侯爵令息の数奇な運命

野咲カノン

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第一章

疑似ヒートとラット 1 ☆

「あっ、あん、んうぅっ!」
 僕はもう、興奮のあまり耐えられなくなって、自分のペニスを無意識のうちに床にこすりつけていた。
「おい、エドワード、この淫乱!」
 トマスにぐいっと腕をつかみ上げられて、僕は短い悲鳴を上げた。
「誰の許可を得て自慰をしているんだ」
「ああ、ごめんなさい! でも体が熱くて…! 耐えられないのお! 抑制剤、抑制剤を早く……!」
 興奮で焼け落ちかけた僕の理性でも、今が危険な状況であることは分かった。周りのアルファたちの興奮が高まっていくのを肌で感じる。僕の発情によって彼ら全員がラットに陥ったら、どんな目に合わされるか。とても無事では済まない。
「何を言っている。お前に抑制剤なんかもったいないだろう。アルファの精液を受ければ発情は止まるんだから、アルファの精液を食わせてやる。ありがたく思え」
「やっ、やぁ……」
 僕はふるふると首を振った。本能はこのまとわりついてくるようなアルファ達のフェロモンに溺れて、アルファの精液を欲している。でも怖い。駄目だと理性が告げている。
「お願いします……。抑制剤を……」
「アルファの精液が欲しくて、発情剤まで飲んだくせに、何カマトトぶってんだ、え?」
「自分で発情剤飲んでおいて、抑制剤くださいなんて、図々しいにもほどがあるだろう」
「ち、違うんです、僕は……!」
 トマス様に発情剤を飲めと言われて! と言おうとしたら、トマスがパドルで思いっきり僕の尻を打った。
 バシィン!
「んひぃ!」
「この性悪オメガめ! 公爵に取り入って、俺から乗り換えようと思ったのか?」
 バシィン! バシィン! 
「ひゃう! いた! やめてぇ!」
「勝手に発情剤を飲んで、主の俺に迷惑をかけやがって!」
 トマスは憤怒の表情で言った。そこで僕はやっと理解した。トマスはグラニフ公への接待をしくじったことを、ほかのメンバーに知られたくないのだ。それで、その責任をすべて僕に負わせようとしている。
 バシィン! バシィン!
「ごめんにゃしゃい! ごめんにゃさい!」
 痛みにたまらず、僕は謝った。僕の責任ではない。でも僕が謝らなければ、トマスは納得しないだろうと思ったから。トマスは満足げに息を吐いて、僕への打擲をやめた。
「はぁっ、はぁっ」
「全く、淫乱オメガは目を離すとすぐこれだから困る……。しっかり躾けてやらんとな。君たち、手伝ってくれるかい?」
 トマスの言葉に、客のアルファは色めき立った。
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