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告白 2
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「こっ、壊れた?」
「あの子、壊れやすいのよ。ものすごく繊細だから。そのクセ、どんどん重い荷物を背負ってしまう。分かってないのよね。ガラスの車体だって」
「どういうことですか?ちゃんと話してください」
「あの子、離婚できないって言わなかった?」
また同じフレーズだ。
「言いました」
「あの子、高校生の時に、自分の母親くらいの女性を妊娠させたの」
「えっ!そんなこと!」
「事実よ。私があの子に手を出したのは、その女性のお腹の子の遺伝子検査に来た時よ」
「産婦人科なのにどうしてとは思ったけど。まさか」
あれ?妻と言ったあの声は、そんな歳には思えなかったが。
「今は無事に出産して一緒に暮らしているはずよ」
「それが何の関係が?」
「まぁ、あなたは、まだそんなに関係が長くないから、分からないかもね。
あの子の性格」
「それはしょうがないわよ」
「まぁ、そうね。あの子は責任感が強い。というより全部背負い込む。自分の力でなんとかしようとする。
誰かが自分のせいで不幸になることが許せないのよ。だから、その女性も子供も、自分が頑張って幸せにしようとする。
まぁ、聞くだけなら、頑張っているいい子で済むんだろうけど。
私も知らないんだけど、普通に考えて、子供くらいの歳の子とセックスする?」
「私にはまだ」
「そうよね。ごめんなさい。私の想像なんだけど、友達の家に遊びに行っていて、その母親が夫婦生活で悩んでいて、おそらく旦那の不倫とか?があって、暗い顔をしていて、あの子が大丈夫ですかって、声をかけたと思うのよ」
ジュンくんならあり得るとシオリは思った。
「そのうち、あの子は可哀想と思う気持ちが、母親が美人だったこともあって、恋愛に変わって、関係を迫ったんじゃないかと思うのよ」
「美人って、会ったことあるんですか?」
「うん、あるわ」
「そうなんですか・・・」
「あなたにはご褒美あげないとならないわね。いいわ。全部話してあげる」
「ご褒美?」
「それは後で話すわ。私が出産するから、あの子とは1年くらい会わなかった。すっかり忘れていたわ。あの子のこと。そして私も無事に出産して、旦那と3人でショッピングモールで」
また同じワード、ショッピングモール。まさかその場にいたの?
「買い物をしていたら、人だかりができてて、私も医者として駆けつけたわ。そうしたら、あの子が倒れてた」
嘘だと思いたかったが、事実だと確定してしまった。私は下を向いた。これ以上の話は無駄だ。電話での話は全て事実ということが分かった。
「近くに3人女性がいて、一人は大声で泣いていたわ」
それが前の浮気相手なのだろう。もし電話をしていなかったら、いつか来ていたであろう未来の私の姿だ。
「残りの2人は、1人が子供を抱えていて、例の相手だと思った。そして、もう一人が、多分、あなたとそんなに年は変わらないと思うわ」
その人が、さっきの電話の相手なんだろう。
「私もその相手とは別に、美人の彼女がいると聞いていたから、その彼女なんだろうと思ったわ。でも、びっくりしたのが、妊娠した女性が、その女性を、うちの娘が、と呼んだのよ」
「えっ!親子ってこと?」
「私も理解ができないから、考えてないんだけど、妊娠させた母親くらいの歳の女性の娘と結婚してるのよ」
あぁ、私も理解できない。
「まぁ、何が言いたいかと言うと、それくらい、あの家庭には複雑なことがあるってこと。あの子が母親と関係を続けてるか知らないけど、その可能性もあるのに、娘は結婚したのよ。それでもいいと選んだ相手が、あの子なのよ」
確かにジュンくんは、こっちが身構えずに接することができる雰囲気がある。その気楽さに、こっちからどんどんと距離を詰めていってしまう。そして、そこに居心地の良さを感じてしまう。それに、あのセックスをされたら、私みたいな女は、いつの間にか手離したくなくなってしまうだろう。
この目の前の女を除いては。
「はぁ、それにしてもうまく行ったわ。シオリ、ありがとう。フフフッ。ハハハハッ」
「うまくいった?」やっぱり何かある。この女。
「私も浮気相手なのに、どうして長く続いたと思う?」
確かにその通りだ。
「どうしてよ!」
「私は、あの子にのめり込まなかったからよ」
「それがどうして?」
