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警察官チョウさんの場合2
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「よっ!チョウさん。お疲れ。」
聞き込みに向かおうと警察署を出ようとするチョウさんを、一人の警官が呼び止めた。
「おお。ヤマさんか。」
「なんだい?今から聞き込みかい?」
「おうとも。ちょっくら行ってくら。」
「全く精が出るねえ。もう定年近くなのに、まだ現場を走り回ってんだからよ。」
「はは。いや、俺はもうそんな走り回ってねえ。そりゃ若いもんに任してる。」
「あの青島って奴か。いやいい奴だね、あいつは。まだ若いのに礼儀もきちんとしてよ。」
「まあな。だが刑事としちゃまだまだ……。」
むず痒そうにはにかみながら、チョウさんは答えた。
「相変わらず厳しいな。チョウさんは。……でも、いい後釜が見つかってよかったじゃないか。」
「まあ、な……。」
心底嬉しそうに、チョウさんは満面の笑みをうかべるのだった。
「ところでチョウさんよ。またエライ殺しがあったんだって?」
「ああ……。今まで見たこともないぐらいにエグい事件だ。」
「俺も小耳に挟んだがよ。一人暮らしの会社員が同僚を縊り殺した後、笑いながら両眼を抉られて死んでたんだっけか?」
「ああ……。遺体の写真を見たが、ありゃ酷い。イかれてるとしか思えない死に様よ。」
「その犯人……、一体何モンかね?」
「さてな……。」
チョウさんはアゴをさすり、渋い顔をしながら答えた。
「ま、何モンだろうと、俺らのやる事は変わらねえ。犯人を見つけてとっ捕まえるだけよ。」
「とっ捕まえるねぇ……。しかし相手がもしとんでもないバケモンだったらどうする?」
「それでも捕まえる。それが俺らの仕事だ。」
力強く即答するチョウさんに、ヤマさんは一時目を丸くしながらも、「さすがチョウさん。」と言って笑うのだった。
「さて……そろそろ俺も行かんと、若い奴に行かせっぱなしってのもよくねえ。」
「おう。ま、あんたももういい歳だ。あまり無理すんじゃねえぞ。」
「そっちもな。老いぼれ。」
憎まれ口を叩きながらヤマさんと別れるチョウさん。
……と、出口に向かう寸前、チョウさんはある物を見つけた。
……さっき見かけたフランス人形が出口の前で目を閉じてチョコンと座っているのだ。
「なんだあ?あの婦警のやつが落としたのか?全く、人様のモノをぞんざいに扱いやがって……。」
ぐちぐち言いながらチョウさんは人形を拾い上げる……。
……遊びましょ……
「うわっ!!」
突然、人形が目をパチリと開き、喋り出した。チョウさんは驚いて思わず人形を手放してしまった。
コロコロと転がる人形……。だが何者かがまたそれを拾い上げる。
さっきの婦警だ。
婦警はニタニタと笑いながら正面のチョウさんを見据える。
「テメエ……。一体なんのつもりだ。なんなんだ。それは。」
「あら、酷いじゃない。チョウさん。ミリアちゃんのことをそれだなんて言って。」
「ミリア……。そいつの名前か?」
「ええ。そうよ。」
婦警は「ミリアちゃん」と呼んだ人形を大事そうに抱きしめ、そして不敵に笑う。
「うふ……。うふふふ……。」
「……気持ちの悪い野郎だ。何笑ってやがる。」
「この子がね……。チョウさんと遊びたがってるの。鬼ごっこがしたいんですって。」
「鬼ごっこだあ?悪いが遊んでる暇はねえ。また今度にしてくれ。」
「また今度…?」
……今度なんて、無いわよ?……
突然、チョウさんの腕が弾け飛んだ。
破裂音と共に血飛沫が前方に飛び散る。
「ううっ……⁉︎」
戸惑うチョウさんは後ろを振り向く。
そこには先程まで談笑していたヤマさんが、虚ろな顔でこちらに銃口を向けていた。
「や…ヤマさん⁉︎」
「……みーつけた……みーつけた……。」
ヤマさんの様子は異常であった。
立っている姿もどこかぎこちない。ユラユラとフラつきながら片腕を上げて拳銃を構える姿は、まるで下手くそなあやつり人形の演技のようで……。
「チョウ…さん……みーつけた……。」
ヤマさんはチョウさんに向けて、拳銃を1発、また1発と放った。
チョウさんは物陰に身を隠してこれを辛うじてかわす。
「くそっ……!どうしちまったんだ!ヤマさん!一体なんの冗談だ!」
「言ったでしょ……?“鬼ごっこ”よ。」
いつの間に近づいたのか。先程の婦警が不快な笑みを浮かべてチョウさんを覗き込んでいる。
「“鬼”はチョウさん、あなた。“鬼”を殺せばゲームは終わり……。」
「な、なんだと……?」
「ゲームの参加者は……。」
その時、チョウさんは周囲から見られていることに気づいた。ヤマさん同様、皆虚ろな顔でこちらに銃口を向けている。
