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バベル計画
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かつて、人類は神々に自分たちの力を示すため、巨大な塔を築こうとした。しかしこの行為は神々の怒りを買い、一つだった人類の言語をバラバラにされてしまった。そうして塔の建設は頓挫してしまった。
その塔は「バベルの塔」と呼ばれ、後世に語り継がれた…。
時は流れ、現在。
人類は新たな問題に直面していた。
「石油に代わるエネルギー…。何かないものかね。」
エネルギー問題。長年人類が問題視してきた問題である。主なエネルギー源とされていた石油も、40年で無くなってしまうと言われ、新しいエネルギー源の確保が懸念されていた。
「原子力による発電も昨今の事故により、絶対安全とは言えなくなってきた。何かより安全に、かつ永久的に使えるエネルギーはないものか…。」
「エネルギーについて考える会」と題して、世界中の識者が集まっていた。
「今現在、様々な形で発電はなされている。原子力以外にも、風力、水力、地熱を始め、バイオマス、太陽光による発電などのエネルギーもあるじゃないか。」
「しかし、新エネルギーにはコストがかかるなど問題も残っている。技術革新も進めばいずれ解決するんだろうが…。」
「もういっそのこと、一気に解決してみませんか?」
一人の男が声をあげた。
「一気に解決って…。どうするんだね?」
「さっきの発言にもありました、太陽光の発電。それを利用した電池を巨大にした塔を打ち立てるんですよ。」
男の発言に、会場からは失笑が漏れた。
「何がおかしいんです?」
「いや君、そんなものは現実的でないよ。第一どれほどのコストがかかると思っているんだね?」
その質問に、また別の男が意見した。
「いや、太陽光発電のコストは年々下がってきている。1970年頃に日本で運用されていたものは、1kw毎に数千万円もかかっていた。しかし近年、研究も進み、2011年の時点での1kwのコストは30円ほどと報告されている。」
この報告に会場でざわめきが起こった。
「しかし、太陽電池だらけの塔を打ち立てるとなると、それなりの費用がかかるのでは?それにどれ程の規模でやるつもりなんだね?」
「一説によれば、ゴビ砂漠に太陽電池を敷き詰めれば、世界中の電力が賄えるとも言われています。すなわちそれ以上の太陽電池を用いれば、世界規模で使えるエネルギー源になるはずです。」
「ゴビ砂漠…ッてどれくらいの広さなんだ?」
「約130万㎢です。」
「130万㎢…!」
またしても会場がざわついた。
「その広さの量の太陽電池を準備するには、一体いくらかかるんだ!?」
「一般の住宅での設置価格が平均で200万前後。一般住宅の屋根を100平方メートルと考えて、単純計算でその1300万倍と考えると…。」
「ダメだ!ダメだ!あまりにもコストがかかりすぎる!それに太陽電池といえば、出力が天候にも左右されるそうじゃないか!コストがかかる上に出力も不安定じゃ、誰も建設に出資なんてせんよ。」
「だから塔なんですよ!」
「何?」
「確かに太陽光発電は天候によって出力が左右される。しかし、成層圏よりも上まで高いところなら、天候も関係ない。常に一定のエネルギーを供給できるはずです!」
「なるほど…。いやしかし、そこまで高い塔を作るということは、そこからさらに費用がかさむということだ。そうだろう?」
「その通りです。」
「君のプランだと、太陽電池を揃えるだけで既に国家予算レベルなんだ。さらに塔の建設もプラスするとなると、政府の出資でも賄いきれんよ。」
「そうですね。でも、世界各国から出資を募ったらどうでしょう?」
「せ、世界各国からかね!?」
「そうです。エネルギー問題は既に世界レベルでの問題です。今こそ、人類が国境も越えて手を取り合う時ではないでしょうか!」
男の発案に会場は湧き始めた。
「…ううむ。なかなか面白い案になってきた。よし、この案を国連に提出し、世界の主要各国から出資頂くよう頼んでみよう。」
「ありがとうございます!お願いします!」
かくして、男の発案したエネルギープランは「バベル計画」と呼ばれ、世界各国から出資がなされた。
塔建設に向けて莫大な資金が集められ、世界各国の一流の技術者たちも集められた。
人類全体が一つの塔の為に力を合わせる様は、まさに現代のバベルの塔であった。この一大ニュースを各メディアも大きく取り上げ、バベルの塔は世界平和の象徴とまで言われた。
ところが、いざ建設が始まろうとするその時だった。
「え!?建設場所が決まらない!?」
「そうなんだ。どの国もバベルの塔を自分の国内に置きたがっている。」
「何故です!世界の、人類の危機が救えるかも知れないんですよ!どこに置くかなんてどうでもいいじゃないですか!」
「ところがそうはいかない。世界規模でエネルギーを供給できる設備を国内に持つということは、その国が世界のエネルギーを牛耳られるということだ。そんなことはどの国も許せないだろう。」
「そんな…。」
「米国が持てば、他国の米国に対する反感はますます上がる。かと言って、他の国が持てば、世界のパワーバランスは一気にその国に傾く。米国はそんなことは避けたいだろうな。だからどの国も自国での建設に躍起になってるんだ。」
「人類のための計画だというのに…。」
「おい!大変だ!塔の建設計画が中止になったらしい!」
「そんな!どうして…。」
「例の建設場所を巡る議論に終わりが見えなかったからだ。仲裁案として、この塔の建設中止が決定された。」
「……。」
「残念だったな。まあ、気を落とすなよ。君の案はとても素晴らしかったんだ。」
