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花は根に、鳥は古巣に帰る
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ドスン……。ドスン……。
重い物と重い物がぶつかる音がする。
「もう一度だ!」
下知が飛んだ直後、同じ音が夜の都城に響き渡る。それは何度も何度も繰り返され、途切れることはない。
――剛軍が戦場から撤退して数日。都城に戻った彼らの目に飛び込んできたのは、王城に続く門が固く閉ざされている光景であった。
事態の重さを悟った永祥はすぐに衝車を用意させて門を壊すことにした。
剛兵たちは彼の指示に従って衝車で衝き続ける。しかし堅牢な門はなかなか壊れない。
永祥は歯噛みして苦々し気に呟く。
「何をとち狂ったのだ? 雪峰殿ッ!」
ズン……!
「ッ!」
その声に呼応するように、一際大きな音が鳴り響く。見れば、門が壊され無残な姿になっていた。
永祥は剣を宮殿に向けて掲げ、叫ぶ。
「全軍、突撃!」
「うおおおッ!」
兵らは雄叫びを上げて宮殿に雪崩れ込む。
永祥も、白髭を揺らしながら廊下を駆けていく。進む先々では永祥を邪魔すべく護衛兵たちが立ち塞がった。が、永祥は躊躇うことなく斬り伏せて奥へ突き進む。
そして目的の場所――政務室に辿り着くと、戸布を斬り払う。
「雪峰殿!」
「む……? おお、永祥殿。待ち草臥れたぞ」
鬼気迫る永祥。対して雪峰は、酒飲み仲間が遅れてやって来たのに文句を言うような、そんな軽い口振りであった。
永祥は忌々しそうに雪峰の後ろを睨みつける。そこには数人の兵に拘束されている王の姿が松明に照らされていた。
「お主……何をしているのか分かっておろうな? これは重罪であるぞ?」
その低く重い声に、雪峰の青白い顔が引き締まる。
「無論。承知しておる」
「なれば! この戦の分かれ目である今、何故謀反を起こしたのだ!」
「はッ! 戦の分かれ目! ははははは!」
雪峰は首を仰け反らせて大笑いする。
「その文句! もう聞き飽きたわ!」
「……!」
永祥は素早く剣を構えて雪峰の斬撃を去なし、びりびりと痺れる手に片目を瞑る。と、目の前では再び剣が振り上げられていた。
「はあッ!」
「くッ……!」
永祥は体を捻って雪峰の一撃を避け、そして反動を利用して斬りかかる。
甲高い金属音が鳴り、小さく火花が散る。互いに剣を弾き合い、そして再び振りかぶる。
そのまま二人は一騎打ちにもつれ込み、互角の戦いを見せた。が、長引いていく内に優劣が定まっていく。
「やはり衰えは隠せんな! 永祥殿!」
「ッ、なんのこれしき……!」
ぐっと爪先に力を入れると、永祥は雪峰に踏み込み、息吐く暇も与えない攻撃を繰り出す。しかし雪峰も素早く身を翻して反撃を食らわせる。刹那、永祥の着物の袖が大きく切れる。
「チッ!」
永祥は舌打ちをすると、剣戟の合間に吠える。
「雪峰殿! こんなことをしている暇は我々には無い! 早く剣を収めぬか! 今ならまだ不問に付すぞ!」
「不問に付す……? はッ! それくらいで揺らぐようならこんなことなどしておらぬわ!」
「ならばせめて〝謀反〟の要求を聞かせろ! 金か! 地位か! 幾らでも用意してやろう! だから王の御身柄を離すのだ!」
「ふッ……ははははは!」
雪峰は笑い飛ばす。
「私は〝謀反〟などしておらぬわ!」
「ぐぅッ!」
今までになく重い一撃に、永祥の体が後ずさる。
「私はこの国に忠誠を誓った! 何時如何なるときでも守り通すと!」
吠え猛りながら雪峰は追撃する。
