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第一部
使用人達の密談
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イーサンの母親のシャーロットのドレスは、どれも自分が着ていたものより地味で簡素なものであったが、肌触りがとてもよく、ジャスティーナは気に入ってしまった。
客間も普段は使っていないと説明されたが、掃除も行き届いており、ベッドのマットレスは柔らかくて、枕の中には安眠によい草が入っていて、ジャスティーナは子供みたいに喜んでしまった。
そんな彼女の様子に驚くのはモリーとマデリーンであったが、ジャスティーナが気づくことはなかった。
「それでは良い夢を。御用の際はこの紐を引っ張ってくださいませ」
マデリーンがそう言い、天井からぶら下る紐を引く。するとほどなくして扉が叩かれた。
「ジャス様!大丈夫でしょうか?」
ハンクの焦った声が扉の向こう側からする。
マデリーンは少し意地悪そうな顔をしてから、扉を開けた。
「だ、大丈夫よ。ごめんなさい。騒がせてしまって」
額に汗をかき、慌てた様子のハンクに対して罪悪感を覚え、彼女はぺこりを頭を下げた。
「ジャス様。とんでもございません!謝らないでくださいませ。私が試したのです。ハンク。ベルの感度はいいみたいだね。これで私たちも安心して退出できます」
「そういうことか。わかりましたぞ。ジャス様。驚かせてしまいすみません。この紐は我々使用人の休憩所につながっており、引くとベルが鳴るようになっているのです。客間など随分使ってませんでしたから。ベルが鳴るどうかためしただけのようです。画期的な発明でしょう。これを考え出したのは、」
「はいはい。説明はそれで十分でしょ。ジャス様は疲れてらっしゃるみたい。私たちは退散しましょ」
「モリー。そんなことはないわ」
疲れていると指摘され、生あくびをかみ殺していたジャスティーナは少し顔を赤らめる。けれども3人にはそれが強がりだとはわかっていたので、早々と動いた。
「よく休まれてくださいませ」
モリーがベッドにジャスティーナを案内する。彼女が横になると、マデリーンがロウソクの火を吹き消した。
「良い夢を」
マデリーンはベッドの上で不安げにしている彼女の頭を撫でる。
その行為は使用人の枠を超えていて、ハンクは苦笑したが、それだけだった。
「おやすみなさいませ」
マデリーン、モリー、ハンクが去り、部屋に静寂が訪れる。
不安になっていたのは一瞬で、ジャスティーナはすぐに眠りについた。
☆☆☆
「おかしいと思わないかい?」
その夜、デイビス家の使用人達は、屋敷内の使用人の休憩所に集まり家族会議ならぬ、使用人会議を開いていた。
デイビス家は社交的な活動もしないことから部屋数も少ない。したがって、執事とは名ばかりで何でもこなすハンク、その娘のモリーは掃除・洗濯・給仕を行う使用人、ハンクの妻で腰を痛めるまでは働いていたマデリーン、モリーの夫で料理人兼庭師のニコラスの四人で、屋敷の用は全て済んでいた。
またイーサン自身が一人で支度してしまうため着替えなども手伝う必要がない。
そういうこともあり、屋敷の使用人はこの四人だけで十分だった。
四人は仕事を終え、この休憩室に集まり、会議を開く。議題はもちろんジャスティーナのことだった。
ジャスティーナ・ホッパー。
ホッパー家の一人娘で社交界デビューは一年前。現在十六歳
一介の男爵令嬢。しかし彼女の美しさは有名であった。そのため、その顔が醜く変わってしまったこともすぐに広まった。ハンクやニコラスは時折、イーサンの代理で王宮に行くため、細かい事情まで知っていた。
ルーベル公爵の子息は甘いマスクと言葉で幾人の女性と浮名を流している。
今回もジャスティーナとはお遊びと考えられていたが、数ヶ月前に婚約した。それが、このことで破談になりそうだと、噂はすぐに広まった。
まさか、その噂の当人が森の中で迷い自分たちの主と会っていたとは、本当に世の中は不思議だとハンクは笑う。
夫の楽観的な態度に、マデリーンが口を挟む。
彼女はジャスティーナの家での扱いに疑問をもっていた。それはジャスティーナが出された食事に偉く感動したり、シャーロットのドレスがやわらく着心地がいいと発言したことで沸き起こり、極め付けはベッドだった。
