騎士団長(女)は恋がお嫌い?!

ありま氷炎

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補完的サイド

お前に捧げる復讐劇(レーン視点)

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「殺してやる!」

 彼女はそう叫んで、戦いの中に身を投じた。
 敵は、彼の以前の「仲間」であった、イッサルの正規の騎士団。
 ヴィニアは一年前まで正規の騎士団の唯一の女性騎士だった。
 俺は、彼女と同じ隊の所属で、下卑た計画を耳に挟み、慌ててその場に向かった。すでに手遅れだった。同じ隊だけではなく、別の隊、十人近くの男が彼女を囲んでいた。身に着けていた服は破かれ、彼女の頬は腫れていた。

「糞野郎が!」

 俺は剣を抜くと切りかかった。
 一人は殺せた。だが、ほかの奴らの反撃を受け、次に気がついた時は、俺の側には彼女がいた。
 
「……ヴィニア」
 
 体を起こすと、彼女が震えた。

「ガラーテが攻め込んできた。おかげで助かったんだ」

 彼女はそう言うと自らの体を抱くようにして、うずくまり、俺から背を向けた。どうやら、俺を助けてくれたのは、彼女らしい。
 ガラーテの軍が攻めてきて、さすがにやつらも隊に戻ったのだろう。ああ、戻る前に殺されたかもしれないな。
 彼女は、どうして、俺を連れて逃げた?傷も手当てされている?

 色々質問したかったが、そんな状況ではないことがわかっており、俺はそのまま睡魔に促されるまま、再び眠った。

 次に目を開けると身支度している彼女がいた。

「どこか行くのか?」
「私は、ガラーテに行く。あんたはイッサルの騎士団にでも拾ってもらえば」

 そう答えた彼女は普段どおりで俺はほっとした。

「俺も行く。お前と一緒に行きたい」
「嫌だね。誰があんたなんかと。男なんて嫌いだ」
「俺はお前に絶対に触れない。だから、俺も一緒に」
「嫌だ。私は一人で行く。じゃあね」

 彼女は立ち上がると、一人で小屋から出て行った。
 俺は彼女を追うつもりであったが、少し体を動かしただけで、だめだった。

 結局俺は彼女の後姿を見送るしかなく、次に再会したのは戦場だった。
 ヴィニアは、傭兵になっていた。
 俺はイッサルの騎士団に見つけてもらい、再度戦場に戻ってきていた。
 別の隊だが、あの時彼女を襲った男の顔を見つけた。
 すると、敵であるヴィニアが奴を襲う。

 何名かが、敵である女傭兵が元仲間であったことに気がつき、ヴィニアを罵りながら、返り討ちにしようとした。

 お前たちには殺させない!

 俺は反射的に彼女を守っていた。
 そして、命からがら彼女を連れて戦線離脱した。

「あんた馬鹿だな」

 かなり遠いところまで逃げてきて、彼女を放すと、呆れられた。
 俺もそう思う。
 俺はこう見えて一応貴族だった。
 ゆくゆくは国境警備から王宮警備に配属される予定だった。

 だが、後悔はしていない。

「ああ、俺は馬鹿かもな。でも後悔してない。ヴィニア。お前、仲間のところへ戻るんだろう。俺も連れて行ってくれ」
「は?何言って。あんた、国を裏切るの?」
「まあ、そんなことになるかな」
「馬鹿だね」
「うん。馬鹿だな」

 そう言いながらもヴィニアの笑顔は少し照れているようで、可愛いと思った。きっと、彼女は一生男を許さない。だけど、俺は多分一生彼女を好きだろう、そう思った。

 彼女が入った傭兵団は色々な国の奴らが所属しているもので、まあ、金のためならなんでもやるっていう集まりだ。
 最初は戸惑ったけど、ヴィニアと一緒に旅するのは楽しかった。

 そうして何年かが過ぎ、ファーエンの第二王子暗殺の案件が転がり込んできた。 
 報酬がよかったのもあって、俺たちは部隊を組んで引き受けた。

 簡単な案件だと思ったのに、ラスタという街には面倒な奴らがたくさんいた。一つの街に三つの武力勢力があるなんて、聞いたことがない。しかもどこから情報漏れたのか、ファーエンの王宮騎士までいた。
 そこで俺たちはやり方を変えた。 
 女性しか入れない城にヴィニアをもぐりこませ、女装王子を毒殺しようとしたんだ。
 だが、ヴィニアがおかしくなりやがった。
 女騎士団の団長に執着し始めた。
 妙な計画を練りやがって、結局失敗。毒は盛ったが、殺すことはできなかった。その上、足がついた。
 それから、転がり落ちるようだった。
 マンダイ騎士団を辞めさせられた男と協力して、むちゃくちゃな計画を立てて、俺たちは壊滅まで追い込まれた。

 俺は、あの時、残るべきだった。
 あの女騎士団の団長を甘く見ていた。
 王子が兵士や騎士を連れて俺達を追い回し、ほとんどが殺された。追っ手達の会話からヴィニアが自害したこと知った。俺はそこで死ぬ気だった。だが、ヴィニアのために生き残った。
 彼女があんなに執着した女騎士団の団長を、殺してやろうと思ったからだ。
 ヴィニアは、暴行されるまで、口は悪かったが、理想に燃える騎士だった。だが、訓練兵から同じ食事をして、同じように訓練した仲間だったあいつらが彼女の裏切った。
 俺があの場に飛び込んだ時、皆、下卑た笑いを浮かべていて、ヴィニアのことなど、単なる物扱いだった。
 誰も、誰も止めようとしなかった。
 仲間だったのに。
 俺より先に彼女を知っているものもいたはずなのに。

 男だから。
 そうだろうか。
 俺はそう思わない。

 あの女は、ヴィニアが変ってしまう前の瞳を持っていた。理想や仲間を信じてやまない眩しい光。
 女だけの騎士団。女を守る騎士団。理想だらけの夢の騎士団。
 ヴィニアは羨ましくて、憎くて、おかしくなってしまったのだろう。
 彼女が失った、欲したものすべてがそこにあったから。

 俺の想いは間違っている。
 だけど、俺は、ヴィニアのためにあの女を殺してやろうと決めた。
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