辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
1 / 141

プロローグ ~喪ったもの~

しおりを挟む
 普段は車がほとんど通らない道のためか、地元の人間だけが使う抜け道になっている。

 配達のトラックは急いでいた。

「チッ、邪魔だよ、ガキ!」

 男子中学生の塊が道の真ん中をふざけながら歩いているのが見えたのだ。

 トラックは右からかわしてすり抜けようとする動きを見せ、察した中学生達は左に動こうとした。

 その時だった。

 ちょうど、横の急な坂道を猛スピードで下ってきた小学生の自転車があった。

 坂の下にいた中学生達をよけようと車体を左に傾ける。中学生の後ろ側をすり抜けるつもりだったのだろう。

 中学生の一人が、二つ軌跡が交錯することに気付いた。

『え? 止めないと!』

 自転車と車。タイミングはピタリだ。角でぶつかる。

「止まれ!」

 とっさに、身体を投げだすように飛び出していた。

 急ブレーキの音が悲鳴のように響く。

 立ち塞がる中学生の目の前で自転車が猛スピードのまま一回転した。乗っていた小学生は前方へと綺麗な弧を描いて飛ばされた。

  地面に頭から激突する音は、中学生が自動車にぶつかる音でかき消された。

 救急車がほどなくやってきた。

 自分の脚があらぬ方向へと曲がっている中学生は、激痛の中、血まみれになりながらも小学生が乗せられた担架を気にした。
 
『良かった。あの子、助かったみたいだ』

 別の担架に乗せられた小学生にほとんど傷が見えぬことを見てホッとした後で意識を失った。

 高校バスケ界からスカウトの手が引きも切らなかった天才ガードは、少年を助けるために左脚を犠牲にしたことになる。

 けれども、後で知ることになったのは残酷な結果だ。

 頭をこすった傷だけしか見えなかった小学生は脳の深くで出血していた。翌未明、兄と両親に見取られながら、息を引き取った。

  突然の事故で失った弟の命に、兄は怒りの行き先を求めようとしたのが後の話である。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 第1話「告白してきたのは」から
 雰囲気がガラッと変わります。

 そして伏線に次ぐ伏線が多数用意してあります。

 兄のやり場のない怒りが生み出す悲劇。
 兄の幼なじみが織りなす悲劇。
 悲劇を生み出した中学生が味わう悲劇。
 そして、隠れていた悲劇。

 全50話を、1回ずつ読みやすい長さにして
 ガンガンUPしていきます。

 作者のモチベーションのためにも
 出来れば「お気に入り」に入れていただけると嬉しいです。
 
 マジで、お願いします。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...