「まだ分からないの?あの子が一番欲しかったのは、何も考えないでセックスできる相手。好きとか愛とか言わない相手よ」
「えっ?好きだからセックスするんでしょ」
「あら?あなたは愛のあるセックスしかしてこなかったようね。体が満足するためのセックスを知らないのね。
だから、純太は壊れた。あなたが愛を求めたから。
あの子は重荷になるくらい既に愛は受けてるし、家族に対して与えてるの。それだけで、いっぱいいっぱいだった。
既にコップは満杯だった。そこに、あなたは愛を注ぎ、溢れさせてしまったの。もう何も残っていないあの子の体から、愛を引き釣り出したのよ。
あの子が壊れるのは当然のことよ」
「まさか、ジュンくんを壊すために、私を誘ったの?」
「さっきから、そう言ってるじゃない。よくやったって。ありがとうって」
「そんなことして、なんの得があるのよ!」
「こんなことした目的は、単純なことよ。私達夫婦を正常にするため。あなたはあの子に夢中になり、旦那では満足できなくなってしまった。体だけじゃなくて、愛を与えられることを知ってしまった。あの子は自分のこと一番最後にしちゃうから、どんどん与えてしまう。
その点、あの人はいい加減だから」
「そうよ。いい加減さだけが目につくようになってしまったの」
「そもそもよくあんなの好きになったわね?」
「あなたがそれを言うの?」呆れた声を出した。
「私はいい加減な方がいいわ。仕事ではそんなことできないでしょ。プライベートまで気を張りたくないわ。
これで、あの子も私を見て、倒れるまではないにしろ。身体の防衛反応で近づかなくなるわ。晴れて我が家は、浮気のない家庭になるわ」
「あの人が、それでいいわけないでしょ」シオリの声が変わった。
「まぁ、するでしょうね。浮気。そうしたらバツを与えるだけ。ちゃんと躾けるわ」
「まだ分からないの?温泉以降、夫婦生活はうまくいってるの?」
「えっ?」
「少し頑張ったくらいで、旦那があんなになると思う?それにジュンくん。あなたには、もう会う必要がないって、私にはっきり言ったわよ。
まぁ、私は旦那に会う必要はないけど、旦那はどうかしらね?あなたで満足できてるのかしら?じゃあ、ご馳走様でした」
シオリは先に店を出た。
「あの子、壊れやすいのよ。ものすごく繊細だから。そのクセ、どんどん重い荷物を背負ってしまう。分かってないのよね。ガラスの車体だって」
「どういうことですか?ちゃんと話してください」
「あの子、離婚できないって言わなかった?」
また同じフレーズだ。
「言いました」
「あの子、高校生の時に、自分の母親くらいの女性を妊娠させたの」
「えっ!そんなこと!」
「事実よ。私があの子に手を出したのは、その女性のお腹の子の遺伝子検査に来た時よ」
「産婦人科なのにどうしてとは思ったけど。まさか」
あれ?妻と言ったあの声は、そんな歳には思えなかったが。
「今は無事に出産して一緒に暮らしているはずよ」
「それが何の関係が?」
「まぁ、あなたは、まだそんなに関係が長くないから、分からないかもね。
あの子の性格」
「それはしょうがないわよ」
「まぁ、そうね。あの子は責任感が強い。というより全部背負い込む。自分の力でなんとかしようとする。
誰かが自分のせいで不幸になることが許せないのよ。だから、その女性も子供も、自分が頑張って幸せにしようとする。
まぁ、聞くだけなら、頑張っているいい子で済むんだろうけど。
私も知らないんだけど、普通に考えて、子供くらいの歳の子とセックスする?」
「私にはまだ」
「そうよね。ごめんなさい。私の想像なんだけど、友達の家に遊びに行っていて、その母親が夫婦生活で悩んでいて、おそらく旦那の不倫とか?があって、暗い顔をしていて、あの子が大丈夫ですかって、声をかけたと思うのよ」
ジュンくんならあり得るとシオリは思った。
「そのうち、あの子は可哀想と思う気持ちが、母親が美人だったこともあって、恋愛に変わって、関係を迫ったんじゃないかと思うのよ」
「美人って、会ったことあるんですか?」
「うん、あるわ」
「そうなんですか・・・」
「あなたにはご褒美あげないとならないわね。いいわ。全部話してあげる」
「ご褒美?」
「それは後で話すわ。私が出産するから、あの子とは1年くらい会わなかった。すっかり忘れていたわ。あの子のこと。そして私も無事に出産して、旦那と3人でショッピングモールで」
また同じワード、ショッピングモール。まさかその場にいたの?
