騎士団長(女)は恋がお嫌い?!

ありま氷炎

文字の大きさ
46 / 48
補完的サイド

愛しい君へ (トマス視点)

しおりを挟む
 カサンドラ城を管理するマンダイ家、そしてマンダイ家当主が治めるラスタ。
 五十年前に、カサンドラ城を女性を守るための城と定め、女性の騎士団が創設された。数年の混乱のち、騎士団は城内を警備するだけの業務に留まり、今の形に落ち着いた。
 マンダイの当主は何を思ったのか十年前より独自の騎士団を作り、ラスタはカサンドラ、マンダイ、街の警備兵団と三つの武力組織が共存している不思議な街だ。
 そのため王城では、数年単位で文官を送り街の様子を報告させる事にしていた。
 前任者は全く仕事をしなかったようだ。マンダイ家からの接待に毎日忙しく、その報告書はマンダイ家とその騎士団を讃えるようなものばかり。

 隣国から戻り王都に飽き飽きしていた私に、父がこの任を押し付けた。

 マンダイ家からの誘い以外は快適な生活だった。街の様子は貴族の姿のままでは探れないので、私自身が変装したりして、それなりに楽しませてもらった。
 そんなおり、王都の友人が訪ねて来た。

 ――カサンドラ騎士団長ファリエス・リンデについて調べてくれ。

 そんな事を頼まれ、困っているとどうも王女からの頼みらしい。理由を聞いたところ、王女が懸想している王宮騎士ナイゼル・カランの想い人、という返答が返ってきた。
 悪いが断らせてもらった。

 恋愛沙汰などに付き合っていられない。
 王女も時折困った事をされ父が嘆いていた事を思い出した。

 ある日、偶然にもそのファリエスに会った。一言でいうならば火のような女性だった。
 赤毛に茶色の瞳。
 感情豊かで面白い、会うたびに私は彼女に惹かれていった。
 身分を隠して会っていたが、色々疑われてしまい、暴露した。
 可能な限りだけど。

 一週間ほど無視をされた後、私達は正式に付き合う事にした。
 婚約を済ませ、結婚までの日程を練っている中、ナイゼル・カランが訪ねて来た。
 最初に驚いたのはその容姿だ。ファリエスの男性版のようで、自己陶酔的な人物だと疑うしかなかった。話して見ると普通の男性で、胸を撫で下ろしたが。だが彼が私達の婚約を歓迎していないのは明らかだった。

 彼は結局結婚式を欠席した。ファリエスは本当に彼の想いに気づいていないらしく、かなり怒っており、すこしばかり同情した。

 もしかして彼が告白していたら勝機はあったかもしれない。それくらい二人は仲が良く、お互いを理解していた。
 
 けれども私は一生ファリエスには彼の想いを伝えるつもりはない。


 愛しい君へ
 私は、君が思っているような穏やかな男ではないんだよ。
 本当は君を私だけの籠に入れておきたい、そう考えている。
 けれども君に嫌われたくないから、私は猫を被り続けるよ。
 いつか、君が私の本当の姿に気づいても逃がしてあげないから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

触れると魔力が暴走する王太子殿下が、なぜか私だけは大丈夫みたいです

ちよこ
恋愛
異性に触れれば、相手の魔力が暴走する。 そんな宿命を背負った王太子シルヴェスターと、 ただひとり、触れても何も起きない天然令嬢リュシア。 誰にも触れられなかった王子の手が、 初めて触れたやさしさに出会ったとき、 ふたりの物語が始まる。 これは、孤独な王子と、おっとり令嬢の、 触れることから始まる恋と癒やしの物語

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

処理中です...