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引っ越し2
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「姉ちゃん、さっきはイキナリごめんなさい」
「ビックリしたわよ。ダメって言ったら、騒ぎそうだし」
「いや、ダメって言われたら、素直に部屋に戻るつもりだったんだ。約束だし」
「えっ!」
「だから、凄い嬉しかった」
「なんか私がしたかったみたいじゃん」
「違うよ。出来の悪い弟の願いを叶えてくれた。とっても優しいお姉ちゃんだよ」
「そう?」
「うん。姉ちゃんは悪くない」
「あっ、そうそう約束なんだけど」
「うん、何すればいい?」
「真司のお母さんが、真司が昔病んでた時にお世話になった教会があって、そこに孤児院があるの」
「うん」
「入籍した日に、真司と2人で教会と孤児院に行ったんだけど、みんな元気すぎて」
「その子達の相手を僕に?」
「うん。女の子は絵本読んてればいいんだけど、とにかく男の子が、凄い走り回って大変なの」
「庭はあるの?」
「う~ん、確か隣に広い空き地があったと思う」
「野球やっても大丈夫かな?」
「聞いておくわ」
「もしできるなら、野球部のみんなにも声かけるよ。女の子はマネージャーもいるし」
「そんなに大事にして大丈夫なの?」
「小百合のお母さんに、いいところを見せるチャンスだから」
「確かにそうね」
「スカウトの前よりも張り切んなきゃ」
「どっちも頑張りなさいよ」
「もちろん」
「会社辞めたら、応援に行くね」
「うわっ!姉ちゃんと小百合に見ててもらえるなら、千人力だよ」
「もぉ、楓ったら」
「フフン」
マンションに着く前に、電話した。既に真司と小百合さんは部屋にいると言った。
マンションの来客用に車を止める。
真司と小百合さんが待っていた。
台車を借りていたらしく、荷物を下ろして、部屋へと行く。
「こんなに広いの?」楓はビックリした声を上げた。
「私は狭くていいって言ったんだけど」
「家具がないから、そう感じるだけだよ」
これから、ベッドやソファーが来る予定だ。
「掃除が大変」
「僕がやるから」
「そうもいかないよ」
「じゃあ二人でやろう」
「はいはい、そういうことは後にして」小百合が言った。
台車から荷物を下ろした。
「僕が行くよ。次で終わるから」
「うん、お願い」
「じゃあ、食器を出しましょうか。結構貰い物があったから、持ってきたのよ」小百合が言う。
「助かります」うちの食器は恥ずかしくて持ってこれない。
色々な箱に入った様々な形の食器を食器棚に詰めていく。あの家に贈られたものだ。きっとどれも高いのだろう。
しかし、スプーンやフォームはあったが、箸がないことに気がついた。
「後で買いに行こう」真司が言った。
「包丁なんかの台所のものは佳代さんに買ってきてもらったから、間違いないと思うけど」
包丁が4本もある。後で調べよう。
キッチンにしまっていく。
楓が戻って来て、荷物は運び終わった。寝室に大きなウォークインクローゼットがあるので、ハンガーで掛けていく。やはり真司の服の数が多い。
「そんなにあるの?」
「えっ!これでも家に半分くらい置いて来たんだけど」
私はラフな格好で職場に行っているが、真司はそうもいかないのだろう。
「これからは、私も気をつけないとならないわね。真司が恥かいちゃう」
「花音が気になるなら、少しずつ買ってこう」
そこで真司の電話が鳴った。
「あれ、課長からだ」
「はい、真田です」
「はい、大丈夫です」
「はい、明日の月曜日、9時ですね。分かりました」
「かの・・・山上さんは隣りにいます」
「はい、伝えます。失礼します」
「どうしたの?」
「僕達のことが社長の耳に入ったらしい。月曜日の9時に社長室に来てくれって」
「えっ!」
普通なら社員同士の結婚に、社長が出てくることなどあり得ない。真司と結婚するということは、そういうことなのだろう。
「何着てこう?」
「初デートの時の服でいいんじゃない」
