自分隠しのナルシスト達は付き合いたくないようなので、告白します。

せにな

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仮のカップル

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 口元を覆う千咲の手ごと口を閉ざさせた匠海は、小首をかしげる勇と紗夜に苦笑を向けながら言葉を紡ぐ。

「今のは聞かなかったこととして。姉さんたちはなにしてたんですか?色んな声が聞こえましたけど」
「い、いやぁ?なにもしてないよぉ?」

 誤魔化すためか、匠海から目を逸らしながら裏返る声で答える紗夜は更に怪しくなり、隣にいる勇は頭を抱えた。

「お前……嘘下手すぎるだろ……」
「へ、下手ってなによ。バレてなさそうなんだからいいじゃん」
「………………お前ってほんと馬鹿だな。それ言ったらバレたのも当然だろ。ほんと馬鹿だろ」
「あっ……。や、でも……!なにもしてないのは事実じゃん!?」
「それは事実だけども。下手なのは認めろ?」
「やだ。認めない」
「……ほんと子供だ……」

 昨日までとは全くちがう勇と千咲の変化を目の当たりにした匠海は目を見開き、口を開こうと前のめりになるが、その前に匠海の手を引き離した千咲が匠海よりも体を前のめりにして言葉を発する。

「2人ともめっちゃ進化してるじゃん!どしたの!?なにかあった!?聞かせて聞かせて!!」

 あー、だるいやつが来たなぁ……と心の中で呟く勇は小さく溜め息を吐き、恥ずかしさを軽減するためか、スッと目を逸らしてなにがあったのかを答える。

「……仮の彼氏になりました」
「え、仮?」

 思っていた答えとは違ったのか、腑抜けた声をあげる千咲は隣の紗夜に目をやり、もう一度口を開く。

「仮なの?」
「うん……仮の彼女になった……」

 紗夜も恥ずかしさを軽減するために目を逸らしながら千咲に答える。
(仮?なんのための仮?許嫁を断りたいから仮のカップルになってとか、おばあちゃんに紹介するために仮のカップルになってほしいとか、そういう理由じゃなくてただの仮のカップル?それって普通に付き合ってるのと同じなんじゃ……?)
 コンマ数秒でそのような結論に至った千咲だが、恋愛経験ゼロの2人にそんなことが気付けるわけもなく、初々しい勇と紗夜は頬を赤くしていた。
(なんか可愛いなコイツら。これ言わないほうが面白くなるよね。いや今も面白いけど更に面白くなるよね?てか、もう一回言うね。コイツら可愛いなおい)
 思わずニヤける千咲は振りほどいた自分の手と匠海の手をもう一度隠すように自分の口を覆い直し、どうぞと言わんばかりに残った自分の手を前に差し出して匠海に話し掛けてくださいとジェスチャーする。

「なにがしたいんだ千咲は」

 自分の手を再度口に置かれてしまった匠海は気難しそうな顔をしながら目を細めるが「んーんー」と言うばかりの千咲はどうやら離す気はないようで、ずっとニヤニヤとする千咲を置き、勇と紗夜に目を向けた匠海は少しの笑みを浮かべた。

「何があったのかは知らないけど、俺は2人のその関係好きよ?千咲ほどではないけど、普通にニヤけれる」
「うるさいなぁ……とりあえずどこか座ったら?あと、私は洗濯畳むから」

 千咲と匠海からの質問攻めを断ち切るように内容を変える紗夜はゆっくりと手を伸ばし、洗濯カゴを自分の方へ引き寄せる。
 ゆっくりなのは、先程の記憶が蘇って気まずいからだろう。勇とは目を合わせることなく洗濯カゴに手を入れる紗夜は1枚のパーカーを取って畳み始める。

「あ、勇?朝ごはん作って~」

 またもや匠海の手を引き離した千咲は勇に向かって快く言った。
 別に作ること自体には抵抗がなかった勇は立ち上がるが、目を細めながら軽いツッコミを入れる。

「もう昼な?徹夜は肌に悪いからやめたほうが良いぞ」
「私、勇とは違ってお肌はあまり気にしてないの~」
「嘘つけ。俺の美容製品使ってんの知ってるぞ」
「え、まじ?」
「まじ」

 まさかバレているとは思っていなかった千咲は心底驚いた表情を勇に向けたが、勇自体はあまり気にしていないようで、それ以上問うことはなくキッチンに向かっていく。

「お兄さん優しいね」
「でしょ?最高の兄だよほんと」
「……姉さんとは大違いだよ」

 チラっと洗濯を畳む紗夜を盗み見る匠海は、優しさの欠片もない家のことを思い出して思わず溜め息を吐いてしまう。

「な、なによ」
「いーや?姉さんは俺が美容製品使ってたらめっちゃ怒るなーって思っただけ」
「そりゃ怒るでしょ。私のお金で買ったんだから」

 ほら、と言わんばかりに千咲に目を向け直した匠海は肩をすくめる。
 すると、先程まで言い合っていた男が珍しく紗夜の味方をするようにキッチンから言葉をかけた。

「まぁそいつの言わんとすることはわかるぞ。心が狭かったら怒るやつもいるよな」

 否、味方をするような言葉ではなく、貶す言葉だった。絶対的自信を持っていた心の広さを貶された紗夜は洗濯を畳む手を止め、ギロッと冷蔵庫からフレンチトーストを取り出した勇を睨み、言い訳を並べる。

「あなたと違ってケチでごめんなさいね?でも私のは女性用美容製品なの。男に合うかもわからないし、逆に肌が荒れるかもしれないじゃない?そんな気遣いをしてあげてる私は優しいと思うけどなぁ?」

 そんな紗夜の言い訳を聞いた勇は鼻で笑い、肩眉を上げて煽るように口を開く。

「言い訳になると口が達者なようで」
「あーー!!うざ!うざい!!ねぇ千咲さん!アイツ潰していい!?」

 この状況で口では勝てないと判断したのか、紗夜は眉間にシワを寄せて千咲の方に目を向けて拳を握りながら問う。

「んー今はダメだね~。後でなら存分にやっていいよー」
「おい、なに許可してんだ」

 ニコニコと笑みを浮かべる千咲が許可を出すと、火をつけた勇がソファーに座ろうとする千咲を睨む。
 許可を得たことで喜びに満ちた紗夜は握った拳をガッツポーズに変え、歪な笑みを洗濯物達に向ける。

「おい、そこもその笑みやめろ」
「後で覚えてなさいよ」
「……はぁ。覚えとくけど俺に勝てると思うなよ」
「ふん。あなたの弱点を見つけたから私が勝つよ」
「ほーん」

 勇と紗夜の間にはバチバチと火花が散り、今にも喧嘩が始まりそうな睨みを効かせる2人。

「(ねぇ匠海。あの2人おもろくね?)」
「(なんか、千咲がなんで面白いって言うのか分かった気がするわ)」
「(でしょ?)」

 ソファーで小声で話し合う千咲と匠海はバチバチの2人を横目に、千咲は楽しそうにニヤつき、匠海は微笑ましそうに目元を緩めて2人を見守るのだった。

 勇と紗夜の下着はというと、忍者のように離れる間に目にも留まらぬ早業で、紗夜のお腹の上から自分のものだけを抜き取った勇はポケットに入れ、紗夜の下着はこっそりと白いパーカーの間に挟んだのだった。
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