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価格競争
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ハンバーガーショップ。
大手M社は、安さを前面にハンバーガーを売りに出していた。安く、旨く、早いM社のハンバーガーは業界でトップの売り上げを誇っていた。
「社長!」
販売課担当のAが額に汗して、大変な事実を社長に報告しようとしていた。
「どうした?」
「ウチよりも安いハンバーガーが売りに出されています!」
「なんだと!」
「D社のハンバーガーがウチより安い、149円で売られているんです!」
「う、ウチのは150円で売っている…。たった1円違いじゃないか…。」
「しかし、現在このD社のハンバーガーの方がウチよりも売れています!先月の売り上げではついに我が社が負けてしまいました!」
「な、なんだと!」
「いかがいたしますか!?社長!」
社長はしばらく思案したのち、重い口を開いた。
「…やむを得ん。価格を下げて対抗しよう。D社よりも安く売るんだ!」
「分かりました!」
そうしてM社は、ハンバーガーを100円まで値下げを行なった。業界最大手の値下げをマスコミは大きく取り上げ、話題沸騰となった。全国のM社のハンバーガー店には連日のように長蛇の列ができていた。
「社長!大成功です!ハンバーガーの販売数も、D社を上回りました!」
「そうか!これで我が社の勝利だな!」
…しかし一ヶ月後、またしても販売課のAが社長に報告をした。
「社長!Dがハンバーガーの価格を下げてきました!現在99円で販売しています!」
「なんだと!また我が社の1円違いか!」
「明らかに我が社を意識しています!いかがいたしますか?社長!」
「ぐぬぬ…。」
社長はしばし悩んだ末、またしても重い口を開いた。
「…こちらも値下げだ。」
「社長!」
「D社に決して負けるな!業界では我々がトップなんだ!」
「分かりました!社長!」
かくしてその後も価格競争は続いていった。
M社が下げればD社も下げる。D社も下げればM社も下げる。
ハンバーガーの値段はみるみるうちに下がっていった。100円から90円…80円…70円…。そして、60円まで下がった時、ついに勝負が膠着した。
販売課のAが嬉々とした表情で社長に報告する。
「社長!今月のハンバーガーの販売数、とうとうD社に打ち勝ちました!D社もこれ以上の値下げをする様子はありません!」
「そうか!わっはは!D社め!これ以上はさすがに下げられんか!」
「この勝負、我々の勝利ですね!社長!」
「ああ、大勝利だ!」
笑い声の響く社長室。その笑いを打ち消すように経理課のBが青い顔で入ってきた。
「しゃ、社長…!大変な事が…!」
「何だ。今、我が社の勝利を祝っているんだ。後にしてくれ。」
「それどころじゃありません!今月、我が社は大赤字になってるんです!」
「何だと!どういう事だ!」
「どういうことなんですか?教授。」
とある大学の講義室で、講義の内容について学生が質問した。授業の内容は失敗した経営戦略についてだった。
「何かわからないところがありましたか?」
「あ、いや。販売数は以前よりも増えたのに、赤字になるなんて不思議だなぁって…。」
「ふむ。では一つずつ説明しましょう。」
教授は黒板にチョークで「ものの値段」と書いた。
「私達が買う商品の値段は、利益以外に様々な要素が含まれています。今回のハンバーガーで言えば、食材の仕入れに使われる材料費、商品を売り人に支払われる人件費、宣伝に使われる広告費、政府に払う税金などなど…。」
「商品の値段が丸々利益になるわけではないんですね。」
「そうです。様々な費用に企業への利益を上乗せしてものの値段は決定します。しかし、今回M社は何も考えずにただ値段を下げ続けてしまった。これでどうなると思いますか?」
「ハンバーガー一個あたりの利益が減る?」
「いいえ。減るどころか、損害にしかならなくなります。これが今回の事件の肝です。」
教授は黒板に一本の直線を引き、その下に100と書いた。
「ではこの直線をハンバーガーの一個あたりの値段としましょう。値段を100として、この内の80を費用、20を企業への利益とします。」
直線に「80 費用」、「20 利益」という字が加えられた。
「ここで値段を一気に半分にします。ハンバーガーの値段は50になりますね。しかし、費用は変わりません。するとどうでしょう?」
「50円で売れても、80円払わないといけない。30円の損失…。」
「そうです。だから、売れれば売れるほど損害が増えるというおかしな事が発生するんです。このハンバーガーが1日全国で1万個売れたとして、一ヶ月営業を続けたら…それはそれは大変な損害になったでしょうね。」
ヘェ~と感嘆の声を漏らす学生。
当時のM社の大失敗はこうして後世に語り継がれるようになった。
