続・クラスイチ(推定)ブスだった私が、浮気しない真面目なイケメン彼氏と別れた理由

ぱるゆう

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2番目の姉2

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「渚さ~ん」私は走りながら大声を出した。

 大きなスーツケースを転がしながら、渚さんが振り返って、驚いた顔をした。
「えっ!なんでついてきたのよ。今日は大事な日なんじゃないの?」

「はぁはぁ。あっ!お母様達、置いてきちゃった。初めて会うのに」

「どんだけウッカリなのよ。私のことは大丈夫だから、戻りなさい」
 渚さんは呆れた顔で、そう言った後、背中を向けようとした。

 私は、渚さんの手を掴んだ。
「えっ!」またビックリした顔で振り返る。

「ちゃんと渚さんと話したい」私は渚さんの目を見つめた。

「はぁ、あなた、お節介にも程があるわよ」

「私の家族になる人ですから」

「あの真司が選んだ理由が分かるわ」

「そうですか?」

「はいはい、ここじゃなんだから。近くにいい喫茶店があるから」

 私は渚さんの少し後ろを歩いた。
 年は、真田さんと小百合さんの間だから、30ちょいか。でも、若く見える。

「何?」

「あぁ、すいません。私より若く見えるなぁって思って」

「え~っと」

「花音です。山上花音」

「花音ちゃんね。いくつなの?」

「今年26です」

「うわっ!わっか!4つも違うわ」

「全然、そんな風に見えないですよ」

「あら?お世辞でも嬉しいわ」

「そっ、そんなことないです。本当にそう思ってます」

「一緒にいた坊やは、弟?」

「はい、楓って名前で今年20歳です」

「20歳!危ない。犯罪を起こすところだった。あっ、でも、姉さんが相手か?年上好きなの?」

『どうなんですかね?年齢とかそういうのは関係なしに、好きになった相手がたまたまそうだったってところですかね」

「まぁ、あの姉さんが相手だからね」

『何かあるんですか?』

『真司のことは知ってるの?』

「はい、私も弟も知ってます」

「それでもあんなに好きなんだ?」

「そうみたいですね」

「あなたもよ」

「そうですね。ずっと一緒にいたいと思ってます」

「あらら。ご馳走様。ここよ」

 そこはロッジ風の建物だった。渚さんが扉を開けると、チリンチリンと鐘が鳴った。

「あらっ、渚ちゃん久しぶり」

「マスター、ご無沙汰してます」

 店の中は半々といったところだった。主婦のグループや老夫婦、リモートなのか?ワイシャツを来た人等がいた。

 奥の席につく。
 後を追ってきたマスターが
「何にする?』

「私はおすすめ。花音ちゃんは?』

「紅茶ありますか?』

「ダージリンでいい?』
 私は頷いた。

 マスターはさっき置きかけたメニユーを持ち帰る。

「ごめんね。騒がしくするつもりはなかったんだけど」

 私は少し聞きづらそうに、
「何かあるんですか?』

「そうね。あると言えばあるかな。聞きたい?」渚さんはあっけらかんとした感じだ。

「はい、できれば」

「一番の理由は」

 そこで飲み物が運ばれてきた。

 渚さんは去っていくマスターの背中を見つめ、私を手招きした。
 私は顔を近づける。

「一番の理由は、私がセクシー女優だからかな」

「セクシー女優?・・・って何ですか?」

「まぁ、単なるAV女優よ」

「えーぶ」私は大きな声を出してしまった。

「し~っ」

「すいません。ビックリしちゃって」

「それりゃ怒るわよね。大企業の社長の娘が、そんなことしてれば」

「でも、お金に困ってるわけじゃないですよね?」

「そういう子もいるけど、今は有名になりたいから出てる子が多いかな」

「そうなんですか?渚さんも?」

「私は元々アイドルになりたかったの。でも、全然人気なんか出なくって。そろそろ潮時かなって時に、話が上がってきて、始めたの」

「そうなんですか。すいません、私、こればっかり言ってますね」

「いいわよ。でも、出てみたら、思いのほか人気が出て。辞められなくなっちゃった」

「でも、凄いですね。私なんか人様に見せられないですよ」

「あら?そう」渚さんは手を出して、私の胸を揉んだ。

「キャッ!」

「スタイルいいじゃん。真司が喜ぶ顔が見えるわ」

「えっ!真司さん、そんなにオッパイ気にしないですよ」

「ハッハッ、我慢してるのね。バレないように」

「そうなんですか?」

「本当は大好きよ。オッパイ」

「はぁ、覚えておきます」

「それに、惜しいのよね。花音ちゃん」

「何がですか?」

「少しイジれば、美人になるわよ」

「いじるって?まさか整形!」

「私もやってるの。多分、同級生とか気が付かないんじゃないかな」

「そんなに?」

「フフフッ。そんなにはしてないけど、少しだけでも、かなり印象は変わるわよ」

「でも、真司さんが嫌がるから」

「だろうね。真司は独占欲強いから」

「私は、真司さんに、そう思っていて欲しいです」

「そうなの?まぁ、これが私があの家で歓迎されない理由」

「まだ続けるんですか?」

「もうすぐ契約が終わるから引退するわ。飽きちゃったし。ギャラも下がる一方だし」

「引退しても大丈夫なものなんですか?また、刺激が欲しくなったり」

「私は仕事だから、してるだけ。世間が思ってるほど、好きだから続けてるって子は多くはないわよ」

「そういうものなんですね」

「まぁ、引退しても、こいつはセックスが好きだから、また復帰するって思われるけどね」

「でも、復帰しないんですね」

「そう、みんなの思い出の片隅に残ればいいんじゃない」

「やっぱり結婚式出てください」

「えっ!無理だよ」 

「そうですね。無理かもしれないですね。真田家としては」

「えっ!どういうこと?」

「渚さんには、私の友人として出席してもらいます」

「そんな屁理屈通らないよ」

「私、友達少ないから、ちょうど良かった」

「全く!結婚したら真司も大変そうね」

「真司さんには、責任は取ってもらいますから」



 ふると、
「やっぱりここか、良かった。すぐ見つかって」

「真司」

「姉さんのこと探してて、迷子になったのかと心配になったんだよ」

「姉さん?」さっきは、あの人と言っていたのに、渚さんは眉間にシワを寄せた。

「僕が悪かった。姉さんにも結婚式、出てもらうよ」

「あら、どうしたの、この急展開は?花音ちゃんに嫌われないため?」

 真田さんは頭を掻いた。

「あらら、すっかり尻に敷かれてるわね」

「そんなことないです。私の方が真司さんのこと好きですから」

「まぁ、そういうことにしましょう。でも、真司、安心して、結婚式には出ないから」

 私と渚さんはニヤニヤした。

「えっ?どういうこと?」

「真田家としては出ない。だけど、花音ちゃんの友人として出席するわ。それなら、万が一バレても大丈夫でしょ。
 真田家の2番目の子供は海外にいて、都合が悪くて、出席できないことにすればいい」

