元第二王子とヒドインの子は復讐を誓う。

ありま氷炎

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第五章 ざまぁの子は復讐を……。

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 天界に住む神々は世界を創造する。
 海、大地、森を作り、神々と同じ体のつくりをした人を生み出すのが神の仕事だ。
 けれども、女神リグレージュは人を作れなかった。
 いや、作ることはできた。
 ただそれは神々の体を完璧に模倣したものではなかった。
 彼女が生み出す人は、どこか動物的な特徴をもっており、神たちは彼女を「出来損ない」と嘲った。

「私たちの子は、あなたたちの作る「人」とは違うかもしれない。でも私の子であることには違いはないわ」

 彼女は天界から去り、己の世界で暮らすことにした。
 リグレージュの世界で、子どもたちは成長し、それぞれの子を産み、村を作っていった。
 牛の特徴である角を持つ牛族、山羊の角を持つ山羊族など、多少の争いはあったが、世界は平和であった。
 ところが、リグレージュは気まぐれに最後の子を生み出した。

 それは神を模倣した「人」であり、天界であれば完璧といわれる「人」だった。

 特徴的な子たちを愛していたが、彼女は同時に「人」を生み出すことにも憧れていた。
 最後の子「人」は他の子どもたちよりも、弱くて寿命が短かった。決定的なことは魔法がつかえないことだった。魔法でできる作業を「人」はできず、リグレージュは力を貸してしまった。
 守られることに慣れてしまった「人」はその後も女神の保護を受け続け、村を作り、街に発展させた。そうして建国までした。

「人」は自分と違う者たちを「魔族」と呼び、嫌悪した。
「魔族」は「人」ごときにと怒りと両者の争いは激化した。
 大掛かりな戦争になり、魔力を使えない人は追い込まれていく。
 
 そこでリグレージュはまたしても手を貸す。
 そうして過ちを犯した。

 一つ目の「魔族」がリグレージュによって滅ぼされた。
 女神の怒りを知り、「魔族」は悲しみ慄いた。
 戦争は終わり、リグレージュは人の姿を捨てた。そうして人の国で大樹となり世界を見守ることにしたのだ。

 ーー

 これが大樹(リグレージュ)の物語だ。
 身勝手な、とても。
 大樹の力によって一つ目は滅んだ。
 だけど、どうして一つ目のヴァンがいるのか?
 それは彼が最後の一つ目だから。
 生き延びた一つ目の魔族たちはこのことをずっと子孫に伝えてきた。

 恐らくザイネルはこの話を一部しかしらない。
 だから大樹の力を借りようなどと思うのだ。
 大樹(リグレージュ)は人を愛している。
 だから、人を害するようなことに手を貸すわけがないのに。

「お前を守ったことは本当におかしなことだ。なあ、お前、……おい、おい。寝たのかよ?俺の部屋でか?あまりにも無防備すぎだぜ」

 騎士が恋人や遊び相手を部屋に連れ込むことは珍しいことではなく、ヴァンは人に変化したメルヒを部屋に連れて帰った。そこで、ヴァンはメルヒに城に入り込んだわけを聞かれて、大樹の話をした。大樹に取り込まれていたメルヒなら知っているかもしれないと思ったが、彼女にとっては初耳だったらしい。
 話に熱が入ってきて夢中で話していると、反応がないなと思ってメルヒを見ると彼女はベッドに倒れこんで寝ていた。

「メルヒか。全然変わんないな。童顔のまま。9年も経つのに。セインの奴の目に毒だな」

 ヴァンは二人が会っていることは知っていたが、その状況まで想像できてなかった。
 
「まあ、記憶も戻ったし、これからだな。お前たちが寝返ってなければいいのだがな。……俺は俺でお前たちを利用させてもらう」

 



「……王妃殿下」

 ジョセフィーヌは侍女によって朝方起こされた。
 そして、ケリルが部屋から消えたことを伝えられ、身支度を整えるとすぐに部屋に向かう。
 そうして、彼女は開け放たれた窓、切り裂かれたケリルのドレスの残骸を見つけた。
 

「とうとう思い出してしまったのね。ケリル……」

 まるで獣に襲われたように無残な姿になったドレスの切れ端、けれども血痕はない。扉の外には騎士もおり、もし彼女が襲われたのであれば何かしら音がしたはずだった。
 しかも、彼女が身に着けていたドレス以外、部屋には荒らされた形跡は何一つなかった。
 その状況で考えられる可能性の一つ、それは記憶を取り戻したということだ。
 記憶を取り戻して、犬の姿に戻った彼女は部屋から逃げた。

「私を殺しにこなかったのね」
「王妃殿下!」

 ジョセフィーヌの物騒な言葉に、侍女が目を見開く。

「この部屋への立ち入りは今まで通り私と陛下だけに。ドレスの残骸だけは片付けてくれるかしら」
「はい」

 王妃から命を下され侍女は頷き、控えていた騎士も礼を取る。

「一旦部屋に戻るわ。陛下がお目覚めになったら知らせてちょうだいね」

 記憶を取り戻したケリル--メルヒであれば、容易に見つかるような真似はしないだろうとジョセイフィーヌは彼女の身の安全についてはさほど心配していなかった。また目的が自分たちであるのだから、近いうちに姿を見せるに違いないとも考える。

「もしかしたらセインの元にいるかもしれないわね。どちらにしても陛下にはお話しすべきだわ」

 ジョセフィーヌは彼女の宝石のような赤い瞳と無邪気な笑顔を思い出し、胸を痛める。
 記憶を取り戻した彼女は再びあのような笑顔を向けてくれることはないのだろう、そう考えると気持ちは落ち込み部屋に戻る足取りが重くなった。
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