子猫を拾ったはずなんだけど

ぱるゆう

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美弥は?

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そして閉店時間となり、また真奈美さんは美弥ちゃんを早く帰してくれた。

「料亭で働いた後なのに、大丈夫なの?」

「本当に忙しいのは数時間だけだから。それに、もう何年働いてると思ってるんだよ」

「そうだけど。カラオケ、昔と変わらず上手かったね」

「あの頃覚えた歌しか分かんないけど」

「たいていのお客さんは昔の歌が多いから、気にならないわ」

「そうなの?」

美弥は頷いた。

「美弥ちゃん、大事な話があるんだけど」若菜は立ち止まって真剣な声を出した。

「何?」そんなことは美弥は気づかずに若菜の顔を見た。

「悟史くんの父親とは、ちゃんと別れたの?」

「えっ?」美弥は突然のことで驚いた。

「どうして、そんな事聞くの?」美弥は狼狽えた。

ダメだ。高校の時の好きという感情が蘇ってきて、頭の中を満たしてしまった。
「久しぶりに会ったのに、それに今までそんな素振りも見せてなかったのに、突然こんな事を言うのは僕も変だと思う。それは分かってる。でも、美弥ちゃんのこと、ずっと好きだった」

美弥は目を見開いたが、すぐに
「知ってる」と恥ずかしそうに言った。

「えぇっ!」と若菜は少し大きな声を出して目を見開いた。

「全然隠せてなかったわよ。部の皆も知ってる」

「マジか・・・」若菜は顔を真っ赤にして下を向いた。

「皆が言うには、私と他の女の子に対する態度が全然違うって」

「確かに」と若菜は顔を上げて呟いた。美弥以外とは、話しかけられても返事くらいしかしてなかったような気がする。ボクシング部だし、多分、少し怖がられていたような気もする。
「普通に話した女子は、美弥ちゃんだけだったような気がする」

「今、気付いたの?」

若菜は頷いた。

「それなのに、何も言わないで部を辞めちゃうし、卒業したらいなくなっちゃうし」

「ごめん。でも、僕は2人も半殺しにしたんだ。親にも迷惑かけるし、言えなかった」

「何があったの?若菜くんは理由もなくそんな事しないでしょ?」

どうしよう?僕が原因ならば話してもいいんだけど、若菜は少し考えて、
「大事なものを傷つけられるところだったんだ」

「大事なもの?」と美弥は呟いて、すぐに、
「分かった」と微笑んだ。

「何が?」

「全部」

「えっ?」

「言わなくていい。若菜くんが悪くないことも分かった」

「・・・」

「それで?」

「えっ?」

「若菜くんは、どうしたいの?」

「・・・」若菜の頭の中には、ユリのことが浮かんでいた。でも、『ユリ、ごめん』と頭の中で謝って、美弥の目を見ながら、
「ちゃんと手続きして、悟史くんの父親になりたい」

「私は?」美弥はすぐに言った。そうじゃないだろうと言わんばかりに。

「えっ?」若菜の方は、それくらい分かってくれと思ったが、美弥の目を見ながら、
「美弥と結婚したい」と真剣な顔で言った。

「ずっと、ずうっと前に聞きたかった」と美弥は残念そうな顔で言った。

「ごめん」

「無理、あの人が別れてくれないから」

やっぱりそうか・・・。

「僕に任せてくれないか?」

「えっ!ダメだよ!」美弥は慌てた。

若菜は微笑んで、
「大丈夫。殴ったりしないし、僕は直接会わない」

「それなら、どうやって?」

「知り合いに弁護士がいるんだ。その人に頼む」

「弁護士?お金かかるんじゃ?」

「お金のことは心配しないで。それなりに貯金あるし。美弥ちゃんにお願いしたいのは・・・」

「さっきみたいに美弥って呼んで」と美弥は恥ずかしそうに言った。

「そんな風に言った?」

美弥は頷いた。

「そうなんだ・・・。みっ、美弥は、離婚届の自分の所だけ書いて欲しい。それだけあれば十分。後は居場所さえ教えてくれれば。会ったりするのは、弁護士に任せる」

「本当に?本当に会わない?」

「うん、約束する」

「分かった。用意する」

「ふぅ~、良かった」若菜は肩の力を抜いた。

「返事するね」と美弥は恥ずかしそうに言った。

「あっ!確かに返事聞いてない」

「若菜の奥さんにしてください」と美弥は微笑みながら言った。

「はい、よろしくお願いします。あっ!料亭辞める話は?」

「聞こえた。実家に戻るんでしょ?」

「そう。まぁ、しばらく先になるかもしれない。あっ!一緒に住まない?」

「ええっ!そんないきなり?」

「あっ!いやっ!へっ、変な事しないから・・・・」

「結婚するのに?」美弥は少し呆れた顔をした。

「てっ、手も繋いでないのに・・・」

美弥は無言で手を出した。

「いいの?」とつい言ってしまった。

「さっきの勢いは、どうしたの?」

「そっ、そうだよね」と恐る恐る若菜も手を出した。

美弥はその手を握った。
「これでも変なことしないの?」

「するかも・・・」

「フフフッ、ゆっくりできるようになろうね」

「そうだね。ゆっくりね。あっ、悟史くん待たせちゃったかな?」

「まだ、いつもよりは早いから」

「あっ!悟史くんが前のお父さんの方がいいって言うかな?」

「それはないから、安心して」

「良かったぁ」

「じぁあ、未来のパパ、帰ろう」

「うん。あっ!2人とも猫は大丈夫?」

「飼ってるの?」

「子猫なんだけど。手間は掛からないから」

「うん、大丈夫よ。悟史は喜ぶかも。ペットなんて飼える状態じゃなかったから」

「それなら良かった。一緒に部屋を探そう」

「今の部屋は?」

「1DKだから、狭いよ」

「う~ん、確かに荷物が入らないかも」

「大丈夫、お金はあるから」

「私が持ち逃げしちゃうかもよ」

「フフフッ、そんなにはないよ」



アパートに行くと、美弥の部屋のドアが少し開いていた。
「ママ!あっ!お兄ちゃん!」と悟史が駆け出してきた。

若菜は立ち止まり、変身ポーズをとった。悟史も同じように変身ポーズを始める。

「へん~しん!」

若菜は悟史を高い高いした。

「キャハハハハッ!」と悟史の声が聞こえた。

「お兄ちゃん!合体!」

「よし!合体だ!」と肩車した。

「凄~い!高~い!」

「朝食食べてく?」と美弥が言った。

「僕が作ろうか?」

「あぁ、そうよね。プロだもんね」

「家じゃ普通のもの食べてるから。僕の給料じゃ、料亭では食べられないよ」

「そうなの?」

若菜は頷いた。

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