偽りの王女と真の王女

ありま氷炎

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第三章 暴かれる秘密

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「リーディア」

 今日の家事を終えて、部屋に戻ろうとしたところエリアスに呼び止めれた。
 物憂げな様子で、リーディアは心配になってしまう。

「体調は大丈夫か」
「はい。ご心配ありがとうございました」

 心配されているのは自身のほうで、すっかり心配をかけてしまったとリーディアは恐縮しながら答えた。
 
「それならいいが……」
 
 エリアスはそう答えるがまだ何か言いたげだ。
 彼は銀髪に整った顔をしているが中性的ではなく、男らしい顔立ち。それが憂いを帯びた表情をしているものだから、妙な色気があり、リーディアは惚けてしまいそうになる。それにどうにか耐えて待っていると、彼はやっと口を開いた。

「リーディア。王女の訪問で警備兵も町の警備に手が回らないかもしれない。しばらくは街に行くのを控えるようにしたほうがいい」
「はい。かしこまりました」

 そういうことかとリーディアは頷く。
 外に出なければあの名前を聞くこともないだろう、と内心安堵もしていた。彼女にとって隣国の王女の名前は頭痛の種にしか思えなかったからだ。
 エリアスの用事はそれだけかと頭を下げようとしたところ、名を呼ばれた。

「リーディア」
「他にも何か御用ですか」

 まだ何か言いたげであるが、エリアスは首を横に振った。

「なんでもない。お休み。リーディア」
「はい。おやすみなさい」

 首を振られたことも気になるけれども、なんでもないと言われてしまい、挨拶を返す。エリアスはやはり物思いに耽っていたが意を決したように踵を返し、歩き出した。

(エリアス様の様子がおかしい。どうしたのだろう)

 そうは心配してみたが、リーディアには彼の悩みが全く想像できなかった。

 ☆

 ボフミルは、身動きがとれない自身の代わりに九年前に後始末を依頼した男に再度連絡をとった。そうして、翌日男から、フラングス男爵邸の使用人リーディアに関する情報を受け取って、叫びたくなる気持ちを押し殺した。
 報告してきた男の顔色も酷く悪かったのだが、ボフミルはさらに男に別の依頼をする。
 難しいと唸る男に、金貨をチラつかせ、己の現在の地位を見せびらかせる。そうして、男は渋々依頼を受けた。
 彼の意識はこの問題に向けられていて、様子のおかしいアレナに構っている暇はなかった。


 ☆

「一週間の休みですか」
「そうだ」

 出勤すると第三部隊の隊長にそう言われてしまい、エリアスは絶句する。

「……俺も同情する。本当見目がいいって大変なんだな」

(同情なんてしてるわけがない)

 そうとしか思えないほど、第三隊長は笑いを堪えてながら、エリアスの肩を叩く。
 彼は突然一週間の休みを言い渡され、屋敷にもどるしかなかった。
 一週間の休みなどこれまで取ったことがなく、エリアスは何か処罰を受けたような気持ちになって、屋敷に馬を走らせていた。
 屋敷の門が見えるところまできて、彼は異変を覚える。
 通常であれば馬舎に行き、馬を預けるところを門に手綱をくくりつけ、音を立てないように屋敷にはいった。

「リーディア!お逃げ」
「シアラを残していけない」
「リーディア!」

 シアラの悲鳴が聞こえ、鈍い音が聞こえた。
 エリアスは嫌な予感で心臓がつぶれる思いをしながら駆ける。
 階段の踊り場の下で、リーディアが横になっていた。頭から血を流して動く気配はない。

「逃げろ!目的は果たした」

 野太い声がそう叫ぶのを聞き、数名の黒尽くめの賊が逃げるのを見たが、エリアスは構っていられなかった。
 賊より何よりも今はリーディアの命を救うことが先だった。
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