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第一章 無知な少女の成長記
精霊の愛しいあの子
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「ルーシーは無事に師と話し終えることが出来たようです」
「そう、それは良かったわ」
そこが透き通るほどの美しい湖の中に、一人の女性が腰が隠れるほどまで入っていた。透き通るような白い肌、水を浴び日の光を受け輝く髪は何色もの色を持ち、髪と同じ長いまつ毛に隠された瞳も見る角度でその姿を変える。女性はたれ目をさらに緩ませ嬉しそうに振り返る。
その吉報を持ってきたのは烏の濡れ羽色の髪に黒曜石のような瞳、全身を黒いレースと布をふんだんに使ったドレスを着た少年だった。しかし幼い見た目と美しい顔立ちは知らぬものが見れば間違いなく少女というだろう。
そんな二人はひっそりと木々に囲まれた湖にいた。
「ふふ、そんな寂しそうな顔しなくてもあの子はまた遊びに来てくれるわよ」
「別に…寂しいなんて…」
女性は水の中から出ると頭を振り水を全て飛ばした。それと同時に魔法で美しい絹のようであり不思議な輝きを放つ衣を纏った。
「貴方が、というか皆もあんなに楽しそうなのは久しぶりに見たわねエルドレッド」
「そりゃ…やっと戻って来たんですから」
「そうね…でも私はあの方とあの子を一緒に考えはしないわよ?それは今のあの子を否定することになるもの」
咎めるような少しーシーは無事に師と話し終えることが出来たようです」
「そう、それは良かったわ」
そこが透き通るほどの美しい湖の中に、一人の女性が腰が隠れるほどまで入っていた。透き通るような白い肌、水を浴び日の光を受け輝く髪は何色もの色を持ち、髪と同じ長いまつ毛に隠された瞳も見る角度でその姿を変える。女性はたれ目をさらに緩ませ嬉しそうに振り返る。
その吉報を持ってきたのは烏の濡れ羽色の髪に黒曜石のような瞳、全身を黒いレースと布をふんだんに使ったドレスを着た少年だった。しかし幼い見た目と美しい顔立ちは知らぬものが見れば間違いなく少女というだろう。
そんな二人はひっそりと木々に囲まれた湖にいた。
「ふふ、そんな寂しそうな顔しなくてもあの子はまた遊びに来てくれるわよ」
「別に…寂しいなんて…」
女性は水の中から出ると頭を振り水を全て飛ばした。それと同時に魔法で美しい絹のようであり不思議な輝きを放つ衣を纏った。
「貴方が、というか皆もあんなに楽しそうなのは久しぶりに見たわねエルドレッド」
「そりゃ…やっと戻って来たんですから」
「そうね…でも私はあの方とあの子を一緒に考えはしないわよ?それは今のあの子を否定することになるもの」
咎めるように強まった語気にエルドレッドと呼ばれた少年は息をのんだ。乾く口を唾液で潤すとすぐに口を開く。
「もちろん皆そのつもりです。ルーシーはルーシーであると、彼女と過ごす中で皆その認識で暮らし確認しました」
「そう、ならいいのよ。ごめんなさいね、ついあの子のことになると平静になれなくて…」
「いえ、気になさらないでください。皆ルーシーを大切に、家族だと思っておりますゆえクロエ様のお気持ちは理解しております」
「ありがとうエルドレッド」
「ありがたきお言葉恐悦至極に存じます。精霊女王クロエ様」
そういって闇に消えたエルドレッドを一瞥し、精霊女王は一人だけとなった湖を眺める。精霊や妖精が住む【精霊界】とルーシー達人間が住む【人間界】の進む時間は異なる。クロエは一年近く前に出会った頃のルクレツィアを思い出していた。
「お初にお目にかかる精霊女王。私はゴルバ「よい、して我らの【愛し子】の話を聞こう」はっ。」
そういってゴルバチョフからルクレツィアを預かることに決めたのは、人の時間で彼女がここに来る数か月前だった。
精霊たちが泣きはらした顔で眠るルクレツィアを連れてきた時、心が真っ黒に染まった。事前にゴルバチョフからルクレツィアの心の状態を聞き、涙の理由を知らなければその元凶を殺すだけでは飽き足らず大地震の一つや二つ起こしていただろう。それくらい【愛し子】というものは精霊にとって特別で大切なのだ。