「確かに彼の国を奪えれば豊穣な国土を得られるであろう! だが五年ぞ? その間に国民がどれだけ疲弊したと思っておる! この五年の死者数を見よ!」
雪峰の攻撃を永祥が受け止め、二人は額を突き合わせる。永祥は雪峰の隈の濃い目をじっと見据えて淡々と答える。
「そのくらい……倒した暁に補填すれば良かろう。あやつらを倒せば、今以上の益が約束されていよう」
「ッ! お主という奴は……! その甘言に王は誑かされてしまったのだ!」
苦虫を噛み潰したような雪峰の声を合図に、二人は体を離し、もう一度剣を構え直す。
「もはや大義などないお主に、この国を付き合わせる訳にはいかぬ。此度のことで王にも御考えを改めていただき……」
ちらり、と雪峰は後ろを振り返る。
「こんな……お主の執着のための戦など、早く終わらせねばならぬ!」
永祥に目線を戻した雪峰は、渾身の一撃を放つ。その圧倒的な速さに、永祥は一瞬反応が遅れた。
「ぐ、う……」
カラン、と剣の落ちる音と共に、永祥が床に倒れ込む。その拍子に傍近くの松明も床に転がり落ち、灯が煌々と燃え盛って彼の半面を黒く翳らせる。
永祥は慌てて剣を拾おうとする。が、目の前に切っ先が差し出されたことでそれは叶わなかった。
「終いだ……。命までは取らぬ。これからは大人しく隠退生活を送るんだな」
雪峰に見下ろされた永祥は、眉を吊り上げて睨み上げる。
「儂はただ一心にこの国を強くしたい。それだけを願っておる。お主とて知っておろう⁈」
「そんなの、百も承知だ。だが今のお主はあの女に惑わされて我を見失っておる」
「何を言う。あやつさえおれば我が国は安泰「目を覚ませ!」
雪峰は永祥の首に剣先を近付ける。
「修の様子をとくと見よ! 弩どころか投石機まで恐れずに、無我夢中で前進する姿! あれはもはや死兵と化している! しかもあやつらはそれに気付いてすらおらぬ!」
怒声で震えた刃先が、永祥の首の皮を薄く切る。
「しかもあの女ッ、年を取っておらぬではないか! あんな魔性……国に置いていては何時か自滅するぞ!」
「ふ…………ふはははは!」
「な、何を笑う!」
突然笑い出した永祥に、雪峰はもう一度武器を突きつける。
「ははは、いや、何。お主が面白いことを言ったものだから、笑いを堪えきれなかったわ」
「なッ……⁉ どこに可笑しい要素があったのだ!」
にやり、と永祥はほくそ笑む。
「雪峰殿はもう答えを分かっておるではないか。死兵結構! 魔性結構! 国さえ存続すれば国民など幾らでも替えが利く! 自滅? そんなの、あやつを上手く使えば良いだけの話ではないか!」
「お、お主という奴は……! その性根、叩き斬らねば治らんか⁉」
雪峰は怒りに打ち震えると、永祥の首目がけて剣を振り上げた、その刹那。
「熱ッ!」
永祥が雪峰に向かって松明を薙いだ。
雪峰は咄嗟に顔を逸らした。しかし一歩間に合わず、炎に頬を焼かれる。
「がぁ!」
呻き声を上げる雪峰。痛みで手元が緩んで剣を落としてしまう。するとすかさず永祥が間合いを詰める。
「フンッ!」
「かはッ!」
一瞬の隙に永祥は、懐刀で雪峰の腹を鎧の隙間から突き刺す。
ドクドクと鎧に血が伝って流れていく。永祥が体を離すと、雪峰はよろめきながら自分の腹を押さえる。
「は、はは……。流石は永祥殿……お見事……」
そのまま雪峰は崩れ落ちて膝を突く。
「今度こそ終いだ。お主のように優秀な者が無駄な足掻きで命を落とすなど、残念でならん。お主の方こそ焼きが回ったのではないか?」
永祥は興醒めしたとでも言いたげな目で雪峰を一瞥すると、彼を置いて王が拘束されている方に向かって足を踏み出した。だがそれを、雪峰の嘲笑が引き留める。
