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しおりを挟む「あれね。本当可愛いわよね」
俺はおねぇの振りをして話を合わせる
「野木さんもそう思う?」
隣に座っているのは、麻由美さんだ。
とても綺麗。芸能人レベルだと思う。
「うん。思う」
女性らしく首を傾げて答える、俺。
不毛すぎる。
背後の友達でバーテンダーの克己が呆れた顔をしているのが、見なくてもわかった。
あれは一か月前だった。
克己のやっているゲイバーに飲みにきた。
俺はノンケなんだけど、飲みにきてと何度か誘われたので、興味もあったので、行ったら……。
運命の人に出会った。
一目ぼれだ。
だけど、問題は彼女が男嫌いだということ。
男は嫌いだけど、自分に性的な興味がないゲイやおねぇは大丈夫ということで、常連らしかった。
「野木チアキさん?」
「そうそう。僕の友達なんだ。ね、チアキ」
「うん」
克己にアドバイスされ、俺はおねぇの振りをすることにした。
そうじゃないと最初から相手にされないと言われたからだ。
「友達?普通の?」
「どうかなあ」
「友達よ。普通の!」
おねぇのふりをするのはいい、だけど、克己の相手だと思われたら、もうチャンスはゼロだ。
そう思って、俺は慌てて否定した。
「そうなの?克己くんも大変ね」
「そうでしょ?」
「何がなの?」
「秘密」
二人は仲良く笑い合う。
悔しい。
俺は除け者だ。
それから、麻由美さんがバーにきたら克己に教えてくれるように頼んで、週一でバーに通った。
麻由美さんとの四度目のデート、デートじゃない。
わかってる。だけどそう考えたい。
俺はおねぇの振りをして二人の会話に入る。
「あ、百合子!」
突然、麻由美さんの声がワンオクターブ上がった。
入ってきたのは、中性的な女性?多分。胸がちょっとある気がする。
「待った?」
「ううん。全然」
麻由美さんは椅子から立ち上がり、百合子と呼ばれた女性の腕に自分の腕を絡ませる。
……これって。
「克己くん、野木さん。今日はこの辺でね。またね!」
麻由美さんはカウンターに一万円札を置くと、俺たちに向けて手を振る。
中性的な百合子さんは、まるで親の仇のように俺を睨みつけた。
だが麻由美さんに見えない位置だ。
俺の下心バレてる?
そして二人はバーから出て行ってしまった。
「克己。もしかして、麻由美さんってレズ?」
「うん」
「なんだよ!初めから言えよ。馬鹿みたいにおねぇのフリしちゃったじゃないか」
「面白かった」
「なんだよ。くそ!」
この四週間、こいつは絶対、俺で遊んでいた。
麻由美さんとデートしている気になっていたのは馬鹿な俺だけだ。
くそ。
「帰るわ。じゃあ」
麻由美さんの置いた一万円の上に俺もさらに一万円を置き、克己に背を向ける。
「まって、待って。謝るから」
克己が焦ったように俺に声をかけてきたが、無視。
だが、店を出ても彼は追いかけてくることはなかった。
それがちょっと寂しいと思った俺は、本当阿呆だ。
コンビニでビールとつまみをかって、家に戻る。
そして静かな我が家で一人飲みをした。
ビールを三本くらい開けて、明日は仕事だと寝ようとしたころに、電話が鳴る。
克己からだった。
むかついていた俺はそれを無視して眠った。
朝バタバタとシャワーを浴びて、電車に乗り込み、出勤。
朝から疲れることばかりで、夕方くらいにはほぼ体力はなかった。
けど、上司に飲みに誘われ、断れることもできず、参加。
数人で飲むことになって、そこで偶然に克己を見かけた。
だが、やっぱりむかついていたから無視。
時折、克己の視線を感じた気がしたが、ずっと気づかない振りをする。
「野木くん。あの子、知り合いだろう?」
先輩とトイレで一緒になって、いきなり聞かれた。
「あの子って誰すか?」
「あの、綺麗な男の子だよ。夜のお店で働いているんだろうね」
「知らないですよ。そんなの」
「そうなんだ。だったら、私が声をかけてもいい?」
「は?先輩、え?」
「私、ゲイなんだ」
「え、まじっすか」
俺は一気にパンツのファスナーをすぐに上げる。
「失礼だな。君は」
「す、すみません」
いや、だって。
「野木くん、あの子に私は声をかけるよ。いいよね?」
先輩の眼鏡の奥の目がなんか妖しくて、ちょっと瞬きしてしまった。
俺酔ってる?