私は悲しむ原因を探るため彼女の記憶を覗き、それを封じた。精霊は自然そのものであるが、上位であればあるほど自我を持ち感情を人のことを良く理解している。私はゴルバチョフから聞いたこの子の年齢とそれに見合わない精神負担に眉を顰めずにはいられなかった。
ゴルバチョフの身勝手な過去は私も知っていた。そして知っていて放置したのも同罪だろう。苦しむルクレツィアを見ていられず記憶を消し、本来の子供に戻した。
良い夢を見られるよう子守唄を歌っていると愛しいあの子が目を覚ました。記憶を消したあの子がどんな性格か知りたくて、わざと精霊に囲まれるよう仕組んだ。するとルクレツィアは空気を読み邪魔にならないように俯き気配を殺した。
―― あぁ…なんて危うい ――
クロエは突然現れた自分を見るわけでもなく、ただ仲のいい家族を邪魔しまいと気を遣う子供に危うさを感じた。突然現れた自身に興味を持つわけでも不安がるわけでもなく、輪を乱さないようにするその子供らしからぬ性格が記憶によるものではなくルクレツィアの本質だと悟ってしまった。
『あの子の…母親のような存在になって頂ければと願います』
そう図々しく乞うてきたゴルバチョフの言葉を最初は無視していた。ただ男の言う自身の【愛し子】だという存在に興味があった、ただそれだけでルクレツィアをここに呼んだ。
《精霊女王》とは全ての精霊の頂点であり、精霊だけでなく世界の母である存在。世界そのものとも言え彼女の感情次第でありとあらゆる自然現象が発生する。
そして【愛し子】とは精霊が見える者見えない者に限らず、精霊たちに好まれる相性の良い魔力や魂を持つ人間のことをいう。特定の属性の精霊に好かれるものが大半で【火の精霊の愛し子】【闇の精霊の愛し子】などと呼ぶが、稀に全ての精霊から愛されるものが存在しそれを【精霊女王の愛し子】という。
ルクレツィアはその【精霊女王の愛し子】であり、クロエはその紫の瞳と目が合った瞬間から彼女に惹かれ愛おしくて仕方がなかった。そして同時にそれは遥か昔の親友と同じ心地よさであり、大切な思い出と同じだったのだ。
―― あの方が戻ってきた ――
歓喜に震える体を落ち着かせルクレツィアを見つめる。魔力の波長も魂も全てよく知るものであったが、ぼんやりとクロエを見つめる表情に面影はない。迷子の子供のような目をした彼女はただの子供でルクレツィアなのだ。クロエは親友の生まれ変わりだから、愛し子だからではなく、純粋にルクレツィアという少女に惹かれた。
美しい顔立ちとそのアメジストのような紫の瞳には子供らしい無邪気な印象はなく、それがただの人形のような人間味のなさを強調していた。
あれから認められたい愛されたいと願うルクレツィアの心の闇が晴れるよう、他の精霊たちも交えいつも笑顔で暮らせるようにした。辛いことに目がいかないよう遊び疲れて寝てしまうルクレツィアをクロエは優しい笑みで撫でていた。初めは心を満たしてあげるためにと思っていた母親の役も、今では「クロエ母様」と慕うルクレツィアが愛おしくて仕方がない。徐々に心を開き自分のことを全て話すことは決して楽なものではないだろう。子供らしく無邪気に笑うのも、年相応に感情のままに行動するのもどれも成長していくわが子を見ている気分だった。他のわが子たちも同様にルクレツィアのことを大切にしている様子に嬉しくなった。
『愛しいルーシー』それがクロエの口癖になったのは何時からだろうか。その感情が精霊たちも同様であり、共感せずとも皆自然と抱いていた。
精霊女王は世界そのものであり、それと繋がっている精霊は女王と感情を共有することが出来る。女王が喜べば自分たちも嬉しい、悲しめば自分たちも涙を流す。感情を発散すれば世界に影響を及ぼしてしまう彼女のために子供達が変わるのだ。
しかしそんなことをしなくても精霊たちは皆ルクレツィアのことを愛していた。確かにその魔力は高潔な魂は惹かれるものがあるがそれだけじゃない事は、高位になり明確な自我があるほど理解していた。