「無駄? 私が何も考えずにこのようなことをするとでも? 永祥殿が都城に帰るまで、ただ無為に過ごしていたとでも?」
「ッ⁈ 雪峰殿! 何をしたッ!」
永祥は雪峰の胸倉を掴んで持ち上げる。と、血の気のない顔の雪峰が痛快そうに笑みを浮かべる。
「修国に講和条約を結ぶための使者を送った。そろそろ到着する頃合いであろう」
「講和だと……⁈」
「ああ。破格の条件も付けておる故、あちらも喜んで呑むであろう」
「なんてことを……! そんなの結んでしまえば、あやつらを掌握することが出来なくなるではないか!」
「そうであろうな。実質負けを認めたようなものであるからの」
「ッ……くそ!」
永祥は口惜しそうに雪峰を投げ飛ばすと、後ろに控えていた王に迫って凄む。その気迫に押されて、王を拘束していた兵たちも尻込みする。
「王よ、一体どういうことですかな? 貴方様の御許可がなければ出せないはずでございますが?」
急に呼びかけられた王はきょどきょどとしながら答える。
「お、脅されたのだ、致し方なかろう」
「そこを突っぱねてこその〝王〟であろう!」
「ひッ!」
永祥の一喝に王は、叱られた子供がするように自分の頭を庇う。すると呆れたような笑い声が聞こえてくる。
「そういう、ところが……お主は……駄目なのだ……」
虫の息の雪峰が、掠れる程にか細い声で言う。
「強者とは……弱者を、守るためにあるのだ。弱者を、痛めつけるために、力をつけるのではなッ!」
「…………む? 何か言ったか? この歳になると、耳が遠くてよく聞こえなくてな」
そう言った永祥の足元に雪峰の頭が転がる。真っ二つに斬られた首からは血が溢れ、彼の足元を汚した。
それを無感情な目で見つめる永祥。
「続きはあの世で聞いてやるからの」
ぼそりと呟くと、そのまま手にしていた剣で王を捕えていた兵たちを薙ぎ払い、永祥が握っている剣からは大量の血が滴り落ちる。
「もっとも、あの世があればの話だが」
重い物と重い物がぶつかる音がする。
「もう一度だ!」
下知が飛んだ直後、同じ音が夜の都城に響き渡る。それは何度も何度も繰り返され、途切れることはない。
――剛軍が戦場から撤退して数日。都城に戻った彼らの目に飛び込んできたのは、王城に続く門が固く閉ざされている光景であった。
事態の重さを悟った永祥はすぐに衝車を用意させて門を壊すことにした。
剛兵たちは彼の指示に従って衝車で衝き続ける。しかし堅牢な門はなかなか壊れない。
永祥は歯噛みして苦々し気に呟く。
「何をとち狂ったのだ? 雪峰殿ッ!」
ズン……!
「ッ!」
その声に呼応するように、一際大きな音が鳴り響く。見れば、門が壊され無残な姿になっていた。
永祥は剣を宮殿に向けて掲げ、叫ぶ。
「全軍、突撃!」
「うおおおッ!」
兵らは雄叫びを上げて宮殿に雪崩れ込む。
永祥も、白髭を揺らしながら廊下を駆けていく。進む先々では永祥を邪魔すべく護衛兵たちが立ち塞がった。が、永祥は躊躇うことなく斬り伏せて奥へ突き進む。
そして目的の場所――政務室に辿り着くと、戸布を斬り払う。
「雪峰殿!」
「む……? おお、永祥殿。待ち草臥れたぞ」
鬼気迫る永祥。対して雪峰は、酒飲み仲間が遅れてやって来たのに文句を言うような、そんな軽い口振りであった。
永祥は忌々しそうに雪峰の後ろを睨みつける。そこには数人の兵に拘束されている王の姿が松明に照らされていた。
「お主……何をしているのか分かっておろうな? これは重罪であるぞ?」
その低く重い声に、雪峰の青白い顔が引き締まる。
「無論。承知しておる」
「なれば! この戦の分かれ目である今、何故謀反を起こしたのだ!」
「はッ! 戦の分かれ目! ははははは!」
雪峰は首を仰け反らせて大笑いする。
