8 / 29
早苗
しおりを挟む
次の日、会社に向かう電車の中で、
そろそろ早苗にも言わないとね。飲みに行こうとラインを送る。
しばらくしたら、水曜日は?と返事が来た。次の木曜は祝日だ。
オーケーのスタンプを送る。真田さんにも連絡をする。
すると、僕も行きたいと返事が来た。
ちゃんと2人だから安心して、と送る。
違うよ、恋音だから心配してないよ、と来る。
どういう意味!と怒ったスタンプを送る。
違う!花音は裏切らないって信じてるよ、という内容だが、土下座するスタンプがついている。
来てもいいけど、いきなりは止めて、私からちゃんと話したい、と送る。
分かった。少し遅れていくよ。
職場に着くと、つい眺めてしまった。
もしかしたら、再来年にはいないかもしれない。まだ先の話だが、そう思うと、違う景色のように感じる。
まぁ、今できることを一生懸命やろう。
近くの同僚に声を掛ける。
「システム部の真田さんって、いつか辞めちゃうんですか?」
「あぁ、そうみたいだね。噂では30歳までって聞いてるけど。あれ?山上さんも参戦するの?花嫁争いに」
「いえいえ、私なんかじゃ無理ですよ」
「猛獣ばっかりだからね。山上さんじゃ骨も残らないかもしれない」
「フフフッ。はい、猛獣注意で仕事頑張ります」
やっぱりみんな知ってるんだ。早苗は、会社のは興味がないと言っているので、井戸端会議がないこの部署にいては、情報が入らない。
そして、水曜日になった。終業後、早苗の職場に出迎えに行く。
そして、いつもの居酒屋に来た。
「久しぶりだね」
「そうね」
「早苗は大丈夫だったの、デートとか?」
「今日はあっちも飲み会だから、ちょうど良かったわ」
早苗は私より小さく、目が大きく可愛らしい顔をしている。しかし、中身は、本人も自覚があるようだが、おっさんだ。
確か今の彼氏とは2年くらい付き合っているはずだ。
店に着いて、座った。
「早苗さん、花音さん、久しぶりですね」店主の娘が席に来た。家族経営のアットホームな店だ。
「ごめんね。なかなか来れなくて」
「いいえ、その分、今日はたっぷりお金落としていってください」可愛い顔をして、なかなかはっきり言う看板娘だ。
「はいはい」ビールと刺身盛り、枝豆を注文した。
「毎度あり」と笑顔で席を離れる。
「彼氏とは順調なんだ」
「なんか最近、熟練夫婦みたいになってきた」
「結婚はしないの?」
「どうかしらね?分かんない」
「そういうもの?」
「う~ん。私もこの人だっていう決め手がないのよね」
「ふ~ん」
「珍しいわね。そういう話、興味ないのに」
「興味がないわけじゃなかったのよ。ただ聞いても、私には縁がない話だと思ってたから」
「思ってた?って言った?」
早苗の顔が段々と悪い顔になる。
それに対して、私は分かりやすく真っ赤になった。
「えっ!ホントに?どの段階なの?告白したとか、されたとか?付き合い始めたとか?」
「来年か再来年には結婚する」
「えっ!結婚!ちょ、ちょ、ちょっと待って。展開が早すぎるんだけだ。表紙をめくったら、次のページに、おしまいって書いてあった気分よ」
「フフフッ、早苗、相変わらず、面白いね」
「そうじゃなくて、いつから付き合い始めたの?」
「そうね。半年くらい前かな」
「いくらなんでも早すぎない?結婚でしょ。相手の両親には会ったの?」
「近いうちに会う」
「えっ!まだ会ってないの。何か買わされたりしてない?お金とか渡したりしてない?」
「してないわよ。私の貯金なんて、たかが知れてるし」
「そうだよね。まだそんなに働いてないもんね」
「そうでしょ」
「それで、中なの?」
私は頷いた。
「私の知っている人?」
「多分、知っていると思う」
「えぇ、教えてよ。誰?」
「システム部の・・・」
「システム部?あそこ独身なんていたっけ?。中途採用も多いし、よく分からないわ。でも、私が知ってるのよね?」
私は枝豆食べながら、頷く。
「もう分かんない!誰?」
「多分、信じないと思うけど」
「うんうん」
「真田さん」
「真田さん?あぁ、真田さん、御曹司の。そう言えば、システム部だったわね」
「そう、その真田さん」
「それで、その真田さんが、どうしたの?」
「早苗、ちゃんと聞いてた?私の結婚相手」