「行ってきます」
ルクレツィアが悩んでいることを知っていた。この問題は自分で決着を着けなくてはいけない。
ルクレツィアは人に…好意を持つ者に拒絶されることを極端に恐れていた。人は異端を恐れ排除するきらいがあることをよく理解している彼女は、自身の姿が変わらないことを普通じゃないと気にしていた。おおよそゴルバチョフによってわざと魔人なるよう仕組まれていたのだろうが、いかんせんルクレツィアの心の闇を甘く見過ぎていた。過去の文献を用意していたためか、下位の精霊が抑えられる5歳までの成長が当たり前だと考えていたようだった。自身の身体が2歳かそこらで止まっていることに恐怖したのだろう…ゴルバチョフが隠しそれを利用して一気に影を晴らそうなどという荒療治にクロエは大きくため息をついた。
ルクレツィアの性格上溜め込んでしまうため一度爆発させ解消させた方がいいことは分かるが…いくら何でも可哀そうだとクロエは泣きはらし震えるルクレツィアを思い出していた。
そんなルクレツィアがエルドレッドと話し、ゴルバチョフのもとに戻ると聞いた時は驚いた。
闇の精霊であるエルドレッドは最高精霊の中でも特に人間に興味を持ち、昔からよく観察している精霊だった。人間の歴史や常識、感情や生態などを理解しルクレツィアの助けになればと思っていたが…流石だと感心してしまった。
「行ってしまいましたね」
少し無理をしているのだう、精霊たちに心配をさせまいと完璧な笑顔でゴルバチョフのもとに向かったルクレツィアを、精霊たちは寂しそうに見送った。
精霊は人の心を見ることができ、高位になれば感情や何を考えているかすらわかってしまう。普段は抑えているが本心を隠しがちなルクレツィアの場合は、重要なときは有効にするようにしていた。
「信じましょう」
次にここに来るときは憂いのない笑顔であることを祈って。
「おめでとう愛しいルーシー」
クロエは誰もいない湖を後にした。
ーーーーーーーーーー
精霊は別に裸を見ようが見られようが何とも思いません。一部例外もいますがエルドレッドは何のやましい気持ちもなくクロエを見ていました。
次回 未来を変える努力
「そう、それは良かったわ」
そこが透き通るほどの美しい湖の中に、一人の女性が腰が隠れるほどまで入っていた。透き通るような白い肌、水を浴び日の光を受け輝く髪は何色もの色を持ち、髪と同じ長いまつ毛に隠された瞳も見る角度でその姿を変える。女性はたれ目をさらに緩ませ嬉しそうに振り返る。
その吉報を持ってきたのは烏の濡れ羽色の髪に黒曜石のような瞳、全身を黒いレースと布をふんだんに使ったドレスを着た少年だった。しかし幼い見た目と美しい顔立ちは知らぬものが見れば間違いなく少女というだろう。
そんな二人はひっそりと木々に囲まれた湖にいた。
「ふふ、そんな寂しそうな顔しなくてもあの子はまた遊びに来てくれるわよ」
「別に…寂しいなんて…」
女性は水の中から出ると頭を振り水を全て飛ばした。それと同時に魔法で美しい絹のようであり不思議な輝きを放つ衣を纏った。
「貴方が、というか皆もあんなに楽しそうなのは久しぶりに見たわねエルドレッド」
「そりゃ…やっと戻って来たんですから」
「そうね…でも私はあの方とあの子を一緒に考えはしないわよ?それは今のあの子を否定することになるもの」
咎めるような少しーシーは無事に師と話し終えることが出来たようです」
「そう、それは良かったわ」
そこが透き通るほどの美しい湖の中に、一人の女性が腰が隠れるほどまで入っていた。透き通るような白い肌、水を浴び日の光を受け輝く髪は何色もの色を持ち、髪と同じ長いまつ毛に隠された瞳も見る角度でその姿を変える。女性はたれ目をさらに緩ませ嬉しそうに振り返る。
その吉報を持ってきたのは烏の濡れ羽色の髪に黒曜石のような瞳、全身を黒いレースと布をふんだんに使ったドレスを着た少年だった。しかし幼い見た目と美しい顔立ちは知らぬものが見れば間違いなく少女というだろう。
そんな二人はひっそりと木々に囲まれた湖にいた。
「ふふ、そんな寂しそうな顔しなくてもあの子はまた遊びに来てくれるわよ」
