3 / 34
第一章 私の前世はちょっとおかしな旦那様の姉上
私の前世
しおりを挟む
私の新しい雇用主ーー旦那様は、おかしい。
紹介してくださった元旦那様の執事から、あらかじめ変わっているという話を聞いた。
けれども給金が高くて、休暇もたくさんもらえる。
好条件に釣られて、頷いた。
「旦那様は今朝もとても美しかったわ。まるで芸術品のよう。それだけじゃなくて思わずクシャミをしてしまった私を気遣ってくれたり、本当優しいわ」
同僚のメグは旦那様の部屋から戻ると溜息混じりに話す。
「そうね。古ぼけたドレスの匂いを嗅いだり、香水を撒き散らしたり、鏡を見て、うっとりとしていなければ、本当に素晴らしい主人だと思うわ」
「ジャネット。それは言わないことよ。メイド長がどこで聞いてるかわからないわ」
休憩室にいるのは私とメグの二人っきり。だからこそ、正直な感想を漏らしたのだけど、彼女は少し怯えた様子であたりを窺っている。
私の名前はジャネット。
十五歳の時に家を飛び出して、こちらで働き始めて二週間が経った。
メグを含め、同僚は優しい。もちろん、上司であるメイド長も旦那様のロン・ハレット様のことに触れなければ、とてもいい上司だ。
ご飯も美味しいし、休みも四日置きにいただける。
旦那様様があんなに変わっていなければ、ずっと働いてもいいのだけど。
「ジャネット。いいところだけを見て。旦那様は少し変わっているけれども、それを除けば完璧な旦那様じゃない」
いや、除く時点で完璧じゃないと思うけど。
そう言いかけて、私は口をつぐんだ。
メグは旦那様が大好きだ。けれども恋愛とはそういう感情ではない。彼女にはちゃんと彼氏もいる。だた崇高している感じだ。
私はまだこのお屋敷にきて二週間だし、その域に達していない。
いや、無理だと思う。
だって、いくら顔が良くて優しくても、ちょっとね。
使用人を虐げたりする旦那様もいるので、それくらいは目を瞑るべきだと思うのだけど、何か許せないのだ。
旦那様の姉さんは十七年前に亡くなっている。
どうやら旦那様を暴走してきた馬車から庇って亡くなってしまったらしい。
それが心の傷になっているらしくて、旦那様はお姉さんのことをずっと思って生きている。
気持ちはわかるけど、もう十七年も経ってるし、傷も癒えるだろうと思うのだけど、旦那様にとってはそうじゃないらしい。
鏡を見て姉上と呼びかけたり、相当重症だと思う。
彼女の遺品であるドレスや装飾品を持ち出して、匂いを嗅ぐのも本当におかしいと思う。
お姉さんは旦那様によく似た容姿をしていて、それはそれは美人だったらしい。
彼女は十六歳の誕生日を待たずなくなり、旦那様の荒れ具合は酷かったらしい。
だから、今のようにちょっとおかしくても、生きていればいいと大旦那様夫婦は温かく、いや諦めて見守っている。
「さあ、休憩はこれくらいで、お茶の準備をしましょう。ジャネット、旦那様のところへ持っていってくれる?」
嫌です。
そう答えたかったけれども、メグの視線はお願いというよりも命令という感じで私は頷くしかなかった。
☆
旦那様が執務室にいなくて、安堵した。
不在の場合もお茶と焼き菓子を置いていくように指示が出されているので、お茶用のテーブルに並べて部屋を出ようとしたら扉が突然開いた。
勢いよく扉に頭をぶつけて、ヨロめく。その瞬間、何かが弾けたような感覚がして様々な記憶が押し寄せた。
妄想とは思えなかった。
「すまない!大丈夫?頭を打ったのか?」
旦那様ーーロンは慌ててよろめいた私を支え、謝罪をする。
ふわりと柔らかそうな銀色の髪、空色の瞳が近くにあって、懐かしくなる。
思わず彼の髪に触れそうになって、慌てて手を引っ込める。
「ろ、旦那様。申し訳ありません」
「申し訳ないのはこちらだ。医者にみせよう」
「大丈夫ですから」
完全な不注意だ。
自室に誰かがいるなんて彼は思わなかっただろう。
扉を開けて中に入るべきだった。
いつもの癖で扉を閉めてしまった。
「旦那様。どうぞ。ごゆっくり。今日の焼き菓子はあなたの大好きなシャリスですよ」
たかが扉を頭にぶつけただけだ。
大騒ぎすることはない。
ロンに頭を下げると、メイドらしく部屋を出た。
前の旦那様は結構なお年で、お一人住まいだったのだけれども、娘夫妻の屋敷へ引っ越すとかで、解雇された。それでこのお屋敷、ハレット家を紹介してもらったのだけれども。
言いづらそうに、少し変わっている。だけど、とても優しい方だからと前の旦那様の執事が言っていた。
そう、旦那様は変わっていた。
けれども旦那様としては誠実で優しくて、おかしなところに目を瞑れば問題はなかった。
でも、私は気になった。
なぜ旦那様のおかしな行動を見て胸がムカムカするのか、ちょっといい加減にしたほうがいいとイライラするのか、わからなかった。
だけど今はわかる。
彼がおかしくなったのは、私のせいだからだ。
だから、罪悪感も感じて、それが苛立ちに変わったんだろう。
それと十七年も経つのに、私のことを忘れられないロンにもイライラしたのもあったはず。