早苗は絶句した。
最近、こればっかりだ。まぁ、真田さん相手に、私も何度もしたが。
「ごめん、全然、想像できない。花音が真田さんと結婚!」
「そう、正解」
早苗は残りのビールを飲み干した。
「由紀ちゃん、ビール」と追加した。私も追加した。
「どうして、そうなった!」
「ごめん、ちょっと待って。電話がかかってきた」
真田さんからだ。
「うん、もう来てもいいよ、話したから。すぐに着く?分かった。待ってる」
「えっ、真田さん来るの?」
「良く分からないけど、来たいって」
「えぇ、先に行ってよ」
「いいじゃない。私も仕事服だし」
「まぁ、そうね。でも緊張する」
「なんでよ」
「営業部だと接点ないから。うちの職場でもファンの子いるわよ」
「はぁ、気が重い。相手が私だと知ったら、ショック受けるんだろうな」
「なんでよ。私は真田さんも中々見る目あるなって思うわよ」
「早苗、愛してる」
「はいはい」
すると、ドアが開いた。
「いらっしゃい」看板娘が急いで出迎えに行く。
私は手を振る。
真田さんは看板娘に何かを言って、こっちに歩いてきた。
早苗は立ち上がった。
「初めまして、営業部の鈴木早苗です」私は早苗の口から出ている声とは思えなかった。
「よく花音から、早苗さんのことは聞いてます。仲良くしてくれて、ありがとう」
「はい。嬉しい、初めてマジマジと見たよ。花音」
「はいはい、その声、誰かと思ったわよ」
3人分のビールが運ばれてきた。
改めて乾杯した。
「どうして、花音を選んだんですか?」
「僕は選んだんじゃないんです。花音だから、結婚しようと思ったんです」
「うわぁ、人生で一回は言われてみたいセリフ、ナンバーワンだ。でも、真田さんの選択は、私が保証しますよ。花音は当たりです」
「嬉しいな。そう言ってもらえると」
「2人とも止めて。顔が熱いわ」
「本当に可愛いやつだのう。花音は」
「本当に止めて」
「はいはい。でも、告白は真田さんから?」
「うん。人生で初めて告白したから、ドキドキしたよ」
「えっ!そうなの?」私は驚いた。
「そうだよ。されたことは何回かあったけど、したのは初めて。みんなこんな気持ちでしてきたんだと思うと、もっと優しく断ればよかったと反省してる」
「でも、断るんですね?」
「まだ子供で、好きって気持ちが分からなかったからね」
「まぁ、小さい頃は、女の子の方がおませちゃんですからね」
「そうなのかな。ただ僕が無沈着過ぎただけだと思うけど」
「今となっては、いい思い出になってますよ。きっと」
「そうだといいんだけど。なんか話しやすいな。早苗さん」
「そうですか?イケメンに言われると嬉しいな」
「そう言ってくれるのは有り難いんだけど、イケメンって、顔だけみたいな感じがして、あんまり好きじゃないんだ」
「あぁ、なるほど。言われる方は、そう思うんですね。私は可愛いって言われると、嬉しいですけどね。気をつけます」
「ごめん。そんなに気にしてるわけじゃないから」
「はい。花音、どうしたの?静かね」
「何か早苗と話してる真田さんが新鮮だなって思って」
「そう?」
「いつも職場で迷惑そうにしてるから、女の人、苦手なんだって、勝手に思ってた」
「あれは、こっちの状況を理解してくれないから、迷惑そうにしてるんだよ。別に普通に話せるさ」
「ふ~ん」
「えっ!何?花音以外と話してるのイヤ?」
「そうじゃないけど。真司のこと、もっと知らないとならないなって思っただけ」
「あら?ヤキモチ?」
「そうじゃないわよ。真司は優しいから、勘違いしちゃう子いるんだろうなって」
「えっ!僕はそんなつもり全くないよ」
「だから怖いのよ」
「花音以外絶対にないから」
「分かってるわよ」
「あらら。真田さん、しっかり尻に敷かれてますね。猛獣達が聞いたら、卒倒しそうだわ」
「猛獣?」
「真田さんを狙ってる人達よ。みんな、よくやるわって、思ってるわ」
「そうなんだ」
「いつ、みんなに言うの?」
「式の日にちが決まった後かな」
「猛獣達が可哀想に思えてきた。少しくらい匂わせたら?」
「どうする?真司」
「僕はすぐにでも言いたいけど。職場的なものがあるじゃん。僕か花音か異動になるよ」
「それは避けたいな」
「そういえば、真田さん、もうすぐですよね。会社辞めるの」