「別に…寂しいなんて…」
女性は水の中から出ると頭を振り水を全て飛ばした。それと同時に魔法で美しい絹のようであり不思議な輝きを放つ衣を纏った。
「貴方が、というか皆もあんなに楽しそうなのは久しぶりに見たわねエルドレッド」
「そりゃ…やっと戻って来たんですから」
「そうね…でも私はあの方とあの子を一緒に考えはしないわよ?それは今のあの子を否定することになるもの」
咎めるように強まった語気にエルドレッドと呼ばれた少年は息をのんだ。乾く口を唾液で潤すとすぐに口を開く。
「もちろん皆そのつもりです。ルーシーはルーシーであると、彼女と過ごす中で皆その認識で暮らし確認しました」
「そう、ならいいのよ。ごめんなさいね、ついあの子のことになると平静になれなくて…」
「いえ、気になさらないでください。皆ルーシーを大切に、家族だと思っておりますゆえクロエ様のお気持ちは理解しております」
「ありがとうエルドレッド」
「ありがたきお言葉恐悦至極に存じます。精霊女王クロエ様」
そういって闇に消えたエルドレッドを一瞥し、精霊女王は一人だけとなった湖を眺める。精霊や妖精が住む【精霊界】とルーシー達人間が住む【人間界】の進む時間は異なる。クロエは一年近く前に出会った頃のルクレツィアを思い出していた。
「お初にお目にかかる精霊女王。私はゴルバ「よい、して我らの【愛し子】の話を聞こう」はっ。」
そういってゴルバチョフからルクレツィアを預かることに決めたのは、人の時間で彼女がここに来る数か月前だった。
精霊たちが泣きはらした顔で眠るルクレツィアを連れてきた時、心が真っ黒に染まった。事前にゴルバチョフからルクレツィアの心の状態を聞き、涙の理由を知らなければその元凶を殺すだけでは飽き足らず大地震の一つや二つ起こしていただろう。それくらい【愛し子】というものは精霊にとって特別で大切なのだ。
私は悲しむ原因を探るため彼女の記憶を覗き、それを封じた。精霊は自然そのものであるが、上位であればあるほど自我を持ち感情を人のことを良く理解している。私はゴルバチョフから聞いたこの子の年齢とそれに見合わない精神負担に眉を顰めずにはいられなかった。
ゴルバチョフの身勝手な過去は私も知っていた。そして知っていて放置したのも同罪だろう。苦しむルクレツィアを見ていられず記憶を消し、本来の子供に戻した。
良い夢を見られるよう子守唄を歌っていると愛しいあの子が目を覚ました。記憶を消したあの子がどんな性格か知りたくて、わざと精霊に囲まれるよう仕組んだ。するとルクレツィアは空気を読み邪魔にならないように俯き気配を殺した。
―― あぁ…なんて危うい ――
クロエは突然現れた自分を見るわけでもなく、ただ仲のいい家族を邪魔しまいと気を遣う子供に危うさを感じた。突然現れた自身に興味を持つわけでも不安がるわけでもなく、輪を乱さないようにするその子供らしからぬ性格が記憶によるものではなくルクレツィアの本質だと悟ってしまった。
『あの子の…母親のような存在になって頂ければと願います』
そう図々しく乞うてきたゴルバチョフの言葉を最初は無視していた。ただ男の言う自身の【愛し子】だという存在に興味があった、ただそれだけでルクレツィアをここに呼んだ。
《精霊女王》とは全ての精霊の頂点であり、精霊だけでなく世界の母である存在。世界そのものとも言え彼女の感情次第でありとあらゆる自然現象が発生する。
そして【愛し子】とは精霊が見える者見えない者に限らず、精霊たちに好まれる相性の良い魔力や魂を持つ人間のことをいう。特定の属性の精霊に好かれるものが大半で【火の精霊の愛し子】【闇の精霊の愛し子】などと呼ぶが、稀に全ての精霊から愛されるものが存在しそれを【精霊女王の愛し子】という。
ルクレツィアはその【精霊女王の愛し子】であり、クロエはその紫の瞳と目が合った瞬間から彼女に惹かれ愛おしくて仕方がなかった。そして同時にそれは遥か昔の親友と同じ心地よさであり、大切な思い出と同じだったのだ。
―― あの方が戻ってきた ――
