永遠の伴侶

白藤桜空

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猫の額にあるものを鼠が窺う

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「なんてことだ! ガンの者に暗殺されるなど……大失態だ!」
 ――フェン国宮殿の大広間。
 そこから官吏かんりの怒声が響き渡る。と、それを呼び水に至るところから声が上がる。
「やはり下賤げせんな生まれであるというのをもっと気にすべきだったのだ。捨てごまとして送り込まれたのであろう」
「だが王も王だ。あんな女ごときに絞め殺されるなど……。あの顔にだまされおって。油断していたにも程がある」
「しかし誰が予想していた? 身体検査をして武器を持っていないことを確認していたのだぞ? まさかダイを使うなどと……。女の細腕でそんなことをするなど、思いもよらなんだ」
「た、確かに……。それもそうだな……。我々が想像出来なかったのだ、王もそこに付け入られたのであろう」
 大広間に集まった官吏たちは千差万別の反応であった。彼らは喧々囂々けんけんごうごうに言葉を交わし、けれど誰もがこの事態にどう対処すればいいのか答えを持ち合わせていなかった。そこへ、
「それで? どう処刑するのが良いと思う?」
 と、一人の官吏が言う。すると皆怒りをあらわにして舌戦ぜっせんを繰り広げる。
「やはり王と同じ死に方をさせるべきだろう。絞首刑にすることで王の苦しみを味わわせてやる他あるまい」
「いや、王と同じ死に方などという名誉なことをさせてはならん。かまでの刑にしてじわじわと死んでいく苦痛を感じさせるべきだ」
「そんな殺し方では生ぬるい。それではあの世で王も浮かばれぬであろう。長く苦しみを与えつつ、声も出せない程の強烈な罰を与えるべきだ」
「となれば……八つ裂きの刑か? しかしあくまで剛から嫁いできた女をそんな刑に処して良いのか?」
「王を殺した女だぞ? それくらいしても良かろう。嫁いできた時点でもうこの女は我が国の所有物なのだから」
〝いや〟〝だが〟〝しかし〟――
 様々な意見が飛び交い、なかなか収拾がつかない。
 その喧騒けんそうの只中――大広間の中央には数人に取り抑えられた美琳の姿があった。
 美琳は、自身の殺し方について話し合われているのにも関わらず、素知らぬ顔でくうを見つめている。
「……まったく、気味の悪い女だ。普通なら減刑をうくらいするであろう」
 一人の官吏が嫌悪をき出しにして美琳を見ていると、他の官吏が嘲笑ちょうしょうする。
「はッ! 事の重大性を知らぬ程の馬鹿ではないのであろう。諦めているだけさ」
永祥ヨンシャンの養女に取り立てられただけはあるということか。ならばそれを利用して――――」
 その官吏はとある処刑方法を提案する。その発言に広場にいた一同は驚嘆する。が、誰しもがその方法に納得し、満場一致で採用されることが決まった。
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