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前編

☆勇者の試み

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「あぶなかった!」

 魔王から放たれた風魔法ハリケーンーー竜巻攻撃に火が加わり、ミオは絶対絶命のピンチに陥ったはずだった。
 けれども最強の召喚勇者である彼女はバリアではなく、シールドを作りどうにか凌ぐ。
 仲間のことも考えたため、広範囲になったために炎の影響を受け、鎧で覆われていない部分が幾分火に当てられ、ヒリヒリと痛みが走った。

「勇者様、私たちに構わず魔王を倒してください」
「勇者様、この最強の魔法使い、シルダの名にかけて守りを固めますので」

 (っていうか、あんたが守るのは王女(ソフィア)と自分だけだろうが)

 ちらりと戦士タルカンを見ると、何やら首を横に振っている。

(本当、さっきもシールドを全開にしなきゃ、絶対タルカン死んでと思うし)

 異世界、もしかして某サイトで流行りのゲームの世界の中に転移してしまったかもしれないが、仲間として一緒に旅を続けているうちに情が沸いてきている。
 
(タルカンは守らないと。でも防御だけじゃどうにもならない。やっぱり攻撃?)

 ミオは、髑髏の仮面の魔王を睨む。

(絶対日本人だよね。しかも若いと思う。声からして、ちょっと子供っぽそうだし)

 魔王は何を考えているのか、最後の攻撃魔法から微動すらしない。

「勇者様、今です。今攻撃を仕掛ければ」

 背後のタルカンが叫ぶ。

(魔王って言っても、日本人だよね。殺すっていうはちょっと。話せば解決するかもしれないし。ほら、日本に一緒に戻るとか)

「勇者様!」
 
(うるさいなあ。とりあえず近くによって話してみるかな)

 ミオは攻撃を仕掛けるふりをして、剣を携えたまま、魔王に向かって駆け出した。

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