「仕事する服じゃないよ」
「あれ?スーツは?」
「サイズが合わないから、買い直そうと思ってたら、忘れてたの」
「後で買いに行こう」
「慌ただしくなっちゃったわね」
「しょうがないよ。ついでに何着か買おう」
「うん」
インターホンが鳴った。
「あっ、家具屋が来た」
真司は走っていき、応対する。
しばらくすると、配達員が荷物を持って入ってきて、真司に場所を確認してから、ベッドを作り始めた。
なんとなく眺めてしまう。
「あっ!何か飲み物買ってくるよ」
まだ冷蔵庫は来ていない。
「うん、お願い。電気屋さんも来るから」
「分かった。多目に買ってくる」
「真司は何がいい?」
「缶コーヒー」
「いつものでいい?」
「うん」
小百合さん達のところに行く。
「飲み物買って来ますけど、何がいいですか?」
「僕付き合うよ、小百合はいつものでいい?」
「うん、お願い」
私と楓は外に出た。スーパーは歩いて10分もかからない。
「僕もあれくらいの部屋、借りられるのかな?」
「プロになれば余裕じゃない」
「そうだね。頑張ろう!」
スーパーに入って、飲み物売り場に来た。
お茶、水、スポーツドリンク、紅茶、缶コーヒーとカゴに入れていく。
「こんなもんかな?」
「お菓子買っていい?なんか動いたら、小腹が空いてきた」
「うん、いいよ」
楓はいくつかカゴに入れた。
「チョコ?」
「小百合がそれ好きなんだよ」
「えっ!ちゃんとしたケーキとか買おうよ」
「僕、食べられないし」
「何かあるわよ」
とりあえず会計し、楓がレジ袋を2つ持った。
「重くない?」
「余裕だよ」
店内をうろつく。
「う~ん、贈答用って感じね」
「もう帰ろうよ」
「うん」
私は、荷物を持っていない楓の腕に、自分の腕を組ませた。
「えっ?」
「重いもの持ってくれてるから、サービス」
「嬉しいな」楓は照れた。
「夫婦に見えるかな?」
「どうかしらね?」
「姉ちゃん、幸せになってね」
「大丈夫よ。楓が心配になって、小百合さんのことを捨てるようなことにはならないから」
「うん、信じてる。真司兄さんのこと」
「そうね。信じてあげて」
「ビックリしたわよ。ダメって言ったら、騒ぎそうだし」
「いや、ダメって言われたら、素直に部屋に戻るつもりだったんだ。約束だし」
「えっ!」
「だから、凄い嬉しかった」
「なんか私がしたかったみたいじゃん」
「違うよ。出来の悪い弟の願いを叶えてくれた。とっても優しいお姉ちゃんだよ」
「そう?」
「うん。姉ちゃんは悪くない」
「あっ、そうそう約束なんだけど」
「うん、何すればいい?」
「真司のお母さんが、真司が昔病んでた時にお世話になった教会があって、そこに孤児院があるの」
「うん」
「入籍した日に、真司と2人で教会と孤児院に行ったんだけど、みんな元気すぎて」
「その子達の相手を僕に?」
「うん。女の子は絵本読んてればいいんだけど、とにかく男の子が、凄い走り回って大変なの」
「庭はあるの?」
「う~ん、確か隣に広い空き地があったと思う」
「野球やっても大丈夫かな?」
「聞いておくわ」
「もしできるなら、野球部のみんなにも声かけるよ。女の子はマネージャーもいるし」
「そんなに大事にして大丈夫なの?」
「小百合のお母さんに、いいところを見せるチャンスだから」
「確かにそうね」
「スカウトの前よりも張り切んなきゃ」
「どっちも頑張りなさいよ」
「もちろん」
「会社辞めたら、応援に行くね」
「うわっ!姉ちゃんと小百合に見ててもらえるなら、千人力だよ」
「もぉ、楓ったら」
「フフン」
マンションに着く前に、電話した。既に真司と小百合さんは部屋にいると言った。
マンションの来客用に車を止める。
真司と小百合さんが待っていた。
台車を借りていたらしく、荷物を下ろして、部屋へと行く。
「こんなに広いの?」楓はビックリした声を上げた。
「私は狭くていいって言ったんだけど」
「家具がないから、そう感じるだけだよ」
これから、ベッドやソファーが来る予定だ。
「掃除が大変」
「僕がやるから」
「そうもいかないよ」
