永遠の伴侶(改定前)

白藤桜空

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二羽は木陰で羽を休める

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「うッ……!」
 文生ウェンシェンが呻き声を上げる。
 激しい挿抜を数度、繰り返す。最後に一度、腰を打ちつけた後、体から一気に力が抜ける。
 彼の心臓は激しく脈打ち、大量の汗が溢れ出す。
 荒く乱れた呼吸のまま、文生は美琳メイリンの体に倒れこむ。
 美琳は胸元の文生の頭を抱き込みつつ、穏やかに問いかける。
「気持ちよかった?」
 文生は呼吸を整えながら答える。
「うん、すごく。美琳は?痛くなかった?」
「大丈夫よ。私も気持ちよかったわ」
「そっか、それなら良かった」

 文生はほっと息をつくと、幸せに包まれた笑顔で仰向けに寝転がる。
 美琳も文生に寄り添って、彼の横顔をじっと見つめる。
「私、今とっても幸せ」
 その言葉に文生が振り返る。
「僕もだよ」
 文生は美琳に向き直る。
「……この時間が永遠に続けばいいのに」
「いつまでだってこうして過ごせばいいわ」
「そうもいかないよ。明日は式典があるし、政務だって……」
「違うわよ、そうじゃなくて」
 真面目な顔で話す文生に、美琳は笑い声を漏らす。
「毎日、何年も、何十年も、一緒にいればいいのよ」
「何十年も経ったら僕はおじいちゃんだよ?」
「構わないわ。文生であることに変わりはないもの」
「そう?あ、でもその頃には美琳もおばあちゃんだもんね」
「…………そう、ね」
 美琳は文生の胸に顔をうずめ、か細い声で聞く。
「文生は、どんな私でも愛してくれるわよね?」
「もちろんだよ!しわくちゃになっても、僕の可愛い美琳だよ」
「……うん、ありがとう」
 美琳はぎゅっと文生の体に抱き着く。と、文生が大きな欠伸をした。
「眠い?」
「うん。明日もあるし、もう寝ようか」
「分かった。おやすみなさい」
「おやすみ」
 文生は柔らかい微笑みを残して、すぐに夢の世界へと落ちていった。



 文生ウェンシェンの寝息が深くなったのを美琳メイリンは確認すると、同じように『眠ろう』と身じろいた、その瞬間。
 美琳は素早くとこから出て、文生を庇うように構える。彼女からは凄まじい殺気が放たれ、招かれざる客を追い払おうとした。が。
「美琳様、私でございます。静端ジングウェンでございます。どうか、御手を下ろしてくださいませ」
「ジングウェン……?」
 その小さく怯えた声に聞き覚えがあった。美琳は構えを解いて囁く。
「たしか部屋付きっていう……?」
「ええ、ええ、そうでございます」
 彼女の声はまだ震えたままではあったが、毅然と答えた。
「静端さん、どうしたの?」
「呼び捨てで構いません」
「じゃあ、静端。ウェン……王は眠ってますけど……何かあったんですか?」
 静端は軽く膝を折り曲げてこうべを垂れる。
「沐浴の準備が整いましたので呼びに参りました」
 美琳は片方の眉を上げながら、そっととこから寝間着を抜き取り羽織る。その拍子に白濁の粘液が足元に滴る。
「大事な御体です。何かあってはいけません。私共がきちんと清めさせていただきます」
 “それではこちらへ……”
 そう言った静端を合図に、戸口で控えていた侍女たちが間仕切り布を持ち上げた。
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