「な……!お前ら……!まさか……!」
「そう。参加者は署内の人間、全員よ。」
聞き込みに向かおうと警察署を出ようとするチョウさんを、一人の警官が呼び止めた。
「おお。ヤマさんか。」
「なんだい?今から聞き込みかい?」
「おうとも。ちょっくら行ってくら。」
「全く精が出るねえ。もう定年近くなのに、まだ現場を走り回ってんだからよ。」
「はは。いや、俺はもうそんな走り回ってねえ。そりゃ若いもんに任してる。」
「あの青島って奴か。いやいい奴だね、あいつは。まだ若いのに礼儀もきちんとしてよ。」
「まあな。だが刑事としちゃまだまだ……。」
むず痒そうにはにかみながら、チョウさんは答えた。
「相変わらず厳しいな。チョウさんは。……でも、いい後釜が見つかってよかったじゃないか。」
「まあ、な……。」
心底嬉しそうに、チョウさんは満面の笑みをうかべるのだった。
「ところでチョウさんよ。またエライ殺しがあったんだって?」
「ああ……。今まで見たこともないぐらいにエグい事件だ。」
「俺も小耳に挟んだがよ。一人暮らしの会社員が同僚を縊り殺した後、笑いながら両眼を抉られて死んでたんだっけか?」
「ああ……。遺体の写真を見たが、ありゃ酷い。イかれてるとしか思えない死に様よ。」
「その犯人……、一体何モンかね?」
「さてな……。」
チョウさんはアゴをさすり、渋い顔をしながら答えた。
「ま、何モンだろうと、俺らのやる事は変わらねえ。犯人を見つけてとっ捕まえるだけよ。」
「とっ捕まえるねぇ……。しかし相手がもしとんでもないバケモンだったらどうする?」
「それでも捕まえる。それが俺らの仕事だ。」
力強く即答するチョウさんに、ヤマさんは一時目を丸くしながらも、「さすがチョウさん。」と言って笑うのだった。
「さて……そろそろ俺も行かんと、若い奴に行かせっぱなしってのもよくねえ。」
「おう。ま、あんたももういい歳だ。あまり無理すんじゃねえぞ。」
「そっちもな。老いぼれ。」
憎まれ口を叩きながらヤマさんと別れるチョウさん。
……と、出口に向かう寸前、チョウさんはある物を見つけた。
……さっき見かけたフランス人形が出口の前で目を閉じてチョコンと座っているのだ。
「なんだあ?あの婦警のやつが落としたのか?全く、人様のモノをぞんざいに扱いやがって……。」
ぐちぐち言いながらチョウさんは人形を拾い上げる……。
……遊びましょ……
「うわっ!!」
突然、人形が目をパチリと開き、喋り出した。チョウさんは驚いて思わず人形を手放してしまった。
コロコロと転がる人形……。だが何者かがまたそれを拾い上げる。
さっきの婦警だ。
婦警はニタニタと笑いながら正面のチョウさんを見据える。
「テメエ……。一体なんのつもりだ。なんなんだ。それは。」
「あら、酷いじゃない。チョウさん。ミリアちゃんのことをそれだなんて言って。」
「ミリア……。そいつの名前か?」
「ええ。そうよ。」
婦警は「ミリアちゃん」と呼んだ人形を大事そうに抱きしめ、そして不敵に笑う。
「うふ……。うふふふ……。」
「……気持ちの悪い野郎だ。何笑ってやがる。」
「この子がね……。チョウさんと遊びたがってるの。鬼ごっこがしたいんですって。」
「鬼ごっこだあ?悪いが遊んでる暇はねえ。また今度にしてくれ。」
「また今度…?」
……今度なんて、無いわよ?……
突然、チョウさんの腕が弾け飛んだ。
破裂音と共に血飛沫が前方に飛び散る。
「ううっ……⁉︎」
戸惑うチョウさんは後ろを振り向く。
そこには先程まで談笑していたヤマさんが、虚ろな顔でこちらに銃口を向けていた。
「や…ヤマさん⁉︎」
「……みーつけた……みーつけた……。」
ヤマさんの様子は異常であった。
立っている姿もどこかぎこちない。ユラユラとフラつきながら片腕を上げて拳銃を構える姿は、まるで下手くそなあやつり人形の演技のようで……。
「チョウ…さん……みーつけた……。」
ヤマさんはチョウさんに向けて、拳銃を1発、また1発と放った。
チョウさんは物陰に身を隠してこれを辛うじてかわす。
「くそっ……!どうしちまったんだ!ヤマさん!一体なんの冗談だ!」
「言ったでしょ……?“鬼ごっこ”よ。」
いつの間に近づいたのか。先程の婦警が不快な笑みを浮かべてチョウさんを覗き込んでいる。
「“鬼”はチョウさん、あなた。“鬼”を殺せばゲームは終わり……。」
「な、なんだと……?」
「ゲームの参加者は……。」
その時、チョウさんは周囲から見られていることに気づいた。ヤマさん同様、皆虚ろな顔でこちらに銃口を向けている。
「な……!お前ら……!まさか……!」
「そう。参加者は署内の人間、全員よ。」
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