時間がないこともあって、モリーもマデリーンも満足いくベッドの状態までにはもっていけなかった。なのに、ジャスティーナはとても喜び、今夜はゆっくり休めそうと言った。お世辞の可能性もある。だけどモリーとマデリーンの姿を見るのも、どこか寂しげで、マデリーンはホッパー家での彼女への待遇が気になっていた。
「俺の友達にちょっと探らせてみるよ」
マデリーンの言葉に頷いたのは、娘婿のニコラスで、彼が友達にジャスティーナの家のことを調べさせるということで、第一回「ジャスティーナを旦那様の妻にする会」はこうして終わりを迎えた。
客間も普段は使っていないと説明されたが、掃除も行き届いており、ベッドのマットレスは柔らかくて、枕の中には安眠によい草が入っていて、ジャスティーナは子供みたいに喜んでしまった。
そんな彼女の様子に驚くのはモリーとマデリーンであったが、ジャスティーナが気づくことはなかった。
「それでは良い夢を。御用の際はこの紐を引っ張ってくださいませ」
マデリーンがそう言い、天井からぶら下る紐を引く。するとほどなくして扉が叩かれた。
「ジャス様!大丈夫でしょうか?」
ハンクの焦った声が扉の向こう側からする。
マデリーンは少し意地悪そうな顔をしてから、扉を開けた。
「だ、大丈夫よ。ごめんなさい。騒がせてしまって」
額に汗をかき、慌てた様子のハンクに対して罪悪感を覚え、彼女はぺこりを頭を下げた。
「ジャス様。とんでもございません!謝らないでくださいませ。私が試したのです。ハンク。ベルの感度はいいみたいだね。これで私たちも安心して退出できます」
「そういうことか。わかりましたぞ。ジャス様。驚かせてしまいすみません。この紐は我々使用人の休憩所につながっており、引くとベルが鳴るようになっているのです。客間など随分使ってませんでしたから。ベルが鳴るどうかためしただけのようです。画期的な発明でしょう。これを考え出したのは、」
「はいはい。説明はそれで十分でしょ。ジャス様は疲れてらっしゃるみたい。私たちは退散しましょ」
「モリー。そんなことはないわ」
疲れていると指摘され、生あくびをかみ殺していたジャスティーナは少し顔を赤らめる。けれども3人にはそれが強がりだとはわかっていたので、早々と動いた。
「よく休まれてくださいませ」
モリーがベッドにジャスティーナを案内する。彼女が横になると、マデリーンがロウソクの火を吹き消した。
「良い夢を」
マデリーンはベッドの上で不安げにしている彼女の頭を撫でる。
その行為は使用人の枠を超えていて、ハンクは苦笑したが、それだけだった。
「おやすみなさいませ」
マデリーン、モリー、ハンクが去り、部屋に静寂が訪れる。
不安になっていたのは一瞬で、ジャスティーナはすぐに眠りについた。
☆☆☆
「おかしいと思わないかい?」
その夜、デイビス家の使用人達は、屋敷内の使用人の休憩所に集まり家族会議ならぬ、使用人会議を開いていた。
デイビス家は社交的な活動もしないことから部屋数も少ない。したがって、執事とは名ばかりで何でもこなすハンク、その娘のモリーは掃除・洗濯・給仕を行う使用人、ハンクの妻で腰を痛めるまでは働いていたマデリーン、モリーの夫で料理人兼庭師のニコラスの四人で、屋敷の用は全て済んでいた。
またイーサン自身が一人で支度してしまうため着替えなども手伝う必要がない。
そういうこともあり、屋敷の使用人はこの四人だけで十分だった。
四人は仕事を終え、この休憩室に集まり、会議を開く。議題はもちろんジャスティーナのことだった。
ジャスティーナ・ホッパー。
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まさか、その噂の当人が森の中で迷い自分たちの主と会っていたとは、本当に世の中は不思議だとハンクは笑う。
夫の楽観的な態度に、マデリーンが口を挟む。
彼女はジャスティーナの家での扱いに疑問をもっていた。それはジャスティーナが出された食事に偉く感動したり、シャーロットのドレスがやわらく着心地がいいと発言したことで沸き起こり、極め付けはベッドだった。
時間がないこともあって、モリーもマデリーンも満足いくベッドの状態までにはもっていけなかった。なのに、ジャスティーナはとても喜び、今夜はゆっくり休めそうと言った。お世辞の可能性もある。だけどモリーとマデリーンの姿を見るのも、どこか寂しげで、マデリーンはホッパー家での彼女への待遇が気になっていた。
「俺の友達にちょっと探らせてみるよ」
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