っていうか全然会社と別人なんだけど。
「だめっす。あいつはだめっす」
なんか克己が捕食される気がして、咄嗟に答えてしまった。
「やっぱり知り合いじゃないか。喧嘩でもしてるのかい?早く仲直りしてほうがいい。別の誰かに取られるよ」
「なんですか、それ。まあ、喧嘩みたいなのはしてるかもしれないけど、そういう関係じゃないっすから」
「そうかな」
「そうですよ。俺先、戻りますね。先輩は変なことしないでくださいね」
「はいはい」
俺はゲイに対して偏見は別にない。
克己がそうだって知ってるし、だからゲイバーとか行くくらいなんだけど。
でも俺は、ゲイじゃない。
「いいじゃん。克己」
トイレから出たら、克己が変な男に絡まれていた。
「放せよ。嫌がってるだろう」
自然に克己の前に立って俺は男を睨みつける。
「邪魔す、あ、店にいたおねぇじゃん」」
げ、克己の店にいた客か!そうだよな。
「うるさいな。俺はおねぇじゃない。あれはフリだよ。克己行くぞ」
騒がれるのも嫌で、俺は克己の腕を掴むと店に出た。
「克己。なんでここにいるんだよ」
「店のお客に誘われたから」
「そうか」
そうだよな。嫌がっていたけど、そういうことだよな。
「ってことは俺が邪魔したのか?」
「ううん。ありがとう。嫌だったら助かったよ」
「大変だな。後々揉めたりしないか?」
「するかも。でもいいや」
「大丈夫なのかよ」
「いいよ。もうやめようと思っていたから」
「そうなんだ」
「それよりもチアキは大丈夫なの?」
「あ、やべ。ちょっと鞄とか取って挨拶してくる。えっと、待って、いや、それはいかん。ちょっと一緒に」
「野木くん。やっぱり彼と一緒にいたね。ほら、鞄」
「先輩!」
店から先輩が鞄を持ってやってきた。
「ありがとうございます。で、支払いは、あと篠田さんは」
「大丈夫、大丈夫。あとは私に任せなさい。じゃあ、また月曜日に」
「はい、ありがとうございます」
たすかった。
ゲイって聞いたり、克己に手を出したいみたいな話されて、びびっていたけど、やっぱり先輩はいい人や。
「チアキ。会社の人?あの人」
扉の中を指さし、克己が聞いてくる。
「うん。そう。先輩」
「そうなんだ。変なことされてない?」
「されるわけないだろって。っていうか、克己はわかるのか?」
「うん、視線とかね」
「そうなんだ。克己はもしかして、ああいうタイプが好みなのか?先輩はお前に興味あるみたいだったけど」
「え?それ嘘だよ」
「嘘?そんなわけない」
「すみません!どいてもらえますか」
「あ、すみません」
店の入ろうとしていた人がいて、俺たちは扉の前で邪魔していたみたいだ。
慌てて横に避けた。
「とりあえず帰ろうか」
「そうだね」
なんか一気に疲れてしまって、もうどうでもよくなってしまった。
克己は中学から高校まで一緒だった友達だ。
俺は大学進学して、それっきりだったんだけど、就職してから再会して、また友達になった。
ゲイって知らされてびっくりしたけど、俺は好みじゃないって聞いてほっとした。
俺、むりやりおねぇのフリしてたけど、綺麗でもないし、マッチョでもないから、ゲイには好かれないだろう。
イメージ的に。
「チアキ、うちで飲み直さない?」
「え?いや、疲れてるし」
「僕の家近いし、泊まっていけば」
そう言われて、時計を見ると終電間近。
「じゃあ、そうするわ」
克己の家には何度も泊ってことあったから、俺はすっかり油断していた。
克己は料理もうまくて、つまみとかもすぐに作ってくれて、すっかり飲んでしまった。
目を覚ましたら、周りはまっくら、ベッドの上にいた。
そんで、となりには克己。
「え、は?」
俺は体を起こしてさらなる衝撃を受けた。
全裸だったから。
お互い……
「か、克己。え、え?」
転げるようにしてベッドから降りて、下着を探す。
床に散乱している下着とかパンツとか履いたら、背後で音がした。
「チアキ」
克己は恥じる様子もなく、裸のまま、ベッドに座ってこっちを見ていた。
「まって、まって。いやいや」
どういうこと。
記憶まったくないけど、そういうこと?