「あぁ、うん、来年いっぱいかな」
「花音はどうするの?」
「続けるつもりだけど。真司を支えるのが優先。それが無理なら辞めるかも」
「そうだよね。寂しくなるな」
「まだ決めたわけじゃないからね」
「でも、安心しました。真田さんが悪い人だとは思いませんけど、初めて名前を聞いた時は、花音のこと騙してるんじゃないかと思いました。でも、ちゃんと好きだってことが分かったんで」
「良かった。信じてもらえて」
「遅くなったけど、花音、おめでとう」
「早苗ぇ」私は涙が溢れた。
「止めてよ。私までつられちゃうじゃない」早苗の目にも涙が溢れた。
「うえぇん」私と早苗はお互いに手を握りあった。
それからは、楽しく飲んで食べた。
そして、真田さんがお金を払い、店を出た。
「じゃあ、私はここで。お邪魔虫は退散します」
「早苗、今日はありがとう」
「うん。真田さん、ご馳走様でした」早苗は手を振ってから背を向けた。
「どうする?帰る?」
「中で出さない?」
「うん、我慢する」
私は真田さんの腕に自分の腕を絡めた。
「また下着買わなくちゃ」
「そうだね。明後日の金曜は、忘れないようにしよう」
「また泊まるの?」
「うん、一緒にいたい」
「結婚する前に飽きちゃうよ」
「えっ!そうなの?」
「真司は飽きないの?」
「飽きたら、セーラー服を着せたり、バニーガールの服とか」
「変態!」
「冗談だよ。365日触っても飽きないよ」
「仕事は行くんだよ」
「テレワークにして」
「もう、バカ!早く行こ」
途中で母さんにラインした。
ほどほどにしなさいよ。いちおう嫁入り前なんだから、と帰ってきた。
はい、気をつけますと送った。まさか明後日も泊まるとは言えない。
真田さんに見せた。
「確かに、お母さんの言うとおりだ。僕が甘えすぎてる」
「じゃあ、止める?」
「うぅ、イヤだ、一緒にいたい」
「そうよね?」
「あっ!先に籍だけ入れよう。それなら1年も待たなくていい」
「えっ!大丈夫なの?」
「うん、そうだ。そうしよう」
「別にいいけど、子供は先よ」
「うん、それでいい」
そろそろ早苗にも言わないとね。飲みに行こうとラインを送る。
しばらくしたら、水曜日は?と返事が来た。次の木曜は祝日だ。
オーケーのスタンプを送る。真田さんにも連絡をする。
すると、僕も行きたいと返事が来た。
ちゃんと2人だから安心して、と送る。
違うよ、恋音だから心配してないよ、と来る。
どういう意味!と怒ったスタンプを送る。
違う!花音は裏切らないって信じてるよ、という内容だが、土下座するスタンプがついている。
来てもいいけど、いきなりは止めて、私からちゃんと話したい、と送る。
分かった。少し遅れていくよ。
職場に着くと、つい眺めてしまった。
もしかしたら、再来年にはいないかもしれない。まだ先の話だが、そう思うと、違う景色のように感じる。
まぁ、今できることを一生懸命やろう。
近くの同僚に声を掛ける。
「システム部の真田さんって、いつか辞めちゃうんですか?」
「あぁ、そうみたいだね。噂では30歳までって聞いてるけど。あれ?山上さんも参戦するの?花嫁争いに」
「いえいえ、私なんかじゃ無理ですよ」
「猛獣ばっかりだからね。山上さんじゃ骨も残らないかもしれない」
「フフフッ。はい、猛獣注意で仕事頑張ります」
やっぱりみんな知ってるんだ。早苗は、会社のは興味がないと言っているので、井戸端会議がないこの部署にいては、情報が入らない。
そして、水曜日になった。終業後、早苗の職場に出迎えに行く。
そして、いつもの居酒屋に来た。
「久しぶりだね」
「そうね」
「早苗は大丈夫だったの、デートとか?」
「今日はあっちも飲み会だから、ちょうど良かったわ」
早苗は私より小さく、目が大きく可愛らしい顔をしている。しかし、中身は、本人も自覚があるようだが、おっさんだ。
確か今の彼氏とは2年くらい付き合っているはずだ。
店に着いて、座った。
「早苗さん、花音さん、久しぶりですね」店主の娘が席に来た。家族経営のアットホームな店だ。
「ごめんね。なかなか来れなくて」
「いいえ、その分、今日はたっぷりお金落としていってください」可愛い顔をして、なかなかはっきり言う看板娘だ。