しかし、その大失敗を収拾つけるためにM社がどれほど四苦八苦したのか、教室で聞いている彼らには想像もつかないだろう…。
大手M社は、安さを前面にハンバーガーを売りに出していた。安く、旨く、早いM社のハンバーガーは業界でトップの売り上げを誇っていた。
「社長!」
販売課担当のAが額に汗して、大変な事実を社長に報告しようとしていた。
「どうした?」
「ウチよりも安いハンバーガーが売りに出されています!」
「なんだと!」
「D社のハンバーガーがウチより安い、149円で売られているんです!」
「う、ウチのは150円で売っている…。たった1円違いじゃないか…。」
「しかし、現在このD社のハンバーガーの方がウチよりも売れています!先月の売り上げではついに我が社が負けてしまいました!」
「な、なんだと!」
「いかがいたしますか!?社長!」
社長はしばらく思案したのち、重い口を開いた。
「…やむを得ん。価格を下げて対抗しよう。D社よりも安く売るんだ!」
「分かりました!」
そうしてM社は、ハンバーガーを100円まで値下げを行なった。業界最大手の値下げをマスコミは大きく取り上げ、話題沸騰となった。全国のM社のハンバーガー店には連日のように長蛇の列ができていた。
「社長!大成功です!ハンバーガーの販売数も、D社を上回りました!」
「そうか!これで我が社の勝利だな!」
…しかし一ヶ月後、またしても販売課のAが社長に報告をした。
「社長!Dがハンバーガーの価格を下げてきました!現在99円で販売しています!」
「なんだと!また我が社の1円違いか!」
「明らかに我が社を意識しています!いかがいたしますか?社長!」
「ぐぬぬ…。」
社長はしばし悩んだ末、またしても重い口を開いた。
「…こちらも値下げだ。」
「社長!」
「D社に決して負けるな!業界では我々がトップなんだ!」
「分かりました!社長!」
かくしてその後も価格競争は続いていった。
M社が下げればD社も下げる。D社も下げればM社も下げる。
ハンバーガーの値段はみるみるうちに下がっていった。100円から90円…80円…70円…。そして、60円まで下がった時、ついに勝負が膠着した。
販売課のAが嬉々とした表情で社長に報告する。
「社長!今月のハンバーガーの販売数、とうとうD社に打ち勝ちました!D社もこれ以上の値下げをする様子はありません!」
「そうか!わっはは!D社め!これ以上はさすがに下げられんか!」
「この勝負、我々の勝利ですね!社長!」
「ああ、大勝利だ!」
笑い声の響く社長室。その笑いを打ち消すように経理課のBが青い顔で入ってきた。
「しゃ、社長…!大変な事が…!」
「何だ。今、我が社の勝利を祝っているんだ。後にしてくれ。」
「それどころじゃありません!今月、我が社は大赤字になってるんです!」
「何だと!どういう事だ!」
「どういうことなんですか?教授。」
とある大学の講義室で、講義の内容について学生が質問した。授業の内容は失敗した経営戦略についてだった。
「何かわからないところがありましたか?」
「あ、いや。販売数は以前よりも増えたのに、赤字になるなんて不思議だなぁって…。」
「ふむ。では一つずつ説明しましょう。」
教授は黒板にチョークで「ものの値段」と書いた。
「私達が買う商品の値段は、利益以外に様々な要素が含まれています。今回のハンバーガーで言えば、食材の仕入れに使われる材料費、商品を売り人に支払われる人件費、宣伝に使われる広告費、政府に払う税金などなど…。」
「商品の値段が丸々利益になるわけではないんですね。」
「そうです。様々な費用に企業への利益を上乗せしてものの値段は決定します。しかし、今回M社は何も考えずにただ値段を下げ続けてしまった。これでどうなると思いますか?」
「ハンバーガー一個あたりの利益が減る?」
「いいえ。減るどころか、損害にしかならなくなります。これが今回の事件の肝です。」
教授は黒板に一本の直線を引き、その下に100と書いた。
「ではこの直線をハンバーガーの一個あたりの値段としましょう。値段を100として、この内の80を費用、20を企業への利益とします。」
直線に「80 費用」、「20 利益」という字が加えられた。
「ここで値段を一気に半分にします。ハンバーガーの値段は50になりますね。しかし、費用は変わりません。するとどうでしょう?」
「50円で売れても、80円払わないといけない。30円の損失…。」
「そうです。だから、売れれば売れるほど損害が増えるというおかしな事が発生するんです。このハンバーガーが1日全国で1万個売れたとして、一ヶ月営業を続けたら…それはそれは大変な損害になったでしょうね。」
ヘェ~と感嘆の声を漏らす学生。
当時のM社の大失敗はこうして後世に語り継がれるようになった。
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