あの時は記憶はなかったけど。
前世(かこ)を思い出して、前の私の苛立ちを理解する。
……でも、でも。
忘れられない気持ちは理解する。そんなに思ってくれることも嬉しい。
だけど、あれはないだろう。
確かにロンの顔は私に似ていた。
けれども鏡を見て、呼びかけるのはおかしい。
匂いを嗅ぐとは正気を疑う。
なんで、あんなにおかしくなってしまったのか。
私が庇って、死んだから。
彼の心に傷を残してしまったからだ。
紹介してくださった元旦那様の執事から、あらかじめ変わっているという話を聞いた。
けれども給金が高くて、休暇もたくさんもらえる。
好条件に釣られて、頷いた。
「旦那様は今朝もとても美しかったわ。まるで芸術品のよう。それだけじゃなくて思わずクシャミをしてしまった私を気遣ってくれたり、本当優しいわ」
同僚のメグは旦那様の部屋から戻ると溜息混じりに話す。
「そうね。古ぼけたドレスの匂いを嗅いだり、香水を撒き散らしたり、鏡を見て、うっとりとしていなければ、本当に素晴らしい主人だと思うわ」
「ジャネット。それは言わないことよ。メイド長がどこで聞いてるかわからないわ」
休憩室にいるのは私とメグの二人っきり。だからこそ、正直な感想を漏らしたのだけど、彼女は少し怯えた様子であたりを窺っている。
私の名前はジャネット。
十五歳の時に家を飛び出して、こちらで働き始めて二週間が経った。
メグを含め、同僚は優しい。もちろん、上司であるメイド長も旦那様のロン・ハレット様のことに触れなければ、とてもいい上司だ。
ご飯も美味しいし、休みも四日置きにいただける。
旦那様様があんなに変わっていなければ、ずっと働いてもいいのだけど。
「ジャネット。いいところだけを見て。旦那様は少し変わっているけれども、それを除けば完璧な旦那様じゃない」
いや、除く時点で完璧じゃないと思うけど。
そう言いかけて、私は口をつぐんだ。
メグは旦那様が大好きだ。けれども恋愛とはそういう感情ではない。彼女にはちゃんと彼氏もいる。だた崇高している感じだ。
私はまだこのお屋敷にきて二週間だし、その域に達していない。
いや、無理だと思う。
だって、いくら顔が良くて優しくても、ちょっとね。
使用人を虐げたりする旦那様もいるので、それくらいは目を瞑るべきだと思うのだけど、何か許せないのだ。
旦那様の姉さんは十七年前に亡くなっている。
どうやら旦那様を暴走してきた馬車から庇って亡くなってしまったらしい。
それが心の傷になっているらしくて、旦那様はお姉さんのことをずっと思って生きている。
気持ちはわかるけど、もう十七年も経ってるし、傷も癒えるだろうと思うのだけど、旦那様にとってはそうじゃないらしい。
鏡を見て姉上と呼びかけたり、相当重症だと思う。
彼女の遺品であるドレスや装飾品を持ち出して、匂いを嗅ぐのも本当におかしいと思う。
お姉さんは旦那様によく似た容姿をしていて、それはそれは美人だったらしい。
彼女は十六歳の誕生日を待たずなくなり、旦那様の荒れ具合は酷かったらしい。
だから、今のようにちょっとおかしくても、生きていればいいと大旦那様夫婦は温かく、いや諦めて見守っている。
「さあ、休憩はこれくらいで、お茶の準備をしましょう。ジャネット、旦那様のところへ持っていってくれる?」
嫌です。
そう答えたかったけれども、メグの視線はお願いというよりも命令という感じで私は頷くしかなかった。
☆
旦那様が執務室にいなくて、安堵した。
不在の場合もお茶と焼き菓子を置いていくように指示が出されているので、お茶用のテーブルに並べて部屋を出ようとしたら扉が突然開いた。
勢いよく扉に頭をぶつけて、ヨロめく。その瞬間、何かが弾けたような感覚がして様々な記憶が押し寄せた。
妄想とは思えなかった。
「すまない!大丈夫?頭を打ったのか?」
旦那様ーーロンは慌ててよろめいた私を支え、謝罪をする。
ふわりと柔らかそうな銀色の髪、空色の瞳が近くにあって、懐かしくなる。
思わず彼の髪に触れそうになって、慌てて手を引っ込める。
「ろ、旦那様。申し訳ありません」
「申し訳ないのはこちらだ。医者にみせよう」
「大丈夫ですから」
完全な不注意だ。
自室に誰かがいるなんて彼は思わなかっただろう。
扉を開けて中に入るべきだった。
いつもの癖で扉を閉めてしまった。
「旦那様。どうぞ。ごゆっくり。今日の焼き菓子はあなたの大好きなシャリスですよ」
たかが扉を頭にぶつけただけだ。
大騒ぎすることはない。
ロンに頭を下げると、メイドらしく部屋を出た。
前の旦那様は結構なお年で、お一人住まいだったのだけれども、娘夫妻の屋敷へ引っ越すとかで、解雇された。それでこのお屋敷、ハレット家を紹介してもらったのだけれども。
言いづらそうに、少し変わっている。だけど、とても優しい方だからと前の旦那様の執事が言っていた。
そう、旦那様は変わっていた。
けれども旦那様としては誠実で優しくて、おかしなところに目を瞑れば問題はなかった。
でも、私は気になった。