「じゃあ二人でやろう」
「はいはい、そういうことは後にして」小百合が言った。
台車から荷物を下ろした。
「僕が行くよ。次で終わるから」
「うん、お願い」
「じゃあ、食器を出しましょうか。結構貰い物があったから、持ってきたのよ」小百合が言う。
「助かります」うちの食器は恥ずかしくて持ってこれない。
色々な箱に入った様々な形の食器を食器棚に詰めていく。あの家に贈られたものだ。きっとどれも高いのだろう。
しかし、スプーンやフォームはあったが、箸がないことに気がついた。
「後で買いに行こう」真司が言った。
「包丁なんかの台所のものは佳代さんに買ってきてもらったから、間違いないと思うけど」
包丁が4本もある。後で調べよう。
キッチンにしまっていく。
楓が戻って来て、荷物は運び終わった。寝室に大きなウォークインクローゼットがあるので、ハンガーで掛けていく。やはり真司の服の数が多い。
「そんなにあるの?」
「えっ!これでも家に半分くらい置いて来たんだけど」
私はラフな格好で職場に行っているが、真司はそうもいかないのだろう。
「これからは、私も気をつけないとならないわね。真司が恥かいちゃう」
「花音が気になるなら、少しずつ買ってこう」
そこで真司の電話が鳴った。
「あれ、課長からだ」
「はい、真田です」
「はい、大丈夫です」
「はい、明日の月曜日、9時ですね。分かりました」
「かの・・・山上さんは隣りにいます」
「はい、伝えます。失礼します」
「どうしたの?」
「僕達のことが社長の耳に入ったらしい。月曜日の9時に社長室に来てくれって」
「えっ!」
普通なら社員同士の結婚に、社長が出てくることなどあり得ない。真司と結婚するということは、そういうことなのだろう。
「何着てこう?」
「初デートの時の服でいいんじゃない」
「仕事する服じゃないよ」
「あれ?スーツは?」
「サイズが合わないから、買い直そうと思ってたら、忘れてたの」
「後で買いに行こう」
「慌ただしくなっちゃったわね」
「しょうがないよ。ついでに何着か買おう」
「うん」
インターホンが鳴った。
「あっ、家具屋が来た」
真司は走っていき、応対する。
しばらくすると、配達員が荷物を持って入ってきて、真司に場所を確認してから、ベッドを作り始めた。
なんとなく眺めてしまう。
「あっ!何か飲み物買ってくるよ」
まだ冷蔵庫は来ていない。
「うん、お願い。電気屋さんも来るから」
「分かった。多目に買ってくる」
「真司は何がいい?」
「缶コーヒー」
「いつものでいい?」
「うん」
小百合さん達のところに行く。
「飲み物買って来ますけど、何がいいですか?」
「僕付き合うよ、小百合はいつものでいい?」
「うん、お願い」
私と楓は外に出た。スーパーは歩いて10分もかからない。
「僕もあれくらいの部屋、借りられるのかな?」
「プロになれば余裕じゃない」
「そうだね。頑張ろう!」
スーパーに入って、飲み物売り場に来た。
お茶、水、スポーツドリンク、紅茶、缶コーヒーとカゴに入れていく。
「こんなもんかな?」
「お菓子買っていい?なんか動いたら、小腹が空いてきた」
「うん、いいよ」
楓はいくつかカゴに入れた。
「チョコ?」
「小百合がそれ好きなんだよ」
「えっ!ちゃんとしたケーキとか買おうよ」
「僕、食べられないし」
「何かあるわよ」
とりあえず会計し、楓がレジ袋を2つ持った。
「重くない?」
「余裕だよ」
店内をうろつく。
「う~ん、贈答用って感じね」
「もう帰ろうよ」
「うん」
私は、荷物を持っていない楓の腕に、自分の腕を組ませた。
「えっ?」
「重いもの持ってくれてるから、サービス」
「嬉しいな」楓は照れた。
「夫婦に見えるかな?」
「どうかしらね?」
「姉ちゃん、幸せになってね」
「大丈夫よ。楓が心配になって、小百合さんのことを捨てるようなことにはならないから」
「うん、信じてる。真司兄さんのこと」
「そうね。信じてあげて」
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