え?
「えっと、俺帰るわ。じゃあ」
スマホを探して、鞄を持って、俺は逃げた。
それから、何度か連絡があったが、無視。
家に帰って確認してみたけど、けつ穴には異常はなかった。で、あれは……。
どうなんだろうか。
「野木くん。お疲れ」
月曜日出勤したら意味ありげに先輩に見られた。
なんだか恥ずかしくなって、小さく挨拶して逃げてしまった。
覚えがない。
だが、してないという証拠もない。
俺はやってしまったのか。
どうなのか。
もんもんとしているので、仕事のミスは出るは最悪だった。
しまいには先輩に早退を進められたくらい。
さすがに早退はできず、でも謝りながら定時であがり、会社を出て、ビルの出入り口をくぐったところで、克己を見た。
「待って」
逃げようとしたけど、そう言われて、周りの目も気になったから、克己と話すことにした。
覚悟を決めて聞くしかない。
「話しがしたい」
「うん、僕も」
人があまり来ないような裏通りのさびれた喫茶店に入って、俺はコーヒー、克己はココアを頼む。
「あのさ」
「あの」
同時に声を出して、互いを見つめ合う。
克己の目の周りがちょっと赤くて、熱っぽくて、俺は思わず目を逸らしてしまった。
ーあの、綺麗な男の子だよ。
先輩の言葉を思い出す。
克己は確かに綺麗だ。
中学、高校と思えば、綺麗だなとか下世話な話をしていた奴もいた気がする。
まあ、行動に出すような馬鹿な奴はいなかったけど。
田舎だったし。
克己は居心地悪そうだったな。
だって、田舎はゲイに偏見ありまくりだ。
今の世の中でもだ。
「チアキ」
「あ、うん」
昔のことを思い出して、克己の言葉を聞き逃したみたいだった。
「あの、昨日は何もないから。安心して」
「え、そうなんだ!で、なんで俺全裸だったんだ?」
「……僕が、服を脱がせた」
「なんでだよ!」
思わず大きな声を出してしまった後、俺は周りにペコリをあやまり、椅子に座り直す。
「……ごめん。本当は勝手にやってしまおうと思った。既成事実ってやつ作ろうって」
「なんで?克己は俺にそういう感情は持たないっていってたろ」
「嘘に決まってるでしょ。だって、そう言ったらきっとチアキは僕ともう会わないと思ったから」
返事ができなかった。
確かに男を好きになるなんて、俺には無理だから、告白されたら、多分、もう克己を会おうとは思わなかった。
だって、俺には無理だから。
「だったら、なんで今言うんだよ。なんで今更」
「だって、もう我慢できなかったんだよ。僕の目の前で他の人を見ているチアキを見るなんて」
克己はぽろぽろと大粒の涙を流して、泣き出す。
「泣くなよ。克己」
それはなにか映画の光景みたいで、綺麗だったけど、胸が痛かった。
持っていたハンカチを渡す。
「あ、ありがとう」
克己をハンカチを広げて目を覆う。
「克己。俺は、多分、無理だと思う。悪いけど」
「知ってる。終わらせようと思って、全部話した」
終わらせる。
その言葉は俺の心を重くした。
中学、高校と一緒に話したり、漫画読んだり、映画みたりした。
大学に入ってから連絡が取れなくなっても、時たま思い出したこともあった。
街で偶然会ってから、嬉しくてすぐに連絡先を聞いた。
何度も一緒に飲んでやっぱりいい奴、気の合う奴だと思った。
終わらせるってことは、もう二度と会わないってことだ。
それは理解できる。
だけど。
「友達として会えないのか?」
「無理。僕、お店もやめるから、もうチアキに会わないつもり」
「そ、そうなんだ」
嫌だ。
そんなの。
だけど、俺は克己の気持ちを受けいられない。
今朝ベッドで起きた時、そういうことをしたのかとショックだった。
