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二章 愛していない?
2-8
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(どうしたんだろう)
ローズは横目でそっと隣を歩くケヴィンを窺う。
(なんだか調子が狂う)
侍従のエドも侍女のマチルダも側にいるので、ローズはロイの片鱗も見せない淑女として、ケヴィンの隣を歩く。
繋いだ手が汗ばんでる気がして手を引こうとすると強く握られた。
狼狽えてローズが彼を見上げると、ニヤッと笑われ腹が立ち、同時に安堵する。
(なーんだ。気のせいか。あの微笑みは偶然だったのか)
ローズはケヴィンに仕返しようと精いっぱい手を握り返し、淑女の微笑みを展開。彼が眉を顰め、彼女はしてやったりと嬉しくなった。
そんな主人達の不毛のなやり取りに、エドとマチルダは呆れたように顔を見合わせていた。
☆
ローズの胡散臭い笑みを見てケヴィンは胸を撫で下ろす。
その名に相応しい薔薇のようなドレスを纏った彼女は、可憐さがなくなり目を惹くような色気を醸し出していた。真っ赤なドレスは彼女の白い肌を際立たせ、その肌に触れたいと思ってしまう。ケヴィンはローズに魅力され、愛しいという想いが込み上げてきて、夢心地な気分になっていた。
会場へ向かう途中、ふと冷静な自分がローズはロイという呪文を唱え、我を取り戻す。
(妖精から妖婦に進化したのか。危なかった。隣を歩くのはロイだ)
改めて自戒の意味で言い聞かせて、視線を前に向ける。大広間の入り口が迫っていて、エドが問いかけてきた。
「ケヴィン様、ローズ様。扉を開けますか」
ケヴィンとローズが頷き、エドが扉を開く。
その瞬間、ローズが震えた気がして、ケヴィンは彼女を引き寄せた。
会場に入り、次期領主としての挨拶、妻であるローズの紹介が終わり、わらわらと各地区の領主が挨拶に来る。家族連れなので、話も長くなる。ティム伯爵がその最たるもので、娘の自慢が長く、何やら媚びるように娘の方もケヴィンを見ている。胸がデカい、それ以外の印象が全く持てない女だった。
「ローズ。踊ろうか」
「はい」
「ティム伯爵。続きはダンスの後でいいか?妻は踊るのが好きなんだ」
「はい。そのように」
ダンスは夜会の終わりまで続く。なのでダンスの後とは『もう話す事はない』と同義語だ。それをティム伯爵も理解したようで顔を引き攣らせていた。
「ティム伯爵、令嬢も楽しまれよ」
ケヴィンは取り付けたようにそう言って、ローズの手を取り会場の中心に移動する。
「胸がおっきかったな」
「は?」
曲が始まり、ステップを踏み始めたところでローズが突然そんな事をぼやいたので、ケヴィンは素っ頓狂な声をあげてしまった。
夜会の中心の二人の側には人がいなかった為に彼の声は周りに聞かれていない。
「ジェイスは胸がでかい女が好みだっただろう?」
「はあ?」
続け様にそう言われて、これまた令息らしからぬ声を上げてしまったが、これも周りには聞こえてないようだ。
「さっきも胸ばっかり見てただろ?」
「見てない。なんだ。嫉妬か?」
ケヴィンは表面上は優雅に微笑み、ローズに囁く。すると耳まで真っ赤に染まった彼女の顔がそこにあって驚く。
(目まで潤んで。凄まじく可愛んだが)
「な、な訳ないだろ」
俯いてそう答えるが顔の火照りはそのままだ。
「ローズ」
ケヴィンにはローズの姿しか見えてなかった。ここが大広間で夜会で多くの目がある事、それら全てが彼の思考から抜け落ちる。
ローズを自分の中に閉じ込めたくてその腰を引き寄せた。
「ケヴィン様。曲が終わりました。休憩しましょう」
冷静さを取り戻した彼女の声がして、ケヴィンは現実に引き戻される。
ローズは、先ほどの動揺が嘘のようにその緑色の瞳に影を落とし、冷たく彼を見上げていた。
「ああ。そうしよう」
再び曲が始まるが彼らは踊リの輪から外れる。そうして次期領主夫妻の為に用意された椅子に腰掛けた。
「何か冷たいものをいただいてよろしいでしょうか」
「ああ、私が持ってこよう」
使用人の姿は側になく、ケヴィンも少し冷静になりたかったので彼女から離れた。
そうして壁際に置かれたテーブルの側で飲み物の給仕係へ、アルコールの入ってない蜂蜜入りの檸檬水を頼む。出来上がるのを待ってるとティム伯爵令嬢が急に倒れ込んできて、ケヴィンは反射的に彼女を支えた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません。急に気分が悪くなりまして」
主催であり次期領主であるケヴィンが彼女を粗末に扱う事は出来ない。支えをなくすと倒れそうな様子で、彼は彼女のを支えたまま、使用人に指示を出す。
そんな中、彼がローズの方へ目を向けると彼女は知らない男の手を取って踊り始めていた。
「ケヴィン様?」
「この者が私の代わりに君を救護室へ運ぶ」
