーク…ほれ朝飯じゃよ。これを食えば少しは痛みもましになるじゃろう。」
ルクレツィアはあれから毎日絶え間なく激痛に襲われ、ミンチになり、また激痛に襲われるという生活を送っていた。痛みにより日常生活もままならず、寝不足とストレス、疲労、栄養不足を補うためにゴルバチョフの作ったもの(食べ物とは言いたくない)を口にし生きていた。
禍々しい紫色のドロドロとした物体をスプーンですくうゴルバチョフに、ルクレツィアは口を開いた。五感は麻痺しているため匂いや味、見た目を気にすることができなかったことが唯一の救いだろう。彼女はベットに仰向きで沈んだ体を起こすことなく、ゴルバチョフの世話を受けていた。そのままどう見ても人が口に入れたらまずそうな物体を口にし、何も言わず全てを胃に収めた。
ゾンビのように唸り、息をするだけでも気管や肺が焼けるような痛みを伴う彼女は、毎朝に口にするこれのお陰で何とか修行を続けていくことになる。
「グッ…ゴホゴホッ!……ぅ…っはぁはぁ…ししょ…ぐっ、はぁはぁ、すみま…せん、また腕を、上げ、ウ”っ…ましたね…。(何入れてんだこれ胃が腐るっ!)」
「いいんじゃよ、可愛い弟子が頑張っておるんじゃからのぅ。これくらい毎日作ってやるわい」
ルクレツィアの食事と呼ぶのもおこがましい物体への皮肉をさらりとかわし、ゴルバチョフは笑顔で緑色の液体を差し出した。体力が回復するという蛍光色の液体は、亜空間から取り出された何故か美しいポットから同じデザインのティーカップに注がれた。先ほどの紫の物体を食べ少しだけ痛みが和らいだルクレツィアは、ベットから起き上がり顔を引きつらせながらも震える指でそれを受け取った。
「し…ししょ、どうして…いつもこの綺麗なカップに…っ!…注ぐんですか?」
ルクレツィアは痛みとこの液体を何といえばいいのか一瞬言葉に詰まり、名前を言わずカップを揺らした。サラサラとした液体が揺れ、そのまま遊ばせゴルバチョフの様子を伺う。朝日を浴び輝く金色の髪と、長いまつ毛に隠されている紫の宝石、真っ白な顔で薄く微笑むその姿はこの世のものとは思えないほど美しい。体調が悪く病的なまでに白い顔や俯き悲しげな微笑が、余計に彼女を人とは思えない神々しい印象を与えていた。
ーあぁぁぁ無理無理無理無理こんなの飲めなぃぃ!しかもなんでグラスじゃなくてカップとポットなんですか!?これじゃあ何度も飲まないといけないし終わりが見えないじゃないですか。さっきは激痛で味どころじゃなかったけど今は死ぬ!!体力が回復したとしても生命力が減る!-
そんなルクレツィアの内心を知ってか知らずか、ゴルバチョフは元気のない弟子を励ますよう明るい声で微笑んで見せた。
「美しいカップで飲んだ方がルークも心休まるかと思ってのぉ。どうじゃ入れたてのアルラウネの汁は」
ーは???ー
「ア…アルラウネって…植物系の女性型の魔物じゃ…」
「そうじゃ、よく勉強しておるのぉ!他にも多くの植物を使って錬成したから効果は抜群じゃよ」
100%善意の目を向けられ、拒めるはずもなくルクレツィアは一気に蛍光ミドリの液体を飲み干した。強烈な青臭ささと苦味とエグミ、ほんのりと鉄と泥の味、直後襲ってくる胃もたれしそうなほどの甘みとミントの数十倍の爽やかな刺激。鼻から抜ける香りは言い表せないほど濃縮された強い花の匂いでむせ返りそうなほど肺を侵食していた。
ーあぁ…早くこの状態を何とかしない胃と味覚が危ないー
そうしてゴルバチョフが注ぐおかわりを虚ろな目で見つめていた。これがゴルバチョフからの精神強化の訓練と知らずに。
ーーーーーーーーーーーー
ゴルバチョフは優しいだけの師匠ではないようです。
次回 題名に騙されるな
「アアアアアア!!」
初めて師匠にミンチにされたとき、「ミンチの時は痛みも一瞬だしこれなら大丈夫!」とか思っていた自分をミンチにして餃子にしてドラゴンにくわせてやりたいです。そう本当の苦しみはその後だったのです…。
「師匠~今日の夕飯は……っ!?…は…ぅ…あ…あぁぁ…ぐっ…ぅぐぁぁぁあああ!!!」
ー痛い…痛い痛い痛い痛い痛い!!!!-
修行が終わり屋敷に帰ってきたとき、ルクレツィアは突然うずくまり苦しみ始めた。荒い息で汗をびっしょりと滲ませ苦しそうに唸っていたが、やがて抑えられないように叫び始めた。
そんな苦しむ弟子をゴルバチョフは何もできず苦しそうに見ていた。
「これが強制的に体を作り替える副作用じゃよ…全身に絶え間ない激痛が襲い掛かる。耐えられず廃人や自殺するものが多いからこそこの方法は忘れ去られたんじゃ。」