受け入れていたなら、ショックじゃなかっただろう。
「じゃ、チアキ。さよなら」
何も言えない俺。
克己は三千円を机の上に置くと、席を立つ。
からんと鈴の音がして、お店の扉が開き、閉じる。
店内を流れる音楽がやけに耳に響く。
それから、克己の姿をみることはなくなった。
スマホの番号も替えたらしく、つながらない。
家も引っ越していた。
店もやめている。
「……野木くん。元気ないな」
「あ、先輩」
久々に仕事が終わらなくて、会社に残っていたら、先輩が戻ってきた。
「野木くん。仕事終わったら飲みにいかないか?」
「え、いや、ちょっといつ終わるかわからないっすよ」
「ああ、じゃあ、私も手伝うよ」
「それは悪いっすから」
「大丈夫だって」
先輩に手伝ってもらったら、三十分くらいで終わってしまった。
「やっぱり先輩すごいっすね」
「そう。まあ、慣れだよ」
「そうですかね。俺も早く慣れたい」
「すぐに慣れるよ」
先輩のお勧めのお店で、ご飯を食べることになった。
ちょっと雰囲気のある居酒屋で、ちょっとだけ緊張する。
「ビールでいい?」
「はい」
終電の時間を忘れないように、スマホでアラームを設定してから、飲み始める。
「で、あの子、どうしてる?別れたの?」
「別れたって、付き合ってもないのに。別れることもありえないですよ」
「付き合ってないんだ。どうして?」
「いや、だって、俺はゲイじゃないから」
「……ふうん。そうなんだ」
先輩が眼鏡を外した。
「私が教えてあげるよ」
「へ、あ?」
キスをされて、先輩を突き飛ばす。
「酷いな」
「酷いのは先輩っすよ。なんで、いきなり」
「まあ、したかったから?」
「したかってって、なんですか。それ、俺の初めてだったんですよ」
俺は恥ずかしながら童貞だ。
好きになるが、まだ彼女はできたことない。
くそ。
「初めて。いやいや、いいね」
「いいねって、先輩。ひどっす」
「兄ちゃん!何してるの?え、野木さん?」
「麻由美さん?!」
突然、麻由美さんが現れた。
兄さんって言った?
「え?君たち知り合い?」
「そうよ。お兄ちゃん。話したことあったでしょ?克己くんの彼氏」
「ああ、えっと、じゃあ、あの綺麗の子が克己くん、っで野木くんが……」
「あ、えっと、あの!」
そういうことか、いろいろ突っ込みどころはあるが、ああ、おねぇのフリしてたってバレる。
「先輩。あの後でお話が」
「うん。いいよ。わかってる。麻由美。お兄ちゃんは今デート中なんだ。邪魔しないでくれるかな?」
「デート?えっと、克己くんは?」
「克己とは付き合ってないから」
「そういうこと。じゃ、麻由美。いって、いって」
「ふうん。そうなの。ふうん。じゃあ、わかったわ」
麻由美さんは不服そうだけど、向こう側に行ってくれた。
よかった。
麻由美さんにはおねぇのフリしてたことはバレたくない。
軽蔑されたくない。
「あの、先輩。俺がおねぇのフリをしてたってことは」
「黙ってるよ。麻由美には。じゃあ、私と取引ね」
「取引?なんですか?いったい」
「私と付き合ってみないか?」
「は?先輩、いやですよ。なんで」
「だろうね。じゃあ、もう一回キスさせて」
「え?それも嫌ですよ。なんで二回も」
「一回も二回も一緒だろ。それで黙ってあげるから。安い取引だ」
「……わかりました。絶対に麻由美さんに言わないでくださいね」
さっきのキスも一瞬だったから、まあ。
そう思った俺は、数秒後後悔した。
「ん、ま」
ぎゅっと抱きしめられて、濃厚な口づけをされ、なんだかおかしな気分になる。
「チアキ!」
聞き覚えのある声を聞こえて、なんていうかすごい音がした。