「バベルの塔か…。かつては神に言語をバラバラにされて、今回は人間同士が利権を争って形にならなかった。
そうして現代のバベルの塔も、建設されることなく、計画は頓挫した。
世界すべての人類が手を取り合えるようになるのは、もしかしたら永久に無理なのかもしれないな…。」
その塔は「バベルの塔」と呼ばれ、後世に語り継がれた…。
時は流れ、現在。
人類は新たな問題に直面していた。
「石油に代わるエネルギー…。何かないものかね。」
エネルギー問題。長年人類が問題視してきた問題である。主なエネルギー源とされていた石油も、40年で無くなってしまうと言われ、新しいエネルギー源の確保が懸念されていた。
「原子力による発電も昨今の事故により、絶対安全とは言えなくなってきた。何かより安全に、かつ永久的に使えるエネルギーはないものか…。」
「エネルギーについて考える会」と題して、世界中の識者が集まっていた。
「今現在、様々な形で発電はなされている。原子力以外にも、風力、水力、地熱を始め、バイオマス、太陽光による発電などのエネルギーもあるじゃないか。」
「しかし、新エネルギーにはコストがかかるなど問題も残っている。技術革新も進めばいずれ解決するんだろうが…。」
「もういっそのこと、一気に解決してみませんか?」
一人の男が声をあげた。
「一気に解決って…。どうするんだね?」
「さっきの発言にもありました、太陽光の発電。それを利用した電池を巨大にした塔を打ち立てるんですよ。」
男の発言に、会場からは失笑が漏れた。
「何がおかしいんです?」
「いや君、そんなものは現実的でないよ。第一どれほどのコストがかかると思っているんだね?」
その質問に、また別の男が意見した。
「いや、太陽光発電のコストは年々下がってきている。1970年頃に日本で運用されていたものは、1kw毎に数千万円もかかっていた。しかし近年、研究も進み、2011年の時点での1kwのコストは30円ほどと報告されている。」
この報告に会場でざわめきが起こった。
「しかし、太陽電池だらけの塔を打ち立てるとなると、それなりの費用がかかるのでは?それにどれ程の規模でやるつもりなんだね?」
「一説によれば、ゴビ砂漠に太陽電池を敷き詰めれば、世界中の電力が賄えるとも言われています。すなわちそれ以上の太陽電池を用いれば、世界規模で使えるエネルギー源になるはずです。」
「ゴビ砂漠…ッてどれくらいの広さなんだ?」
「約130万㎢です。」
「130万㎢…!」
またしても会場がざわついた。
「その広さの量の太陽電池を準備するには、一体いくらかかるんだ!?」
「一般の住宅での設置価格が平均で200万前後。一般住宅の屋根を100平方メートルと考えて、単純計算でその1300万倍と考えると…。」
「ダメだ!ダメだ!あまりにもコストがかかりすぎる!それに太陽電池といえば、出力が天候にも左右されるそうじゃないか!コストがかかる上に出力も不安定じゃ、誰も建設に出資なんてせんよ。」
「だから塔なんですよ!」
「何?」
「確かに太陽光発電は天候によって出力が左右される。しかし、成層圏よりも上まで高いところなら、天候も関係ない。常に一定のエネルギーを供給できるはずです!」
「なるほど…。いやしかし、そこまで高い塔を作るということは、そこからさらに費用がかさむということだ。そうだろう?」
「その通りです。」
「君のプランだと、太陽電池を揃えるだけで既に国家予算レベルなんだ。さらに塔の建設もプラスするとなると、政府の出資でも賄いきれんよ。」
「そうですね。でも、世界各国から出資を募ったらどうでしょう?」
「せ、世界各国からかね!?」
「そうです。エネルギー問題は既に世界レベルでの問題です。今こそ、人類が国境も越えて手を取り合う時ではないでしょうか!」
男の発案に会場は湧き始めた。
「…ううむ。なかなか面白い案になってきた。よし、この案を国連に提出し、世界の主要各国から出資頂くよう頼んでみよう。」
「ありがとうございます!お願いします!」
かくして、男の発案したエネルギープランは「バベル計画」と呼ばれ、世界各国から出資がなされた。
塔建設に向けて莫大な資金が集められ、世界各国の一流の技術者たちも集められた。
人類全体が一つの塔の為に力を合わせる様は、まさに現代のバベルの塔であった。この一大ニュースを各メディアも大きく取り上げ、バベルの塔は世界平和の象徴とまで言われた。
ところが、いざ建設が始まろうとするその時だった。
「え!?建設場所が決まらない!?」
「そうなんだ。どの国もバベルの塔を自分の国内に置きたがっている。」
「何故です!世界の、人類の危機が救えるかも知れないんですよ!どこに置くかなんてどうでもいいじゃないですか!」
「ところがそうはいかない。世界規模でエネルギーを供給できる設備を国内に持つということは、その国が世界のエネルギーを牛耳られるということだ。そんなことはどの国も許せないだろう。」
「そんな…。」
「米国が持てば、他国の米国に対する反感はますます上がる。かと言って、他の国が持てば、世界のパワーバランスは一気にその国に傾く。米国はそんなことは避けたいだろうな。だからどの国も自国での建設に躍起になってるんだ。」
「人類のための計画だというのに…。」
「おい!大変だ!塔の建設計画が中止になったらしい!」
「そんな!どうして…。」
「例の建設場所を巡る議論に終わりが見えなかったからだ。仲裁案として、この塔の建設中止が決定された。」
「……。」
「残念だったな。まあ、気を落とすなよ。君の案はとても素晴らしかったんだ。」
「バベルの塔か…。かつては神に言語をバラバラにされて、今回は人間同士が利権を争って形にならなかった。
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