全身を返しのついた矢で刺され肉をえぐられるような痛み、脳や心臓など様々な臓器が破裂、ねじ切れているのではないかと思うほどの痛みと熱、自分を食いつくさんとする巨大な怪物からくる恐怖と震え。ルクレツィアは自分でもはわからないまま喉が枯れるほどの叫びをあげのたうち回った。
その後ルクレツィアは意識を失い、気付けば自室のベットで痛みにより意識が戻り朝を迎えた。
コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえルクレツィアの唸り声を聞き、ゴルバチョフが入ってきた。手に持つお盆にはおよそ人の食べ物とは思えないような紫の湯気を発し、泡や謎の具材をのせたものが乗っていた。
幸いルクレツィアはそれを見る余裕はなく、濁った暗い瞳をゴルバチョフに向けた。
「ア”ア”……グッ…ガ…ウウゥゥ」
「ルーク…ほれ朝飯じゃよ。これを食えば少しは痛みもましになるじゃろう。」
ルクレツィアはあれから毎日絶え間なく激痛に襲われ、ミンチになり、また激痛に襲われるという生活を送っていた。痛みにより日常生活もままならず、寝不足とストレス、疲労、栄養不足を補うためにゴルバチョフの作ったもの(食べ物とは言いたくない)を口にし生きていた。
禍々しい紫色のドロドロとした物体をスプーンですくうゴルバチョフに、ルクレツィアは口を開いた。五感は麻痺しているため匂いや味、見た目を気にすることができなかったことが唯一の救いだろう。彼女はベットに仰向きで沈んだ体を起こすことなく、ゴルバチョフの世話を受けていた。そのままどう見ても人が口に入れたらまずそうな物体を口にし、何も言わず全てを胃に収めた。
ゾンビのように唸り、息をするだけでも気管や肺が焼けるような痛みを伴う彼女は、毎朝に口にするこれのお陰で何とか修行を続けていくことになる。
「グッ…ゴホゴホッ!……ぅ…っはぁはぁ…ししょ…ぐっ、はぁはぁ、すみま…せん、また腕を、上げ、ウ”っ…ましたね…。(何入れてんだこれ胃が腐るっ!)」
「いいんじゃよ、可愛い弟子が頑張っておるんじゃからのぅ。これくらい毎日作ってやるわい」
ルクレツィアの食事と呼ぶのもおこがましい物体への皮肉をさらりとかわし、ゴルバチョフは笑顔で緑色の液体を差し出した。体力が回復するという蛍光色の液体は、亜空間から取り出された何故か美しいポットから同じデザインのティーカップに注がれた。先ほどの紫の物体を食べ少しだけ痛みが和らいだルクレツィアは、ベットから起き上がり顔を引きつらせながらも震える指でそれを受け取った。
「し…ししょ、どうして…いつもこの綺麗なカップに…っ!…注ぐんですか?」
ルクレツィアは痛みとこの液体を何といえばいいのか一瞬言葉に詰まり、名前を言わずカップを揺らした。サラサラとした液体が揺れ、そのまま遊ばせゴルバチョフの様子を伺う。朝日を浴び輝く金色の髪と、長いまつ毛に隠されている紫の宝石、真っ白な顔で薄く微笑むその姿はこの世のものとは思えないほど美しい。体調が悪く病的なまでに白い顔や俯き悲しげな微笑が、余計に彼女を人とは思えない神々しい印象を与えていた。
ーあぁぁぁ無理無理無理無理こんなの飲めなぃぃ!しかもなんでグラスじゃなくてカップとポットなんですか!?これじゃあ何度も飲まないといけないし終わりが見えないじゃないですか。さっきは激痛で味どころじゃなかったけど今は死ぬ!!体力が回復したとしても生命力が減る!-
そんなルクレツィアの内心を知ってか知らずか、ゴルバチョフは元気のない弟子を励ますよう明るい声で微笑んで見せた。
「美しいカップで飲んだ方がルークも心休まるかと思ってのぉ。どうじゃ入れたてのアルラウネの汁は」
ーは???ー
「ア…アルラウネって…植物系の女性型の魔物じゃ…」
「そうじゃ、よく勉強しておるのぉ!他にも多くの植物を使って錬成したから効果は抜群じゃよ」
100%善意の目を向けられ、拒めるはずもなくルクレツィアは一気に蛍光ミドリの液体を飲み干した。強烈な青臭ささと苦味とエグミ、ほんのりと鉄と泥の味、直後襲ってくる胃もたれしそうなほどの甘みとミントの数十倍の爽やかな刺激。鼻から抜ける香りは言い表せないほど濃縮された強い花の匂いでむせ返りそうなほど肺を侵食していた。
ーあぁ…早くこの状態を何とかしない胃と味覚が危ないー
そうしてゴルバチョフが注ぐおかわりを虚ろな目で見つめていた。これがゴルバチョフからの精神強化の訓練と知らずに。
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ゴルバチョフは優しいだけの師匠ではないようです。
次回 題名に騙されるな
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