「はいはい」ビールと刺身盛り、枝豆を注文した。
「毎度あり」と笑顔で席を離れる。
「彼氏とは順調なんだ」
「なんか最近、熟練夫婦みたいになってきた」
「結婚はしないの?」
「どうかしらね?分かんない」
「そういうもの?」
「う~ん。私もこの人だっていう決め手がないのよね」
「ふ~ん」
「珍しいわね。そういう話、興味ないのに」
「興味がないわけじゃなかったのよ。ただ聞いても、私には縁がない話だと思ってたから」
「思ってた?って言った?」
早苗の顔が段々と悪い顔になる。
それに対して、私は分かりやすく真っ赤になった。
「えっ!ホントに?どの段階なの?告白したとか、されたとか?付き合い始めたとか?」
「来年か再来年には結婚する」
「えっ!結婚!ちょ、ちょ、ちょっと待って。展開が早すぎるんだけだ。表紙をめくったら、次のページに、おしまいって書いてあった気分よ」
「フフフッ、早苗、相変わらず、面白いね」
「そうじゃなくて、いつから付き合い始めたの?」
「そうね。半年くらい前かな」
「いくらなんでも早すぎない?結婚でしょ。相手の両親には会ったの?」
「近いうちに会う」
「えっ!まだ会ってないの。何か買わされたりしてない?お金とか渡したりしてない?」
「してないわよ。私の貯金なんて、たかが知れてるし」
「そうだよね。まだそんなに働いてないもんね」
「そうでしょ」
「それで、中なの?」
私は頷いた。
「私の知っている人?」
「多分、知っていると思う」
「えぇ、教えてよ。誰?」
「システム部の・・・」
「システム部?あそこ独身なんていたっけ?。中途採用も多いし、よく分からないわ。でも、私が知ってるのよね?」
私は枝豆食べながら、頷く。
「もう分かんない!誰?」
「多分、信じないと思うけど」
「うんうん」
「真田さん」
「真田さん?あぁ、真田さん、御曹司の。そう言えば、システム部だったわね」
「そう、その真田さん」
「それで、その真田さんが、どうしたの?」
「早苗、ちゃんと聞いてた?私の結婚相手」
早苗は絶句した。
最近、こればっかりだ。まぁ、真田さん相手に、私も何度もしたが。
「ごめん、全然、想像できない。花音が真田さんと結婚!」
「そう、正解」
早苗は残りのビールを飲み干した。
「由紀ちゃん、ビール」と追加した。私も追加した。
「どうして、そうなった!」
「ごめん、ちょっと待って。電話がかかってきた」
真田さんからだ。
「うん、もう来てもいいよ、話したから。すぐに着く?分かった。待ってる」
「えっ、真田さん来るの?」
「良く分からないけど、来たいって」
「えぇ、先に行ってよ」
「いいじゃない。私も仕事服だし」
「まぁ、そうね。でも緊張する」
「なんでよ」
「営業部だと接点ないから。うちの職場でもファンの子いるわよ」
「はぁ、気が重い。相手が私だと知ったら、ショック受けるんだろうな」
「なんでよ。私は真田さんも中々見る目あるなって思うわよ」
「早苗、愛してる」
「はいはい」
すると、ドアが開いた。
「いらっしゃい」看板娘が急いで出迎えに行く。
私は手を振る。
真田さんは看板娘に何かを言って、こっちに歩いてきた。
早苗は立ち上がった。
「初めまして、営業部の鈴木早苗です」私は早苗の口から出ている声とは思えなかった。
「よく花音から、早苗さんのことは聞いてます。仲良くしてくれて、ありがとう」
「はい。嬉しい、初めてマジマジと見たよ。花音」
「はいはい、その声、誰かと思ったわよ」
3人分のビールが運ばれてきた。
改めて乾杯した。
「どうして、花音を選んだんですか?」
「僕は選んだんじゃないんです。花音だから、結婚しようと思ったんです」
「うわぁ、人生で一回は言われてみたいセリフ、ナンバーワンだ。でも、真田さんの選択は、私が保証しますよ。花音は当たりです」
「嬉しいな。そう言ってもらえると」
「2人とも止めて。顔が熱いわ」
「本当に可愛いやつだのう。花音は」
「本当に止めて」
「はいはい。でも、告白は真田さんから?」
「うん。人生で初めて告白したから、ドキドキしたよ」
「えっ!そうなの?」私は驚いた。
「そうだよ。されたことは何回かあったけど、したのは初めて。みんなこんな気持ちでしてきたんだと思うと、もっと優しく断ればよかったと反省してる」
