破滅の足音

hyui

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嫉妬

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「嘘…。信じられない…。」
A夫人は、夫が自分以外の女性とキスをしている写真を偶然にもツイッターで目撃してしまった。
「あの人…、私に内緒でこんな…!許せない…!」

早速、その日の晩に写真を夫に見せて問い詰めた。
「あなた…。この写真、どういうこと?」
「あ、ああ。それは妹との写真だよ。ほら。妹とキスをしたって変じゃないだろ?」
明らかに動揺を見せる夫。A夫人は浮気を確信した。
「あなた!妹がいたなんて話今まで一度も…!」
「うるさいな!妹だと言ったら妹だ!この話はもう終わりだ!僕は疲れてるんだ!寝るぞ!」
「あ!ちょっと!」
夫はそう言って強引に話を打ち切り、部屋に入ってしまった。


(浮気は明らかなのに、謝りもしないなんて…!もう許せない…!)

「奥さんに浮気がバレたんだって!?」
オフィスにて、夫が同僚に昨日の出来事について愚痴をこぼした。
「ああ、参ったよ。家内のやつ、えらい剣幕でなあ…。」
「それで!?どうなったんだ?」
「妹だと言い張ってやったよ。あいつは納得してないようだったけどな。」
「ばっかだねぇ…。そんなわかりやすい嘘ついちゃって。お前、妹なんていないじゃないか。」
「あいつにわかりっこないさ。それに男に女がかなうわけない。」
「お前…、女の怖さ知らねえな?いい加減にしないと、そのうち痛い目見るぞ。」

A夫人はそれからしばらく家を出た。
自宅には夫1人だけとなった。
「ほら、言わんこっちゃない。」
「ふ、ふん!たかだか家を出たくらいで痛くもかゆくもない!むしろ好都合さ!」
「そんなこと言って…。お前、料理できないだろ?」
「……。ここんとこ、カップ麺ばっかだ…。」
「悪いことは言わん。早く謝っとけよ。」


一ヶ月後、夫人は帰ってきた。
「あなた、私が悪かったわ。あなたを疑ったりして、ごめんなさい。私のこと…、許してくれる?」
「ああ、もちろんだとも!俺も声を荒げてしまって悪かった。よく帰ってきてくれたよ。」

「浮気の事は謝らないのね…。」
ボソッと、小声で夫人が呟いた。

「ん?どうかした?」
「ううん。なんでもないわ。それでね、仲直りの印にとっておきの料理をご馳走しようと思うの。」
「とっておきの料理?」
「実は知り合いから沢山貝をもらっちゃったのよ。だから、あなたに貝料理を食べて貰おうと思ってね。」
「貝か。いいね。楽しみだ。実はここのところ、まともな飯を食ってないんだ。」
「あら、じゃあとびきり美味しくしないとね。楽しみにしていて。」


そうして夕食。
食卓には、色取り取りの妻の料理が並んでいた。中央には例の「貝」料理があった。
「おお、うまそう!」
「さあ、冷めないうちにどうぞ。」
「いただきまーす!」
久方ぶりの妻の料理に男は舌鼓をうっていた。
「さあ、じゃあ例の貝料理を…。」
「あ、待って。あなた。」
夫人が、料理に端を伸ばそうとする夫を引き止めた。
「な、なんだよ…。今から食べようって時に…。」
「いや、ちょっとね。この貝料理、ちょっと食べ方があるからあなたに教えようと思って。」
「食べ方?」
「ええ。生のまま、一口に噛まずに飲み込むのよ。」
「また変わった食べ方だな…。」
「でも美味しいらしいわ。知り合いが教えてくれた食べ方なんだから、試して見なきゃ損よ!」
「それもそうだな…。」
訝しながら、夫は「貝」を口に運び、言われるままに噛まずに飲み込んだ。
「どう?」
「うん…。まあ、うまいかな。」
「よかった!さあ、どんどん食べて!」
「お前は食べないのか?」
「実は私、貝たべれないのよ。ちっちゃい時にお腹壊しちゃって。それから貝は苦手なの。」
「そうか…。なんか申し訳ないな。」
「いいの。代わりにあなたに全部あげるから。さあ、どんどん食べて!」

それから、夫人の「貝」料理は毎日続いた。
夫はその料理を毎日残さず食べた。しばらくカップ麺生活をしていた反動と、浮気の後ろめたさからだった。
例の「貝」料理を食べる時も、妻の言いつけ通り、噛まずに一口に飲み込んだ。
そんな生活が一年ほど続いた。

「なんかお前…、やつれてないか?」
オフィス。同僚が夫の様子を心配した。
「そうか?…う~ん。最近そういや調子悪いな。」
「また奥さん怒らせたんじゃないだろな?」
「まさか。あれからはずっと順調さ。言いつけもきちんと守ってるしな。」
「ならいいが…。奥さんを今度こそ怒らせるなよ。女を怒らせたら怖いからな。」
「心配ないさ…。」
心配する同僚にひらひらと手を振って答える夫。…が、夫は突然その場に倒れこんだ。
「おいっ!?どうした!?」
同僚の問いにも答えられない。夫は気を失っていた。
「ッ!?誰か!救急車だ!救急車をよべ!」
そうして夫は搬送された。

「……。死亡、確認されました。」
「手遅れだったか…。」
搬送先の病院で夫は息を引き取った。
「しかし、信じられません。どうしてこんな大量に『こいつ』が…。」
「なぜかはわからん。だが『こいつ』のせいでこの男性は衰弱し、ついには死んでしまった。何を考えていたのか知らんが…。」
狼狽する医師たちが見つめた先には、夫が一年間妻の言いつけを守って飲み込み続けた「ヒル」が、夫の胃の中に蠢めいていた…。
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