夜会のため、一室を救護室として医師ではないが多少心得のある者を待機させていた。令嬢を男の使用人へ預けるとケヴィンはローズの元へ向かった。けれでも彼は会場でローズの姿を見つける事が出来なかった。
ローズは横目でそっと隣を歩くケヴィンを窺う。
(なんだか調子が狂う)
侍従のエドも侍女のマチルダも側にいるので、ローズはロイの片鱗も見せない淑女として、ケヴィンの隣を歩く。
繋いだ手が汗ばんでる気がして手を引こうとすると強く握られた。
狼狽えてローズが彼を見上げると、ニヤッと笑われ腹が立ち、同時に安堵する。
(なーんだ。気のせいか。あの微笑みは偶然だったのか)
ローズはケヴィンに仕返しようと精いっぱい手を握り返し、淑女の微笑みを展開。彼が眉を顰め、彼女はしてやったりと嬉しくなった。
そんな主人達の不毛のなやり取りに、エドとマチルダは呆れたように顔を見合わせていた。
☆
ローズの胡散臭い笑みを見てケヴィンは胸を撫で下ろす。
その名に相応しい薔薇のようなドレスを纏った彼女は、可憐さがなくなり目を惹くような色気を醸し出していた。真っ赤なドレスは彼女の白い肌を際立たせ、その肌に触れたいと思ってしまう。ケヴィンはローズに魅力され、愛しいという想いが込み上げてきて、夢心地な気分になっていた。
会場へ向かう途中、ふと冷静な自分がローズはロイという呪文を唱え、我を取り戻す。
(妖精から妖婦に進化したのか。危なかった。隣を歩くのはロイだ)
改めて自戒の意味で言い聞かせて、視線を前に向ける。大広間の入り口が迫っていて、エドが問いかけてきた。
「ケヴィン様、ローズ様。扉を開けますか」
ケヴィンとローズが頷き、エドが扉を開く。
その瞬間、ローズが震えた気がして、ケヴィンは彼女を引き寄せた。
会場に入り、次期領主としての挨拶、妻であるローズの紹介が終わり、わらわらと各地区の領主が挨拶に来る。家族連れなので、話も長くなる。ティム伯爵がその最たるもので、娘の自慢が長く、何やら媚びるように娘の方もケヴィンを見ている。胸がデカい、それ以外の印象が全く持てない女だった。
「ローズ。踊ろうか」
「はい」
「ティム伯爵。続きはダンスの後でいいか?妻は踊るのが好きなんだ」
「はい。そのように」
ダンスは夜会の終わりまで続く。なのでダンスの後とは『もう話す事はない』と同義語だ。それをティム伯爵も理解したようで顔を引き攣らせていた。
「ティム伯爵、令嬢も楽しまれよ」
ケヴィンは取り付けたようにそう言って、ローズの手を取り会場の中心に移動する。
「胸がおっきかったな」
「は?」
曲が始まり、ステップを踏み始めたところでローズが突然そんな事をぼやいたので、ケヴィンは素っ頓狂な声をあげてしまった。
夜会の中心の二人の側には人がいなかった為に彼の声は周りに聞かれていない。
「ジェイスは胸がでかい女が好みだっただろう?」
「はあ?」
続け様にそう言われて、これまた令息らしからぬ声を上げてしまったが、これも周りには聞こえてないようだ。
「さっきも胸ばっかり見てただろ?」
「見てない。なんだ。嫉妬か?」
ケヴィンは表面上は優雅に微笑み、ローズに囁く。すると耳まで真っ赤に染まった彼女の顔がそこにあって驚く。
(目まで潤んで。凄まじく可愛んだが)
「な、な訳ないだろ」
俯いてそう答えるが顔の火照りはそのままだ。
「ローズ」
ケヴィンにはローズの姿しか見えてなかった。ここが大広間で夜会で多くの目がある事、それら全てが彼の思考から抜け落ちる。
ローズを自分の中に閉じ込めたくてその腰を引き寄せた。
「ケヴィン様。曲が終わりました。休憩しましょう」
冷静さを取り戻した彼女の声がして、ケヴィンは現実に引き戻される。
ローズは、先ほどの動揺が嘘のようにその緑色の瞳に影を落とし、冷たく彼を見上げていた。
「ああ。そうしよう」
再び曲が始まるが彼らは踊リの輪から外れる。そうして次期領主夫妻の為に用意された椅子に腰掛けた。
「何か冷たいものをいただいてよろしいでしょうか」
「ああ、私が持ってこよう」
使用人の姿は側になく、ケヴィンも少し冷静になりたかったので彼女から離れた。
そうして壁際に置かれたテーブルの側で飲み物の給仕係へ、アルコールの入ってない蜂蜜入りの檸檬水を頼む。出来上がるのを待ってるとティム伯爵令嬢が急に倒れ込んできて、ケヴィンは反射的に彼女を支えた。
「大丈夫か?」
「申し訳ありません。急に気分が悪くなりまして」
主催であり次期領主であるケヴィンが彼女を粗末に扱う事は出来ない。支えをなくすと倒れそうな様子で、彼は彼女のを支えたまま、使用人に指示を出す。
そんな中、彼がローズの方へ目を向けると彼女は知らない男の手を取って踊り始めていた。
「ケヴィン様?」
「この者が私の代わりに君を救護室へ運ぶ」
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