「その文句! もう聞き飽きたわ!」
「……!」
永祥は素早く剣を構えて雪峰の斬撃を去なし、びりびりと痺れる手に片目を瞑る。と、目の前では再び剣が振り上げられていた。
「はあッ!」
「くッ……!」
永祥は体を捻って雪峰の一撃を避け、そして反動を利用して斬りかかる。
甲高い金属音が鳴り、小さく火花が散る。互いに剣を弾き合い、そして再び振りかぶる。
そのまま二人は一騎打ちにもつれ込み、互角の戦いを見せた。が、長引いていく内に優劣が定まっていく。
「やはり衰えは隠せんな! 永祥殿!」
「ッ、なんのこれしき……!」
ぐっと爪先に力を入れると、永祥は雪峰に踏み込み、息吐く暇も与えない攻撃を繰り出す。しかし雪峰も素早く身を翻して反撃を食らわせる。刹那、永祥の着物の袖が大きく切れる。
「チッ!」
永祥は舌打ちをすると、剣戟の合間に吠える。
「雪峰殿! こんなことをしている暇は我々には無い! 早く剣を収めぬか! 今ならまだ不問に付すぞ!」
「不問に付す……? はッ! それくらいで揺らぐようならこんなことなどしておらぬわ!」
「ならばせめて〝謀反〟の要求を聞かせろ! 金か! 地位か! 幾らでも用意してやろう! だから王の御身柄を離すのだ!」
「ふッ……ははははは!」
雪峰は笑い飛ばす。
「私は〝謀反〟などしておらぬわ!」
「ぐぅッ!」
今までになく重い一撃に、永祥の体が後ずさる。
「私はこの国に忠誠を誓った! 何時如何なるときでも守り通すと!」
吠え猛りながら雪峰は追撃する。
「確かに彼の国を奪えれば豊穣な国土を得られるであろう! だが五年ぞ? その間に国民がどれだけ疲弊したと思っておる! この五年の死者数を見よ!」
雪峰の攻撃を永祥が受け止め、二人は額を突き合わせる。永祥は雪峰の隈の濃い目をじっと見据えて淡々と答える。
「そのくらい……倒した暁に補填すれば良かろう。あやつらを倒せば、今以上の益が約束されていよう」
「ッ! お主という奴は……! その甘言に王は誑かされてしまったのだ!」
苦虫を噛み潰したような雪峰の声を合図に、二人は体を離し、もう一度剣を構え直す。
「もはや大義などないお主に、この国を付き合わせる訳にはいかぬ。此度のことで王にも御考えを改めていただき……」
ちらり、と雪峰は後ろを振り返る。
「こんな……お主の執着のための戦など、早く終わらせねばならぬ!」
永祥に目線を戻した雪峰は、渾身の一撃を放つ。その圧倒的な速さに、永祥は一瞬反応が遅れた。
「ぐ、う……」
カラン、と剣の落ちる音と共に、永祥が床に倒れ込む。その拍子に傍近くの松明も床に転がり落ち、灯が煌々と燃え盛って彼の半面を黒く翳らせる。
永祥は慌てて剣を拾おうとする。が、目の前に切っ先が差し出されたことでそれは叶わなかった。
「終いだ……。命までは取らぬ。これからは大人しく隠退生活を送るんだな」
雪峰に見下ろされた永祥は、眉を吊り上げて睨み上げる。
「儂はただ一心にこの国を強くしたい。それだけを願っておる。お主とて知っておろう⁈」
「そんなの、百も承知だ。だが今のお主はあの女に惑わされて我を見失っておる」
「何を言う。あやつさえおれば我が国は安泰「目を覚ませ!」
雪峰は永祥の首に剣先を近付ける。
「修の様子をとくと見よ! 弩どころか投石機まで恐れずに、無我夢中で前進する姿! あれはもはや死兵と化している! しかもあやつらはそれに気付いてすらおらぬ!」
怒声で震えた刃先が、永祥の首の皮を薄く切る。
「しかもあの女ッ、年を取っておらぬではないか! あんな魔性……国に置いていては何時か自滅するぞ!」
「ふ…………ふはははは!」
「な、何を笑う!」