歓喜に震える体を落ち着かせルクレツィアを見つめる。魔力の波長も魂も全てよく知るものであったが、ぼんやりとクロエを見つめる表情に面影はない。迷子の子供のような目をした彼女はただの子供でルクレツィアなのだ。クロエは親友の生まれ変わりだから、愛し子だからではなく、純粋にルクレツィアという少女に惹かれた。
美しい顔立ちとそのアメジストのような紫の瞳には子供らしい無邪気な印象はなく、それがただの人形のような人間味のなさを強調していた。
あれから認められたい愛されたいと願うルクレツィアの心の闇が晴れるよう、他の精霊たちも交えいつも笑顔で暮らせるようにした。辛いことに目がいかないよう遊び疲れて寝てしまうルクレツィアをクロエは優しい笑みで撫でていた。初めは心を満たしてあげるためにと思っていた母親の役も、今では「クロエ母様」と慕うルクレツィアが愛おしくて仕方がない。徐々に心を開き自分のことを全て話すことは決して楽なものではないだろう。子供らしく無邪気に笑うのも、年相応に感情のままに行動するのもどれも成長していくわが子を見ている気分だった。他のわが子たちも同様にルクレツィアのことを大切にしている様子に嬉しくなった。
『愛しいルーシー』それがクロエの口癖になったのは何時からだろうか。その感情が精霊たちも同様であり、共感せずとも皆自然と抱いていた。
精霊女王は世界そのものであり、それと繋がっている精霊は女王と感情を共有することが出来る。女王が喜べば自分たちも嬉しい、悲しめば自分たちも涙を流す。感情を発散すれば世界に影響を及ぼしてしまう彼女のために子供達が変わるのだ。
しかしそんなことをしなくても精霊たちは皆ルクレツィアのことを愛していた。確かにその魔力は高潔な魂は惹かれるものがあるがそれだけじゃない事は、高位になり明確な自我があるほど理解していた。
「行ってきます」
ルクレツィアが悩んでいることを知っていた。この問題は自分で決着を着けなくてはいけない。
ルクレツィアは人に…好意を持つ者に拒絶されることを極端に恐れていた。人は異端を恐れ排除するきらいがあることをよく理解している彼女は、自身の姿が変わらないことを普通じゃないと気にしていた。おおよそゴルバチョフによってわざと魔人なるよう仕組まれていたのだろうが、いかんせんルクレツィアの心の闇を甘く見過ぎていた。過去の文献を用意していたためか、下位の精霊が抑えられる5歳までの成長が当たり前だと考えていたようだった。自身の身体が2歳かそこらで止まっていることに恐怖したのだろう…ゴルバチョフが隠しそれを利用して一気に影を晴らそうなどという荒療治にクロエは大きくため息をついた。
ルクレツィアの性格上溜め込んでしまうため一度爆発させ解消させた方がいいことは分かるが…いくら何でも可哀そうだとクロエは泣きはらし震えるルクレツィアを思い出していた。
そんなルクレツィアがエルドレッドと話し、ゴルバチョフのもとに戻ると聞いた時は驚いた。
闇の精霊であるエルドレッドは最高精霊の中でも特に人間に興味を持ち、昔からよく観察している精霊だった。人間の歴史や常識、感情や生態などを理解しルクレツィアの助けになればと思っていたが…流石だと感心してしまった。
「行ってしまいましたね」
少し無理をしているのだう、精霊たちに心配をさせまいと完璧な笑顔でゴルバチョフのもとに向かったルクレツィアを、精霊たちは寂しそうに見送った。
精霊は人の心を見ることができ、高位になれば感情や何を考えているかすらわかってしまう。普段は抑えているが本心を隠しがちなルクレツィアの場合は、重要なときは有効にするようにしていた。
「信じましょう」
次にここに来るときは憂いのない笑顔であることを祈って。
「おめでとう愛しいルーシー」
クロエは誰もいない湖を後にした。
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精霊は別に裸を見ようが見られようが何とも思いません。一部例外もいますがエルドレッドは何のやましい気持ちもなくクロエを見ていました。
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