女子高生コスプイヤーは恋をする

ぱるゆう

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 次の日、晴菜が教室に入ると、大空里《ダリア》が近くに来た。

「今日も休むって」

「そうなんですか」晴菜は心配そうな顔をした。

「大丈夫よ。2、3日分の食料は置いてきたから。レトルトだけど」

「それなら大丈夫そうですね」

「明日も休むようなら、何か作りに行ってあげて」と大空里は小声で言った。

「えっ?そんな」

「もう着替えさせる必要はないから」

「あっ!」と晴菜は言って少し顔を赤くした。

「フフフッ、じゃあ、よろしくね」と言い残して、大空里は他の人の所に行った。

「僕でいいのかな?」と晴菜は呟いた。




 次の日も夏凛は休んだ。
 大空里から、
「よろしくね」と言われた。

 昼休みに夏凛に電話した。
「熱は下がってふんだけど、明日には行けそう」と少し咳き込む音がした。

 ちゃんと自分の気持ちを言わないと、と思い、
「ご飯作りに行ってもいいですか?」と晴菜は言った。

「ホントに?」と嬉しそうな声がした。

「はい」

「チョー嬉しい!」

「何がいいですか?」

「そうねぇ、あっ!この前のお粥」

「お粥?まだ食べられないんですか?」

「ううん、大丈夫だよ。あの時はあんまり味が分からなかったから」

「それなら雑炊にしましょう」

「うわっ、楽しみ!」

「学校終わったらスーパー寄ってから向かいます」

「あっ!お金言ってね」

「大丈夫ですよ。今回は僕も一緒に食べるので」

「えっ!ホント?」

「はい」

「うん、待ってる」

「はい、では、また夕方に」

 電話を切った。



 学校が終わって、スーパーで買い出ししてから、夏凛の部屋の玄関の前に立った。

 マスクをした夏凛がドアを開いた。
「九條くん、ありがとう」

「どうですか?体調は?」

「うん、熱も下がったし、咳もあんまり出なくなった。さっ、入って」

「それは良かったです」晴菜は中に入った。

 リビングに入り、キッチンに来た。晴菜は食材を出して、手を洗った。

「この前は来てくれて、ありがとう」

「いえ、突然押しかけてしまってすいません」

「ううん。嬉しかった」

「それなら良かったです。寝てなくて大丈夫ですか?」

「寝疲れてる」

「そういうことってありますよね」

話をしながら、晴菜は手際よく雑炊を作った。

テーブルの上にカセットコンロを置いて、鍋を置いた。

お玉で取り分け、
「いただきます」と言ってから、夏凛は口に入れた。

「うん!美味しい!」

「それは良かったです」

「あぁ、やっぱりレトルトとは違う」

「そうなんですか?僕はほとんどそういうのは食べないので、分からないです」

「けっこう美味しいわよ。でも、こういう手作りのものを食べちゃうと、そう思っちゃう」

そして、
「来てくれたお礼がしたい」と夏凛は言った。

「そんな!気にしないでください。僕が勝手にやったことです」

「いいじゃん。させてよ、お礼」

 晴菜は悩んだが、多分、うんと言うまで引き下がらないと思った。
「分かりました」

「何がいい?」

「それでは、またコスプレの衣装を作らせてください」

「えっ!それじゃお礼になんないよ。私から頼みたいのに」

「姫川さんにお金を使わせることになるんです。十分にお礼になります」

 晴菜は全くそんなつもりはなかったが、トンチのような晴菜の提案に頭が混乱したが、願ってもない話だ。

「うん、九條くんがそう言うなら、お願い」

「ちょっと先になりますけど、いいですか?」

「えっ?」

「今、別の人のを作ってて・・・」

「えっ?私みたいな人がいるの?」

 晴菜は、墓穴を掘ったと気まずく思ったが、
「僕の家のお風呂場で会った・・・」と小さい声で言った。

「えっ?あの子、コスプレしてるの!」と夏凛は大きな声で言った。

「姫川さん、声が・・・」

「あぁ、ごめん。確かに可愛い顔してたし、身体も細くて、手足も長い・・・」

そんなに見てたのか・・・、晴菜は内心驚いた。

「ねぇ、九條くん。写真とかないの?」

「そういうのは、まだ・・・」

「はぁ?何言ってるの?その子のコスプレの写真よ」

「あぁ、それなら」晴菜はスマホを取り出して、画面にあるショートカットを押した。

出てきた画像を夏凛に見せた。

「えっ!これってジュジュ様じゃん!」と夏凛はまた大きな声を出した。

「そういうコスプレネームだと言ってました」

「何?あの子、ジュジュ様だったの?」

「はい・・・、知ってるんですか?」

「ジュジュ様、チョー可愛いから、いつも見てるの!可愛過ぎるから、CGかと思ってた。まさか、実在するとは・・・」

「ちゃんと実在してます」

「えっ?今度いつ会うの?」と夏凛はテーブルに手を付いて、晴菜の方に身を乗り出した。

 晴菜は少し身体を後ろにずらし、
「つっ、次の土曜日に彼女の家に行きます」

「私も行きたい!」

「さっ、流石にそれは無理です」

「えぇっ!それじゃ、九條くんの家には、いつ来るの?」

「来週、生地を買いに行くと思うので、仮縫いが終わる3週間後くらいですかね」

「えぇっ!そんなに遅いの?生地を買う時、私も行く!」

「いやぁ~、それも・・・」

「えぇ~!早く会いたいぃぃ!」

「わっ、分かりました。聞いてみますから」

「絶対!絶対だよ!」

「分かりました。分かりましたから・・・」

やっと夏凛は椅子に座った。
「うっわぁぁ、楽しみ。この前、もっとよく見ておくんだった」

いや、十分見てたような・・・、と晴菜は思った。

そして、食べ終わり、晴菜は片付けをしようとした。

「私がやるから」

「今日は、ゆっくりしていてください」と晴菜が洗い始めた。

「何から何まで、ありがと!」夏凛は笑顔で言った。

「辛い時はお互い様ですから」

はぁ~、ホントに九條くんって優しくていいなぁ、と夏凛は隣で思っていた。

「元気になったみたいで、良かったです」

「ジュジュ様に会えるなら、風邪なんか引いてられないわ。明日は学校行くから」

「今日はお風呂に入って、すぐに寝るようにしてください」

「うん、今日はありがとう」

晴菜は部屋を出た。
「う~ん、寿璃叶になんて言おう?」と悩んだ。
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