「買い物をしていたら、人だかりができてて、私も医者として駆けつけたわ。そうしたら、あの子が倒れてた」
嘘だと思いたかったが、事実だと確定してしまった。私は下を向いた。これ以上の話は無駄だ。電話での話は全て事実ということが分かった。
「近くに3人女性がいて、一人は大声で泣いていたわ」
それが前の浮気相手なのだろう。もし電話をしていなかったら、いつか来ていたであろう未来の私の姿だ。
「残りの2人は、1人が子供を抱えていて、例の相手だと思った。そして、もう一人が、多分、あなたとそんなに年は変わらないと思うわ」
その人が、さっきの電話の相手なんだろう。
「私もその相手とは別に、美人の彼女がいると聞いていたから、その彼女なんだろうと思ったわ。でも、びっくりしたのが、妊娠した女性が、その女性を、うちの娘が、と呼んだのよ」
「えっ!親子ってこと?」
「私も理解ができないから、考えてないんだけど、妊娠させた母親くらいの歳の女性の娘と結婚してるのよ」
あぁ、私も理解できない。
「まぁ、何が言いたいかと言うと、それくらい、あの家庭には複雑なことがあるってこと。あの子が母親と関係を続けてるか知らないけど、その可能性もあるのに、娘は結婚したのよ。それでもいいと選んだ相手が、あの子なのよ」
確かにジュンくんは、こっちが身構えずに接することができる雰囲気がある。その気楽さに、こっちからどんどんと距離を詰めていってしまう。そして、そこに居心地の良さを感じてしまう。それに、あのセックスをされたら、私みたいな女は、いつの間にか手離したくなくなってしまうだろう。
この目の前の女を除いては。
「はぁ、それにしてもうまく行ったわ。シオリ、ありがとう。フフフッ。ハハハハッ」
「うまくいった?」やっぱり何かある。この女。
「私も浮気相手なのに、どうして長く続いたと思う?」
確かにその通りだ。
「どうしてよ!」
「私は、あの子にのめり込まなかったからよ」
「それがどうして?」
「まだ分からないの?あの子が一番欲しかったのは、何も考えないでセックスできる相手。好きとか愛とか言わない相手よ」
「えっ?好きだからセックスするんでしょ」
「あら?あなたは愛のあるセックスしかしてこなかったようね。体が満足するためのセックスを知らないのね。
だから、純太は壊れた。あなたが愛を求めたから。
あの子は重荷になるくらい既に愛は受けてるし、家族に対して与えてるの。それだけで、いっぱいいっぱいだった。
既にコップは満杯だった。そこに、あなたは愛を注ぎ、溢れさせてしまったの。もう何も残っていないあの子の体から、愛を引き釣り出したのよ。
あの子が壊れるのは当然のことよ」
「まさか、ジュンくんを壊すために、私を誘ったの?」
「さっきから、そう言ってるじゃない。よくやったって。ありがとうって」
「そんなことして、なんの得があるのよ!」
「こんなことした目的は、単純なことよ。私達夫婦を正常にするため。あなたはあの子に夢中になり、旦那では満足できなくなってしまった。体だけじゃなくて、愛を与えられることを知ってしまった。あの子は自分のこと一番最後にしちゃうから、どんどん与えてしまう。
その点、あの人はいい加減だから」
「そうよ。いい加減さだけが目につくようになってしまったの」
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「あなたがそれを言うの?」呆れた声を出した。
「私はいい加減な方がいいわ。仕事ではそんなことできないでしょ。プライベートまで気を張りたくないわ。
これで、あの子も私を見て、倒れるまではないにしろ。身体の防衛反応で近づかなくなるわ。晴れて我が家は、浮気のない家庭になるわ」
「あの人が、それでいいわけないでしょ」シオリの声が変わった。
「まぁ、するでしょうね。浮気。そうしたらバツを与えるだけ。ちゃんと躾けるわ」
「まだ分からないの?温泉以降、夫婦生活はうまくいってるの?」
「えっ?」
「少し頑張ったくらいで、旦那があんなになると思う?それにジュンくん。あなたには、もう会う必要がないって、私にはっきり言ったわよ。
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