「でも、断るんですね?」
「まだ子供で、好きって気持ちが分からなかったからね」
「まぁ、小さい頃は、女の子の方がおませちゃんですからね」
「そうなのかな。ただ僕が無沈着過ぎただけだと思うけど」
「今となっては、いい思い出になってますよ。きっと」
「そうだといいんだけど。なんか話しやすいな。早苗さん」
「そうですか?イケメンに言われると嬉しいな」
「そう言ってくれるのは有り難いんだけど、イケメンって、顔だけみたいな感じがして、あんまり好きじゃないんだ」
「あぁ、なるほど。言われる方は、そう思うんですね。私は可愛いって言われると、嬉しいですけどね。気をつけます」
「ごめん。そんなに気にしてるわけじゃないから」
「はい。花音、どうしたの?静かね」
「何か早苗と話してる真田さんが新鮮だなって思って」
「そう?」
「いつも職場で迷惑そうにしてるから、女の人、苦手なんだって、勝手に思ってた」
「あれは、こっちの状況を理解してくれないから、迷惑そうにしてるんだよ。別に普通に話せるさ」
「ふ~ん」
「えっ!何?花音以外と話してるのイヤ?」
「そうじゃないけど。真司のこと、もっと知らないとならないなって思っただけ」
「あら?ヤキモチ?」
「そうじゃないわよ。真司は優しいから、勘違いしちゃう子いるんだろうなって」
「えっ!僕はそんなつもり全くないよ」
「だから怖いのよ」
「花音以外絶対にないから」
「分かってるわよ」
「あらら。真田さん、しっかり尻に敷かれてますね。猛獣達が聞いたら、卒倒しそうだわ」
「猛獣?」
「真田さんを狙ってる人達よ。みんな、よくやるわって、思ってるわ」
「そうなんだ」
「いつ、みんなに言うの?」
「式の日にちが決まった後かな」
「猛獣達が可哀想に思えてきた。少しくらい匂わせたら?」
「どうする?真司」
「僕はすぐにでも言いたいけど。職場的なものがあるじゃん。僕か花音か異動になるよ」
「それは避けたいな」
「そういえば、真田さん、もうすぐですよね。会社辞めるの」
「あぁ、うん、来年いっぱいかな」
「花音はどうするの?」
「続けるつもりだけど。真司を支えるのが優先。それが無理なら辞めるかも」
「そうだよね。寂しくなるな」
「まだ決めたわけじゃないからね」
「でも、安心しました。真田さんが悪い人だとは思いませんけど、初めて名前を聞いた時は、花音のこと騙してるんじゃないかと思いました。でも、ちゃんと好きだってことが分かったんで」
「良かった。信じてもらえて」
「遅くなったけど、花音、おめでとう」
「早苗ぇ」私は涙が溢れた。
「止めてよ。私までつられちゃうじゃない」早苗の目にも涙が溢れた。
「うえぇん」私と早苗はお互いに手を握りあった。
それからは、楽しく飲んで食べた。
そして、真田さんがお金を払い、店を出た。
「じゃあ、私はここで。お邪魔虫は退散します」
「早苗、今日はありがとう」
「うん。真田さん、ご馳走様でした」早苗は手を振ってから背を向けた。
「どうする?帰る?」
「中で出さない?」
「うん、我慢する」
私は真田さんの腕に自分の腕を絡めた。
「また下着買わなくちゃ」
「そうだね。明後日の金曜は、忘れないようにしよう」
「また泊まるの?」
「うん、一緒にいたい」
「結婚する前に飽きちゃうよ」
「えっ!そうなの?」
「真司は飽きないの?」
「飽きたら、セーラー服を着せたり、バニーガールの服とか」
「変態!」
「冗談だよ。365日触っても飽きないよ」
「仕事は行くんだよ」
「テレワークにして」
「もう、バカ!早く行こ」
途中で母さんにラインした。
ほどほどにしなさいよ。いちおう嫁入り前なんだから、と帰ってきた。
はい、気をつけますと送った。まさか明後日も泊まるとは言えない。
真田さんに見せた。
「確かに、お母さんの言うとおりだ。僕が甘えすぎてる」
「じゃあ、止める?」
「うぅ、イヤだ、一緒にいたい」
「そうよね?」
「あっ!先に籍だけ入れよう。それなら1年も待たなくていい」
「えっ!大丈夫なの?」
「うん、そうだ。そうしよう」
「別にいいけど、子供は先よ」
「うん、それでいい」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる