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後任 1
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それから1週間後、
私が職場に行くと、一人の女の子が、同僚と楽しげに話していた。
「おはようございます」と声を掛ける。
「おはよう」という男性社員の中、その女の子は、
「おはようございます。まだ内示前ですが、山上さんの後任になります。今は営業3課の佐倉詩織です」と会釈をした。
「山上花音です。また女性が来るとは思わなかったわ」
「僕達が頼んだんだよ。なるべく女性がいいって。山上、まだ山上さんでいいのかな?」
「はい、大丈夫です」
「山上さんのお陰で、僕達も、職場もかなり変わったからね。まぁ、今はあんまり性別を言ってはいけないんだけど、前に戻らないようにするためにね」と係長が説明した。
「そうなんですね」
「これから、引き継ぎ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
その後、部長からも正式に紹介された。
「今週一週間で、今の部署の引き継ぎを終えて、来週からは、山上さんからの引き継ぎになる。よろしく頼んだぞ」
「はい、心の未練は残っても、仕事の未練は残らないようにします」
「ハッハッハッ、それで頼むよ」
詩織は、
「来週から、よろしくお願いします」と再度頭を下げて、職場を後にした。
「あんな明るそうな子が、プログラムって大丈夫なんですか?」同僚が言う。
「プログラムの学校を卒業して、我が社の入社も、ここが希望だったらしい」課長が答える。
「よっぽど好きなんですね。何かを作るのが」私が言うのも変だが。
「そうかもな」
私は席に戻り、仕事に取り掛かった。
そして終業後、真司と待ち合わせて、一緒に帰っている。
「今日、私の後任の人が来たわ」
「うちの職場にも来たよ」
「可愛らしくて、明るそうな子で、真司が心配だわ」少しイジワルしてみる。
「僕を何だと思ってるんだよ。手当たり次第に女の子をチェックしたりしないよ」
「私のことはチェックしたの?」
「花音はチェックするまでもないよ。一目惚れだし」
「一目惚れって、何年も我慢してたの?」
「それは冗談だけど、話してて楽というか、花音がちゃんとしてたというか、こっちの考えをよく聞いてくれてたり、話さなかった部分もちゃんとできてたり、どんどん好きになってた」
「私、ちゃんとしてたかな?」
「自分で分かっててやるなら、みんなもできるかもしれない。花音は、そういうのが自然にできてたんだよ」
「本当に自覚ないけど」
「そうそう、佐倉さんと一度3人で食事しようよ」
「あっ!それいいね。引き継ぎ始まったら、誘ってみるわ」
そして引き継ぎが始まる日となった。
朝、職場に来ると、詩織は既に来ていた。
「おはようございます」
「おはようございます。今日から、よろしくお願いします」とお辞儀をした。
「こちらこそ。よろしくね」
先ずは職場の案内だ。何処に何があるかを教える。
ポットとコーヒーメイカーが置いてあるところでは、
「あっ、私は紅茶が好きだったから買ってたけど」
「私は珈琲派なので」
「みんなも飲むから。誰か飲みたい人がつくるから、あったら飲んで大丈夫よ。自分が飲みたくなったら、作ってね」
同僚から、
「早くも仲の良い姉妹みたいだな」と言われる。
「妹をよろしくお願いします」と返す。
席に戻り、パソコンを立ち上げる。
「学校通ってたって聞いたけど」
「はい、ひと通りは勉強しました」
とりあえず、今の設計書を見せて、説明する。
「大体仕上がってるから、後はエラーとバグを見つけるだけ」
「動くは動くんですか?」
「とりあえずは大丈夫そうなんだけど、動作が重いのよね」
「そうなんですか?」
システムを動かしてみる。やっぱ反応が遅い。
設計書とプログラムを見比べる。
「ここって要りますか?コレより、この・・・」とプログラムを紙に書いている。
「あっ!なるほど」とプログラムを入力してみる。
実行したら、確かに処理速度はあがったようだ。
「凄いね」
「オタクなんです。自分の考えた通りに動くのが、とても好きなんです」
職業として選んだ私とは、根本的に違うようだ。
そうして、昼休みとなった。
今日は2人で食堂に行く。
「佐倉さん、引き継ぎの間、夜、空いてる日ある?」
「えっ!基本的に大丈夫ですけど」
「じゃあ、飲みに行こっか?」
「はい!嬉しいです」
「それで、システム部の真田さんも一緒でいい?今後も仕事で会うから」
「えっ?ご主人ですよね?」
「まぁ、そうね。なんか恥ずかしいけど」
「はい、大丈夫です。私からもお願いします」
「良かった」
「でも、そうなると、呼び方が・・・」
「私は花音でいいわよ」
「それなら、私も詩織でお願いします」
「うん、そうしましょ」
「はい!」
私が職場に行くと、一人の女の子が、同僚と楽しげに話していた。
「おはようございます」と声を掛ける。
「おはよう」という男性社員の中、その女の子は、
「おはようございます。まだ内示前ですが、山上さんの後任になります。今は営業3課の佐倉詩織です」と会釈をした。
「山上花音です。また女性が来るとは思わなかったわ」
「僕達が頼んだんだよ。なるべく女性がいいって。山上、まだ山上さんでいいのかな?」
「はい、大丈夫です」
「山上さんのお陰で、僕達も、職場もかなり変わったからね。まぁ、今はあんまり性別を言ってはいけないんだけど、前に戻らないようにするためにね」と係長が説明した。
「そうなんですね」
「これから、引き継ぎ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします」
その後、部長からも正式に紹介された。
「今週一週間で、今の部署の引き継ぎを終えて、来週からは、山上さんからの引き継ぎになる。よろしく頼んだぞ」
「はい、心の未練は残っても、仕事の未練は残らないようにします」
「ハッハッハッ、それで頼むよ」
詩織は、
「来週から、よろしくお願いします」と再度頭を下げて、職場を後にした。
「あんな明るそうな子が、プログラムって大丈夫なんですか?」同僚が言う。
「プログラムの学校を卒業して、我が社の入社も、ここが希望だったらしい」課長が答える。
「よっぽど好きなんですね。何かを作るのが」私が言うのも変だが。
「そうかもな」
私は席に戻り、仕事に取り掛かった。
そして終業後、真司と待ち合わせて、一緒に帰っている。
「今日、私の後任の人が来たわ」
「うちの職場にも来たよ」
「可愛らしくて、明るそうな子で、真司が心配だわ」少しイジワルしてみる。
「僕を何だと思ってるんだよ。手当たり次第に女の子をチェックしたりしないよ」
「私のことはチェックしたの?」
「花音はチェックするまでもないよ。一目惚れだし」
「一目惚れって、何年も我慢してたの?」
「それは冗談だけど、話してて楽というか、花音がちゃんとしてたというか、こっちの考えをよく聞いてくれてたり、話さなかった部分もちゃんとできてたり、どんどん好きになってた」
「私、ちゃんとしてたかな?」
「自分で分かっててやるなら、みんなもできるかもしれない。花音は、そういうのが自然にできてたんだよ」
「本当に自覚ないけど」
「そうそう、佐倉さんと一度3人で食事しようよ」
「あっ!それいいね。引き継ぎ始まったら、誘ってみるわ」
そして引き継ぎが始まる日となった。
朝、職場に来ると、詩織は既に来ていた。
「おはようございます」
「おはようございます。今日から、よろしくお願いします」とお辞儀をした。
「こちらこそ。よろしくね」
先ずは職場の案内だ。何処に何があるかを教える。
ポットとコーヒーメイカーが置いてあるところでは、
「あっ、私は紅茶が好きだったから買ってたけど」
「私は珈琲派なので」
「みんなも飲むから。誰か飲みたい人がつくるから、あったら飲んで大丈夫よ。自分が飲みたくなったら、作ってね」
同僚から、
「早くも仲の良い姉妹みたいだな」と言われる。
「妹をよろしくお願いします」と返す。
席に戻り、パソコンを立ち上げる。
「学校通ってたって聞いたけど」
「はい、ひと通りは勉強しました」
とりあえず、今の設計書を見せて、説明する。
「大体仕上がってるから、後はエラーとバグを見つけるだけ」
「動くは動くんですか?」
「とりあえずは大丈夫そうなんだけど、動作が重いのよね」
「そうなんですか?」
システムを動かしてみる。やっぱ反応が遅い。
設計書とプログラムを見比べる。
「ここって要りますか?コレより、この・・・」とプログラムを紙に書いている。
「あっ!なるほど」とプログラムを入力してみる。
実行したら、確かに処理速度はあがったようだ。
「凄いね」
「オタクなんです。自分の考えた通りに動くのが、とても好きなんです」
職業として選んだ私とは、根本的に違うようだ。
そうして、昼休みとなった。
今日は2人で食堂に行く。
「佐倉さん、引き継ぎの間、夜、空いてる日ある?」
「えっ!基本的に大丈夫ですけど」
「じゃあ、飲みに行こっか?」
「はい!嬉しいです」
「それで、システム部の真田さんも一緒でいい?今後も仕事で会うから」
「えっ?ご主人ですよね?」
「まぁ、そうね。なんか恥ずかしいけど」
「はい、大丈夫です。私からもお願いします」
「良かった」
「でも、そうなると、呼び方が・・・」
「私は花音でいいわよ」
「それなら、私も詩織でお願いします」
「うん、そうしましょ」
「はい!」
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