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王宮に入るのは驚くほど簡単だった。
それはもちろんハリーが王宮騎士であったからで、ゼフィア一人では門番に追い返されていたに違いない。
門番はニヤニヤ笑いながら、二人のために門を開け、彼女はぺこりと頭を下げる。
「頭なんて下げなくてもいいぞ」
「ハリー。なんだ?嫉妬か?」
門番が軽口を叩き、ハリーがぎろりと睨む。すると急に彼の顔色が変わる。
「どうしたのですか?」
「なんでもないぞ。さあ、行こう」
怯えたような表情でこちらを見る門番が気になったが、背中を押されゼフィアは王宮に入った。
門を抜けると庭が広がっており、真っ直ぐ伸びる石畳の道をハリーと共に歩く。
建物の扉の前には騎士がいて、ハリーの顔を見ると笑った。
「今日まで休むんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったが、オリバー様に面会したい」
「オリバー様か。……その娘はなんだ?」
騎士はハリーの背中に隠れるようにして立つゼフィアに気がつき、怪訝そうに尋ねる
(それはそうよね。村に物資と伝言を届けるだけなのに、私がノコノコ着いてきたもの)
どう説明したらいいのかと思案しているゼフィアの前で、ハリーが口を開く。
「この娘はオリバー様の妹のようなものだ。会いたいというので連れてきた。ゼフィアという名だ。取り次いでくれ」
「妹……のような。ゼフィアか。わかった。少し待ってろ」
騎士はそう言うと中に入り、すぐに戻ってきた。
「悪いが少し待ってくれ。俺が直接呼びに行けなくてすまないな」
「気にするな。お前も仕事があるだろう?ゼフィア。悪いが、少しこっちで待とう。疲れたか?」
「大丈夫です」
ハリーに茶色の瞳がゼフィアに向けられる。とても優しい表情でゼフィアは胸を鷲掴みされたような衝動を覚えた。
(どうしたの?私?ハリー様がこうして私を見るのは初めてじゃないのに)
「おやおや、ハリー。お前、オリバー様の村で嫁さんを探してきたのか?」
「余計なことを言うな。サム」
あの門番同様、ハリーがドスの効いた声で返すと急に青くなった。
「おいおい。ちょっとからかっただけだろう?怒るなよ」
「そういうのは嫌いだ」
「わかったよ。ああ。だからそう睨むな。ゼフィアさんも怯えているだろう?」
(え?私?なんで急に私まで)
「ゼフィア?悪い。怖かったか?」
「いえ、そんなことないです」
振り返ったハリーはなぜか焦っていて、ゼフィアは慌てて首を横に振る。
(怒っていたらしいけど、全然私からは見えなかった。大体ハリー様はいつも私には優しいし。どうしたんだろう?)
「お、許可が出たぞ。蔦の間で待っているそうだ。案内は必要か?」
「必要ない」
「わかった。そう言うことだ。仕事に戻っていいから」
騎士サムは屋内で待っている誰かにそう伝えて、扉を開ける。
美しい赤色の絨毯、真っ白な壁に装飾された柱などが目に入り、ゼフィアは緊張した。
「緊張することはない。俺がついている。行くぞ」
「はい」
ゼフィアがハリーの言葉に頷き、歩き出す。すると騎士サムに呼び止められた。
「ハリー。一つだけお前に聞きたい。村から戻ってきて凄みがましたぞ。何かあったのか?」
「何も。凄みがましたか?悪かったな。俺は冗談が嫌いなんだ」
「……そうか。だったらいいけど。邪魔したな」
サムはそれ以上聞くことはなく、ハリーも言葉を発することはなかった。
おかしな雰囲気になってしまったが、ゼフィアにはどうすることもできない。
「行くぞ」
ハリーに促され、ただ彼について歩き出した。
それはもちろんハリーが王宮騎士であったからで、ゼフィア一人では門番に追い返されていたに違いない。
門番はニヤニヤ笑いながら、二人のために門を開け、彼女はぺこりと頭を下げる。
「頭なんて下げなくてもいいぞ」
「ハリー。なんだ?嫉妬か?」
門番が軽口を叩き、ハリーがぎろりと睨む。すると急に彼の顔色が変わる。
「どうしたのですか?」
「なんでもないぞ。さあ、行こう」
怯えたような表情でこちらを見る門番が気になったが、背中を押されゼフィアは王宮に入った。
門を抜けると庭が広がっており、真っ直ぐ伸びる石畳の道をハリーと共に歩く。
建物の扉の前には騎士がいて、ハリーの顔を見ると笑った。
「今日まで休むんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったが、オリバー様に面会したい」
「オリバー様か。……その娘はなんだ?」
騎士はハリーの背中に隠れるようにして立つゼフィアに気がつき、怪訝そうに尋ねる
(それはそうよね。村に物資と伝言を届けるだけなのに、私がノコノコ着いてきたもの)
どう説明したらいいのかと思案しているゼフィアの前で、ハリーが口を開く。
「この娘はオリバー様の妹のようなものだ。会いたいというので連れてきた。ゼフィアという名だ。取り次いでくれ」
「妹……のような。ゼフィアか。わかった。少し待ってろ」
騎士はそう言うと中に入り、すぐに戻ってきた。
「悪いが少し待ってくれ。俺が直接呼びに行けなくてすまないな」
「気にするな。お前も仕事があるだろう?ゼフィア。悪いが、少しこっちで待とう。疲れたか?」
「大丈夫です」
ハリーに茶色の瞳がゼフィアに向けられる。とても優しい表情でゼフィアは胸を鷲掴みされたような衝動を覚えた。
(どうしたの?私?ハリー様がこうして私を見るのは初めてじゃないのに)
「おやおや、ハリー。お前、オリバー様の村で嫁さんを探してきたのか?」
「余計なことを言うな。サム」
あの門番同様、ハリーがドスの効いた声で返すと急に青くなった。
「おいおい。ちょっとからかっただけだろう?怒るなよ」
「そういうのは嫌いだ」
「わかったよ。ああ。だからそう睨むな。ゼフィアさんも怯えているだろう?」
(え?私?なんで急に私まで)
「ゼフィア?悪い。怖かったか?」
「いえ、そんなことないです」
振り返ったハリーはなぜか焦っていて、ゼフィアは慌てて首を横に振る。
(怒っていたらしいけど、全然私からは見えなかった。大体ハリー様はいつも私には優しいし。どうしたんだろう?)
「お、許可が出たぞ。蔦の間で待っているそうだ。案内は必要か?」
「必要ない」
「わかった。そう言うことだ。仕事に戻っていいから」
騎士サムは屋内で待っている誰かにそう伝えて、扉を開ける。
美しい赤色の絨毯、真っ白な壁に装飾された柱などが目に入り、ゼフィアは緊張した。
「緊張することはない。俺がついている。行くぞ」
「はい」
ゼフィアがハリーの言葉に頷き、歩き出す。すると騎士サムに呼び止められた。
「ハリー。一つだけお前に聞きたい。村から戻ってきて凄みがましたぞ。何かあったのか?」
「何も。凄みがましたか?悪かったな。俺は冗談が嫌いなんだ」
「……そうか。だったらいいけど。邪魔したな」
サムはそれ以上聞くことはなく、ハリーも言葉を発することはなかった。
おかしな雰囲気になってしまったが、ゼフィアにはどうすることもできない。
「行くぞ」
ハリーに促され、ただ彼について歩き出した。
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