「そんなこと・・・、まぁ、それなら父さん達も納得するかな」

「引退したら、髪も黒く戻そうと思ってたし、服装も地味にするわ。それなら、バレないと思うけどね」

「引退?」

「次の仕事で引退する。それを言おうと思って、帰ってきたのよ。引退後は、ひっそりと暮らすわ。やりたいこともあるし」

「やりたいことって何だよ」

「それは、父さん達の前で言うわ。佳代さんにも聞いて欲しいし」

「佳代さん?」

「さっ、帰りましょ。花音ちゃんいれば、追い出されないでしょ」

 何故か真田さんが会計をさせられて、店を出た。

 私と渚さんで並んで歩きながら、楽しく話した。真田さんは後ろからついてくる。

 自分で選んでおいて、何なんだが、花音は一体何なんだろう。僕達の方がつまらない意地を張っているように思わされてしまう。

 それに、いつの間にか仲良くなってるし。

「だから、少しだけだから。初対面の相手の顔が面白いように変わるわよ」

「ちょっと待て、整形勧めてるのか?」

「そんなだいそれたもんじゃないよ。少しだけだから」

「私は真司だけ見てくれればいいって言ってるんだけど。勿体ないって」

「姉さん、マジで止めて」

「相変わらずね。花音ちゃんのこと信じられないの?」

真田さんは、痛いところを突かれたという顔になった。

「大丈夫、やらないから」

「はぁ、良かった」

「でも、ちょっとメイク変えてみない?」

「メイクなら必死に勉強会しましたけど」

「発想の転換よ」

「そんなこと」

「まぁ、期待してて。こっちはプロにやってもらってるからね」

「はい、楽しみにしてます」



そして、真田家に着いた。
真田さんが先に入る。

私は入るなり、
「すいません。いきなり飛び出してしまって」と膝が付きそうなほど、頭を下げた。

「いいわよ。どうせ渚もいるんでしょ」

私はリビングのドアの全てを開けた。

「バレてたか、さすが母さん」

「何しに帰ってきたの?」

「次の作品で引退する。それからは、ひっそりと暮らす」

「だからって、私達は許すことはできないわよ」

「許してくれとは言わない。でも、やりたいことがあるの。佳代さんを貸して」

いきなり名前を出されました、佳代さんは、狼狽した。
「わっ、私ですか?」

「そうよ。私は野球に興味がなかったから、よく家にいたわ。だから、佳代さんのお菓子をいっぱい食べた。どれも美味しかったぁ」

「まぁ、渚お嬢さま、とっても嬉しいです」

「それで思ったの。佳代さんのお菓子を我が家以外のみんなにも食べて欲しいと」

「私は旦那様と奥様、皆さんの為にお作りしたいです」

「そう言うと思ったわ。だから、私がやる。佳代さんのお菓子を私が作って、世界中を幸せにしたい」

「まぁ、そんな、大変ですよ」

「あら?私の腕が訛ってると思ってるの?佳代さん」

「確かにいくつか作り方はお教えしましたけど。かなり前かと」

「大丈夫よ。台所借りるわね」

佳代さんは心配なのか、脇で見ている。

しばらくすると、焼き菓子のいい匂いが漂った。

「どう?佳代さん」

「いただきます。あぁ、ちゃんとできてます。嬉しいわ」

「お菓子は定期的に作ってたのよ。現場のみんなも喜ぶし」

佳代さんは、皿に盛り付けて、私達の前に置いた。

「うん、渚さん、美味しいわ」

両親も口に入れ、ひとまず安心したようだ。

「最後の仕事は何とかならないのか?」父親は言った。

「契約だから、しょうがないの。でも無理なことはしないから」

「そうか。もう何を言っても無駄と言うことだな」

「そうね。最後だから。それに入れ替わりの早い仕事だから、みんなすぐに私のことなんて忘れるわ。あぁ、そんな人いたなって」

「そうなることを願うよ。しかし、服装は今からでも何とかできるだろ。着替えてきなさい」

「はいはい、分かりました。佳代さん、私の服、大丈夫かしら?」

「はい、定期的に空気を入れ替えてますから」

「さすが、佳代さん。じゃあ、行ってくる」渚さんはリビングを出ていった。

「なんかわが家の問題が次々と解決していってるみたいだよ。父さん、母さん」

「その通りだ。深刻だと思っている問題も、なんの蟠りもないと、遠い昔の話に思える。いい勉強になった」

「ホントに。花音さん、大活躍ね」

「えっ!私は何もしてないですよ。渚さんが辞めるのだって、決まってたことですし」

「辞めても、それを知らなければ、私達は、ずっと渚を家に入れなかっただろう。それを知れたのは、間違いなく花音さんのお陰だ。ありがとう」

「いやいや、そんな、感謝されても」

「花音、ここは素直に、はいと言っておいてくれないか?」

「分かりました。お役に立つことができて、こちらこそ嬉しいです」

「まだ何かあったか?我が家の問題」

「そもそも真司さんが、いつまでも結婚しないことが一番の問題だったでしょ」

「そうだな。一番の問題がなくなってる」

「それは僕が解決した」

「当たり前だしょ。あなたの問題なんだから」

「ハッハッハッ、そうだね」


佳代さんが飲み物を入れ替えた。
すると、白いシャツに紺色のパンツ姿の渚さんが現れた。
シャツから少し透ける赤い色と、金髪とのギャップがある。

「これでいい?』

「あぁ、それでいい。渚』

「こんな服、コスプレものみたいだよ』

「渚姉さん、余計なこと言わない」

「あぁ、ごめん」

渚さんもテーブルに座る。

「花音ちゃん、泊まってくの?』

「いえいえ、いきなりは泊まれないですよ」

「それもそうか。いつか泊まれたら、ゆっくり話そうね」

「はい、よろしくお願いします」

「えっ!泊まるの、僕の部屋じゃないの?」

「いいじゃない、一晩くらい。そういうことはホテルでしなさい」

「こら、渚!」

「あぁ、分かったわよ。でも、やっと初孫がコウノトリで、やってくる未来が見えたわね?」

「本当に、みんな自由にし過ぎなのよ」

「お父さん、お母さん、ごめんね。でも、もう迷惑になるようなことはしない。お菓子もちゃんと学校通って勉強する。そして、どこかの店で修行して、いつかは自分の店持ちたいな。
まぁ、結婚は無理だと思うから、花音ちゃんと、小百合姉さんの子どもを可愛がろうかな?
あぁ、2人の介護は私がやるから、安心して」

「おいおい、勝手に老人にするな」

「そうよ。死ぬ間際まで、ピンピンしてるから、必要ないわよ」

「うん、これからは親孝行する。だから、長く生きててね」

父親と母親は顔を見合わせて、苦笑いした。

「私達は、みんなが、普通に元気にしててくれれば、いい。それが一番の親孝行だ。いいか、普通にだぞ」

「うん、最後が終わったら、普通に生きるわよ」



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