突然笑い出した永祥に、雪峰はもう一度武器を突きつける。
「ははは、いや、何。お主が面白いことを言ったものだから、笑いを堪えきれなかったわ」
「なッ……⁉ どこに可笑しい要素があったのだ!」
にやり、と永祥はほくそ笑む。
「雪峰殿はもう答えを分かっておるではないか。死兵結構! 魔性結構! 国さえ存続すれば国民など幾らでも替えが利く! 自滅? そんなの、あやつを上手く使えば良いだけの話ではないか!」
「お、お主という奴は……! その性根、叩き斬らねば治らんか⁉」
雪峰は怒りに打ち震えると、永祥の首目がけて剣を振り上げた、その刹那。
「熱ッ!」
永祥が雪峰に向かって松明を薙いだ。
雪峰は咄嗟に顔を逸らした。しかし一歩間に合わず、炎に頬を焼かれる。
「がぁ!」
呻き声を上げる雪峰。痛みで手元が緩んで剣を落としてしまう。するとすかさず永祥が間合いを詰める。
「フンッ!」
「かはッ!」
一瞬の隙に永祥は、懐刀で雪峰の腹を鎧の隙間から突き刺す。
ドクドクと鎧に血が伝って流れていく。永祥が体を離すと、雪峰はよろめきながら自分の腹を押さえる。
「は、はは……。流石は永祥殿……お見事……」
そのまま雪峰は崩れ落ちて膝を突く。
「今度こそ終いだ。お主のように優秀な者が無駄な足掻きで命を落とすなど、残念でならん。お主の方こそ焼きが回ったのではないか?」
永祥は興醒めしたとでも言いたげな目で雪峰を一瞥すると、彼を置いて王が拘束されている方に向かって足を踏み出した。だがそれを、雪峰の嘲笑が引き留める。
「無駄? 私が何も考えずにこのようなことをするとでも? 永祥殿が都城に帰るまで、ただ無為に過ごしていたとでも?」
「ッ⁈ 雪峰殿! 何をしたッ!」
永祥は雪峰の胸倉を掴んで持ち上げる。と、血の気のない顔の雪峰が痛快そうに笑みを浮かべる。
「修国に講和条約を結ぶための使者を送った。そろそろ到着する頃合いであろう」
「講和だと……⁈」
「ああ。破格の条件も付けておる故、あちらも喜んで呑むであろう」
「なんてことを……! そんなの結んでしまえば、あやつらを掌握することが出来なくなるではないか!」
「そうであろうな。実質負けを認めたようなものであるからの」
「ッ……くそ!」
永祥は口惜しそうに雪峰を投げ飛ばすと、後ろに控えていた王に迫って凄む。その気迫に押されて、王を拘束していた兵たちも尻込みする。
「王よ、一体どういうことですかな? 貴方様の御許可がなければ出せないはずでございますが?」
急に呼びかけられた王はきょどきょどとしながら答える。
「お、脅されたのだ、致し方なかろう」
「そこを突っぱねてこその〝王〟であろう!」
「ひッ!」
永祥の一喝に王は、叱られた子供がするように自分の頭を庇う。すると呆れたような笑い声が聞こえてくる。
「そういう、ところが……お主は……駄目なのだ……」
虫の息の雪峰が、掠れる程にか細い声で言う。
「強者とは……弱者を、守るためにあるのだ。弱者を、痛めつけるために、力をつけるのではなッ!」
「…………む? 何か言ったか? この歳になると、耳が遠くてよく聞こえなくてな」
そう言った永祥の足元に雪峰の頭が転がる。真っ二つに斬られた首からは血が溢れ、彼の足元を汚した。
それを無感情な目で見つめる永祥。
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ぼそりと呟くと、そのまま手にしていた剣で王を捕えていた兵たちを薙ぎ払い、永祥が握っている剣からは大量の血が滴り落ちる。
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