なぜ旦那様のおかしな行動を見て胸がムカムカするのか、ちょっといい加減にしたほうがいいとイライラするのか、わからなかった。
だけど今はわかる。
彼がおかしくなったのは、私のせいだからだ。
だから、罪悪感も感じて、それが苛立ちに変わったんだろう。
それと十七年も経つのに、私のことを忘れられないロンにもイライラしたのもあったはず。
あの時は記憶はなかったけど。
前世(かこ)を思い出して、前の私の苛立ちを理解する。
……でも、でも。
忘れられない気持ちは理解する。そんなに思ってくれることも嬉しい。
だけど、あれはないだろう。
確かにロンの顔は私に似ていた。
けれども鏡を見て、呼びかけるのはおかしい。
匂いを嗅ぐとは正気を疑う。
なんで、あんなにおかしくなってしまったのか。
私が庇って、死んだから。
彼の心に傷を残してしまったからだ。
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた
鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。
幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。
焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。
このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。
エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。
「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」
「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」
「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」
ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。
※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。
※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さくら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました
六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。
「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。
アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。
時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。
すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。
そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。
その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。
誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。
「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」
「…………え?」
予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。
なぜ、落ちぶれた私を?
そもそも、お会いしたこともないはずでは……?
戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。
冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。
彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。
美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。
そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。
しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……?
これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる