続・クラスイチ(推定)ブスだった私が、浮気しない真面目なイケメン彼氏と別れた理由

ぱるゆう

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社長室

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 社長室の扉を開く。
「失礼します」と声を上げて、中に入る。

 社長が机から立ち上がる。
「あぁ、よく来てくれた」

 中に入り、扉を閉める。

 部屋にいた女性が
「どうぞ、かけて」とソファーに歩いて来る。

 私達はソファーの脇に立ち、社長を待った。

 社長が座ると、私達も座った。
「真司くん、来てもらって悪かったな」

「智昭おじさん、結婚のこと、ご報告が遅れて申し訳ありません」

智昭おじさん!心の中でビックリした。

「おい、会社では、社長と呼べと言ってるだろう」と呆れた声を出す。

「そうでした。失礼しました。社長」

「まずは、結婚おめでとう。初めて、優助から聞いた時は、ビックリしたが、本当に良かった」

「ご心配をおかけしました」と頭を下げた。

「まぁ、心配になって、アチコチ探してみたんだが、自分で相手を見つけられて、本当に良かったと思ってるよ」

「幸い、花音さんという素敵な女性がいてくれたので、僕も決心することができました」

3人の目が私を見る。
「システム開発部のプログラミング第一課の山上花音です」
と頭を下げた。

「旧姓使用なのかな?」

「あっ、すいません。会社では秘密にしていたので」

「まぁ、いい。でも、システム開発部に、こんなに綺麗な人がいたなんて、知らなかったな」

「社長、セクハラになりますよ」と女性は言った。

「そっ、そんなつもりはない。あぁ、褒めることもできない。窮屈な時代だ」

「社長、ありがとうございます」と素直に言った。

「あぁ、良かった。それで、真司くん、提案なんだが」

「はい、なんでしょうか?」

「個人的なことは置いといて、やはり会社は組織だ。このまま2人を今の部署に置いておくわけにもいかない」

やはりそうなるか、と思った。

「はい、分かります」

「それで、山上くんは、今後は社長夫人となっていくわけだが、他の財界人へ顔を売っておいた方が何かといいんではないか、と思ってな」

えっ!嫌な予感しかしない。ある程度、覚悟してはいたが、まさか!

「と、おっしゃいますと・・・」

「秘書課で私の担当になってもらえないかと考えておる」

あぁ、やっぱり・・・

「えっ!」真司もビックリいている。

「社長、私は入社してから、ずっとプログラムしか経験がございませんが、よろしいのでしょうか?」
真司が怒り出しそうなので、私が冷静に対応しなくては。

「もちろん、退社のこともあるから、一人前になれ、とは言わない。この福田くんの仕事を補佐してくれればいい」

「福田天音です。主に社長の面倒を見てます」

「そういうこと言うな」社長は呆れている。

天音さんは、とても人当たりの良さそうな優しい笑顔を振りまいている。しかし毒舌キャラらしい。
年齢は、40辺りか。

「補佐と言いますと」

「主に私のスケジュール管理だが、会合とか、その後の懇親会とかには随行してもらう」

「分からないことばかりですが、よろしくお願いします」と頭を下げた。

「特に準備してもらうことはないんだけど、1つだけいい?」天音さんが言った。

「はい、何でしょうか?」

「髪も黒いし、化粧も控えめでキチンとできているし、派手なアクセサリーもしていない。それはいいんだけど」

そう言って、私の足を指差した。

「秘書課では基本的に、スカートにしてくれる。もちろん、設営とか動く時は、みんな、パンツになるんだけど、それ以外は、スカートよ」

あっ、マズイ!

私は真司の膝に置かれた腕を掴んだ。

「それは認められません」

あぁ、言っちゃった。

「えっ!」
社長と天音さんは少し驚いた顔をした。

「山上さん、スタイルいいし、絶対に似合うと思うけど」

「もちろん花音は似合います。そんなことは分かってます。でも、スカートを履くことには反対です」

はぁ、しょうがない。私は真司の方を向いて、
「真司さん、社長は真司さんと私のためを思って、ご提案してくださったの
よ。そんな子供みたいな理由で、断ることはできないの」

「子供みたいって・・、僕は花音のためを思って言ってるんだ」

「今も胸はチラチラ見られてるのよ。コートか何かで隠せって言うつもりなの?」

「胸は隠れてるから」

「隠れてても見る人は見るの。それに、そんなに私が信用できないの?私が誰かに気に入られて、ホイホイついて行くよう女だと思ってるの?」
    
「そういう訳じゃないけど」

「だったら、足くらいで騒がないの!ストッキング履くんだし、生足は真司しか見ないんだから」

「分かったよ。もう何も言わないよ」

「それでいいのよ」

私は社長達の方に顔を向けた。

2人ともニヤニヤしている。

しまった!またやってしまった!と気がついた。

「金曜のことは本当らしいな」社長が言うと、
「そうみたいですね。山上さん、私はそういうの嫌いじゃない、いえ、好きだけど、会社の外では我慢することも覚えてね」

私は顔が熱くなって、下を向いた。
「はい、気をつけます」

「私は、裏でコソコソされるのは好きじゃない。しかし、この立場になると、そんな綺麗事を言ったところで無理な話だ。だから、家では言いたいことをお互いに言ったほうが、いいと思っている。家の中まで腹の中を探り合うのは、さすがにシンドイからな。
真司くん、いい相手を見つけたな」

「まぁ、それはそうなんですけど」
イマイチ歯切れが悪い。

隣で私はにこやかに笑顔を向ける。心の中では、機嫌を取らないとならないな、と思っている。

「発令は一ヶ月後だ。今の部社で仕事の引き継ぎ等をしてくれ」

「はい。分かりました」

社長達は立ち上がろうとした。
「すいません!私が気にすることでもないと思うのですが」

「何だい?」座り直す。

「私がいなくなった後に、補充はされるんでしょうか?」

「あぁ、システム開発部が忙しいのは分かっています。今日の午後にでも社内外に募集をかけます。だから、安心して」

「ありがとうございます」
私と真司は改めて会釈をして、扉の前に行き、
「失礼します」と言って外に出た。

「真司」
私は手を引っ張っていく。近くに給湯室がある、中を確認して、真司を連れ込む。
  
「ごめんなさい」と抱きつく。

「もういいよ。花音のこと信じてるから」真司の手も背中に回る。

私は顔を上げ、
「口紅落ちちゃうから」と舌を出す。

「しょうがないな」と舌を絡める。

真司の手に力が入ってくる。会社だと考えると、やはり私も興奮してくる。こんなことだから、異動があるんだと思った。

私は真司を離して、
「続きは帰った後ね」と手を引っ張って出ていく。

ここは危険過ぎる。

エレベーターで、下りていく。

廊下では、真司が先に歩き、ついていく。私の職場の前で、別れた。




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