「ひっどいなあ。予想はできたけど、これはない」
床に尻もちついた状態で、先輩が苦笑い。
「チアキ。僕のことは受け入れないけど、この人はいいんだ?」
「いや、そうじゃなくて」
克己の背後には麻由美さんがいた。
二人は連絡とっていたんだ。
なんだか嫌な気分だな。
何もないのは知ってるけど、なんかむかつく。
「別に、お前には関係ないだろ」
「関係ないって、関係ないけど。チアキがこの人受け入れられるなら、僕のことも大丈夫だってことでしょ?」
「は?いや」
「僕の方がキスはうまいし、きっと満足させられる」
「そういう問題じゃないから、大体、キスされたのは」
いうべきか、言わざるべきか。
だけど誤解されるよりはましだ。
「先輩と取引したんだ。俺はおねぇの振りしていたことを麻由美さんに黙っている代わりに、キスするって」
「そういうこと?」
「フリなんてとっくに気が付いてたわ。こんなゲスイお兄ちゃんと取引なんてしなくてもいいのに」
「え?気が付いていた?いつから?」
「最初から。だけど、面白いから気づかない振りしていたの。だって克己くんが楽しそうだったし」
「なんだよ、俺だけ知らんかったのか」
悔しい。
なんていうかめちゃくちゃ。
「いや、俺帰ります。なんなんだ。いったい」
「私こそ、とんだとばっちりだ。野木くん、飲み直そうか」
「いやっす。まだキスされたくないですし」
「ひどいなあ。もうしないよ」
「チアキ。話がしたいんだ。いい?」
「いいけど」
「じゃあ、ここですればいいわよ。お兄ちゃん、行くわよ」
「え?私が移動?」
「そう。お兄ちゃんはお邪魔虫なの」
「酷いなあ」
「行きましょ」
「はいはい」
麻由美さんと並ぶと、本当に兄妹ってわかる。
なんで気が付かなかったんだ。
俺。
「……麻由美さんのこと、好きになったのは、やっぱり会社の人に似ていたから?」
「なんだよ。いきなり。そういう話をしたいのか」
「違うよ。ごめん」
久々に会った克己はちょっと痩せていて、なんか印象が違った。
「何、飲む?お酒じゃないほうがいいだろう?」
「ううん。お酒がいい。飲む」
「じゃあ」
克己がハイボールを頼み、俺がビールを飲む。
「で、話って」
「またチアキと飲んだり、話したりしたい。付き合ってくれなくてもいい、友達でいいから」
「なんだ。それ。俺は嬉しいけど、お前はいいのか?」
「うん。会えないほうが辛いから」
「それなら」
なんだかよくわかんないが、俺と克己は仲直りした。
克己は俺と同じアパートに引っ越してきて、ご飯とも作ってくれるようになった。
同棲してないのに、いつの間に同棲みたいになっていく。
ベッドでも一緒に寝たり、もちろん、何もないけど、一緒にいるのが当たり前になっていく。
ある日、ふいにキスをされた。
驚いたけど、嫌な気分じゃなかった。
キスの回数が増えて、濃度も上がっていく。
そのうちに克己が色っぽく見えるように知ってきて、重症だと思った。
触れたいと思うことになって……。
気が付いたら、俺と克己は恋人同士になっていた。
……あんなに抵抗していたはずなんだけどな。
「チアキ」
ソファに座っていると、克己がやってきて、猫みたいに俺に寄り添う。
俺は、膝の上の克己の頭を撫で、少し伸びた茶寅のような髪を弄ぶ。
そうしていると恋人の営みが始まるのはいつものことで……。
「克己」
名を呼ぶと眩しそうに克己が笑う。
こういう関係になるなんて思っていなかったけど、俺はとても幸せな気分だった。
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